神奈川絵美の「えみごのみ」

タフでなくちゃね その1 -鈴木紀絵展-

芹沢けい介最後の直弟子である
型絵染め作家の鈴木紀絵先生が、横浜にいらっしゃると聞いて……。


久し振りに、元町のじざいやさんへ伺った。


レンズが広角気味ということもあり、
小柄な先生の横で、何だかとても巨大な人みたいなワタシ


「あれっ、偶然……!」
私のミュージカルの師匠、Sさんとお店でバッタリ。
この日のSさんは

シックな立涌の織の着物に、
キャンディカラーの千鳥が可愛い染帯。


会期は終わってしまいましたが、
コチラのサイトから、今回の展示作品を見ることができます。
(じざいやさんのサイトからもリンクあり)


鈴木先生とお会いするのは、6年振りか、7年振りか。
少し前に腰椎の圧迫骨折を…という話も聞いていたが、
声には相変わらずハリがあり(お肌もキレイ!)
作品のお話、たくさん聞かせてくださった。


ネコ好きにはたまらないこの帯地は、
右の白い線描きの花に注目。
何と、真珠で描いたものだそう。
「真珠の粉を顔料に混ぜて、筒描き※したの」
金や銀では目立ち過ぎる、かといって白では平坦になり面白みがない。
そこでパール…というわけ。
まるで、学生のとき美術で経験したエッチングみたいに、
繊細な線がほのかに浮き上がって見える。

※筒描きとは、紙の筒に染料を入れ、ケーキのクリームのように絞り出しながら
 描く技。


型絵染作家として知られている鈴木先生だが
このように絞りを多用するのも特徴。
ここでは、絞った中の2つの柄に注目を。
統一感があるが、同じではない。
普通、型絵染めというと、ある程度の長さの型紙をつくり、
それを帯地なら3mちょっと繰り返すのだけど……?
「私のは、そうではなくて、花や葉などパーツごとに型をつくるんです」
ハンコみたいに……
「そう、それをいろいろ組み合わせて柄をつくるの。
だから同じ柄を繰り返す、ということがないんです」


伺うほどに、たくさんの技が1つの作品に惜しみなく
使われているのがわかって、ただただ感心するばかり。



こちらの紬地の帯地、矢車玉(やしゃだま)という
松かさのミニ版のような植物で染めたグレー地が印象的だが……。
「(型絵染になっている)動物や植物の部分は、
地がグレーのままだと色が濁ってしまうので、一度白く塗るんです。
それから顔料で染めると、このように鮮やかな柄になります」

さらに、
この写真の右、斜め方向に伸びているのは腹の部分になるが
「お腹にくるところは、柄が横にならないよう、
染めるときに向きを変えています」
そして、帯はすべての作品が、全通というから驚きだ。
一つの世界がつながっている方がいいと思って…
というようなことをおっしゃっていた。

(画像は鈴木先生が毎年出しているカレンダーと上記サイトより)


鈴木先生は旅行も大好きで、
「花はラオスに咲いていた沙羅双樹をヒントに、
リスは、そうそう、インドに多いのよ」と、楽しそうにお話くださる。

-ラオスはね、絹織物が盛んで、お正月には必ず、
新しい服を織って着るのが習わしなんですって-なんて話も。


御年85歳、まだまだ現役。
国展にも、ほぼ毎回出品していて
「(つくるのに)一年がかりなのよね」と言いながらも、
作品創りが楽しくて楽しくて仕方ないと弾ける笑顔。
夢の世界で遊ぶかのような作風は、先生のそんな気持ちのあらわれなのだろう。

好きなことに対して無邪気であり続けることは、
決して子どもじみてはいないんだな、と嬉しくなる展示でした。
先生、またお話聞かせてくださいね。

コメント一覧

神奈川絵美
straycatさんへ
どういたしまして
思いがけずお会いできて、とっても嬉しかったです
先生が創りだす植物や動物たち、みな活き活きしていて、
生地から飛び出てきそうでしたよね。
技術を余すことなく注ぎ込んで、ただ表面的に可愛いだけではなく、心に余韻を残す作品ばかりだったと思います。
やはり、実物、本物を観るっていいですよね…。
straycat
絵美さま♪

お写真ありがとうございました!
良い思い出になりました。
私、みなとみらいで映画を観てから、ふと思いたって立ち寄ってみたのです。
もう、力強さと可愛らしさと生き生きした作風に驚きでした。
絵美さんがレポートして下さった細かい技法の説明を読みながら、そうそう、そうだった・・と思い返しています。
神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
おっしゃる通り、絵本のようですよね。
こうして、作品の一部をカットしても
一枚の絵として成り立っていますよね。

御年は私も最近、フェイスブックの方で知りました。
でもバイタリティに溢れていて、私の方が負けそうなほどです…
Tomoko
この先生の作品はいつも詩とメルヘンに溢れているので、染織ではなく絵本の原画を見てるような気がします。
絵美さんのこのブログで、お名前と作品がようやっと一致し、しかも御歳85でいらっしゃることを初めて知りました~。
間違いなく生涯現役、これからもお元気でご活躍なさることでしょうね、その創作の姿勢、ぜひあやかりたいものです~。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは
>大人でありながら素直で無邪気
そうですよね~。私の座右の銘(というほどではないのですが、口ぐせのようなもの)の一つに
「好きなことくらいは無邪気に語りたい」というのがあって、
このブログもそんな思いで書いていることが多いです(まあ、実際書けているかどうかはともかく)。

ご縁のある作家さんたちはみな、
こうした大人の無邪気さがあって、とても刺激を受けます
グレーのこの帯、良かったですよ~sognoさんへのコメントにも書きましたが、いろんな着物を受け止めてくれそう
りら
まずは見出しの言葉にうんうんうん!っと。
「無邪気であり続けることは、決して子どもじみてなんかいない。」
そうなんですよねぇ。
キチンと大人でありながら素直で無邪気、そういう人に憧れます。

私もグレー地の帯が目に付いて離れませんでした。
なんと楽しく可愛いのに、シックなんでしょう!

とても手の届かぬお宝ですが、こうしてご紹介いただくと目の肥やしになり、有難く嬉しいです~♪
神奈川絵美
香子さんへ
おお、WEBで確認しましたが確かに色合いが似ていますね~。Sさんは「シャガールみたい」と言っていましたが、そんなテイストですよね
Sさんのスッキリ後姿、見習いたいです~。筋トレ励まなくては
香子
トップ画像の色柄が
KゃりーPみゅ×2ちゃんの振袖っぽい
と思ってしまいました。
感性がお若いんでしょうねえ♪
若い感性で熟練の技…最強ですね

Sさん、お仕事忙しいのでしょうね。
お痩せになられたみたいよ。
神奈川絵美
sognoさんへ
こんにちは
私も型絵染め、大好きです
鈴木作品は、半衿しか持っていないけど…。
このグレーの紬地、市松のように四角に絞るのも
技術が要るそうです。
地色はシックなのですが、広げてみると柄が鮮やかで、
とても可愛かったですし、紺や黒、白、ピンク系など、いろんな地色の着物に合いそうでした
sogno
型絵染めと聞くとうずうずしてきます。大好きなんです。
グレーの紬地の帯、説明を何度も読ませていただきました。説明の後でもう一度じっと見ると、動物や植物がいきいきと描かれている感じがしてきましたよ。
良い話しを聞かせていただきました。
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