6月中旬から、北海道に浮かぶ一番北の島、礼文島に滞在してきました。
しばらく、旅行記にお付き合いください。
今回の話は、5日目です。
民宿→フェリーターミナル→知床→秘密の花園→元地灯台→桃岩展望台→
レブンウスユキソウ群生地→ピーク268
→フェリーターミナル→船泊→民宿までのお話です。
6月17日朝6時半。
北海道礼文町須古頓。
宿泊客A「今日は、なんですか?その『いちゃりばちょーでー』って。」
kumazzzo「沖縄の方言で、『一度会えば、みんな兄弟』って意味なんですよ。」
宿泊客B「『たくさんちょーだい』って書いてあると思ったわ。」
宿泊客A「イメージで全部食べ物に結びついちゃうわ」
今回の旅行では、旅行した各地のTシャツを着て民宿で過ごしてました。
「波照間」Tシャツに台湾「故宮博物館」Tシャツに、友達からもらった「沖縄」Tシャツ。
3枚とも、話題作りのいいきっかけになってくれました。
kumazzzo「今度波照間行った時には、『礼文』Tシャツ着て、宣伝してきます!」
朝食もたくさん食べて、ベッドに戻って出発の支度です。
宿のご主人「それでは最終点呼します!くまぞーさんは?」
kumazzzo「桃尻から礼文林道、ピーク268で〆はラーメンです。」
今日は桃尻コースは大人数のようです。
この桃尻コース、島の南を回る、利尻島の利尻富士が
きれいに見えるコースです。
今日の天気も、基本は曇り。午後に晴れ間が少し広がるかどうか。
残念だけれど、利尻富士は拝めそうにありません。
礼文岳に登る宿泊客、宇遠内コース、桃尻コース、
出発客あわせて、総勢11人がワゴンに乗ります。
フェリーターミナルに着くと、今日は、桃岩荘のヘルパーさんたちが、スタンバイしています。
今日は名物の送別の歌と踊りが見られそう。
他所の民宿の儀式ながら、見ていて楽しいものです。
正直泊ってもいいかなと思いますが、おそらく、
今回泊った宿がとてもいい宿だったので、簡単に浮気できそうにはありません。
ちなみに桃岩荘のことは、こちらをご覧になると、いいかも。
僕と同じフェリーで礼文にやってきた宿泊客も今日でお別れ。
今日も大きな声で「行ってらっしゃい!」と叫びたいところですが、
昨日同様、知床行の路線バスの出発が迫っているので、
最後まで見送ることが出来ません。
宿のご主人「今日は俺一人かー…バスの停留所わかるかい?」
宿泊客C「俺、わかります」
宿のご主人「じゃ、Cさんみんなを連れて行ってあげてください」
楽しく過ごせた感謝の気持ちを宿のご主人に託して、
少し心残りですが、バスに乗り込みます。
香深から知床までバスで10分くらい。
歩くと舗装された道路を1時間くらいかかります。
島の生活の様子を見ることができるので、それはそれで面白いと思うのですが、
今日は、最後に、島の北部にある船泊で、ラーメンを食べたいので、今回はショートカットです。
程なくして、知床に到着。合計11人の大所帯です。
宿泊客D「僕ら子供づれなんでゆっくりになってしまうんで、先に行っていいですよ」
まずは、ここで、7人で先に出発。最初の目的地「秘密の花園」を目指します。
「秘密の花園」は「元地灯台」へ向かう途中にある花畑に名づけられた通称です。
宿のガイドマップには、秘密の花園への入口が書いてあり、みんなで花園を目指します。
元地灯台までは、ずっと登り坂が続き、自分は、ちょっと息が切れそう。
7人の隊列も、縦に伸びがちです。
秘密だと思っていた花園は、入口から、ちゃんとロープで遊歩道が作られており、
まったくの「秘密」ではなさそうです。
