kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

チャッピー

2015年06月07日 | ★★★☆☆
日時:6月6日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版変形820円。監督から出演者までテキスト情報満載。中央部にはフェイク新聞「ヨハネスブルグ ニュース」が閉じ込んである粋な構成。MNUが広告を出していたりする。(笑)

第9地区」がムチャクチャ面白かった南アのニール・ブロムカンプの最新作。公開開始から何かと立て込んでいたが、前評判も高い本作を外すわけにもいかず、とうかさん前のゆかた姿で鑑賞となった。

2016年ヨハネスブルグ、高い犯罪発生率に手を焼いた警察はAI搭載のロボット警官「スカウト」を採用し、治安回復に成果を上げる。一方、借金返済のために一山当てることを目論んだストリートギャング一味は「スカウト」をストップさせるために、開発技術者の誘拐を画策。
誘拐は成功するが、技術者は独自に開発した自律型AIを搭載したスカウトを社外に持ち出しており、そのスカウトはギャングの手に・・・

【以下ネタばれあり】
OPは関係者のインタビュー映像でスタートし、舞台もヨハネスブルグとあって、全体に雰囲気は良くも悪くも「第9地区」に似ている。(ただ「第9地区」のテンポの良過ぎる編集は鳴りをひそめている。)

最初、スカウトのデザインを見たとき、「これって、アレじゃん。」と日本人なら誰しも思うワケだが、そのリアルな動きにCGなどの特殊効果ではなく実機が動いているとしか思えない。スカウトを盾にして突入するなんていいなあ。この「隣りにあるリアルさ」がブロムカンプの持ち味だ。

「チャッピー」と名づけられたスカウトはストリートギャングにヤンキー教育をゼロから施されるが、ヤンキーパパとヤンキーママ、開発技術者の教育方針が違い、チャッピーも悩みながらAIとして成長していく。その過程でヤンキーママに愛情が芽生えていく。ここに機材の損傷が原因で、チャッピーのバッテリーの寿命が5日間しかないという伏線が活きてくる。

「第9地区」は誰もかしこも自分勝手で感情移入できる人物がいないのが持ち味だったが、こちらはみんな愛すべき人たち。ストリートギャングの借金返済作戦は実に頭の悪い行き当たりバッタリ作戦なのだが、貧しくダメなりにも前向きに生きていくキャラクターに好感が持てる。シガニー・ウィーバーは腹黒い黒幕と思わせて、実は普通のCEO。そんな中、ヒュー・ジャックマンのダメな悪役ぶりがよくって、散々にセコい悪事を重ねた挙句、最後にしばき倒される情けなさが最高にいい。新しい局面が開けたかのよう。

関係者の思惑が錯綜して三つ巴になる展開も「第9地区」に似ており、そこまで似ている必要があるかな・・・といった感じ。ラストの情無用の大銃撃戦もよく似ているのだが、ここで悪役の警察ロボットがすがすがしいくらいの大暴れ。たかがギャング相手にチェーンガン、グレネードランチャー、クラスター弾の大盤振る舞い。(言うまでもなく「ロボコップ」のEDや「戦闘メカザブングル」のウォーカーマシンに似ている。)ここでママがスパッスパッと銃弾を食らって、あっさり死ぬシーンは泣かずにはいられなかった。

意識がマシンに移行できるというクライマックスは言うまでもなく「攻殻機動隊」だが、射殺されたママの意識のオチでは再び涙が止まらなかった。SF映画で泣く事になるとは。

一方で面白いテーマなだけにもっと書き込みがあっても良かったかなと思う。チャッピーの成長プロセスが早過ぎるのは置いておいたとしても、警察のロボ警官出動を一企業(というか一握りの職員)が独占していることに説明が欲しかったし、エンディングからどのようにOPのインタビューに繋がるのかあえて説明されない。

