KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

30年振りの屏風/雲稜ルート

2009年09月21日 | アルパイン(無雪期)

天候:今日も

 二日目、午前3時半起床。・・・あまりに早かったようなので30分睡眠を延長
 それでも5時前には出発。
 今朝も満天の星空、絶好の快晴が期待できそうだ。

 横尾谷を渡った所で先行する年配の男女二人組を発見。けっこう荷物を背負っている。
 追いついて聞くと、本日は「雲稜」で屏風の頭へ抜けると言う。我々は昨日の続きで「東壁ルンゼ・上部」なのでカチ合うことはない。
 前後しながら、T4尾根基部へ到着。

 お互いに準備をしながら「先、行きますよね?」と訊ねてみると「ウチら、遅いんでドーゾ。」というお言葉。いやぁ、ウチらもけっして速くないけど・・どうもすみません。m(_ _)m

 で、T4尾根。まずはJu9cho氏から取り付く。

【T4尾根】
1ピッチ目
30m Ⅳ Ju9cho氏リード
 出だしの一歩、アンダー・ホールドを使ってスラブに乗り上がる所がチョイと小難しい。(翌日見たら少し左が階段状で、そちらから簡単に上がれそう。)
 後は快適なフェースで、朝のウォーミング・アップに手頃な感じ。

 

2ピッチ目 40m Ⅴ- 私がリード
 フェースの傾斜が段々キツくなってきて、コーナーからスラブに乗り移る所がポイント。
 ちょい手強いが、キョンやステミングを使って、うまくフリーで越えれた。ホッ。

 その先、しばらくブッシュの中の土混じりルンゼ状をコンテで登って行き、最後にまたちょっとした岩場を登ると取付のT4となる。
 予定では「東壁ルンゼ・上部」のつもりだったが、見てみると昨日の二人組がどうやら途中でビバークしたらしく、まだ上部1ピッチ目に取り付いている最中だ。
 
 しばしJu9cho氏と作戦会議をし、昨日の様子だと我々も渋滞敗退となりかねないので、急遽「雲稜」にルート変更する。
 もちろん、後続の「雲稜」に取り付くお二人にはその旨伝えて了承してもらった。

 
 T4に着くと、すぐ目の前が「雲稜ルート」

【雲稜ルート】
1ピッチ目 45m Ⅴ Ju9cho氏リード
 正面右手コーナー沿いにJu9cho氏がロープを延ばす。
 他パーティーの記録では途中のハング下でピッチを切って二分割することも多いようだが、Ju9cho氏も「落ちたら止めてよ。」と言いながら快調に飛ばす。
 結局、50mほぼ一杯のコーナーを上がりきった先のテラスでピッチを切る。
 フォローした感想としては、最初の大きなハングは見掛け倒しでホールドがしっかりしていて簡単。
 二番目の地味な小ハングの方が手強く、最後、コーナーに上がる所がこれまた岩が剥がれそうで、精神的にちょっと怖いが、全体的にダイナミックな登りで楽しめる。 
 Ju9cho氏、お見事です。

  1ピッチ目を行くJu9cho氏

2ピッチ目
 40m Ⅴ(A0) 私がリード
 トポではここから右斜め上のピナクルへ向かい、そこから今度は左斜め上の扇岩テラスへ向かうジグザグ・ピッチとなっている。
 ビレー点すぐ上にリング・ボルトが見えるが、その先がはっきりしない。
 で、右手に続く残置ピンを頼りにトラバースを開始。途中、バンドがすっぱり切れ落ちた箇所があり、ホールドも微妙。
 本当にこのルート取りでいいのかちょっと迷うが、行く手にも残置ピンが見えるので、スリングも使いながらA0突破。
 しかし、その後で次第にピンが少なくなり、予想外のランナウトとなる。
 多少、ホールドが細かかったが、何とかピナクルを経由し、扇岩テラスに到着。
 ルートが屈折しているので、最後は綱引きをしているようにロープが重かった。

  ちょっとランナウトした垂壁

  途中のピナクルから見た扇岩テラス

  扇岩テラスに上がってきたJu9cho氏
 
 ここからは隣の東壁ルンゼを登っているパーティーの姿が良く見える。彼らが核心のA2ピッチで苦戦している間に我々の方が上に出てしまったようだ。
 (後で他のトポを見たら、この2ピッチ目は出だしアブミを使って直上もアリと書いてあった。いずれにしても途中のフェースはホールド細かくⅤ級テイスト)

  
 東壁ルンゼ上部2ピッチ目のパーティー

3ピッチ目 35m A1 Ju9cho氏リード
 垂壁の人工ピッチ。フリーでは5.11aとのことだが、一瞬でできる気がせず、そそくさとアブミを取り出す。
 ここも頭の飛んだボルトや3mmスリングが連続したりするが、昨日の東壁ルンゼ下部でのリハーサルのおかげでそれほど恐怖感は感じない。

