5/4(祝)の 『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫) は、p301からp351まで、つまり最後まで読了。
***
★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
これがラスト、張り切って参りましょう~♪
★それにしてもまさか、幸田があんなに盲目になるとは思わなかった。こいつは全くの誤算だ。モモに惚れたというのも意外だったが、一緒に撃たれることはねえだろう? 十年付き合っても、最後の最後で分からなくなってしまうのが幸田だ。 (p303)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その3。・・・どうコメントしていいものやら・・・(逃)
★いつもそうだった。 (中略) 人一倍神経質なのは、自分でよく分かっている。だがその神経も、大半は過去の遺物だ。何もかも一番で、完璧でないと気がすまなかったのは昔の話だ。
今は違う。考え方を根本的に変えたのだ。二番の方が、世の中よう見える。アホの方が、何にも縛られない。お偉がたを横目で見てやる方が、絶対に自分の性に合っている。二十九にもなって、自分の本性も見えんほど、俺は情けない男やない。
親父には、一生分からんやろう。優等生の人生しか知らんで、ノイローゼを《弱腰の逃避や》と言うような偉い人間には、分からんやろう。そやけど、一人の男としては、俺の方が上やで。もし子供でも作ったら、父親としても、きっと俺の方が上や。今、俺ははっきり、そう思うよ。 (p309~p310)
かなり長い引用ですが、ここは野田さんの一世一代の名台詞と見せ場(?)なので。ここに「男の在り方」の一つがありますね・・・。○リエ○ンの意見を訊いてみたいところですが、どうせ一笑に付すんだろうなあ。そもそも「こういうタイプの男もいる」ってことが、野田さんの父親と同じく「分からんやろう」なあ・・・。
★「インポの北川浩二なんか、この世の終わりだな」
「お前なんか、お多福、百ぺんぐらいやったんだろうな」
「ああ。そうかも知れない」
「なあ、幸田。お前、いつからモモと出来てたんだ」
「最近」
「俺はなあ、人間嫌いのお前は一生、人とどうこうすることなんかないんだろうと思ってた。人間って変わっていくんだな……」 (p336)
和やかに見える会話ですが、金地金を盗んでいる時の会話。何気なく、北川兄が幸田さんにあることを尋ねていて、幸田さんのその返答に狂喜乱舞した読者は、大多数。最後に「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その4も添えられて。この会話が好きだという人も、大多数。もちろん、私も好きだ♪
★北川は幸田のことを何度も思い出し、その度に、幸田はなぜ盗むのだろうかと考えたりした。犯罪の向こう側に、《人間のいない土地》があるとでもいうのか。犯罪を重ねることによって、自分の皮を一枚一枚剥ぎながら、これでもか、これでもかと自分を探しているようにも見えた。誰にも優しくなかったが、自分自身に対して、最も優しくなかった男だった。そういう幸田から、北川は一つの人間の在り方を学んだが、同時に、もっと別の道があるはずだとも思った。 (p339)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その5。「自分自身に対して、最も優しくなかった男」幸田さんの変わり様を、北川兄がどのような思いで感じ取っていたのでしょうか・・・。
★おじけづく段階はとうの昔に過ぎていた。ここまできたら、後は突っ走るだけだった。「最後の最後まで細心の注意を」というのが嘘っぱちだということは、経験で分かっていた。ロボットならいざ知らず、人間のやることは、勢いがついて初めて成功する。もはや細心の注意より、最大限の勇気と決断が必要な段階だった。 (p340)
そう、最後は逃げることに全力を傾けるだけ!
★ふと、《自由だ》と思った。 (中略) 自由の気分を味わったのは初めてだった。自由であり、少し孤独だった。《人間のいない土地》はもう、どうでもよかった。人間のいる土地で、自由だと感じるのなら。 (p347)
ついにこのような境地にまでたどり着いた幸田さん・・・。「自由」であり、「孤独」であるということ。この悲しさと淋しさを味わうことになるとは・・・。ああもう、こういう幸田さんが大好きや~
★「……いや。これは俺の想像だが、お前はもう、人間のいる土地でも何でもいいのだろう。きっとそうだと思う。こんなことを言うのは気恥ずかしいが、お前は確かに変わったぜ」 (p350~p351)
★「うまく言えないが……俺はお前がやっと訪ねてきてくれた、って気がするんだ。やっと、互いの顔が見えるところまで近付いた、って気がする。よく来てくれた。ほんとうに、よく来てくれた。俺は嬉しいぞ……!