また、「第9地区」だけでなく、過去の多くのSF映画・アニメへのオマージュが盛り込まれ、デジャヴ感がぎっしり。新鮮味が乏しくなってしまったのは残念なところ。

もっと掘り下げられるテーマなだけに、TVシリーズなんかになると面白いかも知れない。神とは?人間とは?って「バトルスターギャラクティカ」みたいだな。






題名:チャッピー
原題:CHAPPiE
監督:ニール・ブロムカンプ
出演:シャールト・コプリー、デーヴ・パテール、ヒュー・ジャックマン、シガニー・ウィーバー
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イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

2015年04月22日 | ★★★☆☆
日時:4月17日
映画館:サロンシネマ

とにかくくどい、実にくどい映画。(理由は後述)

第二次大戦中、ナチのスーパー暗号「エニグマ」の解読に取り組んだ天才数学者、アラン・チューリングの物語。昔から暗号解読の話は好きなので、実は天才数学者の「秘密」も既に知った上での鑑賞となった。

さて、戦争モノの読み物としては面白いのに、なかなか映画にならないのが「爆弾処理」と「暗号解読」だと思う。設定の緻密さと敵との知恵比べがなかなか映像にはしにくいんだろうな。

この映画も残念ながら、エニグマのシステムそのものについては触れられず、なんとなく「すごいシステム」で片付けられているのが残念。

ストーリーはチューリングの少年時代、第二次大戦中、戦後と3つのパートに別れて展開し、そこで暗号解読と天才数学者の秘密とその謎解きを同時に語ろうとするのだが、ちょっとそこに無理があった。情報量の多い話を多面的に語ろうとするから、ひとつひとつのセリフが説明調でクドイ。特にラストの解説文など長過ぎる。

このくどさにカンバーバッチがあの顔とエキセントリックなキャラクターで拍車をかける。疲れるなあ・・・。

映画後半で暗号解読に成功、それから情報の扱いを巡る駆け引きだの二重スパイ疑惑だのが始まり、その辺に「さすがイギリス。」とワクワクさせられるだが、そこから先にはあまり踏み込まないのも残念。それでなくてもいっぱいいっぱいのストーリーなので、その扱いは正解だったのかも。

一方、ディテールはすごく細かい。かなりリサーチしたことが画面中からにじみ出ている。この映画の見どころといってもいい。アカデミー賞美術賞ノミネートも納得。
特に初期のコンピューターであるボンブの歯車がカチカチと動き出すシーンやエニグマのスクランブラーを合わせるシーンなんて鳥肌もの。(エニグマは多分、本物。)隅っこに出ている当時のイギリス軍のトラックもええ感じ。
惜しむらくは予算の関係か、そのスケールの小ささ。ボンブもエニグマも暗号解読スタッフも映画の何十倍もあったらしいし、実際、半分手作業で暗号解読していたのだから、その人海戦術のスケール感は欲しかったところ。さも6人で全て解読できたかのような表現は、ある意味、名もなき先人に対して失礼だ。

キャスティング的にはキーラ・ナイトレイもいいのだが、やはり当代きってダブルのスーツとケースオフィサー役が似合うマーク・ストロングがすこぶるいい。独特の低い声で作戦を仕切るあたり、上から目線の嫌らしさがよく出ている。
あとはチャールズ・ダンス。「ラストアクションヒーロー」の殺し屋ベネディクトが最高に良かったですなあ。
あの頃から老けていたが、さすがにもう爺ちゃん。(で、中佐役って出世に見放された?)






