間が空きましたね、ごめんなさい。
その7 の続きです。
引用部は、○印・・・毎日新聞連載時 ●印・・・単行本 で区別します。 異なる部分は下線を引きます。 その後、変更部分を指摘する、という形式です。
メインは加納祐介さんに関連するところですが、大空翼くんには岬太郎くんが欠かせないように、加納さんには合田雄一郎さんが欠かせない部分が出てくるので、その点も取り上げている場合があります。
ついでに加納祐介さんに該当する固有名詞・名詞・単語等は強調しています。
○一方、その様子に判事の友人は何かしら危うさを覚えたか、自身もサドの作品に供された会田の表紙絵がお気に入りのくせに、今回ばかりはふだん口にしない苦言を呈して、珍しくケンカになる。しかし、少し時間をおいてそれぞれ頭を冷やしてみると、どちらも確たる理由はない、なにがしかの熱病のような気分の伝染だったと気づいて逆に落ち着かない心地になったりもしたことだ。 (第6章 15)
●一方、その様子に判事の友人は何かしら危うさを覚えたか、自身もサドの作品に供された会田の表紙絵がお気に入りのくせに、今回ばかりはふだん口にしない苦言を呈して、珍しくケンカになる。しかし、少し時間をおいてそれぞれ頭を冷やしてみると、どちらも確たる理由はない、なにがしかの熱病のような気分の伝染だったと気づいて逆に落ち着かない心地になったりもする。 (単行本p319 42)
【相違点】
○心地になったりもしたことだ。
●心地になったりもする。
○●そうして話しながら、合田はちょっと時計を見る。このあと定期検診に来ているはずの判事を迎えに病院へ行く予定だが、近ごろ体調がすぐれないのはステロイド剤の副作用ばかりではないのかもしれない。あれこれ考えだすと、気が散って授業に集中できない。 (第6章 22) (単行本p330 44)
相違点はありません。
○●合田が警大を出て友人のいる病院へ向かったころ、多磨霊園では、浅井隆夫が妻の見舞いを理由に管理事務所を早退して霊園の正門を出る。 (第6章 23) (単行本p330 44)
相違点はありません。
○午後三時に警大を出、あと十メートルで榊原記念病院に着くというときに、そこに定期検診に来ているはずの男がよこしたメールに<築地の国立がんセンターに来ている。鮨桂太で会える?>とあったのだ。国立がんセンターと、機会があったら近々行こうと話し合ったばかりだった築地の新しい寿司店の名前が並んだ短い文面が、液晶画面でふわりとたわんだ。それがよくよく迷った末のことなのか、いつもの天然なのか、もはやどちらであっても大差はない。もつれる指で<すぐに行く>とだけ返信して築地の寿司店へ飛んでゆくと、そこにはわりに清々した表情の当人がいて、どうも濾胞性リンパ腫とかいう病気だそうだ、でも悪性度は低いし、まだ1期だから当面死ぬことはない、放射線治療はするが長い入院の必要もない、などと言う。ともかくこれで建設アスベスト訴訟を放り出さずにすむ、あれだけはやりたかったから、と。 (第6章 26) (単行本p335 44)
●夕刻に警大を出、あと十メートルで榊原記念病院に着くというときに、そこに定期検診に来ているはずの男がよこしたメールに<築地の国立がんセンターに来ている。鮨桂太で会える?>とあったのだ。国立がんセンターと、機会があったら近々行こうと話し合ったばかりだった築地の新しい寿司店の名前が並んだ短い文面が、液晶画面でふわりとたわんだ。それがよくよく迷った末のことなのか、いつもの天然なのか、もはやどちらであっても大差はない。もつれる指で<すぐに行く>とだけ返信して築地の寿司店へ飛んでゆくと、そこにはわりに清々した表情の当人がいて、どうも濾胞性リンパ腫とかいう病気だそうだ、でも悪性度は低いし、まだI期だから当面死ぬことはない、放射線治療はするが長い入院の必要もない、などと言う。ともかくこれで建設アスベスト訴訟を放り出さずにすむ、あれだけはやりたかったから、と。 (第6章 26) (単行本p335 44)
