良いことと悪いこと、人間は本当にそれがわかっているのだろうか
と、深く考えてしまうことがあります。
良いことだとわかっているなら、そうすればよい
悪いことだとわかっているなら、そうしなければよい
と、思うのです。
しかし、人間は、どうやら
良いことだとわかっていても、できず
悪いことだとわかっていても、してしまう
ことがあるようなのです。
でも、それは本当にわかっているのか?
わかっているようで、わかっていないのではないのか?
そんなことばかり考えることがあります。
今日、冬物の衣類をクリーニングに出しました。
クリーニング屋に行くと、奥からタバコの臭いが漂ってきています。
馴染みの店員さんが
「あーら、あなた、元気だった?ずっと福島に行っていたのよねー?」
と、声を掛けてくれました。
「今はどうしているの?またどこかでお料理を作っているの?」
と、聞かれたので
「いいえ、今は働いていないんですよ。でも、今月本を出版しました。」
「ええーっ!本って、自分で書いたの?」
「ええ。父が入院中に書いていた日記に、私が家族としての視点から文を書いたんです。」
「あらあ…、家族が病気になると、大変だものね。
そういえばこの間テレビで、肺の病気の人のことやっていたんだけどさ
肺がカチカチに固くなっちゃって、息ができなくて、あっという間に死んじゃったよ。」
「あー…、その方とうちの父、おそらく同じ病気です。
間質性肺炎といって、肺が固く、脆くなって、呼吸が困難になっていくんですよ。
その方はタバコを吸っていたんですかね?」
「え?タバコって悪いの?」
「悪いですよ。うちの父は肺気腫も患っていたので、完全にタバコ病ですよ。」
「そうなの?でも、タバコだけが原因ってわけでもないんでしょ?」
「そこはなんとも言えませんが、タバコが主たる原因ですね。
父はタバコを吸ってタバコ病になり、それが原因で死んだんですよ。」
「…。」
「タバコ、吸うんですか?」
「そうなのよ。」
「タバコ、やめてくださいね。」
「わかっちゃいるけどね…。」
「店員さんがタバコで病気になったら、家族の方や御友人が悲しむし、苦しむんですよ。」
「そうだよね。あなたも、お父さん亡くして、苦しんだの?」
「ええ。父の最期は壮絶でした。家族じゃなくても、その場にいたら
きっとみんな衝撃を受けるくらいすごかったんです。
私たち家族は、どうすることもできずにただ見ているだけ。
こんなになるまで、どうしてタバコをやめてくれなかったんだろうか
私は父を病院に連れていくことさえできなかったって、苦しんでいます。」
「そうなんだ。私なんか、世の中の役に立ちたいと思っていても
何の役にも立っちゃいないんだけど、家族は悲しむよね。」
「みんな、何らかの形で世の中のお役に立っているんですよ。
家族の方だけじゃありません、御友人も、そしてこのお店に来ているお客さんも
そして私も、店員さんがいなくなったら寂しいですよ。」
「そう?そう言ってくれるの?タバコ、やめなきゃね。」
「そうですよ。タバコ、やめましょうよ。」
私はクリーニングが仕上がったら、いや、そう言わずに
次の営業日に『タバコに奪われた命 父の「闘病MEMO」に寄せて』を持って
クリーニング店に行こうと決めました。
お節介かもしれませんが、店員さんにタバコをやめる「きっかけ」の一つを
作ってほしいと考えたからです。
タバコを吸っている皆さん、あなたがタバコによる病で倒れ、いなくなったら
家族をはじめ、御友人やあなたを愛している遺された人々が悲しみ、苦しむのです。
死は、誰にでも必ず訪れますし、自分の最期がどのようなものかわかる人などいません。
原因が特定できない、いわば不条理とも言える病にかかる人もいます。
そのなかで、病にかかるリスクが特定できているものの一つがタバコです。
リスクが特定できていて、自力で避けられるのに、それを選ばないのは
「タバコが悪い」と、本当にわかっているのでしょうか。
最新の画像[もっと見る]
- 健康増進法の見直し検討のためのオンライン署名にご協力をお願いします 3ヶ月前
- 宝塚大劇場が敷地内禁煙に 4ヶ月前
- 演劇舞台上での喫煙に対する申し入れとその結果 4ヶ月前
- 埼玉県東部地区議員有志勉強会「市民のための喫煙対策」 4年前
- 書評紹介 ~『働くもののいのちと健康』2020年夏号~ 4年前
- しんぶん赤旗金曜エッセイ「タバコよもやま話」 ⑤遺族の願い 4年前
- しんぶん赤旗金曜エッセイ「タバコよもやま話」 ④嘘の理由 4年前
- しんぶん赤旗金曜エッセイ「タバコよもやま話」 ③思春期の出来心 4年前
- しんぶん赤旗金曜エッセイ「タバコよもやま話」 ②大人の悪だくみ 4年前
- しんぶん赤旗金曜エッセイ「タバコよもやま話」 ①子どもがニコチン中毒に 4年前