題名:イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
原題:THE IMITATION GAME
監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、マーク・ストロング、チャールズ・ダンス
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シド・アンド・ナンシー

2015年03月20日 | ★★★☆☆
日時:3月18日
映画館:広島市映像文化ライブラリー

1997年に「シド・アンド・ナンシー」がリバイバルされた時、「オレもとうとう、リアルタイムで観た映画がリバイバルされるようになったか・・・。」と思ったこと覚えているが、それが遂にフィルムアーカイブでの特集上映で観ることになるのだから、ワタシも年をとった。

大学生の頃、アレックス・コックスとザ・ポーグスが大好きで、そこから派生してセックス・ピストルズとザ・クラッシュもよく聴いていた。一種の流行だったのかも知れないが、とにかくアレックス・コックスの映画は劇場にかかる度に見に行った。思い出すなあ。

それから四半世紀、何を間違えたか広島市映像文化ライブラリーでアレックス・コックス特集。昔の興奮が甦るじゃないか。一週間前から予習としてサントラからセックス・ピストルズ、グレート・ロックンロール・スゥインドル、ザ・ポーグスまで聴き直して、気分はすっかり80年代末期。エッチラオッチラと海賊盤を探して輸入レコード店を覗いていたあの頃、ソ連とかってあったなあ・・・。

「配給 ケーブルホーグ」のフィルムは傷だらけ。やはり25年は長かった。それでもほとんどのシーン展開を覚えている。当時、何回も劇場で見たもん。

公開当時、アレックス・コックスの映画のビデオはひと通り買っていたのだが、これは未購入。今回、DVDを買おうかとも思ったが、改めて当時買わなかった理由が再認識できた。

やはり、暗い。
あの頃、いろんな恋愛スタイルに憧れ、この映画も純愛映画として評価されているが、この姿はなりたいものではなかった。

シドとナンシーが出会い、セックス・ピストルズが世の中をひっかき回し、アメリカで空中分解して、シドが「マイウェイ」を歌う中盤までは映画も賑やかでも面白いのだが、そこからふたりがどんどん堕ちてダメになっていくのが、いくら純愛とは言え、救いがなく見ていてツライ。ジョニー・ロットンは「ロマンチックに描きすぎ」と批判したそうだけど、ホンマにどれだけひどかったのか。

ちなみにシドの「マイウェイ」の後にクラプトンの「いとしのレイラ」が聞こえてくるのは「グッドフェローズ」の影響。(笑)

さて、キャスティングの中で一番の出世頭と言えば、言うまでもなくゲイリー・オールドマン。ベートーベンやレオンのイカレ刑事を経て、今やバットマンのゴードン警視にジョージ・スマイリーとはねえ。
しかし、コックス映画常連で、今、一番よく見るのはボワリー役のザンダー・バークレーじゃないか。多くの映画での憎まれ役や「ニキータ」「メンタリスト」といったTVシリーズでお目にかかると、やっぱり嬉しい。






題名:シド・アンド・ナンシー
原題:SID AND NANCY
監督:アレックス・コックス
出演:ゲイリー・オールドマン、クロエ・ウェブ

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シェフ 三ツ星フードトラック始めました

2015年03月13日 | ★★★☆☆

日時:3月4日
映画館:サロンシネマ

俳優ジョン・ファヴローを意識したのは、世間一般と同じく「アイアンマン」のドライバー役だったのが、その時に「この人、「フレンズ」でモニカの恋人役だった!」と思い出したのだから、それなりに古くから知っていることになる。(笑)

それとは別に監督として意識したのは「ザスーラ」。その後、「アイアンマン」シリーズほかもキッチリ観ているのだが、俳優としての顔と監督としての名前が一致したのはごく最近だったように思う。

割とマルチな才能を発揮している割に、そのもっさりとした風貌のせいか、そんな風に感じない。逆にそこが強みなのかも知れない。

本作はそのジョン・ファヴローが製作・監督・主演を務めた完全「自主」映画。
一流シェフとして活躍するファヴローだが、メニューを巡ってレストランのオーナー(ダスティン・ホフマン)と衝突、さらに不本意なメニューを酷評したグルメブロガー(オリバー・プラット)に噛み付いて大喧嘩してしまい、店を後にする。
元妻の計らいでマイアミに行った彼は、フードトラックを手に入れ、自分が好きなように作れるキューバサンドイッチの移動販売を開始する。

