kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

スティーブ・ジョブズ

2016年02月15日 | ★★★☆☆
日時:2月14日
映画館:バルト11

アップルのスティーブ・ジョブズの強烈な個性を、ダニー・ボイルが独特の手法で描く。

彼の生涯を通り一遍に描くのではなく、マッキントッシュ、NEXT、iMacの3回の商品発表の場を舞台とし、あとは登場人物の会話と回想で映画を成立させる。映画そのものが演劇舞台のようであり、大仰な音楽の使い方はオーケストラボックスで実演されているかのようだ。

登場人物も絞り込んで、関係者たちを女性広報担当重役のホフマン、かっての事業パートナーであるスティーブ・ウォルズニアック、ジョン・スカリー、アンディ・ハーツマン、娘のリサの5人に集約し、彼らとの会話を通して、ジョブズの人となりを浮きだたせていく。(ウォルター・アイザックスのベストセラー「スティーブ・ジョブズ」を読む限りでは発表の場で劇中で描かれるようなトラブルがあったかどうかはわからない。)

ジョブズを演じているのは頭大きい、足短い、ナニがデカイ、ミヒャエル・ファスベンダー。はっきり言って、全然ジョブズに似ていないのだが、高慢で人間味に乏しい反面、激しやすいジョブズにふさわしいキャスティングだ。(ファスベンダーの役って、そんな役ばかりのような気がする。「イングロリアス・バスターズ」とか「X-メン ファースト・ジェネレーション」とか「プロメテウス」とか)もっとも引き込まれるような演技のおかげで先の著作に記されていた人間像が再現されている。

ホフマンを演じるのはケイト・ウィンスレット。80年代の大柄な眼鏡をしているから彼女と気づかないのだが、ビジネスパートナーと男女の感情の微妙な距離感が切ない。

全体に基礎知識がないとわかりづらいのだが、多分、基礎知識があっても分かりづらい構成だろう。多分、この映画が描くのはアップル=ジョブズのビジネス成功譚ではなく、悩める一人のややこしい男なんだろうな。逆説的だが、アップルの基礎知識がない人の方が飲み込みやすい映画かも知れない。(そもそもアップルに興味のない人が観客になるのかどうか疑問だが。)

面白いと感じたのは、大胆な手法・語り口の映画であるにも関わらず、製作サイドで一定の興業成績が見込めると判断されたであろうということ。それはやはりこれがジョブズの物語であったからであり、アメリカ人にはジョブスの人物像とサクセスストーリーが日本以上に認知されていることが見えるような気がした。ビジネスパーソンではなく、現代の偉人として位置づけられているのだろうな。

ところで、クリスアンを演じたキャサリン・ウォーターストン。最近見た覚えがあるのだが、どうしても思い出せない。劇場の帰り、ハワイアンパンケーキの店の前で「もっとパンケーキを!」とつぶやいて思い出した。先日見た「インヒアレント・ヴァイス」に出てたんだ。






題名:スティーブ・ジョブズ
原題:Steve Jobs
監督:ダニー・ボイル
出演:ミヒャエル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズ
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