一ヶ月くらい前からこのブログを有料のサービスに変更した。
で、アクセス解析(と言ってもホント貧相)が出来るようになって驚いたことがいくつかある。
意外な検索ワードによってたどり着く人たち……。
その中で特に驚いたのは、一番コンスタントにアクセスされるのが05年に書いた「現代語から古語を引く辞書」という記事だという事実。
どういう人が検索してるのか判らないけれど質問サイトの回答欄にもリンクがあるのでここに流れてくる人がいるらしい。
そうえいば、って、更に余談になるけれど、その回答欄に「現代文を古文にする」と言うのもある。まぁ、翻訳ソフト。
これでは全然古文にならない。
古語を使った現代文だ。
この辺で、古文と現代文と言うのは、単語や文法レベルの変化ではなく、文体の更新だったのだ、と言うことが何となく見えてくると思う。
文語文のこと、侍言葉のことについて書いた所なども参照。
さて、今日、他の書きかけより先にこの記事を書かねば、と思ったのは、昨日の検索ワードに「北尾重寅」というのがあったからで……。
これは「訂正が必要?」というウィキペディアの危険性について書いた記事のコメント欄に山東京伝についてのウィキペディア記事の間違いについても書いた所に出てくる引用。
浮世絵師・北尾重寅に学び、草双紙(黄表紙)の挿絵画家、北尾政寅としてデビュー。のちに戯作者に転じ、山東京伝と号した。
これね。
単純な誤字なんだか、原因はよく判りません。
なんだけど、私のコメントはちょっと皮肉っぽい書き方で誤解を招きそうだなぁ、と言うわけで。
北尾重寅なんて人はいません。勿論「政寅」も。
いや、もしかしたら居たかも知れないけど、少なくとも京伝を語る時に出てくるような人の中には居ないでしょ?
ウィキペディアの記事を書いた人が、何を見たのか、或いは何を思ったのか(わざと間違いを残しておく、と言う手はあるらしいので)は判らないけれど、これは前の記事に書いた天一坊の間違いなどとは桁違いの「社会的影響力」を持っているように思う。
と言うことを証明するためには、ネット上の記事の初出時間を検証するというややこしい手続が必要なのだけれど……。
とりあえず、ウィキペディアの当該記事の履歴。
最古の記事は「2004年11月7日 (日) 14:25; Chuta」。
この時点で
浮世絵師・北尾重寅に学び、草双紙(黄表紙)の挿絵画家、北尾政寅としてからデビュー。
と言う文は既にある。
それから30回以上の修正が施されているのに、ここは変わっていない(「から」は削除。多分版元名を入れるつもりだったんじゃないかな)。
これ、全部時系列チェックした上で、ネット上の「共通誤謬」を見つけていけばどうやって継承されたか、と言うことも見えてくるはず。
Google検索「北尾重寅」でヒットするのはそのままウィキペディアを流用している辞書のような二次使用が多い。
これはまぁ、除外。
新聞記事を使って番組作ってしまうワイドショーみたいで気持ち悪いけどね。
しかし、中には「自分の文章」のようにした解説も見える。
たとえば、と言って個人のブログをあげつらうもの申し訳ないけれど、『京伝怪異帖』(高橋克彦)のレビュー記事(2007.06.03)。江戸通のような書きぶりなのにねぇ。
って、もしかして高橋克彦が小説の中で仮名を使ってる??
も一つ個人ブログ。
広告業界の人が英語版ウィキペディア"manga"を揶揄する記事(2008年7月 8日)の中で、ご自分はすっかり日本版ウィキペディアを鵜呑みにして間違った解説をしてしまったと言うトホホな例。
Kitao Shigemasaというのは、浮世絵師の北尾重政です。ちなみに、山東京伝のお師匠さんが北尾重寅。
この人は江戸のことも漢字のことも素人のようなのであまり攻めるのは申し訳ないけれど、『四時交加』は、探せば直ぐにでも見つかる本なんだから見て欲しかったなぁ。
これね(複製使用)。
この辺、後期の授業で話すけど、現代のクリエーター達が京伝を知らないのはホントにもったいないですよねぇ、彦星先生!
或いはオフィシャルでも。
碑文谷の圓融寺は、京伝の黄表紙に出てくると言うので、詳細な解説を書いているのだけれど、どうしたわけか
深川の質屋の生まれで、若くして浮世絵師・北尾重政に師事し、北尾重寅の名で黄表紙の挿絵などを書いていましたが、後に山東京伝と号して黄表紙や洒落本の作品を数多く世に出しました。
と、なぜか微妙な修正つき。
広告業界の人のブログを参考にしたのかな?