当然のこととして、料理にまつわる場面が多いのだが、映画の8割は料理を作っているか、食べているかのシーン。肉汁たっぷりでこれが実に旨そう。中でもキューバサンドイッチとテキサスBBQがヨダレもの。行く前に腹ごしらえしていたのは正解だった。

マイアミからロスに向かうフードトラックの旅には、元助手のジョン・レグイザモ(全然老けない)と息子が同行し、SNSに強い息子は行く先々の様子を巧みに発信する。ツイッターで拡散する様をうまいこと映像化している。

元々、レストランオーナーとトラブった原因の半分は本人にあって、自己主張の強さに少々、辟易とする上、いざフードトラックの旅を始めても、トラブルひとつなくすべて順調。よそ者がいきなりフードトラックで商売始めたりしたら、地元のおにいさんたちと揉め事のひとつでも起きそうなものだが、全然、そんなこともない。フードトラックの飲食業って、そんな楽なのか?って、絶対そんなことないので、ちょっと釈然としない。

おまけに仕事一辺倒で、父親の仕事に興味を示す息子にもかなり厳しい態度で接する。職人ってこんなものかも知れないけど、やりすぎじゃない?

しかし、ご都合主義な故、見終わったらすごくハッピーな気分になれる。調理シーンもよく出来ているし、ノリのいい音楽もいいよ。






題名:シェフ 三ツ星フードトラック始めました
原題:Chef
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン
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ガガーリン 世界を変えた108分

2015年03月01日 | ★★★☆☆
日時:3月1日
映画館:イオンシネマ広島
パンフレット:A4版600円。



パブリシティを全然、目にすることがなく、まさかのノーマーク。新聞の劇場案内で最新情報を取るとは思わなかったのが、この映画。

ロシア製のガガーリン映画!旧ソ連の国策映画を彷彿とさせる映画なんて、ぜひとも観たいですよ。広島がスルーされなかったことに感謝。

映画の構造は極めてシンプル。人類史上初めて宇宙飛行を果たした宇宙飛行士ガガーリンの乗ったボストークの打ち上げから帰還までの間に、彼の半生や取り巻く人々がフラッシュバックで語られていく。

いきなりバイコヌール基地にドドーンとソビエトつ・・・もとい、そびえ立つR-7ロケット。無骨でカッコええ~。
そこにおもむろに登場する設計主任。つまりセルゲイ・コロリョフ。コロリョフがスクリーンに登場するだけで感動です。(←特殊)過去には「ライトスタッフ」で悪の黒幕的に描かれていましたが、当時は赤いカーテンの向こうの謎の人物だったので、全然、似てません。

そして、ガガーリンとチトフに加え、カマーニン中将、フルシチョフ、顔こそ出てきませんがアレクセイ・レオーノフも登場。ソ連宇宙開発史の黎明期を観ることができるだけで、もう満足。

宇宙飛行と言っても、そんな派手な事件があったわけではなく、さらに最後にはちゃんと帰還できるのが分かっているので、あとは両親や奥さん、同僚との話が同時進行ということになります。ソ連で人類初の宇宙飛行士に選ばれるような人物が破天荒な半生を送っているはずもなく、人民のお手本のような姿で映画のストーリーとしては全然、面白くありません。

が、他の国とは全然違う広大なロシアの景色やソ連時代のディテールや生活、無骨な父親を見ているだけで何となくうれしくなってしまいます。あと、徹底した秘密主義で事が進んだゆえ、何が起きているのか知っている人がごく僅かという、時代を感じさせる描写が興味深いです。

宇宙飛行をするボストークの映像なんて、CGとはいえ、マーキュリーやアポロとは全く違って、こいつがまたカッコいい。ほとんど手作業のようにアンテナが広がる様なんて、アンティーク感さえ漂います。ガガーリンが人類で初めて観た地球の景色なんて、思いっきり気持ちが入ってしまい、泣きそうになります。