  

  垂壁をリードするJu9cho氏

  フォローする私
 
4ピッチ目 30m Ⅳ+、A1 私がリード
 ここもフリーでは5.9+とか5.10-とかなっているので、あわよくばと思っていたが、何だかこの辺りだけ岩が風化してボロボロ。
 あまり思い切ったムーヴもできないので、まずはA0ステミングで上がっていく。
 頭上にはやはりボロボロ崩れそうなハング帯が被さっているので、途中から右へアブミ・トラバース。
 3mほど右へ行き、そこからアブミで直上。ハング下の剥がれそうなガバにたどり着いたら再び狭いバンドを右へトラバース。
 わかりやすく言えばアミダくじ式に右上右上へ進む感じか。
 登っている時はそれほど感じないが、ビレー点からフォローしてくるJu9cho氏を見ると何とも高度感があり、シピレるピッチであることがわかる。

 
 リードする私

 
 フォローのJu9cho氏(右上の白ヘルメット)

  高度感溢れるピッチ

5ピッチ目 25m Ⅳ+ Ju9cho氏リード
 後はこの上、スラブのフェースを残すのみ。
 たしかⅤ+と書いてあったが、Ju9cho氏リードの番なのでホッとしていたら、ロープの流れが悪くなるとのことで途中で短く切られてしまった。
 まぁ、その手前のピッチで私が短く切ったからいけないんだけど・・・。
 出だしのフェースはクセが無く、快適で気持ちの良いスラブ。

  背後には常念岳方面の景観

6ピッチ目 35m Ⅴ+(A0) 私がリード
 引き続き、立ったスラブのフェース。
 核心の思える箇所はクラックの中のホールドがヌメッている。
 その上、ステミングが連続し、股関節の硬いオジサンには何とも厳しい。
 結局、落ちるのがイヤで、痛恨のA0をしてしまう。
 もう少しフレッシュな状態なら意地でもフリー突破したかったが、さすがにここまで来るとエネルギーも少なめ。情けない・・。

  この上がムズいっ 

 しかし、その上、傾斜が緩くなってからもなかなか気が抜けないスラブが続き、ヒィヒィ言いながらロープを延ばす。
 二つ先の懸垂支点まで上がり、Ju9cho氏を迎える。
 この先は残置ハーケンは見えるもののⅡ~Ⅲ級程度の草付き階段状となっており、同ルート下降の場合は最後は割愛となっているので、ここを終了点とする。

  上部スラブのピッチ

  ここにて終了 

 取付からここまで約5時間弱。
 毎度のことながら、途中でけっこう写真を撮ったりしたので、このぐらいの登攀タイムでも一応、及第点をいただけますかな。

 常念岳などの展望を楽しみながら一休みした後、下降開始。

 
 
 ルートがけっこう屈折しているため、扇岩テラスへは斜め懸垂などを強いられ、暗くなってからだと下降はけっこう厳しいと思う。
 結局、後続のお二人さんには追いつかれることなく適度に間を空けて登ることができたし、隣の東壁ルンゼのパーティーも無事に上へ抜けたようだ。

  扇岩にて一休み

  T4へ。

 翌日に備え、またまたT4尾根基部にギア類をデポ。
 本日は明るいうちにベースへ帰還。ビールで祝杯を上げ、早々にシュラフに潜る。

  
 夕暮れの横尾。またテントが増えている


30年振りの屏風/東壁ルンゼ下部

2009年09月20日 | アルパイン(無雪期)

天候:
同行:Ju9cho氏
参考:「チャレンジ・アルパインクライミング」廣川健太郎・著(山と渓谷社・刊)

 さて、今回の計画は当初7月に予定していたものの天候不順で延期となっていた穂高・屏風岩。
 自分にとって「屏風」は学生の時以来だから、実にこれが30年振り二度目となる。
 何だか甲子園みたいだけど、いやはや月日の経つのは早いこと・・・

 今回はシルバー・ウィークの大渋滞を恐れて電車でアプローチ。で、前夜はJR松本駅で仮眠する。
 松本駅はすっかりリニューアルされ、駅構内では登山者もゴロ寝しにくい雰囲気。
 エスカレーターの自動アナウンスが一晩中「手摺りにお掴まりください!」「ご注意ください!」とやかましいので、ようやく見つけた静かなアルプス口軒下に避難する。

 朝、臨時始発の松本電鉄に乗り換え、新島々へ。
 車内は大型ザックを持った登山者で満席状態。

 

 さらにバスに乗り換え、ようやく上高地入り。
 ついこの前まで夏だったというのに、思った以上に涼しい・・・て、いうより寒いっ!

