けんけんブログ -guide diary-

国際山岳ガイド近藤謙司の冒険案内記!
“ハイキングからチョモランマまで”

アタックします!

2008-10-02 03:38:47 | マナスル08
けんけん@BCです。
突然ですが、明日からアタックに入ります!
(っていうか今日)

月曜日までの天気が概ね安定予報で、その先が逆に読みにくいので、
BCでの休養が少し足りないですが出発することにします。

今までの大雪でラッセル隊、ジャッグドグローブ隊はC2からC3
にかけてのデポジットが相当量埋没or流され発見が困難らしく、
特にジャッグ隊は酸素ボンベが不足するピンチに直面してます。

その教訓をいかしてAG隊は前回のクールでC3を作らず荷揚げも
しませんでした。なので、今回のアタックの動きと同時にC3に
荷揚げと共に移動し、アタックキャンプを作らねばなりません。

そのため、テント等の持ち上げる物資は最小限にとどめるしかなく、
隊は第一アタック、第二アタックの二つに分けざるおえません。

第一アタック隊は少ない休養の上、キャンプ設営アシストやラッセルを
強いられ、登頂日には第二アタック隊がC3に移動してくるため
登頂後に必ずC2まで下山を続けなければならない強靭な足が必要です。

技術・体力・経験と…登山総合力に優れた“とーちゃん”と
抜群の心肺機能と脚力と前向き魂を備えた“モコパパ”が準備良好で、
第一アタックのけんけんチームとして明日出発してくれます!

残るワリソー&ヒロちゃん&タモッちゃんは、ゆっくり休養後、
第二アタックの竜石チームとして一日遅れでBC出発となります。

泣いても笑ってもワンチャンスのアタックです。
積雪、降雪、風…そして隊員の体調、運を天にまかせます。


…でも運といえば、運が向いてきている気がしています。

天候も延び延びで好天が後ろにずれ込んでいる感がするし、
雪も安定方向に向いていると思います。

また僕が山の世界に引き込まれる“きっかけ”を下さった恩人の方は、
あの歴史的なマナスル初登頂時の副隊長を務められていたし、
ラッセルたち世界の大手公募登山隊とのチームワークのスムーズさ、
バングラディッシュチームや旧知のシェルパとの偶然の出会い、
そして、そして、本日、大きなサプライズが…。

大きな出来事があった2004年のAGチョモランマ隊。
その山頂からの失意の下山中に、仲間を亡くし酸素ボンベも失った
韓国隊の女性が意識を失いかけていたのを見過ごせず、
少量ですが僕の酸素を提供しつつ、なんとかC3まで下山。

その後、彼女が無事にBCまで下山したとの噂を聞いていましたが、
五体満足で生活をしているかはわかりませんでした。

それが…今日のランチ後の酸素マスクの講習中にカレーオヤジ達に
ひとつのエピソードとして、そんな体験話をしていました。
その数分後、女性一人の韓国隊がBCに入山してきたらしく、
偶然にも登ってきたその彼女とAGの食堂テント前でばったり!
軽い会釈後お互いを探る感じで、しばし呆然と立っていましたが…
すぐに同時にあの時のあの人ってわかったんです。

嬉しかった!しっかりと生きてた。しかもかなり立派に逞しく!
彼女は時の人となり、今では韓国を代表する有名女性登山家らしく、
スポンサーもTVもつき、かなりの数の8000mに登っているんだって。
彼女は握った僕の手を離さずにTVカメラをまわして、しばし談笑して…
その後いろいろインタビューされて、下手な英語で答えたけど…、
これも、こんな出会いも大きな幸運だよね。

「今回のマナスルは、ホント近藤さんの遠征ですね…」
「…だって、いろんなものを引き付けている。」

竜石がボツリと言いました。ほんとそうかな?
ちょっと怖いくらいにも思うけど、謙虚に前向きに受け止めようと思います。
風が出てきました。AG旗とタルチョが音を立てています。

『AGマナスル登山隊08』この風に乗って山頂に向かいます!
誰に祈っているかわかりませんが、両手を胸の前で握っています。
“頑張る隊員に力を、山に静けさを。”