【相違点】
○午後三時に
●夕刻に
○まだ1期だから
●まだI期だから
数字の表記の違いだけですが。ちなみにここでは、ローマ数字は環境依存文字で機種によっては文字化けするので、アルファベットのIで代用しています。ご了承ください。
○口調は相変わらずだが、誰にも言わずにひとりで検査を受けたぐらいだから、ひとりで悶々としてはいたのだろう。そう思うと胸が詰まる一方、どこまでも自分の始末は自分でつけるというのではなく、身近な人間をひょいと頼ってくるこの友人と、そうして頼られている自分の間に、四十年近い年月がつくりあげたなにがしかの情合いがあるのをいまさらながらに発見し、こいつも俺も真に孤独ではないということだろうと、合田は苦笑いを洩らしてもいた。否、体調不良の原因が判明したとはいえ、悪性リンパ腫には違いない以上、真新しい寿司店の晴れやかな空気のなかでは、刑事と判事判事の二人組はやはりちょっと孤独ではあった。 (第6章 26) (単行本p336 44)
●口調は相変わらずだが、誰にも言わずにひとりで検査を受けたぐらいだから、ひとりで悶々としてはいたのだろう。そう思うと胸が詰まる一方、どこまでも自分の始末は自分でつけるというのではなく、身近な人間をひょいと頼ってくるこの友人と、そうして頼られている自分の間に、四十年近い年月がつくりあげたなにがしかの情合いがあるのをいまさらながらに発見しては、こいつも俺も真に孤独ではないということだろうと、合田は苦笑いを洩らしてもいる。否、体調不良の原因が判明したとはいえ、悪性リンパ腫には違いない以上、真新しい寿司店の晴れやかな空気のなかでは、刑事と判事の二人組はやはりちょっと孤独ではあったかもしれない。 (第6章 26) (単行本p336 44)
【相違点】
○いまさらながらに発見し、
●いまさらながらに発見しては、
○合田は苦笑いを洩らしてもいた。
●合田は苦笑いを洩らしてもいる。
○孤独ではあった。
●孤独ではあったかもしれない。
まだまだ続きます。
その7 の続きです。
引用部は、○印・・・毎日新聞連載時 ●印・・・単行本 で区別します。 異なる部分は下線を引きます。 その後、変更部分を指摘する、という形式です。
メインは加納祐介さんに関連するところですが、大空翼くんには岬太郎くんが欠かせないように、加納さんには合田雄一郎さんが欠かせない部分が出てくるので、その点も取り上げている場合があります。
ついでに加納祐介さんに該当する固有名詞・名詞・単語等は強調しています。
○一方、その様子に判事の友人は何かしら危うさを覚えたか、自身もサドの作品に供された会田の表紙絵がお気に入りのくせに、今回ばかりはふだん口にしない苦言を呈して、珍しくケンカになる。しかし、少し時間をおいてそれぞれ頭を冷やしてみると、どちらも確たる理由はない、なにがしかの熱病のような気分の伝染だったと気づいて逆に落ち着かない心地になったりもしたことだ。 (第6章 15)
●一方、その様子に判事の友人は何かしら危うさを覚えたか、自身もサドの作品に供された会田の表紙絵がお気に入りのくせに、今回ばかりはふだん口にしない苦言を呈して、珍しくケンカになる。しかし、少し時間をおいてそれぞれ頭を冷やしてみると、どちらも確たる理由はない、なにがしかの熱病のような気分の伝染だったと気づいて逆に落ち着かない心地になったりもする。 (単行本p319 42)
【相違点】
○心地になったりもしたことだ。
●心地になったりもする。
○●そうして話しながら、合田はちょっと時計を見る。このあと定期検診に来ているはずの判事を迎えに病院へ行く予定だが、近ごろ体調がすぐれないのはステロイド剤の副作用ばかりではないのかもしれない。あれこれ考えだすと、気が散って授業に集中できない。 (第6章 22) (単行本p330 44)
相違点はありません。
○●合田が警大を出て友人のいる病院へ向かったころ、多磨霊園では、浅井隆夫が妻の見舞いを理由に管理事務所を早退して霊園の正門を出る。 (第6章 23) (単行本p330 44)
