◇8月30日(火曜日)晴れ
日本3-1チャイニーズタイペイ
前日のパキスタンにくらべるとチャイニーズタイペイ(以下台湾)は問題にならないくらい強かった。先発・胡(ヒュ)智為(右右・183/95)はMAX146キロのストレートが左肩の早い開きによってシュート回転する悪癖はあったが、力で押さえ込む球威があり、日本打線を7回途中まで7安打、3失点に抑えた。
打線は4番・楊(ヤン)宏聖(二塁手・右右・174/68)が3打数3安打の大当たり。最初の2安打は歳内宏明(聖光学院・右右・182/82)、3打席目の中前打は野田昇吾(鹿児島実・左左・167/64)から打ったもので、いずれも十分呼び込んでからセンターを中心に引っ張った打球。プルヒッティングを身上とする台湾野球をみごとに引き継いでいた。
走力に注目すると「一塁到達4.3秒未満」のタイムクリアは3人5回を数えた。私の印象では、走る野球とは縁遠いのが台湾野球。しかし1番・林(リン)子偉が3回記録し、第2打席の遊撃安打は3.99秒という速さだった。林の走塁、楊の打撃に新旧の台湾を見たような気がした。
さて日本チームでは1番・捕手の近藤健介(横浜・右左・172/83)が光った。世界大会と言っても、日本選手のほとんどはエキシビションゲームくらいの意識しかなかったのではないか。1回、1死一塁で高橋周平(東海大甲府・遊撃手・右左・185/83)が3-6-3の併殺打を打ったときの一塁到達は5.18秒。一塁手がボールを捕ってすぐベースを踏んでいるので一生懸命走れない気持ちはわかるが、WBCのような真剣勝負の場なら5秒以上の走塁は“自分的“に許せないはず。
そういう中で、近藤は攻守に溌剌としていた。攻では第1打席がシュート回転した143キロを打って遊撃エラーで出塁、このときの一塁到達が4.38秒とまずまず。第4打席が114キロカーブを十分すぎるくらい呼び込んで右中間フェンス下部を直撃する二塁打。あとの3打席はいずれも四球で、3回には二盗に成功、高橋の右前打で先制のホームを踏んでいる。
守では3回と8回に二盗を阻止する2.1秒台のスローイングを見せた。2秒切りが強肩の目安であることは確かだが、2秒切りより大事なのが正確なコントロール。2本ともベース周辺に糸を引くような軌道で投げ、いずれも刺したのは俊足の林子偉。実戦的な肩はネット裏に居並ぶスカウトの胸に響いたのではないか。
[この日目立った好選手]
◇野田昇吾(鹿児島実・投手・左左・167/64)5.0回3安打3三振0自責点
右打者が多い台湾打者の胸元にMAX144キロのクロスファイアーを連発する
◇高橋周平(東海大甲府・遊撃手・右左・185/83)3打数1安打1打点
3回、前進守備の一、二塁間を破る先制打。遊撃手としての二塁送球も丁寧
◇吉永健太朗(日大三・投手・右右・182/80)0.2回0安打2三振0自責点
9回1死二塁で救援。MAX145キロのストレートを見せ球にしてスライダー勝負
[雑感]
韓国人主審・朴成凌氏の国際感覚と、日本人選手の日本的習慣の齟齬が目立った。
◇捕手・近藤がマウンドに行こうとして止められる ◇捕手・近藤が守備位置を少しだけ右に外れてセンターに前進するよう指示を出して注意される ◇タイムを取り監督、捕手と内野手がマウンドに集まると、捕手以外の内野手が守備位置に戻される
台湾の選手がこういうことで主審から注意されることは一度もなかった。見ていて私も、「えっ、いいんじゃない」と思うことばかりだったが、多分、遅延行為という判断なのだろう。日本野球は日本的習慣を見直して、国際感覚に近づいたほうがいいのかなと、自戒をこめて考えさせられた。