奈良博三昧「泣不動縁起」 2巻
紙本 著色 巻子
上巻:縦31.7 長504.3 下巻:縦31.7 長553.0
絵画
室町時代 15世紀
紙本 著色 巻子
上巻:縦31.7 長504.3 下巻:縦31.7 長553.0
絵画
室町時代 15世紀
安倍晴明
奈良博収蔵品データーベースから「この巻物の下題には「三井寺縁起」と記されているが、寺自体の縁起ではなく、三井寺(みいでら)(園城寺(おんじょうじ))の成住院に安置されて世に「泣不動」として名高かった画像の由来を説く。「不動利益縁起(ふどうりやくえんぎ)」ともいわれ、中世には有名な話で、絵巻にも繰り返し作られた。三井寺の証空(しょうくう)という僧が、重病に陥った師の智興の身代わりを申し出て病を受けたものの、苦しみに耐え難く、年来信仰している画像の不動明王(ふどうみょうおう)に、せめて後生(ごしょう)は助け給えと祈ったところ、憐れんだ不動が涙を流し、壇上に落ちる。すなわち証空のそのまた身代わりとして死んだ不動は、冥土(めいど)の死者に縛られ閻魔庁(えんまのちょう)へ引かれて行くが、不動が現れたのを見て閻魔たちは驚き礼拝し、早速繩を解いて帰らせた。こうして証空も師の智興も助かり、不動画像は一堂を作って安置され、泣不動と称されたという。鎌倉時代の遺品では詩書(ことばがき)と絵が交互に配されているが、ここでは霞(かすみ)によって場面転換を図りながら、絵のみで全巻連続し、興味深い話が調子よく進行する。元禄六年(一六九三)に土佐光成によって、室町時代末期に活躍した先祖の土佐光茂筆と鑑定されているが確証はない。ともあれ大和絵の伝統をよく継承した、堅実な作風を示している。
(中島博) 」
(中島博) 」
https://www.narahaku.go.jp/collection/839-0.html