荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

トリニダードチェアの巻。

2016年06月01日 | 華麗な生活に極めたシンプルを




マンションのゴミ捨て場で、モノ凄ぇ椅子を2脚も拾っちゃいました。



その名は【トリニダードチェア】。

デンマークのフレデリシア社というトコで販売されているモノです。



『椅子なんて何でもおんなじ』なんて言う、インテリアと無縁なヤツには分からないでしょうが、結構有名な椅子。

何と言っても特筆すべきは、その形状の美しさです。

孔雀が羽ばたいた様な円形の背座に、リズミカルに入るスリット…。

実に美しい。

又、かけ心地が良いんだ。

背中がスッポリと包み込まれる快感は、座ったヒトしか分かりません。

実に素晴らしい。

デザイナーは、2005年に他界されたナナ・ディッツェルという女性。



それ迄、女性デンマーク人家具デザイナーで最も有名だったのは、このヒトでありましょう。

たしか2002年のお話です。

僕がデンマーク・コペンハーゲンのカフェでお茶を飲んでいたところ、すぐ後ろのテーブルにナナさんがいたんですな。

一緒に写真を撮らせて貰おうと、アクションを起こしたのですが、連れの上司に止められたのが痛恨の極みでした。

糞上司めぇ…。でんがなまんがな関西弁の、嫌味で神経質なオッサンでした。



このトリニダードチェア、背座ビーチ材で76,680円。

他の樹種となりますと、89,640円というお値段となります。

『椅子なんて何でもおんなじ』なんて言う、インテリアと無縁なヤツには法外なお値段でしょう。

ニトリなんぞで椅子買ってるヤツには、目ん玉飛び出るお値段でしょう。

でも、椅子のお値段なんてそんなモンです。

上質な生活を送るには上質なモノを。

当り前の事であります。

しかしながら、当り前の事を分かってないのが、ニッポン人。

ニッポン人はファッションとクルマにしか価値を見出せない、貧しい民族ですから仕方ありませんけど。

それにしても、さすが銀座のマンション。

高価な椅子が無造作に捨ててあるもんであります。



世界的に有名な家具デザイナーで、安積伸というニッポン人がいます。

【LEM】という、これ又世界的に有名なカウンターチェアをデザインしたヒトです。



この安積氏、上述のフレデリシア社から【NARA】という作品を発表しておるのですが、

『最も好きな椅子は、ナナ・ディッツェルがデザインしたトリニダードチェア』

と、とあるパーティで言っていました。

最も好きな椅子と同じメーカーから、自身の作品を発表する…デザイナー冥利に尽きるでしょう。



さて、トリニダードチェア2脚、売ったらいくらになるかなぁ…。



『アーティストと工業デザイナーは全然違う。工業デザイナーが作るのは、「売らんがためのデザイン」ではなくて「使うためのデザイン」。「良い」ではなくて「正しい」デザイン』水戸岡鋭治(ニッポンの工業デザイナー・1947~)



過去の記事。
インテリアの巻。
インテリアの巻、ふたたび。
インテリアの巻、みたび。
インテリアの巻、よたび。
インテリアの巻、いつたび。
銀座の巻。
銀座の巻、ふたたび。