ただ、笹を分け行って遊歩道を入っていくと…。
kumazzzo「おーきれいに咲いているなあ」
判りにくい画像で申し訳ないのですが、一面にチシマフウロとレブンキンバイが咲いています。
草原の向こうには、海。晴れていれば、利尻富士も見えるのでしょう。
kumazzzo「今回の礼文の一番の目的って何ですか?」
宿泊客C「やはり利尻富士を写真に撮ることだね」
kumazzzo「あー、じゃ、ちょっと今日は残念ですね。」
他の観光客がぞろぞろやってきたので、場所を譲るように、また遊歩道を戻って、
元地灯台を目指します。
元地灯台に到着すると、視界が一気に開けます。
kumazzzo「えーあんな高い所に観光客なんだかたくさんいるなあ!」
宿泊客E「景色よりそっちかい!」
kumazzzo「だって、どうやってあんなところに…」
宿泊客C「途中まで観光バスで登れるんだよ」
この桃尻コースは、景色もよく、いろんな種類の花も咲き、フェリーターミナルから近いので、
トレッキングが組み込まれたツアー団体客が多く訪れていました。
今日はハイジの谷~礼文滝まで目指すという「健脚」女性二人組は、
僕らより一足先に灯台を出発。7人組が、ここで2人組と5人組に分かれます。
ここからはアップダウンがありながら、徐々に登っていきます。
カメラで写真を撮りながら登っていく自分は、みんなから遅れ気味です。
宿泊客C「カメラ直ったのかい?」
kumazzzo「いや、エラーになったり、ならなかったりですよ。」
とにかくエラーになろうが、なるまいが、とにかくシャッターを押してまくります。
↓とにかく、登り坂。
↓桃岩荘。にしん御殿をそのまま残した利用しているそうです。
↓ネムロシオガマ。
↓海に浮かぶ猫岩と、猫岩と桃岩を眺められる猫台・桃台。
追いついてはまた離れ、追い越してはまた待ち、
そんな風に歩きながら、桃岩展望台に到着です。
この桃岩、高さ250mの山で、ちょうど桃のような形をしていますが、
岩肌が露出して巨大な岩の塊のよう。名前以上に、とてもごつい山です。
以前は登山道もあったようですが、こちらも今では閉鎖されてしまっています。
この展望台までは、大型バスが登ってこれます。車を止められるスペースもあるし、お手洗いもあります。
kumazzzo「お昼、どうしましょうかねー」
宿泊客C「ウスユキソウ群生地で食べるか。」
ここからいったん舗装道路を歩き、再び、礼文林道を歩きます。
昨日、花のガイドをしている女性と歩いた道を、今度は反対方向に歩いていきます。
kumazzzo「これがですね、レブンコザクラで、もう時期が過ぎているんですけれど、ここだけ咲いているみたいですよ」
宿泊客F「ほんと、きれいねー」
今日到着して一緒に歩いてきた夫婦に
昨日教わった花を、知ったかぶりで、話します。
知ったかぶりでも、それでも教えてあげたいきれいな花でいっぱいです。
でも間違えていたらごめんなさい。
↓オオカサモチだったかな。
↓エゾタカネツメクサかしら。
↓調べたけど、もうお手上げです。とにかく、かわいい。
いろんな花を見て楽しみながら、ゆっくり歩きます。
レブンウスユキソウ群生地に到着。
kumazzzo「ご飯食べましょうかねー」
kumazzzo「なんか晴れてきましたね…あっ、ホタテフライ落としちゃった。でも大丈夫!」
宿泊客C「3秒ルールだからね。」
宿泊客G「えー、でも地面は、どうかな」
kumazzzo「すごく愛おしくて…ちょっと払えば、食べられますよ。」
おなかいっぱいになりましたが、やはり座ってじっとしていると、汗が冷えてちょっと寒い!
