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🤳《不易流行》🤳あしたの詩を唄おうよ…🎵

故郷は遠くにありて・・・忘れかけてた【遠い背景の記憶】原点回帰[17]【雪の記憶】⑩

2022-01-25 | こころの旅


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 第二章 [四]を紹介します。




夏休みが近づいた。進学する者にとっては夏休みは最大の山である。海彦のクラス
の者たちは、夏休みを利用して遊びに行く相談をしていた。「おい小島、お前も行
かないか」「おれは行かないよ。家で寝ころんでいた方が楽だ」・・・・・・・・
 そうではなく、夏休みは兄の仕入れの手伝いや、家の近所の空地を開墾している
父の手助けをしなければならなかったのだ。・・・夏休み直前、五年全員と四年
の希望者だけを集めて、合同実力考査があった。海彦は組主任に呼ばれ「どうして
受けないんだ?」「進学希望者だけかと思いました」「受けてみろ。四年も五年も
実力はそう変わらんぞ」「は。受けてみます」・・・教師のすすめで、試してみる
ことになった。・・・実力考査は三日間にわたって行われた。海彦は、その結果
期待に反して十番以内には入れなかった。自身もひそかに期待していただけに、失
望はしたがやはり、五年は一年上だけのことはあったのだ。・・・夏休みになった。
・・・海彦と雪子の二人は、春休みの時と同じような幾度か会う約束をした。・・・
 夏休中のある日、兄と嫂の話で小倉市への引越しが決まっているのを知った。
夏休みが終わって間もなく、兄の一家は、小倉市に転居して店を開くことになった。
・・・その家は狭かった。それで、海彦と父は、それまでの苅田の材木置場のなか
の家に残ることになった。毎月の生活費は兄が持ってくることになっている。・・・
 父と二人だけになった家は静かであった。静かな空気の中で、海彦はあたりを気に
することなく本を読み、少年らしい感慨にふけった。・・・
 その頃は海彦のいる角帽の中学校のなかにも共産党の細胞ができていて、海彦の
級友にも、いろいろな宣伝活動をする者もいた。海彦はそういう党員やシンパの
ものの考え方は根本的に正しいし、実践するということは立派なことだと、漠然と
直感していたが、自らすすんでその中に入ってゆく気はなかった。・・・・・

・・・・・映画【北国の街】の中での描写はないがの主人公(富島健夫)実生活の
場面だろうと思われる。・・・・・

 次回は、 第二章 [五]を紹介します。

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