占い刑事の推理1
「先輩、牡蠣料理の味はいかがですか?」
「上手いよ。生牡蠣も臭みもないし、プリプリしている。それと、蒸し焼きや、
焼いた牡蠣も絶品だね。君のグルメ通のお蔭で人生楽しませてもらっているよ」
「先輩のその一言が聞きたくて、あちこち紹介しているようなものです。
牡蠣スープも飲んでみてください。深い味だけどしつこくなくて僕大好きです」
藤木は牡蠣スープを飲む。牡蠣の深い味が今の心を癒されそうだ、と思う。
今夜も麻生に誘われ、牡蠣専門の店で食事をしている。
スープカップを置き藤木は、真顔になった。
「ところで、坂崎孝雄の死因ははっきりと出たのか?」
「はい、鑑識からの報告だと毒薬は農薬の一種で、少量で致死量に達するということで、
今は販売禁止となってるそうです」
「販売禁止の農薬を、坂崎はどこで手にいれたんだろう?」
「入手経路は不明です。他殺の物的証拠はまったく出てこない、指紋は坂崎夫妻だけです。
自殺ということで、捜査本部は近日解散になるということですが・・・」
「そうか、打切りか」藤木は内心安堵した。
「しかし、僕は、何かこの事件で腑に落ちないものを感じているのですが」
「たとえば?」
「他殺ではないとすれば自殺だという考えが短絡すぎてどうも解せない」
「他人が侵入してきた形跡がないことは重要な証明だろう」
「僕は別の視点から考えてみたのですが・・・」
口籠る麻生を促す。
「何か気になることがあったのか?」
「あくまでも、僕個人の意見として聞いてください。
坂崎の妻の部屋と隣のアパートの近さをどう思いますか?」
「どうって?」
「あの日、深夜に黒い影をアパートの奥の部屋の方で見たと言った男がいましたよね」
「ああ、あの男か。信頼できそうもない身なりと、態度だったじゃないか。
日中から酒を飲んでいる男の話に信憑性はないよ」
「いや、あれからそのことが気になって、聞き込みにいったんですよ。
そうしたら、月日も時間も間違いない。
何故ならその日は大好きなテレビで競馬番組があって終わったのが1時頃、
煙草の煙が部屋中に回って咳き込んですぐに窓を開けた時上を見たら黒い影がふわりと動いていたと」
「酒を飲んでいなかったのか?」
「その日はお金がなく酒を買えなかったということです」
「う~ん、それで君は何にこだわっているんだ」
「先輩に、以前に言ったこと覚えていますか?坂崎の妻の部屋と隣のアパートの一室が
向かい合っていて手を伸ばせばお互いの窓を開けられる距離だと」
「それが問題あることなのか」
「もし、お互いが知り合いだったら?」
「そりゃあ、お互いの部屋同士が向き合っていれば、偶然に顔を合わせることもあるだろうし、
挨拶するくらいはあるだろう」
「そうですよね。知り合いだった。いや知り合いになり仲良くなっていったら?」
「彼女には完璧なアリバイがあるだろう?」
「完璧なアリバイ、先輩はかつて完璧なアリバイ程気をつけろと言われましたけど。
あの日、坂崎の妻は伊豆のホテルに宿泊しました。
でも何故、ホテル館内ではなく庭に個々に立っているコテージだったのでしょうか?
「君は坂崎の奥さんを疑っているのか!捜査は打切りになるんだろう。詮索するのはやめたほうがいい」
声が荒立っているのが自分でもわかった。これ以上雪子の人生に踏み込んで欲しくない。
「それに、誰の許可をえてその男の聞き込みに行ったんだ。独断行動は許されないぞ」
「僕の行動は独断行動ですか?では、藤木先輩の行動は独断行動ではないのですか?
藤木さんは、何故大分までひとりで行ったのですか?
