恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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怪談in吉祥寺恋色デイズ:2人目

2015-08-12 06:54:52 | 吉祥寺恋色デイズ

 

これは昨年の8月にupしたお話の再掲です。
去年からブログに来てくださっている方、もう読んだよ~って方はごめんなさい。
新規のお話はしばらくお休みしますね。

 

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暑い夏が続きますね。
そろそろ身体もこの暑さに疲れて来る頃です。
そんなあなたに、気分だけでも涼しさを味わってもらおうと怪談話を企画しました。


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2人目 佐東一護

竜蔵「お化けは見れたか?」

理人「何もないよ。はいこれ」

りっちゃんがトイレットペーパーの切れはしをヒラヒラさせる。

剛史「あっちのテーブルに箱があるからそこに入れてくれ」

一護「そろそろ俺の話を始めてもいいか?」

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『幽霊滝の伝説』

 伯耆の国、今の鳥取県の黒坂村の近くに、幽霊滝という滝がある。

 なぜ、その滝が幽霊滝といわれているのかは分からない。その滝壺のほとりに、氏神をまつった小さな祠があって、土地の人はこれを滝大明神と呼んでいる。
 祠の前には、木でできた小さな賽銭箱がある。この話はこの賽銭箱にまつわる話だ。


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 昔まだ明治になったばかりの頃、ある凍てつくような冬の夜に、黒坂村の麻とり場(植物から麻の繊維をとる仕事をしている場所)に雇われている女たちが、1日の仕事を済ませ、くつろいでいた。
 女たちは麻とり部屋の大きないろりを囲んで、様々な怪談話を楽しんでいた。それぞれがとっておきの怖い話をみんなに聞かせて、10話くらいにもなった頃のことだ。
 その場にいたものは、誰も彼も、なんとなくゾクゾクと身の毛のよだつような気味悪さを感じていた。
 その時、ひとりの娘が、そのゾクゾクするような怖さをいっそう増そうと、
「ねぇ、誰か今夜これからたった一人で、幽霊滝へ行ってみたらどう?」
と、言い出した。
 この思いつきを聞いて、その場にいたものはみんな思わずわっと声をあげると、続いてうわずった声でどっと笑い声をあげた。
 と、そのうちの1人が挑発するようにこんなことを言った。
 「そんな勇気のある人がいるなら、私は今日とった麻を全部その人にあげるよ」
 すると、別の女が
「私もあげる」とそのそばから言い出した。
「私もあげるよ」
と3人目の女も言い出した。
「みんな賛成だよ」
と4人目の女がキッパリと言いきった。

 その時、一座の中の安本お勝という大工の女房が立ち上がった。
 お勝は2歳になる一人息子を温かそうにねんねこ半纏(ばんてん)でおんぶして寝かしつけていた。
 お勝が言う。
「ちょっと、ほんとにみんなが今日取った麻を全部くれるんなら、あたしがこれから幽霊滝に行って来るよ」
 お勝のこの申し出を聞くと、一座のものたちは驚き蔑むような声をだした。
 けれども、お勝が何度も繰り返してそういうので、とうとう最後にはみんなはそれを本気にした。
 女たちは銘々口々に、お勝が本当に幽霊滝に行くならば、今日取った麻は全部お勝にやると言った。
「だけどさ、お勝さんがほんとに幽霊滝に行ったかどうか、私らにはどうして分かるのさ」
と誰かの甲高い声がした。
「そうだねぇ。そんなら、こうしようじゃないか。あそこにあるお賽銭箱をお勝さんに持って来てもらおうじゃないか。それが何よりの証拠になるからね」
 そう答えたのは、ここの女たちから普段「おばあさん」と呼ばれている老婆だった。
 お勝は
「ええ、持って来るよ」
と叫んだ。