なあ、幸田よ」 (p351)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その6と7。北川兄の視点から眺めてみても、幸田さんの変化が確実にわかりますね・・・。
★そうだ、モモさん。俺はあんたと、神の国の話がしたいと思う。あんたとは、心の話がしたいと思う……。 (p351)
ラストの一文。いつも思うのは、高村さんは締めくくりの文章が秀逸だということ。これ以上、何を足せというのか・・・。何もない。
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以上で、『黄金を抱いて翔べ』 の再読日記は終わります。お疲れ様でした。
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★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
これがラスト、張り切って参りましょう~♪
★それにしてもまさか、幸田があんなに盲目になるとは思わなかった。こいつは全くの誤算だ。モモに惚れたというのも意外だったが、一緒に撃たれることはねえだろう? 十年付き合っても、最後の最後で分からなくなってしまうのが幸田だ。 (p303)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その3。・・・どうコメントしていいものやら・・・(逃)
★いつもそうだった。 (中略) 人一倍神経質なのは、自分でよく分かっている。だがその神経も、大半は過去の遺物だ。何もかも一番で、完璧でないと気がすまなかったのは昔の話だ。
今は違う。考え方を根本的に変えたのだ。二番の方が、世の中よう見える。アホの方が、何にも縛られない。お偉がたを横目で見てやる方が、絶対に自分の性に合っている。二十九にもなって、自分の本性も見えんほど、俺は情けない男やない。
親父には、一生分からんやろう。優等生の人生しか知らんで、ノイローゼを《弱腰の逃避や》と言うような偉い人間には、分からんやろう。そやけど、一人の男としては、俺の方が上やで。もし子供でも作ったら、父親としても、きっと俺の方が上や。今、俺ははっきり、そう思うよ。 (p309~p310)
かなり長い引用ですが、ここは野田さんの一世一代の名台詞と見せ場(?)なので。ここに「男の在り方」の一つがありますね・・・。○リエ○ンの意見を訊いてみたいところですが、どうせ一笑に付すんだろうなあ。そもそも「こういうタイプの男もいる」ってことが、野田さんの父親と同じく「分からんやろう」なあ・・・。
★「インポの北川浩二なんか、この世の終わりだな」
「お前なんか、お多福、百ぺんぐらいやったんだろうな」
「ああ。そうかも知れない」
「なあ、幸田。お前、いつからモモと出来てたんだ」
「最近」
「俺はなあ、人間嫌いのお前は一生、人とどうこうすることなんかないんだろうと思ってた。人間って変わっていくんだな……」 (p336)
和やかに見える会話ですが、金地金を盗んでいる時の会話。何気なく、北川兄が幸田さんにあることを尋ねていて、幸田さんのその返答に狂喜乱舞した読者は、大多数。最後に「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その4も添えられて。この会話が好きだという人も、大多数。もちろん、私も好きだ♪
★北川は幸田のことを何度も思い出し、その度に、幸田はなぜ盗むのだろうかと考えたりした。犯罪の向こう側に、《人間のいない土地》があるとでもいうのか。犯罪を重ねることによって、自分の皮を一枚一枚剥ぎながら、これでもか、これでもかと自分を探しているようにも見えた。誰にも優しくなかったが、自分自身に対して、最も優しくなかった男だった。そういう幸田から、北川は一つの人間の在り方を学んだが、同時に、もっと別の道があるはずだとも思った。 (p339)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その5。「自分自身に対して、最も優しくなかった男」幸田さんの変わり様を、北川兄がどのような思いで感じ取っていたのでしょうか・・・。
★おじけづく段階はとうの昔に過ぎていた。ここまできたら、後は突っ走るだけだった。「最後の最後まで細心の注意を」というのが嘘っぱちだということは、経験で分かっていた。ロボットならいざ知らず、人間のやることは、勢いがついて初めて成功する。もはや細心の注意より、最大限の勇気と決断が必要な段階だった。 (p340)
そう、最後は逃げることに全力を傾けるだけ!
★ふと、《自由だ》と思った。 (中略) 自由の気分を味わったのは初めてだった。自由であり、少し孤独だった。《人間のいない土地》はもう、どうでもよかった。人間のいる土地で、自由だと感じるのなら。 (p347)
ついにこのような境地にまでたどり着いた幸田さん・・・。「自由」であり、「孤独」であるということ。この悲しさと淋しさを味わうことになるとは・・・。ああもう、こういう幸田さんが大好きや~
★「……いや。これは俺の想像だが、お前はもう、人間のいる土地でも何でもいいのだろう。きっとそうだと思う。こんなことを言うのは気恥ずかしいが、お前は確かに変わったぜ」 (p350~p351)
★「うまく言えないが……俺はお前がやっと訪ねてきてくれた、って気がするんだ。やっと、互いの顔が見えるところまで近付いた、って気がする。よく来てくれた。ほんとうに、よく来てくれた。俺は嬉しいぞ……!
なあ、幸田よ」 (p351)
「幸田ウォッチャー」北川兄の幸田さん評・その6と7。北川兄の視点から眺めてみても、幸田さんの変化が確実にわかりますね・・・。
★そうだ、モモさん。俺はあんたと、神の国の話がしたいと思う。あんたとは、心の話がしたいと思う……。 (p351)
ラストの一文。いつも思うのは、高村さんは締めくくりの文章が秀逸だということ。これ以上、何を足せというのか・・・。何もない。
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以上で、『黄金を抱いて翔べ』 の再読日記は終わります。お疲れ様でした。