日時:7月10日
映画館:八丁座
ワタシは他人事とは思えないダメな中年男の恋愛モノが好きだったりする。「恋愛小説家」とか「サイドウェイ」「結婚できない男」なんてお気に入りの作品だし、ちょっと違うが若き日のアンジェリーナ・ジョリーが出演した「サイボーグ2」のエンディングも好きだったりする。
手紙の代筆業のホアキン・フェニックスは結婚に失敗し、出会い系サイトで心の隙間を埋める毎日。そんな時、会話型インターフェースを持つ新型の人工知能型OSを購入し、サマンサを名乗るこのOSと会話を続けるうちにOSとの恋愛感情が芽生えるようになる。
「グラディエーター」の頃から顔が一回り大きくなったかのようなホアキン・フェニックスのダメ中年演技が、まず素晴らしい。
不眠に悩み、手紙の書きぶりは見事なのだが、それを対面で口にすることは出来ない。人の目を見て話せないタイプなのだが、抱擁のぬくもりは欲しい。で、気の利いた会話だけをしてくれるOSにのめりこんでいく。いやぁ~、もう一人の自分を見るかのようで、とうてい他人事とは思えない。(笑)
さらに、時代設定的には近未来のはずなのだが、どこか70年代~80年代を思わせるフューチャー・パストなデザインで構築された世界感が素晴らしい。PCの背中が昔のTVのような冷却穴の開いた合板だったり、デバイスがスチールの枠に合皮仕上げだったり、ロケ地に上海を使ったりと小技が効いている。
ところが映画としては、最後まで乗ることが出来なかった。
【以下、ネタバレあり】
これまでもスパイク・ジョーンズの映画って、「マルコビッチの穴」しかり、「かいじゅうたちのいるところ」しかり、観る前はかなり期待値が高いのだが、結局最後まで乗れなかったことが多い。結局、本作も最後まで消化不良感が残った。
元々、語り口が真面目な監督なので、傍目には滑稽な主人公が「痛いけど笑える」話に見えない。
さらにもっと根本的な原因、いきなりオチを書いてしまうが、この人工知能がおそらくネットを介して、恋愛知識を入手し、他にも多くの人間と付き合っていたことが判明する。主人公は裏切られたと落ち込むのだが、いやいや、ちょっとでもネットに興味があったら、それぐらいは折込済みでしょ?と思ってしまう。現在のOSでさえ、勝手にアップロードしてくれるではないか。(これがプロダクトであるOSではなく、プロトタイプの人工知能だったりしたら、まだ信用できたかも知れない。)
ここ20年間、攻機とクサナギモトコの活躍を見てきた身としては、スタンド・アローンで存在して自分だけの相手をしてくれる人工知能なんて、そもそも考えられない。さらに言えばオチでさえ予想できそうなもんである。「ネットは広大だわ。」
映画の途中から「ドラえもん」のいたわりロボットを思い出したが、日本では小学生でさえ自分に良い事ばかり言ってくれる機械は自分を幸せにしないと知っているのに、この主人公像で恋愛が成立し得ると思っているかのような製作陣はピュアだと思うし、この脚本に賞を与えたアカデミー会員はもっとピュアなのだと思うよ。
人間なんて自分以外の人のことなんて決して理解できないと思うし、だからこそ理解しようと努力するのだと思う。人付き合いとか恋愛とかもっと言えば社会で生きていくこと自体がその繰り返しで、いくら技術が発達してもそこは避けられないと再認識させられたかのようだ。(だから、アカデミー賞を取ったのかな?)
映画館:八丁座
ワタシは他人事とは思えないダメな中年男の恋愛モノが好きだったりする。「恋愛小説家」とか「サイドウェイ」「結婚できない男」なんてお気に入りの作品だし、ちょっと違うが若き日のアンジェリーナ・ジョリーが出演した「サイボーグ2」のエンディングも好きだったりする。
手紙の代筆業のホアキン・フェニックスは結婚に失敗し、出会い系サイトで心の隙間を埋める毎日。そんな時、会話型インターフェースを持つ新型の人工知能型OSを購入し、サマンサを名乗るこのOSと会話を続けるうちにOSとの恋愛感情が芽生えるようになる。
「グラディエーター」の頃から顔が一回り大きくなったかのようなホアキン・フェニックスのダメ中年演技が、まず素晴らしい。
不眠に悩み、手紙の書きぶりは見事なのだが、それを対面で口にすることは出来ない。人の目を見て話せないタイプなのだが、抱擁のぬくもりは欲しい。で、気の利いた会話だけをしてくれるOSにのめりこんでいく。いやぁ~、もう一人の自分を見るかのようで、とうてい他人事とは思えない。(笑)
さらに、時代設定的には近未来のはずなのだが、どこか70年代~80年代を思わせるフューチャー・パストなデザインで構築された世界感が素晴らしい。PCの背中が昔のTVのような冷却穴の開いた合板だったり、デバイスがスチールの枠に合皮仕上げだったり、ロケ地に上海を使ったりと小技が効いている。
ところが映画としては、最後まで乗ることが出来なかった。
【以下、ネタバレあり】
これまでもスパイク・ジョーンズの映画って、「マルコビッチの穴」しかり、「かいじゅうたちのいるところ」しかり、観る前はかなり期待値が高いのだが、結局最後まで乗れなかったことが多い。結局、本作も最後まで消化不良感が残った。
元々、語り口が真面目な監督なので、傍目には滑稽な主人公が「痛いけど笑える」話に見えない。
さらにもっと根本的な原因、いきなりオチを書いてしまうが、この人工知能がおそらくネットを介して、恋愛知識を入手し、他にも多くの人間と付き合っていたことが判明する。主人公は裏切られたと落ち込むのだが、いやいや、ちょっとでもネットに興味があったら、それぐらいは折込済みでしょ?と思ってしまう。現在のOSでさえ、勝手にアップロードしてくれるではないか。(これがプロダクトであるOSではなく、プロトタイプの人工知能だったりしたら、まだ信用できたかも知れない。)
ここ20年間、攻機とクサナギモトコの活躍を見てきた身としては、スタンド・アローンで存在して自分だけの相手をしてくれる人工知能なんて、そもそも考えられない。さらに言えばオチでさえ予想できそうなもんである。「ネットは広大だわ。」
映画の途中から「ドラえもん」のいたわりロボットを思い出したが、日本では小学生でさえ自分に良い事ばかり言ってくれる機械は自分を幸せにしないと知っているのに、この主人公像で恋愛が成立し得ると思っているかのような製作陣はピュアだと思うし、この脚本に賞を与えたアカデミー会員はもっとピュアなのだと思うよ。
人間なんて自分以外の人のことなんて決して理解できないと思うし、だからこそ理解しようと努力するのだと思う。人付き合いとか恋愛とかもっと言えば社会で生きていくこと自体がその繰り返しで、いくら技術が発達してもそこは避けられないと再認識させられたかのようだ。(だから、アカデミー賞を取ったのかな?)
題名:her 世界でひとつの彼女 原題:her 監督:スパイク・ジョーンズ 出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、スカーレット・ヨハンソン |
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