いよいよ大気圏に突入し、乱暴な手法で着陸を果たす様は、パラシュートを空撮して、なかなかの迫力。

映画の趣旨はガガーリンの初宇宙飛行を描くことなので、その後、世界中を回ったことやスキャンダル、事故死などの残り半生は描かれません。

時にはこんな宇宙映画もいいなあ。

ところで、

ワタシのPC壁紙(笑)







題名:ガガーリン 世界を変えた108分
監督:パヴェル・パルホメンコ
出演:ヤロスラフ・ジャルニン、オルガ・イワノワ、ミハイル・フィリポフ
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シン・シティ 復讐の女神

2015年01月22日 | ★★★☆☆
日時:1月18日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版720円。

「デスペレード」「スパイキッズ」「マチェーテ」とロドリゲスお得意の勢い続編シリーズ。今回は「シン・シティ」の続編。

メインキャストが、今、映画館で顔を観たいふたり、ジョシュ・ブローリンとゴードン・ジョセフ=レヴィット!これだけでもイチオシなのに、パブのメインビジュアルはなんとパワーズ・ブース!!

2015年にパワーズ・ブースですよ!!「ブラボー小隊恐怖の脱出」「若き勇者たち」「ダブル・ボーダー」「ラストカウントダウン」「トゥームストーン」のバワーズ・ブース!!カッコいい!!
同郷のテキサス出身のシブイ俳優を優遇するロドリゲスはやっぱり最高!!

前作に引き続いて、ミッキー・ロークとブルース・ウィリスも出演。って、ふたりとも前作で死んでなかったか?ちなみに前者は前日譚、後者は幽霊で登場という体裁を取っている。

おまけに「ロング・ライダース」「ドク」のステイシー・キーチも出演。特殊メイクにサングラスで彼とは全然分からない。他にもレイ・リオッタなんかも出ているが、かなり脇役。顔ぶれだけ見ると昔のオールスター映画みたいで、ワクワクするなあ。

女優側では、タイトルロールでもあるジェシカ・アルバが一番目立つはずなのに、エヴァ・グリーンがひとりでスクリーンをかっさらう。「300 帝国の進撃」の時もすごかったけど、今回も進撃の悪女として大活躍。
何しろ、出演場面の半分はシースルーか下着で、残り半分は脱いでいる。もう、エヴァ・グリーンのオッパイは一生分観たよ。

ところが残念なことに肝心のストーリーが中途半端。シン・シティを巡る三つ巴の争いを期待していたのに、3つの独立した話として展開して、1つにまとまらない。それはそれで悪くはないのだが、前作でいいオチを付けた話に後日談なんていらないと思うんだがなあ。

そんな中で、やっぱりパワーズ・ブースが今どき珍しいくらいの悪役ぶりを発揮し、エヴァ・グリーンが絵に描いたような魔女を演じてくれる。この2人を見ているだけで充分。ちょっとしんどいけど。

こんな映画をコンスタンスに作り続けることができるロドリゲスは、映画の出来はともかく、商売人として優れたセンスとバイタリティの持ち主なんだなと感心させられるよな。






題名:シン・シティ復讐の女神
原題:SIN CITY A DAME TO KILL FOR
監督:フランク・ミラー、ロバート・ロドリゲス
出演:ジェシカ・アルバ、ミッキー・ローク、ブルース・ウィリス、パワーズ・ブース、エヴァ・グリーン
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サスペリア

2015年01月21日 | ★★★☆☆
日時:1月17日
映画館:サロンシネマ

2015年の観初め第2弾はこの映画。「マップ・トゥ・ザ・スターズ」にも増して全然、めでたくない・・・。

平成も27年になろうというのに、何をトチ狂ったのかサロンシネマ。しかも終わってからアルジェント研究会代表 矢澤利弘(広島経済大学教授)のトークショーまである。そりゃ、行きますよ。もちろん。(笑)

