◇6月19日(日曜日)内海・島岡ボールパーク/くもり
日米親善高校野球試合・東京大会
東京選抜対アメリカ
●第1試合に登板した投手……吉永健太朗(日大三3年・右右・182/80)、溝口太一(佼成学園3年・右右・171/66)、鮎田純一(安田学園3年・左左・176/70)、伊藤拓郎(帝京3年・右右・185/85)、三竹芳孝(実践学園3年・右左・170/60)
●第2試合に登板した投手……吉本祥二(足立学園3年・右右・186/75)、谷昴輝(東海大高輪台3年・左左・175/62)、川口貴都(国学院久我山2年・右右・180/82)、小野央也(早大学院3年・右右・185/75)、鈴木誠也(二松学舎大付2年・右右・180/80)
スカウト氏が計測するスピードガン表示を後ろから見た友人によると、この2試合に登板した投手のストレートの最速は次の通り。吉本148キロ、吉永142キロ、川口142キロ、伊藤138キロ……等々。
さて、この2試合はネット裏から見たと言っても真後ろではなく第1試合が一塁寄り、第2試合が三塁寄りだったので、肩の開きや、変化球の曲がりがよく見えなかった。球場に着いたのは試合開始1時間半前の8時半。それでもスタンドに入ったら超満員で、2試合立ちっ放しを覚悟したが、運よく席を確保できた。そういう状況の中で観戦していることを前もって断わっておく。
第1試合に先発して3回を投げ、3安打、3三振、無失点に抑えた吉永は、数字以上に見事な投球だった。これまで、真後ろから見る吉永はテークバックのヒジのたたみが早く、ピッチング全体が窮屈に見えたが、一塁側(30度くらいの角度)から見るとヒジのたたみに余裕があり、ヒジを起点にした腕の振りがよく理解できた。
ストレートはいわゆる“潰している”と言われるリリースから投じられているので低めに伸びる。さらに右打者の内角に腕を振ってストレートを投げられるのは、左肩の早い開きがなかったからだろう。
スライダーは時折抜けた。一塁寄りから見ていると、このスライダーの抜け球のときはヒジの立ちが緩み、ストレートのときはしっかり立っていた。これはバッターボックスの打者からも見えるので、夏までには直したい。
4番手で登板した伊藤は8回表、無死一、二塁にしたところで右肩に張りを訴え、降板した。結果は1回3分の0を投げ、2安打、1四球、2失策で1失点(0自責点)。マスコミ関係者の評価は総じて低かったが、私にはよく見えた。
昨年までの伊藤は体重移動の中に強弱のメリハリがなく、フィニッシュまでダラダラ流れているように見えた。言い換えれば下半身の動きより、腕が先に触れているように見えた。それでもストレートが140キロ台後半を記録すればマスコミもファンも高く評価した。
そんな伊藤が危なっかしく、いいことはほとんど書いてこなかった。1年夏の甲子園で衝撃の148キロを出したとき、知り合いのテレビマンは「凄いですね~」と共感を求めてきたが、「投げ方がよくないんですよね」と言って笑顔を凍り付かせた。
この日の伊藤は始動からフィニッシュまでの流れに、強弱のアクセントに加え、粘りがあった。動き始めから、投げた球が捕手のミットに収まるまでの投球タイムは、昨年選抜時が2秒ちょっとだったのが、この日は2.5秒以上あった。また、始動の足上げを体の前(打者寄り)で行うことで、投げに行くときの体のねじれを解消し、結果的に左肩の早い開きを抑えることができた。さらにもう1つ、昨年選抜時はワインドアップで投げていたのが、この日はノーワインドアップで投げていた。
こういう“工夫”が昨年までの伊藤には見られなかった。素質が群を抜いて高いため、工夫しなくても「超高校級」と言われるようなストレートが投げられ、周囲の評価も高かった。そんな投手に心魅かれるわけがない。しかし、この日の伊藤には工夫と、フォームに対する探究心があった。ついでに付け加えると、一塁に走者を置いたときのクイックが昨年の選抜時は1.2秒前後と速かったのが、この日は1.33~1.36秒と遅かった。
「ピッチングフォームを1つずつ確認しながら投げているんだから、そんなところまで気が回らないよ」と言わんばかりの無頓着さで、これはむしろ好感が持てた。
夏までにどうにかなる、という短期的なスパンでなく、5年後くらいに日本を代表するような本格派投手になっていてほしい。帝京・前田三夫には迷惑な話だと思うが、この大器が本格化するまでにはそのくらいの時間がかかると思う。
吉本は伊藤のときと同じような危うさを感じたが、ネット真裏から見ていないのでここでのレポートは控えたい。川口は吉永に匹敵するピッチングを見せたが、これも見た場所がよくないので、次の機会まで待ちたい。
