以心伝心 from Bolivia

青年海外協力隊として2年間、ボリビアの小学校で活動。

忘れられない日

2012年02月08日 | 日記
忘れられない「今日」という日を、ここに記す。

これらすべてのことばは、わたしの胸の中で一生忘れないだろう。



今日はJICAの調整員が学校を訪問しに来た。

わたしの活動も2月いっぱいということで、校長とこれまでの活動について話

をしに来たのだ。

しかし、亡くなった校長の後を引き継いだ今の校長は、わたしのこれまでの活

動を詳しく分からない。なので、誰か先生を呼んでくるように言われた。

わたしは、一番仲のよいサンドラブロック似のアナにお願いした。

アナは快く引き受けてくれた。

生徒たちの授業が終わり、一つの教室に集まって職員会議を行った。

その後、調整員がやってきた。

職員会議のあと、「ジャイカの人が来るから、ケイコと共に仕事をし、ケイコ

について話をしてくれる人は、事務室に来てほしい」と校長が呼びかけた。

わたしは、クタクタの職員会議のあと、誰が進んで来るものかと思った。

しかし、全ての担任の先生が事務室に集まってくれた。

一人ひとりがそこにいることに、なんだか胸がいっぱいになった。

先生たちは、わたしが覚えていないことまで覚えていてくれた。

具体的に単元名まで出しこの算数の活動はとても勉強になったとか、作ってく

れたかけざんの歌でみんな楽しく覚えられたとか、子どもたちに愛情を持って

接している姿をいつも見たとか、ワークショップで子どもになって学んだこと

とか、いつも自腹で子どものプリントをコピーしてくれたとか、いつも私たち

の写真を撮ってくれたとか、体調が去年悪かったときに進んで授業をしてくれ

て助かったと涙ながらに言う先生とか。

もうわたしも、泣くまいと必死だった。

まだまだ終わりじゃないから。

けれど、こんなに具体的に先生たちが覚えていてくれたことが、なんて有り難

く、なんて温かく、共に働けてよかったと心から思う。

変なスペイン語だったけど、それでも同じ先生として同僚として認めてもらえた。

時々自分のやるべきことを見失うこともあった。

「国際協力」って理想を抱いてやってきたけど、自分のちっぽけな力で何が変

わるのかって思ったことも何百回とあった。

彼らを駄目だと決めつけ、投げてしまうことだってできた。

それでも、わたしは投げれなかった。彼らを否定することは、ここにいる自分

も否定することだと思ったから。

とことん落ちてまた這い上がってみた。

ちがうのは、相手。いや相手からみればちがうのは、自分だった。

そう、ちがいはちがい。

それよりも、わたしたちは先生としてもっと大事なことが子どもたちにでき

る、その視点に切り替えた。

国や人種を超えて普遍なもの、価値のあるものに。

そのためには、「ことば」よりも実は「姿」だったことに気づかされた。

現場で共に働けたこと。

子どもたちや先生たちとおもいを共有できたこと。

自分のやるべき道を進んできたこと。

それは決して、後悔でも間違いでもなかった。

最後に話を聞いた校長はこう言った。

「わたしはほとんどケイコと働いていないけれど、プロフェッショナルな姿を

見た。子どもたちにソーランを教え、違う文化を伝えよい経験をさせてくれ

た。事務室で教材をつくったり、ワークショップの準備をしている姿を見た。

彼女から先生の姿をとても学んだ」と。

そして、こうも付け加えた。

「来年に来るボランティアを、ケイコと比べてはいけない。新しいボランティ

アはまた別の人であり、新たな気持ちで接して欲しい」と。

ちょっとブラボーだった。

全て分かり合えなくていい、ただ伝わっていたんだと思う。

自分の仕事を見てくれていた、それだけが本当に有り難いと感じた。

亡くなった校長はよき理解者であったが、いまの校長とはジャイカとは、ボ

ランティアとはの説明からのスタートだった。

色んなおもいがよぎる。

わたしは、感謝の気持ちでこう言った。

「先生たちとは、たくさんの思い出があります。決して忘れません。

いつもケイコケイコと声をかけてくれました。わたしは、この学校が大好きで

す。わたしがいなくても、いまたくさんの教材がここにあります。継続するこ

とは、とても大切なことです。しかし、とても難しいことでもあります。けれ

ど、わたしたちは共に働きたくさんのことを学んできました。お願いです。

これまで得たものを、継続し続けてください」

先生たちは、うなずいていた。

わたしがしてきたことは、何だったのだろう。

してきたことは、きっと一人の小さな人間ができたことだった。

とにかく突き進んでみてよかった。

ボリビア多民族国の人々に出会えてよかった。

残りの日々を大切に、自信を持って日本に帰る。