宿泊客F「それでは私たちは、ここからフェリーターミナルへ戻りますね。」
kumazzzo「では、お気をつけて!また後でお会いしましょう」
ここで、今日到着したばかりの夫婦2人が道を引き返していきます。
残ったメンバーは3人。そして、女性1人もハイジの谷へ向けて、別れていきます。
kumazzzo「じゃ、行きますかー」
宿泊客C「ハイジに行ってると時間ないからなあ」
最初11人の大所帯は2人になって、
次の目的地、ピーク268を目指します。
時刻は午後1時。日差しが出てきました。
青い空と、背の高い笹が両側に続く、でこぼこ道。
風が吹いて、笹が揺れる音が、僕の記憶を呼び起こします。
kumazzzo「波照間のさとうきび畑に似てるなあ。この感じ!」
宿泊客C「波照間もこんな山道があるのか?」
kumazzzo「いや、アップダウンは少ないけれど、島は台地状になっているんですよ」
礼文林道からピーク268へ向かう分岐へ入ります。
標高が高くなるにつれ、笹地は徐々に少なくなり、背の低い草地から、砂礫地に。
山登りに長けている同行者は、俺が写真撮りながら、息つきながら登っている間に、
ひょいひょいと先に進んでいきました。
砂礫の上をコケないように、ゆっくり進んでいくと、急に、眺めの良い場所にたどり着きます。
kumazzzo「着いた!」
ここは、標高268mの山の山頂付近。
標高276mの隣の山には三角山という名前が付いていますが、この山には名前が付いていないようです。
宿のご主人より268mとは思えないくらい高い山に登ったような雰囲気だと聞いていました。
きっと本州の南アルプスあたりの山頂は、こんな砂礫地なのでしょう。
kumazzzo「めちゃくちゃ気持ちいですね!」
宿泊客C「俺はここでのんびりしているから、急いでるなら先言っていいぞ。」
kumazzzo「フェリーターミナルのバスが3時10分なんで、もう少しのんびりしてから行きますよ」
きっとここから、利尻富士が見えるのでしょうが、
残念ながら薄雲が取れなくて、見えません。でも、充分すぎる眺めです。
kumazzzo「それでは、先に行きますね」
宿泊客C「じゃあ、なっ!」
ここからは、ひとりで海抜0mまで下っていきます。
途中は夏季休業中のスキー場を抜けて、フェリーターミナルへ。
今日も、ホテル礼文を目指して、下っていきます。
ホテル礼文に滑り込んだのは、バス出発の20分前。
kumazzzo「アツモリロールの塩キャラメル味くださいー」
従業員A「何度も足を運んでもらってすいません。」
念願のアツモリロールは、しっとりどっしりとしたキメの細かい生地と、
アクセントに少し塩を利かせた生クリームがマッチし、
キャラメルの焦げた風味がふわっと香り、とてもおいしい!
パティシエの女性の方まで出てきて、お礼をいただきました。
kumazzzo「民宿帰ったら宣伝しておきますよ!!」
バス乗り場へ向かうと、朝別れた家族連れとレブンウスユキソウ群生地で別れた夫婦がバスを待っていました。
kumazzzo「小さいお子様連れて大変でしたねー」
宿泊客C「自分の足で歩いてくれて、うれしかったですよ!」
男の子は疲れた様子もなく、とても元気!
お父さんはさぞかし嬉しい表情しています。
みんなで、スコトン岬行きの路線バスに乗りこみます。
乗用車なら、びゅーっと25分くらいでついてしまうストコン岬まで、
約1時間かけてのんびりと進んでいきます。
同じバスに乗り込んだ宿泊客のみなさんは、お疲れで、眠ってしまっている様子。
でも、自分は、最後に船泊でラーメンを食べるのが、最大の目的。
うとうとしながらも、乗り過ごさないように、注意します。
バス「次は船泊本町」
kumazzzo「ピンポーン!」
目覚めた宿泊客が慌ててます。
宿泊客E「あれ、ここは?」
kumazzzo「俺、ここでラーメン食べて帰るんで、先に降ります!」
宿泊客C「後で味教えてくださいね!」
…ぽつん。
突然、ひとりになった自分は、お目当てのラーメン屋を探して歩きます。
看板「二葉食堂」
kumazzzo「ん?んー?」
看板はあるのですが、入口が閉まっています。これは、悪い予感。
看板にある電話番号に電話しても、電話に誰も出ません。
kumazzzo「引き戸の内側にのれんあるから、ダメかー」
ここから宿までは、宿のご主人のピックアップしてもらう予定でいましたが、あと1時間以上あります。
歩いて帰るにしても、おそらく2時間はかかります。
小学生達「こんにちは!どうしましたかー?」
kumazzzo「二葉食堂でラーメン食べようと思ったんだけど、お店が閉まっていて民宿に帰ろうかなって思っているんだー」
小学生達「???」
礼文島の子供たちは、基本、観光客にフレンドリーに挨拶してくれるのですが、
怪しい太ったおっさんの困った様子が、怪しい行動に映ったのか、
子供たちも、不思議顔です。
うろうろ歩いていても不審者になってしまうので、慌てて予定変更で、電話をかけます。
kumazzzo「すいません!フェリーターミナルからの帰りじゃなく、『行く』時に俺をピックアップしてください!」
実は、この電話、忙しかった宿のご主人につながっておらず、
俺が道端で立って待っていたのに気づいて慌ててバンを停めてくれます。
宿のご主人「エル君どうしたの?」
kumazzzo「二葉食堂やってなかったんですよ。」
宿のご主人「びっくりしたよ!ラーメン今日もフラれたね。また香深行くなんて、もったいない!」
どうやら臨時休業で、お休みだったようです。
このラーメンは次回のお楽しみ…必ず食べにこなくちゃ。
……
民宿に戻ってきて、ひと風呂浴びてから、夕食の時間です。
ラーメンが食べれなかった反動で、夕食がとてもおいしい!