そんなイベントはガラガラだろうと思いきや、何と観客が50人近く。いつの間にか広島全体もおかしくなりつつあったのか。ちょっと安心。

狂っているのは、たぶん映画そのものも同様。
一発でインプットされてしまう映像のセンスは素晴らしいし、撮影のこだわりも尋常じゃない。しかも本編に関係なかったりする。さらに、何度観ても、よく分からない箇所もある。

ジェシカ・ハーパーの眼力演技も時として大仰すぎて、怯えるのを通り越して笑いさえ出てしまう。

こういったところ全てが、今のハリウッド映画にはないアルジェント映画の魅力なんだなあ、と改めて感じさせられた。

上映後のトークショーでは「サスペリア」「インフェルノ」「サスペリア・テルザ」の魔女3部作には元々、原作となる詩があり、その作者が阿片常用者であったため、映画そのものも夢うつつのような映像とストーリー展開となっているとの指摘。なるほどなあ。

ロジャー・コーマンは実際にLSDを体験して「白昼の幻想」を撮ったそうだけど、アルジェントも阿片を常用してみたのだろうか。(だとしても、何の違和感もないのだが・・・)

これまで東京で開催されてきたダリオ・アルジェント研究会が広島でも初開催されるので、何はともあれ参加することにしたのでした。

ところで、「サスペリア」が初上映された頃は映画館といえば市内中心部であった時代。シネコンで再上映されるより市内中心部の広島東映から引き継がれたサロンシネマに凱旋できたなんて、ちょっといい話。(どこが?)


劇場で販売されていたアルジェントにちなんだオリジナルドリンク「ディープ・レッド」。
「「ディープ・レッド」こと「プロフォンド・ロッソ」は「サスペリアPart2」でしょ。」と無粋なツッコミを入れそうだった。






題名:サスペリア
原題:Susperia
監督:ダリオ・アルジェント
出演:ジェシカ・ハーパー、ステファニア・カッシーニ
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マップ・トゥ・ザ・スターズ

2015年01月03日 | ★★★☆☆
日時:1月2日
映画館:サロンシネマ

2015年の観初めはこの映画。全然、めでたくない・・・。

デビッド・クローネンバーグが描くハリウッドに澱む人間模様。物語は伝説的女優だった自分の母親にキャスティングされることで再起を図ろうとする落ち目の女優(ジュリアン・ムーア)と、呪われた過去を持つ娘(ミア・ワシコウスカ)とそのセレブ一家(ジョン・キューザックほか)が少しずつ絡み合いながら展開していく。

前振りもなくセリフの中に登場人物名がバシバシ出てきて、最初は混乱するが、話が進むにつれ、それがひとつずつ結びついて、名声と成功(と失うことへの恐怖)に毒された人間模様が浮かびあがる。

セレブ一家の長男は子役で成功した13歳だが、すでに薬物中毒のリハビリを受けていて、行動も傍若無人。心の底から「痛い目に遭え」と願ってしまう。

その姉である娘はピュアなのか、おかしいのか、意味深な奇行で、周囲に災厄を振りまく。顔も辛気臭く、「アリス・イン・ワンダーランド」のヒロインだったのが不思議なくらい。本気で知り合うとやっかいで、できるだけ距離をおきたいタイプ。

その彼女と知り合う女優が大好きなジュリアン・ムーア。感情的に不安定な口やかましいオバハン役はいつものようにハマリ役だ。(この手の役はあまり見たくないけど。)下着姿になってもヌードになっても全然きれいじゃないのに、何か惹かれてしまう。
この映画で鮮明に覚えているのが、彼女がトイレで力むシーンとかエージェントと寝るシーンとかライバル女優の幼い息子が事故死したことで役を取れたことに歓喜するシーンといったキワモノめいた場面なのだから困ったもんだ。

