秋の夜長に、イソップ物語です。
イソップ物語246「呑んだくれと女房」
呑んだくれの亭主をもつ女がいた。女はその病気を止めさせたい一心で、こんな細工を思いついた。亭主が酔って正体もなく眠りこけ、死人のように何も感じないのを見すまして、肩に担いで共同墓地まで運び行き、置き捨てにして帰って来たのだ。
亭主が酔いから覚めた頃を見計らって、墓地に出かけて戸を叩くと、亭主の声で
「戸を叩くのは誰だ」と言う。女房が、
「わしは死人に食物を運んできた者じゃ」と答えると、
「おい、おっさん、食うものは要らぬから飲むものを持って来い。飲め、ではなく、食えだなんて、殺生だ」と亭主。女は胸を叩いて言うには
「やれ、情けない。折角の思いつきも水の泡だ。あんたという人は、ちっとも賢くならないばかりか、前よりひどくなった。あんたの病気は慣性(ならいせい)となってしまった」悪い行いを永く続けていてはいけない、ということをこの話は説き明かしている。その中に、嫌でも身についた習慣になってしまうから。
イソップ物語258「病気のライオンと狼と狐」
ライオンが老いて病み、洞穴の中に臥せっていた。狐を除くすべての動物が王様の見舞いにやってきた。狼はチャンス到来とばかり、ライオンの前で狐を糾弾して、百獣の王を尊敬していない、それゆえ見舞いにも来ない、と言った。ちょうどそこへ狐もやって来て、狼の言葉の最後のところを聞きとった。ライオンは狐を睨んで吼えかかったが、狐は弁明の機会を願い出て言うには
「ここに集う者の中、私ほど役に立つ者がありましょうか。八方走りまわり、医者から王様の治療法を尋ね、そして見つけたのですから」
すぐに治療法を言ってみろ、とライオンが命じると、狐の言うには
「狼を生剥にして、まだ温かい皮で身を包むのです」
たちまち狼は骸となって横たわった。狐が笑って言うには、
「だから主君に対しては、悪意へとけしかけてはならない。善意へと動かさねば」人に企む者はわが身に企みを引き寄せる、ということをこの話は説き明かしている。
自戒
特に、258はいいなぁ