◇10月25日(火曜日)晴れ
東洋大6-1青山学院大
東都大学リーグ/神宮球場
ドラフト1位候補、藤岡貴裕(東洋大)が余裕のピッチングで青山学院大を1失点完投で退けた。この1失点にしても藤岡のせいではない。9回裏、2死一、二塁の場面で、最後の打者になるはずだった筒井章平の打球はレフトライン付近に高く上がった。誰もがこれで試合終了と思った直後、左翼手と遊撃手がお見合いしてボールは2人の間にポトリと落ちた。2死なので二塁走者はもちろん生還、一塁走者と打者走者は揃って二、三塁に進んだ(記録は二塁打)。
このプレー直後、藤岡はマウンドを蹴り、怒りを露わにした。そして、代打安田紘規に対して147、149キロのストレートを連発して追い込んだ。安田を迎えるまでのストレートの最速は146キロだった。こういう藤岡を一度も見たことがないので新鮮だった。そして、怒りのストレートを連続して投じたあと、力を抜いたスライダーを投げ、見逃しの三振に斬って取っている。急速に沸騰しながらスッと冷める。強弱の感情の制御は、緩急を駆使する投球術にも通じ、改めて藤岡の凄さを再認識した。
この試合は藤岡のピッチング以外でも見どころがあった。何かと言うと、バントがゼロだった。東洋大なら先頭のランナーが出たのは3、4、5、9回と4度あったが、3回は1番小田裕也がヒットで出塁して2番上原悠希が右飛、4回は8番鮫島勇人がヒットで出塁して9番森智仁が三振という具合に強攻している。
アマチュア野球にバントはつきものだが、10月11日の東洋大対亜細亜大戦(東洋大の5対1。7回まで2対1と接戦)は東洋大の1回だけ、10月1日の明治大対慶応大戦(慶応の2対0)も慶大の1回だけでわかるように、強豪同士の試合では、何でもかんでもバントで走者を得点圏に進める作戦は取っていない。高校野球の無節操とも思えるバントの横行を見続けているので、こういう大学生の試合は見ていて気持ちがいい。
東都の話題をもう少し続けたい。打撃成績を見ると、打率上位は東洋大と青山学院大が独占している。
1位 政野 寛明(青学大).350
2位 小田 裕也(東洋大).349
3位 佐野 力也(青学大).345
4位 杉本祐太郎(青学大).327
5位 緒方 凌介(東洋大).317
6位 鈴木 大地(東洋大).304
チーム打率も前日まで両校が2割6分台で、他の4校は2割0分台を低迷している(後藤譲氏調べ。亜大がそれでも優勝争いをしているのは、東浜巨、九里亜蓮の投手力に依るところが大きい)。この日の試合がバント0だったのはこの打撃成績を見れば当然だったのかもしれない。それにしても、青学大、東洋大と他の4校の差は不可解とも言えるくらい大きい。