 そして、眠った子を背中におぶったまま、お勝は表へ駆け出して行った。

 その晩はひどく寒い夜であったが、空はよく晴れていた。
 お勝は人っ子一人いない往来をスタスタと歩いて行った。身を切るような寒さに、どこの家も表の大戸を堅く閉めていた。
 やがて村を出るとお勝は街道を駆け足でたどった。道の両側は凍てついた田んぼで、ひっそりと静まりかえり、星明かりがさしているだけだった。
 広々とした街道を30分ほど歩いていくと、崖下へ下りる狭い道へと折れた。先に行くにつれ、道はますます暗くでこぼこになっていった。
 しかし、お勝はよく勝手を知っていた。間もなく滝の微かな響きが聞こえて来た。
 さらに、しばらくいくと道は広がって谷になり、微かな響きが急に轟々と鳴り響く轟(とどろ)きに変わった。
 そして、目の前の一面の暗闇の中に、滝の細長く垂れた水あかりがぼぉっと浮き出て見えた。小さなやしろもぼんやり見え、賽銭箱もうっすらと見えた。
 お勝はそこに駆け寄って、手を差し伸ばした…。

「おい、お勝さん」
と、突然轟く滝の音の中から警告するような声が呼びかけた。

 お勝は恐ろしさにその場に立ちすくんだ。

「おい、お勝さん」
と、再びその声が響き渡ったが、今度は前よりもいっそう脅すような語気を帯びていた。
 しかし、お勝は本当に大胆な女だった。すぐさま気を取り直すと、賽銭箱を引っ掴んで駆け出した。
 もう別に嚇し付ける声も聞こえなければ、姿も見えず、ともかく街道までたどり着いた。
 それから、しっかりした足取りで、ひた走りに走り続けた。こうして、とうとう黒坂村に着くと、麻とり場の戸をはげしく叩いた。

 お勝があえぎながら、賽銭箱を手に持って入って来た時、女たちはどんなに声をあげて驚いたことか!
 みんな息を殺して、お勝の話を聞いた。そして、幽霊滝の中から何者かが2度までも自分の名を呼んだという話をお勝がした時には、みんな同情するように悲鳴まじりの声をあげた。
 ……まあ、なんという女(ひと)だろう。ほんとうにお勝さんは気丈だよ。そりゃみんなの取った麻を全部もらうだけの価値はあるわよ。

 ……そのとき、かの老婆が言った。

 「そういや、坊やはさぞ寒かったろう。さあ、この火の側につれておいで」

 「もう、お腹も空いたろう」と母親は言った。
 「すぐにお乳をやらないと」

 「おお、おお、かわいそうに」
と、老婆はお勝が子供をおぶったねんねこ半纏の紐を解くのを手伝ってやりながら、
「おや、お前さんどうしたんだい。背中がぐっしょり濡れてるよ」
そう言うか言い終わらないうちにしわがれ声で叫んだ。

 「ありゃ、血が…」

 解いたねんねこ半纏の中から、床に転がり落ちたものは血だらけになった一括りの赤ん坊の着物だった。
 その着物からは、2本の小さな手と足とが、にょっきりと突き出ているばかりであった。

 子供の首は、いつの間にか、もぎ取られていたのだった。

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一護「あーあ、肝試しか。たるいな……トイレに行くだけなんだから、1階のでもいいだろ?」

剛史「それじゃ面白くねぇーだろ」

理人「2階のトイレだって別に怖くはなかったよ」

一護「単に2階まで上がるのがめんどくせーだけだよ」

春樹「一護…もしかして怖いの?」

一護「怖くねーよ!」

竜蔵「じゃあ、さっさとすまそうぜ」

百花「一護くん頑張ってね」

一護「お、おう」



理人「いっちゃん、懐中電灯。廊下にはトラップみたいにマスターの本があるから気をつけたほうがいいよ」

一護「サンキュ」

3人目へつづく

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昨年これをupした後で番外編の『福引温泉旅行』を読んで、いっちゃんが幽霊なんかの怪談が苦手な人だったと知った(^_^;)。
そこで、今回再掲するにあたって、エピソードを膨らませてみました。