風と光と大地の詩

気まぐれ日記と日々のつぶやき

冬の夜空に瞬く小さな星の

2024年01月23日 | 

冬の夜空に瞬く小さな星の

風に吹き消されそうなかすかな光

無限の彼方のあるかなきかのともしび


ガラスのように砕かれた人生の破片

かき消された何千何万の叫び

名前をなくした何千何万の肖像  

石を積んで街をつくり

石を崩して街を壊すその繰り返し

神と神との矛盾律をめぐる果てしない戦い

爪と歯が石つぶてになり刀になり鉄砲になり爆弾になって

憎しみと憎しみと憎しみと憎しみと憎しみと

憎しみがぶつかり合い

絶望のように重い闇が地上に降りてくる

悲しみと悲しみと悲しみと悲しみと悲しみと

悲しみが満ちわたり

氷原のような静寂が地を覆う

無人の廃墟の上にも星は輝くのだろうか


冬の夜空に瞬く小さな星の

風に吹き消されそうなかすかな光

無限の彼方のあるかなきかのともしび


見る人も聞く人もいない舞台

2023年11月05日 | 

見る人も聞く人もいない舞台

隔離された仮想空間の中で

世界と通信は途絶したまま

呼びかけや眼差しから遠く

演じるのはひとりきりの即興劇

気がつくと幕はもう開いている


映像はひと呼吸遅れてくる

だから後ろ向きに歩いている

遅れを取り戻すことばかり考える

誰かの背中を追っている

いつも対応を迫られている

時は過去の方向に流れている


ある日 行き止まりの道路の先で 不意に

海がのぞくように君と出会った

まぶしい光に僕は思わず立ちすくんだ

頼みもしないのに君の影が僕を覆った

君の不在と存在 身を焦がす苦しみとよろこび


君の鏡に映る僕はどこか見慣れた僕と違っている

時間は君をめぐって未来の方角に流れはじめた

つたない演技もやり直せない一方向の時間旅行

書きかけの頁の余白が未来の物語をはぐくむ


氷の帝国

2022年02月28日 | 

氷の帝国


凍てつく大地の上に 巨大な闇がのしかかる

鉄の車輪に踏みつぶされる小さな花

コンクリートの壁にうがたれた鋭い眼

弱い心を縛りつけるのは 重い鎖と沈黙の扉

ああ いつになったらこの冷たい夜に

柔らかな春の光が差し込むのか

いつになったら 時代の袋小路に

透き通った風が吹きわたるのか

人と人を隔てる堅いくびきを超えて

人と人が手を取り合う世界は

遠い遠い夢なのか


詩(冬)

2020年02月02日 | 


空ばかり明るいが  
光は乱反射して   
地表に届かない   
   氷よりも冷たい北風が   
枯れ枝を鳴らし   
 何もない野面を吹きすさぶ

   透明な山岳地帯から流れてくる
カミソリのように鋭い風
 シベリアの永久凍土を渡り
  日本海の荒波を越えて   
 苛烈な旅をしてきた風  

咲き急いだバラと  
   俺の安手のコートを    
   さんざん嘲ったあげく    
   平野の果てをめがけて   
   走り去っていく      
         
季節の重い足どり  
 うつむき歩く俺の上にも
 いつか光のしずくが  
   こぼれ落ちるのか     
   そんなことを信じるより   
   俺は冬の酷薄を愛する   

秋の光

2019年10月30日 | 
 澄んだ秋の空から金色の光がふりそそぎ
 あらゆるものが色づき熟していく
 山はたしかな稜線を描いて立ち上がり
 川は大地の帯のようにはるかに流れる

 堆積した時間の層が重なり
 過去と未来と現在が光の中でひとつになる
 失われたものとまだ生まれないものが
 今を生きるものとひそやかな言葉を交わす

 穫り入れの済んだ野面は黒ずみ
 せき立てられるように冬支度が始まる
 まばらな林に鳥たちが鳴きかわし
 日陰の道に冷気がまっすぐ降りてくる

 一日の終わりの空は悔恨に染まり
 夕映えの大気は真珠色に輝く
 天球は鋭角に夜へと傾き
 すべてが重い闇に沈み込んでいく