「Copyright© 2008」とあるので、これも新しい記事。
きりがないのでやめておきましょう。
前の記事にも書いたけれど、そんなに言うならウィキペディア訂正すればいいじゃないか! と言う話ではないのです。
どんな辞書もみんな似たようなモノだ、と言う前提で、こういう言説が流通するのも噂が流通するのも、新聞記事も教科書も、私にとっては同じなんですよね。
“本当のこと”はどこまで行っても「決まらない」。
そして、我々は、何を信じるのか、なぜそれを信じるのか、自分で判断しなきゃね、と言う、当たり前のことをスルーしている事をちゃんと意識しましょうよ、というわけです。
私だって、知らない間にそういう思いこみを沢山しているはず。
このブログでも、自分の知らないジャンルのことでは随分ウィキペディアにリンクしてるし。
それが、どんどん“事実”になっていく。
前に書いたお地蔵さんも然り。
何か権威的なモノを作り上げたり“訂正”したりすることが“事実”(“真実”ってか?)を決めるんじゃなくて、物語の不断の更新そのものの中にしか“事実”はそもそも存在しないんだよ、と。
戸坂潤がいきなりポストモダンに繋がったりするところが面白い。
で、アクセス解析(と言ってもホント貧相)が出来るようになって驚いたことがいくつかある。
意外な検索ワードによってたどり着く人たち……。
その中で特に驚いたのは、一番コンスタントにアクセスされるのが05年に書いた「現代語から古語を引く辞書」という記事だという事実。
どういう人が検索してるのか判らないけれど質問サイトの回答欄にもリンクがあるのでここに流れてくる人がいるらしい。
そうえいば、って、更に余談になるけれど、その回答欄に「現代文を古文にする」と言うのもある。まぁ、翻訳ソフト。
これでは全然古文にならない。
古語を使った現代文だ。
この辺で、古文と現代文と言うのは、単語や文法レベルの変化ではなく、文体の更新だったのだ、と言うことが何となく見えてくると思う。
文語文のこと、侍言葉のことについて書いた所なども参照。
さて、今日、他の書きかけより先にこの記事を書かねば、と思ったのは、昨日の検索ワードに「北尾重寅」というのがあったからで……。
これは「訂正が必要?」というウィキペディアの危険性について書いた記事のコメント欄に山東京伝についてのウィキペディア記事の間違いについても書いた所に出てくる引用。
浮世絵師・北尾重寅に学び、草双紙(黄表紙)の挿絵画家、北尾政寅としてデビュー。のちに戯作者に転じ、山東京伝と号した。
これね。
単純な誤字なんだか、原因はよく判りません。
なんだけど、私のコメントはちょっと皮肉っぽい書き方で誤解を招きそうだなぁ、と言うわけで。
北尾重寅なんて人はいません。勿論「政寅」も。
いや、もしかしたら居たかも知れないけど、少なくとも京伝を語る時に出てくるような人の中には居ないでしょ?
ウィキペディアの記事を書いた人が、何を見たのか、或いは何を思ったのか(わざと間違いを残しておく、と言う手はあるらしいので)は判らないけれど、これは前の記事に書いた天一坊の間違いなどとは桁違いの「社会的影響力」を持っているように思う。
と言うことを証明するためには、ネット上の記事の初出時間を検証するというややこしい手続が必要なのだけれど……。
とりあえず、ウィキペディアの当該記事の履歴。
最古の記事は「2004年11月7日 (日) 14:25; Chuta」。
この時点で
浮世絵師・北尾重寅に学び、草双紙(黄表紙)の挿絵画家、北尾政寅としてからデビュー。
と言う文は既にある。
それから30回以上の修正が施されているのに、ここは変わっていない(「から」は削除。多分版元名を入れるつもりだったんじゃないかな)。
これ、全部時系列チェックした上で、ネット上の「共通誤謬」を見つけていけばどうやって継承されたか、と言うことも見えてくるはず。
Google検索「北尾重寅」でヒットするのはそのままウィキペディアを流用している辞書のような二次使用が多い。
これはまぁ、除外。
新聞記事を使って番組作ってしまうワイドショーみたいで気持ち悪いけどね。
しかし、中には「自分の文章」のようにした解説も見える。
たとえば、と言って個人のブログをあげつらうもの申し訳ないけれど、『京伝怪異帖』(高橋克彦)のレビュー記事(2007.06.03)。江戸通のような書きぶりなのにねぇ。
って、もしかして高橋克彦が小説の中で仮名を使ってる??
も一つ個人ブログ。
広告業界の人が英語版ウィキペディア"manga"を揶揄する記事(2008年7月 8日)の中で、ご自分はすっかり日本版ウィキペディアを鵜呑みにして間違った解説をしてしまったと言うトホホな例。
Kitao Shigemasaというのは、浮世絵師の北尾重政です。ちなみに、山東京伝のお師匠さんが北尾重寅。
この人は江戸のことも漢字のことも素人のようなのであまり攻めるのは申し訳ないけれど、『四時交加』は、探せば直ぐにでも見つかる本なんだから見て欲しかったなぁ。
この辺、後期の授業で話すけど、現代のクリエーター達が京伝を知らないのはホントにもったいないですよねぇ、彦星先生!
