僕等の子供の頃、使われていた『もったいない』は本来その言葉が持っていた意味からは変化していた。一般的に「物をムダにせず、大切に使い切る」という有形の物を対象として使用されることが多かった。子供の頃だから今から30数年前だ。その頃はというと、日本は高度成長経済のおかげで世界でも1,2位を争う経済大国になっていた。大量生産、大量消費は当たり前で『消費は美徳』とすら言われている時代だった。
ひと昔前の本来の『もったいない』は
『食べ物を粗末にするとバチがあたるぞ!』
『米粒1つも残すな。お百姓さんの気持ちになって食べろ!』
『1粒のお米にも神様の御霊が宿っている。一粒残らず食べろ!』
とか、物を無駄にしない事から始まり、物質的なものだけでなく、精神的な方向に向いていたのだと思う。それは日本独特のアメニズム信仰が拠りどころになっているのかもしれない。我々日本人は自然界での立ち位置を謙虚に理解していたことで、他の国の言語の単語には訳すことの出来ない、この『もったいない』という思想が単語となり生活に根付いたのだろう。
かつての日本人が持っていた、自然への敬いと畏れ、愛情が、スピードや便利、快適さが優先の経済原理主義的な高度文明化社会では失われてしまった。それとともに、日本独自の文化の喪失、地域や故郷の喪失、家族の絆の喪失、人間の健康の喪失を引き起こしている。かつての日本の『もったいない』は自然への畏怖が読み取れるのに、今の日本の『もったいない』経済原理主義的思想に毒されている。かく言う僕もその1人だ。
物が無駄っていう、物質的な意味だけの『もったいない』では少しもったいない。
僕も反省しなければ。
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