見る人も聞く人もいない舞台
隔離された仮想空間の中で
世界と通信は途絶したまま
呼びかけや眼差しから遠く
演じるのはひとりきりの即興劇
気がつくと幕はもう開いている
映像はひと呼吸遅れてくる
だから後ろ向きに歩いている
遅れを取り戻すことばかり考える
誰かの背中を追っている
いつも対応を迫られている
時は過去の方向に流れている
ある日 行き止まりの道路の先で 不意に
海がのぞくように君と出会った
まぶしい光に僕は思わず立ちすくんだ
頼みもしないのに君の影が僕を覆った
君の不在と存在 身を焦がす苦しみとよろこび
君の鏡に映る僕はどこか見慣れた僕と違っている
時間は君をめぐって未来の方角に流れはじめた
つたない演技もやり直せない一方向の時間旅行
書きかけの頁の余白が未来の物語をはぐくむ