或いはオフィシャルでも。
碑文谷の圓融寺は、京伝の黄表紙に出てくると言うので、詳細な解説を書いているのだけれど、どうしたわけか
深川の質屋の生まれで、若くして浮世絵師・北尾重政に師事し、北尾重寅の名で黄表紙の挿絵などを書いていましたが、後に山東京伝と号して黄表紙や洒落本の作品を数多く世に出しました。
と、なぜか微妙な修正つき。
広告業界の人のブログを参考にしたのかな?
「Copyright© 2008」とあるので、これも新しい記事。
きりがないのでやめておきましょう。
前の記事にも書いたけれど、そんなに言うならウィキペディア訂正すればいいじゃないか! と言う話ではないのです。
どんな辞書もみんな似たようなモノだ、と言う前提で、こういう言説が流通するのも噂が流通するのも、新聞記事も教科書も、私にとっては同じなんですよね。
“本当のこと”はどこまで行っても「決まらない」。
そして、我々は、何を信じるのか、なぜそれを信じるのか、自分で判断しなきゃね、と言う、当たり前のことをスルーしている事をちゃんと意識しましょうよ、というわけです。
私だって、知らない間にそういう思いこみを沢山しているはず。
このブログでも、自分の知らないジャンルのことでは随分ウィキペディアにリンクしてるし。
それが、どんどん“事実”になっていく。
前に書いたお地蔵さんも然り。
何か権威的なモノを作り上げたり“訂正”したりすることが“事実”(“真実”ってか?)を決めるんじゃなくて、物語の不断の更新そのものの中にしか“事実”はそもそも存在しないんだよ、と。
戸坂潤がいきなりポストモダンに繋がったりするところが面白い。
私たちが仕事でよく言われるのは、
「二次情報(伝聞に基づくもの)には気をつけろ」です。
一次情報(当事者の話)が取れないものについてはなるだけ語るな。どうしようもない時には最低限、出典を明確にせよ。
カール・ポパーの、「反証可能性」です。
「出典を明確にしないとダメ」、という記事を書いていて、これですよ(笑)。
て、それも実は昔から一緒なんですよね。
それでも可能な限り裏を取らないと。
あと京伝については、ウィキペディアの他に
デジタル版 日本人名大辞典+Plus
http://kotobank.jp/word/%E5%B1%B1%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%BC%9D
がありました。
これが最善だとも思いませんが、やっぱり複数見比べる、と言うのは基本ですね。
えらそうなことを言ってる責任上、私が書いた辞書記事を晒しておきましょうかね。
http://koneeta.hp.infoseek.co.jp/zisyokizi.html
文字制限など、いろいろ制約があるんですが、どの記事にもかなり新しい情報を入れているつもり。
「漫画」という言葉の由来を説く文章で山東京伝編の「四時交加」という書名を上げる人がネット上に大勢いらっしゃいますが、これは「四季交加」の誤りではないでしょうか。
図書館データベースでは「四季交加」しかヒットしないのです。
"四時交加" の検索結果 約 7,480 件
"四季交加" の検索結果 約 209 件
なのですが、出版物や書誌情報らしきものに辿りつけるのは「四季交加」の方なので。
なぜかこのコメントを見逃していました。
手元の複製本を使ったんですが、気にしてませんでした。
江戸時代の書物の名前を何処で判断するか、というのはとても難しい問題です。
題簽は残らなかったり張り替えられたりすることが多いので、特別な事情がない限り正式書名としては使用しづらいと言う事情もあります。
しかし、本書の場合、
http://yajifun.tumblr.com/post/510545215
この方のご意見はもっとももですね。
江戸時代以前の書物の名前というのは、一つに固定した表記があるわけではない、と言うのが大前提なんですが、それでも検索出来なかったりすると不便なのは確かですから、今は、大きな図書館のOPACでは様々な題のどでれも検索可能にしていますね。
ご賢察の通りyajifunというスクラップブックのようなサイトの主でございます。この度は門外漢のトンチンカンな質問に丁寧にお返事いただきましてありがとうございました。
題簽が紛失しやすいために内題が優先されるというお話は大いに腑に落ちました。
なお、私の記事のローマ字表記に単純なミスがある事に気付かされましたので、訂正して再ポストいたしました。重ねて御礼申し上げます。
なんだかたどたどしい説明になってしまい、失礼いたしました。
愉しく勉強させていただきました。
あらためて、細かい疑問を検証することの大切さを学んだ次第。
http://blog.goo.ne.jp/koneeta/e/3d9d2259a4916ef3930f654abec2b153
http://blog.goo.ne.jp/koneeta/e/8869b954bb799698d1f40baea271378a
と続いていますので是非ご笑覧の程。