相違点はありません。
○午後三時に警大を出、あと十メートルで榊原記念病院に着くというときに、そこに定期検診に来ているはずの男がよこしたメールに<築地の国立がんセンターに来ている。鮨桂太で会える?>とあったのだ。国立がんセンターと、機会があったら近々行こうと話し合ったばかりだった築地の新しい寿司店の名前が並んだ短い文面が、液晶画面でふわりとたわんだ。それがよくよく迷った末のことなのか、いつもの天然なのか、もはやどちらであっても大差はない。もつれる指で<すぐに行く>とだけ返信して築地の寿司店へ飛んでゆくと、そこにはわりに清々した表情の当人がいて、どうも濾胞性リンパ腫とかいう病気だそうだ、でも悪性度は低いし、まだ1期だから当面死ぬことはない、放射線治療はするが長い入院の必要もない、などと言う。ともかくこれで建設アスベスト訴訟を放り出さずにすむ、あれだけはやりたかったから、と。 (第6章 26) (単行本p335 44)
●夕刻に警大を出、あと十メートルで榊原記念病院に着くというときに、そこに定期検診に来ているはずの男がよこしたメールに<築地の国立がんセンターに来ている。鮨桂太で会える?>とあったのだ。国立がんセンターと、機会があったら近々行こうと話し合ったばかりだった築地の新しい寿司店の名前が並んだ短い文面が、液晶画面でふわりとたわんだ。それがよくよく迷った末のことなのか、いつもの天然なのか、もはやどちらであっても大差はない。もつれる指で<すぐに行く>とだけ返信して築地の寿司店へ飛んでゆくと、そこにはわりに清々した表情の当人がいて、どうも濾胞性リンパ腫とかいう病気だそうだ、でも悪性度は低いし、まだI期だから当面死ぬことはない、放射線治療はするが長い入院の必要もない、などと言う。ともかくこれで建設アスベスト訴訟を放り出さずにすむ、あれだけはやりたかったから、と。 (第6章 26) (単行本p335 44)
【相違点】
○午後三時に
●夕刻に
○まだ1期だから
●まだI期だから
数字の表記の違いだけですが。ちなみにここでは、ローマ数字は環境依存文字で機種によっては文字化けするので、アルファベットのIで代用しています。ご了承ください。
○口調は相変わらずだが、誰にも言わずにひとりで検査を受けたぐらいだから、ひとりで悶々としてはいたのだろう。そう思うと胸が詰まる一方、どこまでも自分の始末は自分でつけるというのではなく、身近な人間をひょいと頼ってくるこの友人と、そうして頼られている自分の間に、四十年近い年月がつくりあげたなにがしかの情合いがあるのをいまさらながらに発見し、こいつも俺も真に孤独ではないということだろうと、合田は苦笑いを洩らしてもいた。否、体調不良の原因が判明したとはいえ、悪性リンパ腫には違いない以上、真新しい寿司店の晴れやかな空気のなかでは、刑事と判事判事の二人組はやはりちょっと孤独ではあった。 (第6章 26) (単行本p336 44)
●口調は相変わらずだが、誰にも言わずにひとりで検査を受けたぐらいだから、ひとりで悶々としてはいたのだろう。そう思うと胸が詰まる一方、どこまでも自分の始末は自分でつけるというのではなく、身近な人間をひょいと頼ってくるこの友人と、そうして頼られている自分の間に、四十年近い年月がつくりあげたなにがしかの情合いがあるのをいまさらながらに発見しては、こいつも俺も真に孤独ではないということだろうと、合田は苦笑いを洩らしてもいる。否、体調不良の原因が判明したとはいえ、悪性リンパ腫には違いない以上、真新しい寿司店の晴れやかな空気のなかでは、刑事と判事の二人組はやはりちょっと孤独ではあったかもしれない。 (第6章 26) (単行本p336 44)
【相違点】
○いまさらながらに発見し、
●いまさらながらに発見しては、
○合田は苦笑いを洩らしてもいた。
●合田は苦笑いを洩らしてもいる。
○孤独ではあった。
●孤独ではあったかもしれない。
まだまだ続きます。