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『年上の彼女』と同じ時期に書いたお話です。
ここでは、年下の子との恋愛というよりも、ちょっと手出しをするのは憚られる相手がいたとして、積極的な女の子のアプローチに譲二さんはどう対処するだろう? という興味で書き始めました。
吉恋のヒロインはそんなに積極的というわけではないですからね。女の子の方から抱きついてくるようだったら、どうするの? って。
この話はまだラストが確定してない…と言うか、途中で止まってます。
だけど、upするうちに続きの話も書けるようになるといいな…という希望的観測でupしていきます。
☆☆☆☆☆
譲二ルート以外のどれかのルートの譲二さん。
本編のヒロインは大学を卒業して就職、クロフネを出ている。
☆☆☆☆☆
彼女の秘密~その4
〈譲二〉
数日後、店にハルがやって来た。珍しく普段着ではなく、スーツを着ている。
譲二「どうしたの? まだ仕事中だろ?」
春樹「ええ、実は仕事で来たんです」
譲二「どういうこと?」
春樹「バイトの汐里ちゃんに話があるんです。うちの事務所に依頼が来て、俺が担当になったんですが…」
俺は二階にいた汐里ちゃんを呼んだ。
汐里「マスター、なあに?」
譲二「お客さんだ…。といってもハルだけど、今日は仕事で来たらしい」
汐里「ハルくん?」
汐里ちゃんは怪訝そうに俺とハルの顔を見比べた。
譲二「俺は席を外した方がいいのかな?」
春樹「そうですね…。本当はそうしないといけないんですが、汐里ちゃんがジョージさんにいて欲しければ俺はかまいません」
汐里「お話って、父のことですか?」
春樹「ええ」
汐里ちゃんは強ばった顔で言った。
汐里「それじゃあ、マスターも一緒に話を聞いてください」
ハルが少し言いにくそうに話し始める。
クライアントは汐里ちゃんの父親だった。
汐里ちゃんの父親は汐里ちゃんやその母親のことは家族に秘密にしていたため、汐里ちゃんが現れると非常にまずい。
だから、手切れ金で身を引いて欲しいということだった。
汐里「すみません。せっかく来ていただいて申し訳ないですけど…。
私、お金に困っているわけじゃないですから…。
母がそれなりのものを残してくれましたし…。
ここでお世話になって、それなりに働いていますし…」
ハルはため息をついた。
春樹「汐里ちゃんがお父さんに会いたいだけだと言うのは、俺にも分かるよ。
クライアントの意向とはいえ、こういう話を持って来てしまって、すまなかったね」
譲二「ハルはこの話をまとめて帰らないといけないんじゃないの?」
春樹「それはそうなんですけど…」
譲二「仕事とはいえ大変だね。……ご家族に内緒で汐里ちゃんと会うわけにはいかないのかな?」
春樹「俺もそう提案はしてみたんですけど、とにかくことを荒立てたくないみたいで…。
でも、この案件もって帰ってもう一度話し合ってみます」
譲二「ハルが悪いわけじゃないのに、ホントごめんね」
汐里「すみません。よろしくお願いします…」
ハルが帰った後、今にも泣き出しそうな汐里ちゃんを抱きしめる。
彼女がなぜこんなオジサンの俺を好きになったのか、少しだけ分かった気がする。
彼女が求めているのは父親なんだろう。
俺はその代わりというわけだ。
今までも、彼女には手を出さないように気をつけていたが、これでますます手を出すわけにはいかなくなった。
汐里「ハルくんにもマスターにも迷惑かけて、ごめんなさい」
譲二「俺も別ルートで汐里ちゃんのお父さんのこと調べているから、また何か分かると思うよ。そっちからも、汐里ちゃんに会ってもらえるように頼んでみるから…」
汐里「うん…。ありがとう、マスター」
汐里ちゃんがにっこり笑う。
そうだよ。こんな彼女の笑顔を俺は見たいんだ…。
でも、なぜ?
もちろん、そこに邪な気持ちなんて…ないよね。
『彼女の秘密』 おわり