けんけんブログ -guide diary-

国際山岳ガイド近藤謙司の冒険案内記!
“ハイキングからチョモランマまで”

AG隊危機一髪!

2009-05-03 03:57:37 | エベレスト09
けんけん@エベレストBCです。

とんでもなくデカイのが落ちちゃいました。

アイスフォール帯のセラックの崩壊は想定していたけど、
西稜の特大の懸垂氷河が崩壊!その大きさは新宿の高層ビル。

AG隊員の面々は、アイスフォール帯のセラックをチェックし、
足慣らしのためにアイゼン・ハーネスをセットしベースキャンプを出発するところで、
僕は、地球が割れるような轟音に裸足でテントから飛び出した。

雪煙が爆風に乗って、みるみるうちにBCへ向かってきたので、
個人テントや食堂テントのジッパーを急いで閉めるように叫んだ。
C1へのルートは、アイスフォール帯の左3分の一あたり。

爆風の中心は、ベースキャンプをそれたので粉雪が舞う程度だったけど、
数名の人影が崩壊の真下にいて、雪煙に巻き込まれるのが見えた。

今日は、AGネパールスタッフがC1への荷上げのため、
朝5時にベースを出発し、アイスフォールを通過してるはず。

マックが素早い動きで、無線でプラチリを呼び出す!
頼む、返事してくれ~!隊員全員が無線に集中して息を呑んだ。

「はい、プラチリです。いまC1にいます。」の声に全身の力が抜けた。
「でも、ラムカジだけ調子悪く下山しました。何がありましたか?」

そうか、C1の彼らからは、崩壊が確認できないんだ。
崩壊の規模と時刻を早口で説明した。プラチリの状況説明をあわせると、
どうやらラムカジは、まだ現場には到達していない可能性が。

後で聞いた話だが、バラバラになったセラックの氷の塊が
ラムカジの前方20m位先をすっ飛んでいったらしい。ふぅ~!

彼は無事だったが、真下を通過していた他の隊のネパールスタッフは
氷河上に突き出た氷の影にうずくまって、なんとか耐えたが、
小さな氷の固まりが額に当たり出血したという。

この崩壊での遭難者や行方不明者は現在のところいないみたいだ。
真下にいて助かったのは、奇跡としか言いようがない。

氷塊はルート上のクレバスに渡してある2箇所のラダーを吹き飛ばし壊したが、
すぐにラダーはベースから専門のスタッフにより運ばれルートは再開した。
現場偵察。崩壊したのは頭の上の懸垂氷河。C1へ行く道は他にない。

安全性を高めるのは、より早く通過する技術。頑張る哲王先生&マック!

そして、何も無かったように、クライマーたちはそこを往来し、
時には息をきらして立ち止まり、ノロノロと上り、下るのだろう。

これがアイスフォール。これがエベレスト登山。
僕らは、このルートをこれから何回通過するのだろうか。