kumazzzo「このホタテの稚貝の味噌汁ってめちゃくちゃ旨いですね!」
宿のご主人「あはは、昨日のは旨くなかったのかよー」
kumazzzo「ほら、あまりホタテの稚貝って東京ではないじゃないですかーすごくいい出汁でてていいっすねー」
ちっこいホタテの貝殻もかわいい稚貝の味噌汁。
結果として、ラーメンを食べられなくてもよかったのかもしれません。
明日の朝は、もうフェリーに乗るだけ。
部屋に戻り、明日出発する支度をして、再び夜のミーティングに。
宿のご主人「えー、今日もスイーツにフラれ、ラーメンにフラれたくまぞーさんです。」
kumazzzo「あはは、アツモリロールは食べてこれましたよー」
宿のご主人「そっかー、くまぞーさん、今日のコースの状況はどうでしたか?」
kumazzzo「利尻富士は見えませんでしたが、レブンキンバイソウにチシマフロウが一面咲いていて、
今日が一番花がきれいでした!」
宿のご主人「明日の予定は?」
kumazzzo「明日は…『島抜け』1便です。朝食はパン2枚でお願いします。」
島抜け…島から帰る、この民宿のお客さんは、
こんな言葉を使っていました。
島から離れなくてはならない気持ちを表しているのでしょう。
この日のミーティングの後の飲み会では、
明日帰る宿泊客さんや今日一緒にあるいた宿泊客さんと、しんみり飲んでいました。
泊っているメンバーで盛り上がり方や雰囲気が違うのも、こうした旅先の面白さの一つです。
すると、宿のご主人が突然、顔を出しました。
宿のご主人「今夜は星が出ているよー」
kumazzzo「あっ、見に行きたいな。行きませんか?」
みんながぞろぞろ出ていきます。
でも、今日一緒に歩いた宿泊客さんが、ひとり残っています。
kumazzzo「あっ、星…興味ないっすか?どうです?」
宿泊客C「俺、もともと大学で、天文部だったんだよな…カメラ持っていくか。」
まだまだ寒い夜の礼文。スウェットを着こんで、民宿の外へ。
kumazzzo「懐中電灯とかあればいいんだけれどなあ。」
宿泊者F「私、持ってきてるから。」
街灯や遠くに光る集落の明かりが見えない丘の上までみんなで登っていきます。
宿泊者G「この辺でいいじゃない?」
俺が道路に寝転がりだしたらみんな、寝ころびだしました。
明かりを消したら、暗闇の静寂の中で、
ただ鮑古丹に打ち寄せる波の音だけが遠くから聞こえてきます。
宿泊者F「あっ!」
宿泊者D「あっ!また!願い事なんて無理だよ。」
流れ星が見れなかったのは、俺だけじゃなかったようです。
立て続けに流れたのに、今度は随分と時間が経っても、流れません。
宿泊者H「流れ星が多い時と少ない時ってあるのかな?」
宿泊者C「明け方とか日が沈んだ直後ととか見えやすいんだよな。」
宿泊者H「じゃ、今はなかなか難しい時間帯なんですねー」
宿泊者D「短い時間で言える願い事って何?」
宿泊者G「カネカネカネ…」
kumazzzo「あはは、欲深いなあ…あっ!見れた!」
みんな「あっ!!流れ星!」
あんな短い時間で、言える願い事ってなんだったんだろう。
楽しかった礼文でも毎日を思えば、
日々の仕事から離れ、夢中になって遊んだことを思えば、
僕には、これ以上の魔法は、必要なかったのかもしれません。
いよいよ、明日は、島抜け。最終日です。