The Notebook Of Things I Don’t Know About

日々遭遇した出来事について、あれこれ考え、想像してみる。
ユーモアを添えて...。

エコとピースの交差点

2009年03月06日 12時29分01秒 | 
表題はダグラス・ラミス先生と辻信一先生の対話本のタイトル。

 昨年末から、アメリカに端を発した金融危機。経済の建て直しがいろいろな場面でマスコミで報道されている。今国会での重要審議のうちのひとつとして金融危機対策であることは周知の事実だ。

 権力者が人々を効率的に支配し、管理するためにしばしば「危機」と「恐怖」を使用する。

 我々の生活の隅々まで浸透している「システム」の危機であるから、何とかしなければならない(らしい、世間的には。)「我々~党は何とかして、この危機を立て直し必ず皆様の生活を守ってみせます」とかなんとか言いながら、ホントに未曾有の危機に対する決断と行動が伴っているのだろうかと訝るのは僕だけでないはず。

 でも、ホントに危機であり恐怖なのか?

 危機といってしまうことは、現状のシステム「産業資本主義」を続けることに対して、肯定的立場を表明したことと同意である。当然マスコミはこの「産業資本主義」の枠組みの中で、その存在が存在たらしめているわけであるから、必ず構造的に肯定を表明し「危機」を報道することなる。もちろん我々もこの枠組みの中で生活しているわけで、立ち位置としてはマスコミと大して変わらない。

 確かに、景気対策をしなければ、失業者があふれ、社会的な問題に発展するだろう。だけど、景気対策を行うにあたって、いろいろな問題がこの産業資本主義という経済システムにもあるということを棚上げしてはならない。資本主義が悪いといっているのではなく、このシステムの中にはあまりうまく機能しない部分があるということだ。ここのところをよく議論していかなければ同じ轍を踏むことになる。

 そう、確かに「危機」ではあるけれど、僕ら、(もっと広く人類)がもっとより「幸福感」をもてるような思想を掘り下げる必要がある。

資本主義や市場経済の祖といわれるアダム・スミスは倫理と経済は不可分と考えていたし、ジョン・スチュワート・ミルは「定常」という概念を提唱して、無限の経済成長といった考え方に陥る危険性を予測し、どこでよしとするかこそが問題なんだと説いた。

 40年前、ロバート・ケネディー次期大統領候補は選挙キャンペーン中、こう言った。

 「アメリカは世界一のGNPを誇っている。でも、そのGNPの中には、タバコや酒や薬、交通事故や犯罪や環境汚染や環境破壊にかかわる一切が含まれている。戦争で使われるナパーム弾も、核弾頭も、警察の装甲車もライフルもナイフも、子どもたちにおもちゃを売るために暴力を礼賛するテレビ番組も」

 次にケネディは、GNPに勘定されないものを挙げていきます。

 「子どもたちの健康、教育の質の高さ、遊びの楽しさはGNPに含まれない。詩の美しさも、市民の知恵も、勇気も、誠実さも、慈悲深さも…」

 そしてこう結論します。

 「要するにこういうことだ。国の富を測るはずのGNPからは、私たちの生きがいのすべてがすっぽり抜け落ちている」

 経済の発展は〝幸せ〟の一指標ではあるが、それが我々の〝幸せ〟を約束するものではない。

 物質的な〝豊かさ〟〝幸せ〟信仰から、脱却しなければならない時期がきているのではないだろうか。でも僕も含めて、世間はそこから脱却する勇気はまだ持ち合わせていないのだろう。


以下、本文中に登場する重要人物のメモ

■ジョン・ダワー
米の歴史会社。現在MIT教授。2000年「敗北を抱きしめて-第2次大戦後の日本人」でピューリッツァー賞受賞。
■ゲーリー・スナイダー
米の詩人。ギンズバーグ、ケルアックらと交友関係があり、50年代前半にはビート・ジェネレーションの詩人として活躍。50年代後半から60年代後半にかけて京都で臨済禅を学んだ。帰国後、カリフォルニア大学教授を勤める傍ら、環境保護活動に携わっている。詩集「亀の島」でピューリッツァー賞受賞。その他、「終わりなき山河」「惑星の未来を想像する者たちへ」など。
■E・F・シューマッハー
経済学者。73年、武士いつ至上主義と科学技術信仰の現代文明を鋭く批判し、石油危機を警告した、「スモール・イズ・ビューティフル-人間中心の経済学」がベストセラーになった。
■ロバート・A・スカラピーノ
米の政治学者。カリフォルニア大学名誉教授。歴代大統領のブレーン。東アジア研究の大御所。
■ハンナ・アーレント
政治思想家。プリンストン大初の女性教授となる。著書「カール・マルクスと西欧政治思想の伝統」「革命について」など。「政治活動には演劇の側面がある」と言った。
■アシシュ・ナンディー
印の社会政治心理学者。非暴力主義の信念に支えられた市民運動を行う行動的知識人。インドの良心と呼ばれる。
■イヴァン・イリイチ
思想家、哲学者。「ともに歓びを持って生きる」コンヴィヴィアリティーの思想や「脱学校論」を提唱。
■マイケル・ポーラン
米の作家、環境運動家、カリフォルニア大学バークレー校教授。
■ウェンデル・ベリー
米の詩人、作家、思想家、農民。工業化されたライフサイクルを捨て、環境と調和した持続可能な農民的生活主義「アグラリアニズム」を提唱。

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