彼らは過去の亡霊に翻弄され、やがて当然のことのように悲劇的な結末を迎える。(やがて劇中映画を「呪われた作品」にしていくゴシップ報道の加熱ぶりを想像してしまう。)

しかし、さすがにこんな登場人物たちには感情移入のしようがない。環境が違いすぎて自分に置き換えるどころか、周りにもここまで狂った人間はいない。ジュリアン・ムーアの演技を理解しようにも対比する基準を知らないのだからどうにもならないが、ハリウッドには評価できる人が多いってことだね。

ところで、びっくりするような肥満体で登場したキャリー・フィッシャー。SWの最新作にも登場しているそうだけど、まさかジャバ・ザ・ハットではあるまいな。(どんなことになるのか本気で心配。)

ちなみにサロンシネマの壁面を飾る宮崎祐治のイラスト。
今回はこれとこれ。










題名:マップ・トゥ・ザ・スターズ
原題:Map to the Stars
監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック
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広島市映像文化ライブラリー「MoMAニューヨーク近代美術館映画コレクション」

2014年12月14日 | ★★★☆☆
今月の広島市映像文化ライブラリーの特集は「MoMAニューヨーク近代美術館映画コレクション」。かの「続・荒野の用心棒」も収蔵されているというから、上映にちょっと期待したけど、さすがにそれは無いよな。

暗黒の恐怖(Panic in the Street)
1950年の作品で、肺ペストの密入国者が殺人事件の被害者になったことから、ニューオリンズの警察と公衆衛生局が事件の真相を追うというもの。
罹患者の足跡を追うが、密入国かつ殺人事件なので捜査が難航するという構成が見事で、「今や飛行機で数時間でニューヨークにたどりつけば、爆発的に感染拡大する。」というセリフが現在のエボラと見事にかぶっている。
リチャード・ウィードマークの公衆衛生官とポール・ダグラスの刑事のコンビもバディ映画の王道である。エンディングの二人の別れもすがすがしい。

また、演劇手法が取り入れられ、とにかく1シーン1ショットが多いのも見どころ。映画的なスリリング場面だけなく、日常シーンでも多用されているのが面白い。

殺人事件の黒幕であるヤクザもの役が、映画デビューしたジャック・パランス。この時、若干31歳。迫力があって、全然若くない。(笑)逆算したら「ガンマン大連合」のころには50歳過ぎなのだから、いい役者さんだよなあ。
余談ですが、顔とは裏腹に心優しいジャック・パランスは、砂漠のロケ時に「掃除する人に申し訳ないから。」という理由でトレーラーハウスのトイレを使用せず、屋外で用を足していたそう。大好きなエピソードの1つです。

監督:エリア・カザン
出演:リチャード・ウィードマーク、ポール・ダクラス、ジャック・パランス

スウィート・スウィートバック(Sweet Sweetback's BaaDasssss Song)
こういったブラックスプロイテーション作品が市映像文化ライブラリーにかかるというのもスゴいものがあるね。(雰囲気は横川シネマ。)
セックスマシーンの黒人が人身御供で警察に差し出されそうになるが、白人警官の横暴なやり方に怒りが爆発し、メキシコを目指して逃亡する。(白人警官の暴力に人民の怒りが爆発するって、今も何ら変わっていないなあ。)
ストーリーも画面も70年代の真髄なのがとても楽しい。街に出たカメラが映し出すロスの街並みや風俗、雰囲気にゾクゾクしてしまう。
ストーリーは一種のロードムービーなのだが、斬新な映像表現に、何が起きているのか想像力と映画的経験でカバーしているところも多々あります。(笑)

