雪子の計画
その時がついにきた。
この日の為に雪子は計画を練ってきた。
朝、雪子は出勤する孝雄に声をかけた。
「今日は高校時代の友人と食事をするので遅くなります」
相変わらず無関心な孝雄は靴を履きながら背中を向けたまま首を楯に軽く振った。
ほんとは伊豆へ行くのだが孝雄は知らない。
身支度を整えて、待ち合わせの新宿駅へと向かう。
友人原田美紀と伊豆行きの電車に乗った。
伊豆に到着すると、サボテン公園や、老舗のお土産店など見物した後、
ホテルに到着したのは、午後5時過ぎていた。この宿泊場所を選んだことも計画のひとつだ。
ホテルは多数のコテージがある。雪子は館内の部屋ではなくコテージを予約していた。
ホテル内の広大な庭に立っているコテージはそれぞれの部屋が離れている為、
宿泊者の状況が把握できない。そこが狙いだ。
ホテル内の温泉に入り、夕食を食べながらほろ酔い気分になった。
最上階のバーで雪子は美紀にビールや、ウイスキーを勧めた。
部屋に戻りベッドに倒れている友人を起こし睡眠薬の入った水を飲ませる。
美紀はされるがままに飲み干した。時計は9時を過ぎていた。
その後、レンタルで借りた自転車で駅まで走る。
駅の横の国道を走っているタクシーを止めた。
「母が危篤なのです。至急東京までお願いします!」
気のいい運転手に出会えたことはラッキーだった。
運転手のスピードの速さにより、東京に入ったのは11時。
用心の為に自宅の駅のひとつ手前の駅近くで降りた。
ここから自宅まで歩いて15分程、足跡を残さないためにも歩いた方が安全だ。
玄関の鍵を開けた。
「ただいま」返事はない。玄関の鍵と鎖のチェーンをかける。
2階に上がり孝雄の部屋をノックする。
「ただいま帰りました」ドアを開けると孝雄は赤ワインを片手にスポーツ番組を見ていた。
寝る前に必ず飲む赤ワイン。雪子はボードからワイングラスを取った。
「私もワインいただいていいかしら?」
近づいていくと、孝雄が振り返った。
「飲みたいのか?」
「そういう日もあるでしょう?」
「君が自分から言ってくるなんて珍しいな」そう言い、雪子のはグラスにワインを入れた。
一気に飲む干す雪子を見て孝雄は失笑した。
「ほんと飲み方まで知らないんだね」
侮蔑も今日限りだ。もうこの男に否定されることは永遠にない。
「ねえ、セックスしようか?」
孝雄は驚いた表情で「気でもおかしくなったのか?」と言った。
「そうかも知れない。久しぶりに友人と会って刺激を受けたのかしら。
タガが外れちゃったみたい」
「今日の君はいやらしくていいねえ」ニヤリと笑う。
そして「君がその気ならいいよ」横柄な態度で立ち上がり寝室へ入って行く。
部屋に入った孝雄を確認して、持っているワイングラスに素早く毒薬を混入した。
ベッドの中で雪子を迎え入れようとしている孝雄。
「いつもこんな女でいてくれたら飽きないのに」
そう言いながら両手を差し伸べてきた。
雪子はワインを自分の口の中に含んだ。
含んだワインをそのまま孝雄の口の中に流し込んだ。
孝雄の喉のあたりでゴクリと音がした。
途端に孝雄の歪んだ表情が目の前に表れた。喉や胸を掻き毟っている。
雪子は体を離してその様子を凝視した。
数分後孝雄の体の動きが止まった。時刻は、深夜1時になろうとしていた。
素早く自分の飲んだワイングラスをバッグに入れる。
そして、自分の部屋の窓を開け、向側の雄太の部屋の窓に手を伸ばす。
窓は簡単に開き、雪子は思い切り雄太の部屋の中へ飛び込んだ。
暗い部屋の中に雄太の姿はなかった。まだ帰宅していないようだ。
いつもどんな時でも部屋の窓を開けておいてほしいと言った言葉を雄太は忠実に守ってくれた。
雪子は窓に鍵をかけて、雄太の部屋から出た。
大通りに出てタクシーを拾い、伊豆まで走る。
ホテル内のコテージに着いたのは、夜中の3時を過ぎていた。
友人は熟睡していた。 大丈夫。アリバイは完璧だ。自分に捜査が及ぶことはないだろう。
ああ、これでもう私は自由だ。ほんとの私自身でいられる。
雪子は疲労困憊した体をベッドに投げ出すように倒れた。
