すぎな之助の工作室

すぎな之助(旧:歌帖楓月)が作品の更新お知らせやその他もろもろを書きます。

時に浮かぶ、月の残影63

2005-08-09 00:24:34 | 即興小説
 はっきりと答えが返り、だから撫子は、言葉を失った。
 果ての無い森の奥から来た自分。
 始まりは、無い。
 ……私は何?
 もっと何か教えてもらおうと、撫子が口を開いた時、それをさえぎるように、萩に似た女が言った。
「あの石像は、置いてきたのね?」

 子供を産めるわけが無い。
 だってわたしは、
 ……翔伯、わたしは、

 撫子の中で、何かが、嘆いた。
 しかしそれは、それに伴う感情を呼び起こす前に消えてしまった。


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