監督:メルヴィン・ヴァン・ピープルズ
出演:メルヴィン・ヴァン・ピープルズ、サイモン・チャックスター、ヒューバート・スケールズ

イタリアン・アメリカン(Italianamerican)
マーティン・スコセッシが両親と祖父母がたどったイタリア系移民の歴史ほかを語らせるというドキュメンタリー。
映画監督の両親といっても、ふたりとも20年後に「グッドフェローズ」に出演しているから、初めまして感はないのだが。(笑)

話の中身そのものはさほど面白くないのだが、とにかくよく喋る二人が楽しい。まあ、スコセッシ映画のキャラクターそもののなのだ。(当然、時代的にはこちらが先。)

ミートボールの作り方にこだわるあたりとか、人の名前が多過ぎて誰が誰か分からないエピソードとか、「グッドフェローズ」のネタ元の片鱗が垣間見えるあたりも興味深い。

ところでこの作品、上映時間は48分と短め。でも、鑑賞料は先の2作品と同じって、割が悪いなあ。(笑)

監督:マーティン・スコセッシ
出演:キャサリン・スコセッシ、チャールズ・スコセッシ
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泣く男

2014年11月02日 | ★★★☆☆
日時:11月1日
映画館:バルト11

アジョシ」のイ・ジョンボム監督による殺し屋アクション。(「アジョシ」を観たのはついこないだだと思っていたが、すでに3年前。)この手の韓国映画はサロンシネマが主要劇場だったので、バルト11で観るとハリウッド映画を見ているような錯覚を受けてしまう。

チャン・ドンゴンは中国人マフィアのお抱え殺し屋ゴン。開幕早々、アメリカでロシア人マフィア一味を皆殺しにしてしまうが、現場に居合わせた少女も射殺してしまう。
色々な事情があって、その少女の母親殺害も指示され、韓国に向かうが、その母親と自分を捨てた母親をダブらせるうちに情が移ってしまい、逆に彼女を守る側に立つ。

【以下ネタバレあり】

その色々な事情というのがクセもので、元々、ロシア人マフィアと一緒に始末された韓国人会社員がいるのだが、彼は中国人マフィアがマネーロンダリングを依頼していた韓国企業の社員で、さらに誤殺された少女の父親。
この会社員が直前に会社の同僚である妻(=誤殺された少女の母親)にメールをしていたため、殺害リストに上がってしまう。(なんと盛りだくさんな人間関係。)

この韓国企業は表向きはM&Aを行うまっとうな会社に見せているが、裏は真っ黒。一連の殺人事件から警察の特捜部も介入し、さらに企業内でも殺人の実行と秘密口座のデータを巡って暗闘が繰り広げられる。

と、書いている方でさえ面倒くさいサイドストーリーが複雑すぎて、背景描写に時間が取られてしまっている。殺し屋と母親の不幸な物語というシンプルな話に、なぜ力点を置かない?

ところが、「アジョシ」の時に書いたブログを読み返したら、全く同じことを書いていたよ。そういう作風なんだね。

中盤以降も同じで、チャン・ドンゴンの行く先々は血を血で洗う死体の山。(本当)銃声が重々しく派手な銃撃戦に加え、刃物での殺害シーンも多い。まだ生温かい血の海を裸足で歩く描写なんて、なかなか嫌だなあ。

さらに韓国の狭い建物を生かした肉弾戦は見もので、ハリウッド映画では見られないシチュエーションなだけに新鮮。

クライマックスは韓国企業のビルで「ダイ・ハード」化。「ダイ・ハード」に限らず「フェアゲーム」とか「沈黙の戦艦」「ハードボイルド」など全般にどこかで見たような場面が多いのはちょと難。

ストーリーの複雑さとその行き当たりばったり感、チャン・ドンゴンのもったいぶった演技が無ければもっと良かったのですが、後者はこの映画のキモですからねえ・・・。






題名:泣く男
原題:No Tears for Dead
監督:イ・ジョンボム
出演:チャン・ドンゴン、キム・ミニ、ブライアン・ティー、カン・ジウ
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