 それでも天気は上々。
 朝食を済ませ、今回のベースとなる横尾へ急ぐ。

 
 河童橋よりお決まりの風景。朝の穂高。
 
 

  明神岳

 
 井上靖の小説「氷壁」の舞台ともなった前穂東壁。

 横尾に着きテントを張ると、軽荷になってさっそく屏風へ向かう。

  

 涸沢への道をしばらく行って「岩小屋跡」の道標から左の土手を越え、横尾谷を渡る。

 微かな踏跡を辿って徒渉は二回。
 もう少し早い時期だと水量も多く、ここが第一の鬼門となるが、この時期だと簡単な丸太が渡してあったり、飛び石伝いに難なく渡れる。

 渡った先が一ルンゼで、白っぽいゴーロを小一時間ほど登る。

 やがて頭上にドーンと屏風岩の全景。

 
 
 アルパイン不況の御時世だが、さすがに連休とあって、人気の東稜をはじめ各ルートにポツポツとクライマーたちの姿が散見できる。

 登りついた所がT4尾根の基部。
 今日は半日しか行動時間が無いので、我々は予定どおり東壁ルンゼ下部へ向かう。
 草に覆われた細く急な踏跡を足元に注意しながら右下へ下っていくと、他パーティーが登っているのに出くわし、聞くと、すぐ下が取付だと言う。

 我々も準備を整え、先行の二人組を追う形でスタート。
 まずはJu9cho氏から。

 

1~2ピッチ目 60m Ⅲ~Ⅳ Ju9cho氏リード
 左上へ斜めに上がっていく階段状からスラブのフェース。
 いいビレー・ポイントが無く、もう少しもう少しと上がっていったらロープ一杯になってしまった。
 Ju9cho氏にコールすると「大丈夫だから少しコンテで上がってきて。」という返事。
 結局50m、+10mをコンテで上がり、1、2ピッチを一気に登ってしまう。
 途中、凹角の辺りがホールドが少なく、少し緊張する。

 

3ピッチ目 40m A1 私がリード
 直上ラインにもボルトがあるが、それは別ルートらしい。
 すぐ右の小カンテをフリーで越えて、その先は人工。
 残置ボルトに導かれ、ひたすら右斜め上を目指すが、噂に聞いたとおりボルトのリングが吹っ飛んだものがいくつもあり、色褪せた3mmスリングに恐る恐るアブミを引っ掛け、また持参のリベット・ハンガーも二回ほど使う。
 ここで早くも先行パーティーに追いついてしまい、しばし待機となる。
 着いた所は「三日月レッジ」と呼ばれる所で、なるほどスラブのフェースの中にここだけ三日月型のわずかな窪みがある。

 

 
 
 しばらくして先行のトップが動き出したので、Ju9cho氏に登ってきてもらう。
 ビレー・ポイントが空いてなかったので、右端の2本のボルトで安易に確保してたら、Ju9cho氏に「しっかりした支点できちんと流動分散するように。」と教育的指導を受けてしまう。・・・スミマセン
  
 

 

 

4ピッチ目
 40m A1 Ju9cho氏リード
 右手のカンテ?コーナー沿いにスラブのフェースをまっすぐ登る。
 出だしはフリーで行けそうだったが、ここも人工。
 やはり途中でボルトの頭が吹っ飛んでいるのが2~3あり、リベットハンガーを使用。

 

  

5ピッチ目
 30m Ⅳ 私がリード
 左上に続く細いバンド状のピッチ。
 出だしにやはりボルトがあり、ここもアブミかと思わせるが、フリーで快適に行ける。
 ロープの流れが悪くなるので、短めにピッチを切る。

 

 

6~8ピッチ 150m Ⅲ~Ⅳ-
 後は草付の中の比較的傾斜の緩い岩場を中央バンドまで。
 ガイドブックではⅡ級となっているが、よほどルートをうまく読んでいかないと部分的に5.9ぐらいのスラブに当たったりする。
 残置のピンも疎らで、なかなか気が抜けず、Ju9cho氏曰く「丹沢の広沢寺の上部のよう」。
 ごもっともです。

  

 中央バンド帯にたどり着き、とりあえず本日のノルマである東壁ルンゼの下部を終了。
 見上げると、もう夕暮れが迫っているというのに、上部の壁にはまだ数パーティが取り付いている。
 特に東稜が大渋滞。

 明日も来るのでギア一式をT4尾根基部近くの岩小屋にデポし、我々も急いで一ルンゼを下ったが、先行パーティーの待ちとかもあったせいで、横尾谷の徒渉の頃には夕闇に捕まってしまった。
 見上げると、真っ黒い屏風のシルエットにヘッデンの明かりがチラホラ・・・。
 