続く・・・
その時がついにきた。
この日の為に雪子は計画を練ってきた。
朝、雪子は出勤する孝雄に声をかけた。
「今日は高校時代の友人と食事をするので遅くなります」
相変わらず無関心な孝雄は靴を履きながら背中を向けたまま首を楯に軽く振った。
ほんとは伊豆へ行くのだが孝雄は知らない。
身支度を整えて、待ち合わせの新宿駅へと向かう。
友人原田美紀と伊豆行きの電車に乗った。
伊豆に到着すると、サボテン公園や、老舗のお土産店など見物した後、
ホテルに到着したのは、午後5時過ぎていた。この宿泊場所を選んだことも計画のひとつだ。
ホテルは多数のコテージがある。雪子は館内の部屋ではなくコテージを予約していた。
ホテル内の広大な庭に立っているコテージはそれぞれの部屋が離れている為、
宿泊者の状況が把握できない。そこが狙いだ。
ホテル内の温泉に入り、夕食を食べながらほろ酔い気分になった。
最上階のバーで雪子は美紀にビールや、ウイスキーを勧めた。
部屋に戻りベッドに倒れている友人を起こし睡眠薬の入った水を飲ませる。
美紀はされるがままに飲み干した。時計は9時を過ぎていた。
その後、レンタルで借りた自転車で駅まで走る。
駅の横の国道を走っているタクシーを止めた。
「母が危篤なのです。至急東京までお願いします!」
気のいい運転手に出会えたことはラッキーだった。
運転手のスピードの速さにより、東京に入ったのは11時。
用心の為に自宅の駅のひとつ手前の駅近くで降りた。
ここから自宅まで歩いて15分程、足跡を残さないためにも歩いた方が安全だ。
玄関の鍵を開けた。
「ただいま」返事はない。玄関の鍵と鎖のチェーンをかける。
2階に上がり孝雄の部屋をノックする。
「ただいま帰りました」ドアを開けると孝雄は赤ワインを片手にスポーツ番組を見ていた。
寝る前に必ず飲む赤ワイン。雪子はボードからワイングラスを取った。
「私もワインいただいていいかしら?」
近づいていくと、孝雄が振り返った。
「飲みたいのか?」
「そういう日もあるでしょう?」
「君が自分から言ってくるなんて珍しいな」そう言い、雪子のはグラスにワインを入れた。
一気に飲む干す雪子を見て孝雄は失笑した。
「ほんと飲み方まで知らないんだね」
侮蔑も今日限りだ。もうこの男に否定されることは永遠にない。
「ねえ、セックスしようか?」
孝雄は驚いた表情で「気でもおかしくなったのか?」と言った。
「そうかも知れない。久しぶりに友人と会って刺激を受けたのかしら。
タガが外れちゃったみたい」
「今日の君はいやらしくていいねえ」ニヤリと笑う。
そして「君がその気ならいいよ」横柄な態度で立ち上がり寝室へ入って行く。
部屋に入った孝雄を確認して、持っているワイングラスに素早く毒薬を混入した。
ベッドの中で雪子を迎え入れようとしている孝雄。
「いつもこんな女でいてくれたら飽きないのに」
そう言いながら両手を差し伸べてきた。
雪子はワインを自分の口の中に含んだ。
含んだワインをそのまま孝雄の口の中に流し込んだ。
孝雄の喉のあたりでゴクリと音がした。
途端に孝雄の歪んだ表情が目の前に表れた。喉や胸を掻き毟っている。
雪子は体を離してその様子を凝視した。
数分後孝雄の体の動きが止まった。時刻は、深夜1時になろうとしていた。
素早く自分の飲んだワイングラスをバッグに入れる。
そして、自分の部屋の窓を開け、向側の雄太の部屋の窓に手を伸ばす。
窓は簡単に開き、雪子は思い切り雄太の部屋の中へ飛び込んだ。
暗い部屋の中に雄太の姿はなかった。まだ帰宅していないようだ。
いつもどんな時でも部屋の窓を開けておいてほしいと言った言葉を雄太は忠実に守ってくれた。
雪子は窓に鍵をかけて、雄太の部屋から出た。
大通りに出てタクシーを拾い、伊豆まで走る。
ホテル内のコテージに着いたのは、夜中の3時を過ぎていた。
友人は熟睡していた。 大丈夫。アリバイは完璧だ。自分に捜査が及ぶことはないだろう。
ああ、これでもう私は自由だ。ほんとの私自身でいられる。
雪子は疲労困憊した体をベッドに投げ出すように倒れた。
続く・・・