日米親善高校野球試合・東京大会
東京選抜対アメリカ
●第1試合に登板した投手……吉永健太朗(日大三3年・右右・182/80)、溝口太一(佼成学園3年・右右・171/66)、鮎田純一(安田学園3年・左左・176/70)、伊藤拓郎(帝京3年・右右・185/85)、三竹芳孝(実践学園3年・右左・170/60)
●第2試合に登板した投手……吉本祥二(足立学園3年・右右・186/75)、谷昴輝(東海大高輪台3年・左左・175/62)、川口貴都(国学院久我山2年・右右・180/82)、小野央也(早大学院3年・右右・185/75)、鈴木誠也(二松学舎大付2年・右右・180/80)
スカウト氏が計測するスピードガン表示を後ろから見た友人によると、この2試合に登板した投手のストレートの最速は次の通り。吉本148キロ、吉永142キロ、川口142キロ、伊藤138キロ……等々。
さて、この2試合はネット裏から見たと言っても真後ろではなく第1試合が一塁寄り、第2試合が三塁寄りだったので、肩の開きや、変化球の曲がりがよく見えなかった。球場に着いたのは試合開始1時間半前の8時半。それでもスタンドに入ったら超満員で、2試合立ちっ放しを覚悟したが、運よく席を確保できた。そういう状況の中で観戦していることを前もって断わっておく。
第1試合に先発して3回を投げ、3安打、3三振、無失点に抑えた吉永は、数字以上に見事な投球だった。これまで、真後ろから見る吉永はテークバックのヒジのたたみが早く、ピッチング全体が窮屈に見えたが、一塁側(30度くらいの角度)から見るとヒジのたたみに余裕があり、ヒジを起点にした腕の振りがよく理解できた。
ストレートはいわゆる“潰している”と言われるリリースから投じられているので低めに伸びる。さらに右打者の内角に腕を振ってストレートを投げられるのは、左肩の早い開きがなかったからだろう。
スライダーは時折抜けた。一塁寄りから見ていると、このスライダーの抜け球のときはヒジの立ちが緩み、ストレートのときはしっかり立っていた。これはバッターボックスの打者からも見えるので、夏までには直したい。
4番手で登板した伊藤は8回表、無死一、二塁にしたところで右肩に張りを訴え、降板した。結果は1回3分の0を投げ、2安打、1四球、2失策で1失点(0自責点)。マスコミ関係者の評価は総じて低かったが、私にはよく見えた。
昨年までの伊藤は体重移動の中に強弱のメリハリがなく、フィニッシュまでダラダラ流れているように見えた。言い換えれば下半身の動きより、腕が先に触れているように見えた。それでもストレートが140キロ台後半を記録すればマスコミもファンも高く評価した。
そんな伊藤が危なっかしく、いいことはほとんど書いてこなかった。1年夏の甲子園で衝撃の148キロを出したとき、知り合いのテレビマンは「凄いですね~」と共感を求めてきたが、「投げ方がよくないんですよね」と言って笑顔を凍り付かせた。
この日の伊藤は始動からフィニッシュまでの流れに、強弱のアクセントに加え、粘りがあった。動き始めから、投げた球が捕手のミットに収まるまでの投球タイムは、昨年選抜時が2秒ちょっとだったのが、この日は2.5秒以上あった。また、始動の足上げを体の前(打者寄り)で行うことで、投げに行くときの体のねじれを解消し、結果的に左肩の早い開きを抑えることができた。さらにもう1つ、昨年選抜時はワインドアップで投げていたのが、この日はノーワインドアップで投げていた。
こういう“工夫”が昨年までの伊藤には見られなかった。素質が群を抜いて高いため、工夫しなくても「超高校級」と言われるようなストレートが投げられ、周囲の評価も高かった。そんな投手に心魅かれるわけがない。しかし、この日の伊藤には工夫と、フォームに対する探究心があった。ついでに付け加えると、一塁に走者を置いたときのクイックが昨年の選抜時は1.2秒前後と速かったのが、この日は1.33~1.36秒と遅かった。
「ピッチングフォームを1つずつ確認しながら投げているんだから、そんなところまで気が回らないよ」と言わんばかりの無頓着さで、これはむしろ好感が持てた。
夏までにどうにかなる、という短期的なスパンでなく、5年後くらいに日本を代表するような本格派投手になっていてほしい。帝京・前田三夫には迷惑な話だと思うが、この大器が本格化するまでにはそのくらいの時間がかかると思う。
吉本は伊藤のときと同じような危うさを感じたが、ネット真裏から見ていないのでここでのレポートは控えたい。川口は吉永に匹敵するピッチングを見せたが、これも見た場所がよくないので、次の機会まで待ちたい。