麻生の瞳から挑んでくるような強い視線を感じ藤木はたじろいだ。
「どうして大分に行ったことを知っているんだ」
「あの日、藤木先輩の後を僕が追っていたからです」
続く・・・
「先輩、牡蠣料理の味はいかがですか?」
「上手いよ。生牡蠣も臭みもないし、プリプリしている。それと、蒸し焼きや、
焼いた牡蠣も絶品だね。君のグルメ通のお蔭で人生楽しませてもらっているよ」
「先輩のその一言が聞きたくて、あちこち紹介しているようなものです。
牡蠣スープも飲んでみてください。深い味だけどしつこくなくて僕大好きです」
藤木は牡蠣スープを飲む。牡蠣の深い味が今の心を癒されそうだ、と思う。
今夜も麻生に誘われ、牡蠣専門の店で食事をしている。
スープカップを置き藤木は、真顔になった。
「ところで、坂崎孝雄の死因ははっきりと出たのか?」
「はい、鑑識からの報告だと毒薬は農薬の一種で、少量で致死量に達するということで、
今は販売禁止となってるそうです」
「販売禁止の農薬を、坂崎はどこで手にいれたんだろう?」
「入手経路は不明です。他殺の物的証拠はまったく出てこない、指紋は坂崎夫妻だけです。
自殺ということで、捜査本部は近日解散になるということですが・・・」
「そうか、打切りか」藤木は内心安堵した。
「しかし、僕は、何かこの事件で腑に落ちないものを感じているのですが」
「たとえば?」
「他殺ではないとすれば自殺だという考えが短絡すぎてどうも解せない」
「他人が侵入してきた形跡がないことは重要な証明だろう」
「僕は別の視点から考えてみたのですが・・・」
口籠る麻生を促す。
「何か気になることがあったのか?」
「あくまでも、僕個人の意見として聞いてください。
坂崎の妻の部屋と隣のアパートの近さをどう思いますか?」
「どうって?」
「あの日、深夜に黒い影をアパートの奥の部屋の方で見たと言った男がいましたよね」
「ああ、あの男か。信頼できそうもない身なりと、態度だったじゃないか。
日中から酒を飲んでいる男の話に信憑性はないよ」
「いや、あれからそのことが気になって、聞き込みにいったんですよ。
そうしたら、月日も時間も間違いない。
何故ならその日は大好きなテレビで競馬番組があって終わったのが1時頃、
煙草の煙が部屋中に回って咳き込んですぐに窓を開けた時上を見たら黒い影がふわりと動いていたと」
「酒を飲んでいなかったのか?」
「その日はお金がなく酒を買えなかったということです」
「う~ん、それで君は何にこだわっているんだ」
「先輩に、以前に言ったこと覚えていますか?坂崎の妻の部屋と隣のアパートの一室が
向かい合っていて手を伸ばせばお互いの窓を開けられる距離だと」
「それが問題あることなのか」
「もし、お互いが知り合いだったら?」
「そりゃあ、お互いの部屋同士が向き合っていれば、偶然に顔を合わせることもあるだろうし、
挨拶するくらいはあるだろう」
「そうですよね。知り合いだった。いや知り合いになり仲良くなっていったら?」
「彼女には完璧なアリバイがあるだろう?」
「完璧なアリバイ、先輩はかつて完璧なアリバイ程気をつけろと言われましたけど。
あの日、坂崎の妻は伊豆のホテルに宿泊しました。
でも何故、ホテル館内ではなく庭に個々に立っているコテージだったのでしょうか?
「君は坂崎の奥さんを疑っているのか!捜査は打切りになるんだろう。詮索するのはやめたほうがいい」
声が荒立っているのが自分でもわかった。これ以上雪子の人生に踏み込んで欲しくない。
「それに、誰の許可をえてその男の聞き込みに行ったんだ。独断行動は許されないぞ」
「僕の行動は独断行動ですか?では、藤木先輩の行動は独断行動ではないのですか?
藤木さんは、何故大分までひとりで行ったのですか?
麻生の瞳から挑んでくるような強い視線を感じ藤木はたじろいだ。
「どうして大分に行ったことを知っているんだ」
「あの日、藤木先輩の後を僕が追っていたからです」
続く・・・