児童虐待を防ぐために、行政機関だけではなく
全国の民間団体が様々な取り組みを行っています。
2006年からは、認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワークが総合的な窓口を担い
全国的にオレンジリボン運動として、児童虐待防止の活動を広げてきました。
しかし、残念なことに、児童虐待防止全国ネットワークは
児童虐待防止を活動の目的とする団体であるにもかかわらず
タバコ企業=フィリップモリスジャパン(以下PMJと略す)と協力関係を築いていました。
そのことを知ったのは、今年に入って、児童の受動喫煙の有無を調べるため
生徒のコチニン(ニコチン代謝物質)検査の実施状況を記した文献を探していた時でした。
日本小児禁煙研究会雑誌8巻2号68~71(2018年)で、鈴木修一医師は
「受動喫煙の側面から児童虐待に取り組むことについての一考察」を発表しています。
そこには
「児童虐待を啓発する日本のオレンジリボン運動がある。
この活動にフィリップモリスジャパン株式会社が協賛している」
とあり、大変驚きました。
鈴木医師も「協賛していることがわかり、驚くことになる」と書いておられます。
そこで早速、オレンジリボン運動のホームページを見てみると
確認できる範囲で、2009年度の公式ポスターコンテストにおいて
「フィリップモリスジャパン賞(以下、PMJ賞と略す)」という冠賞が設けられ
PMJのコメント付きで受賞作品が紹介されていました。
さらには、PMJは支援企業に登録されており
2006年度から支援が開始されていたこともわかりました。
「受動喫煙の側面から児童虐待に取り組むことについての一考察」に記されているように
「『子どもへの受動喫煙は虐待』の言葉は諸刃の剣である」としても
諸刃の剣になるのは、受動喫煙に曝されている子供のケアと
子供に受動喫煙をさせている大人への制裁を含めた、対応部分だと考えます。
「子供への受動喫煙は虐待」という概念のもと
「せめて子供には」あるいは「子供だけでも」受動喫煙から守られる環境が整っていくことを
否定する人はいるのでしょうか。
「せめて子供には」「子供だけでも」受動喫煙から守られる社会をめざして制定されたのが
東京都をはじめとした兵庫県・大阪府・福山市の
子ども(及び妊婦)を受動喫煙から守る条例や子どもの受動喫煙防止条例です。
また、改正健康増進法でも、受動喫煙でとくに影響を受ける子供や患者を守るという観点から
子供や患者が利用する施設は禁煙にすることが定められました。
子供への受動喫煙による健康影響だけでなく
海外では、葉タバコ栽培に貧困層の児童労働が行われており健康被害が出ていること
労働に充てる時間が優先されるため、子供が勉学の機会を奪われていること
子供を養育する大人の喫煙関連疾患による疾病・死亡で家族が経済的に困窮したり
子供が進学を断念せざるを得ない状況が生じていることなど
タバコによる子供への影響・被害は直接的・間接的に関わらず甚大であること
児童虐待防止とタバコ企業との協力は相容れないこと
タバコ企業の社会活動(CSR)はタバコ規制枠組条約(FCTC)に違反する、などの理由により
1月15日、オレンジリボン運動のホームページから問い合わせフォームを利用して
すぐにでもタバコ企業との協力関係を解消するよう要望しました。
また、児童虐待防止でオレンジリボン運動を推進している団体として
ホームページで児童虐待防止全国ネットワークを紹介している厚生労働省にも
児童虐待防止全国ネットワークとタバコ企業との間に協力関係があることを報告しました。
それに対し、15日のうちに、オレンジリボン(児童虐待防止全国ネットワーク)事務局から
「弊会のスタンス、そして対応については、
今後、理事会等にて検討するよう致します」
との回答がありました。
まずは、2019年度の公式ポスターコンテストにPMJ賞が継続されるか否かで
児童虐待防止全国ネットワークの「スタンス、そして対応」がわかるというものです。
その結果はというと…
2019年度公式ポスターコンテストからは、PMJ賞がなくなっていました
しかし、依然としてPMJは支援企業に名を連ねています
そこで、2019年度公式ポスターコンテストの結果発表を受けて
タバコ企業の協力・支援の解消はポスターコンテストのみか
あるいは活動全般において、今後タバコ企業との協力体制を解消する意思はあるのか
8月21日にホームページの問い合わせフォームを利用して
児童虐待防止全国ネットワークに質問したところ
本日9月9日に、事務局から回答がありました。
「関係性等について、無くす方向で進めています。
ご理解賜りたく、よろしくお願いします」
ポスターコンテストの冠賞がなくなったことは喜ぶべきことですが
今後は、来年度の支援企業としてPMJが継続して名を連ねているかを
しっかりと監視したいと思います。
また、先生にコメントをいただき、大変うれしく、感激しております。
お手すきの時でかまいませんので、専門家として、タバコ企業から支援を受けることの問題点をオレンジリボン運動事務局にお話しいただき、本件についての後押しをしてくだされば、鬼に金棒です。
どうか、よろしくお願い申し上げます。