 皆さん、残業お疲れさまです。

 ベースに戻り、まずは缶ビールで乾杯。
 明日に備えるため、そそくさと飯食って寝る。


稲子岳南壁・左カンテ 【北八ツ】

2009年07月21日 | アルパイン(無雪期)

天候:
同行:Ju9cho氏

 三連休に予定していた穂高が悪天により見送りとなったため、最後の一日だけ利用して上記へ転進。
 前夜のうちに登山口の「稲子湯」先まで入り仮眠。
 人気で便利な南八ツに較べて人はほとんどいないだろうとタカをくくっていたら、予想外のクルマの数!
 まぁさすがに全部が稲子の南壁に行くわけじゃないとは思うが。

 翌朝は4時半スタート。
 アプローチは脇を小沢が流れる緑溢れる気持ちの良い小径。良く茂ったシダ類の葉が原始の森を思わせる。
 途中から、かつての林業の際に使われた旧いトロッコの軌道跡なども現れ、どことなく郷愁を誘う。
 ニュージーランドまで行かなくても、引けをとらないバック・パッキング・トレールがここ北八ツにはある。

  
 軌道跡の残るトレール        恐竜ではありません。倒木です。

 一時間ほどで「しらびそ小屋」。
 静かな「みどり池」。その向こうに天狗岳や稲子岳など北八ツの山々。
 もう少し歳をとってガツガツとした山登りに飽きたら、こういう所にのんびりテントを張って好きな本を読みながら好きな時にビールを飲み、そして好きな時に近くを散歩するような山旅をしてみたい。

  風情のある「しらびそ小屋」

  みどり池と天狗岳

  みどり池と稲子岳

 そこからさらに中山峠への道を進む。
 樹林越し、右手に稲子岳の南壁が望める辺りから適当に森の中に入っていく。
 目印となるそれらしいものは特になし。
 見当をつけて藪の中を分け入って行くと、そのうち疎らに付けられた赤テープを発見。
 こうなればしめたもので、それを追って次第に急になってくる草付き斜面を這い上がっていく。
 上部で二手に分かれて偵察。
 私が先行し、ずっと左手、ガラガラの堆石の押し出しを詰めていくと、カンテの左側壁に残置スリングを発見するが、取付がイマイチ判然としない。
 そのうち右下の方で「取付が見つかった。」とJu9cho氏からコールが掛かる。
 行ってみると基部の潅木に赤テープ。そこからルート伝いに残置ハーケンの列がはっきり見て取れる。

 登山口からここまで休みを入れて約2時間。ガチャ類を身に付け準備を整える。
 取付はそれほど広くないので、今の立ち位置から奇数ピッチをJu9cho氏、偶数ピッチを私が受け持つ。
 ピッチ・グレードはどこもせいぜいⅢ+~Ⅳ級程度らしいので、特に順番にこだわりはない。
 Ju9cho氏はファイブ・テンのアプローチ・シューズのままで十分と言うが、私はせっかく持ってきたのでアナサジを履く。(ライオンはどんなに弱い相手でも全力を尽くすと言うし・・・ちょっと違うか?)

1P目 28m  Ju9cho氏リード
 少し幅のある凹角内のフェース。
 Ⅲ級程度とJu9cho氏は甘く見ていたが、やはりそれよりは少し歯応えがあるよう。
 それでも出だしのフェースでランニング一つ取った後は、ろくにプロテクション取らずに行ってしまった。

  1P目、リッジ状フェースを行くJu9cho氏

2P目
 25m 私がリード。
 V字状の溝からリッジ。
 途中、ネジが緩んではいるが、ペッツルのハンガー・ボルトまで打たれてあった。
 空間に出て、背後の天狗岳など見晴らしの良いピッチ。
 ただ、このところ自分ではすっかりフリー・モードでなっていて、久々のアルパインはホールドがどれもこれも動きそうで、ちょっと怖い。
 ビレーするJu9cho氏からも「くれぐれもボルダー・ムーブはしないように!」と釘を刺される(^^;)

  2P目のリッジ

3P目 25m J氏リード
 見晴らしの良いテラスからチムニー状の凹角から左上へ抜けるピッチ。
 晴れてはいるものの、この頃から標高2,000mらしい冷たい風が吹きつけて、そこそこアルパインらしき「演出」をしてくれる。
 チムニーの右手、薄被りのフェースにもボルト・ラダーが見える。
 かつての人工ルートのようだが、高度感、露出感ともになかなかで、もしフリーで取り付いたら、かなりシビれるに違いない。(支点の強度が定かでないが。)

  3P目チムニー

  3P目終了点

4P目 40m 私がリード。
 V字状の立ったフェース(クラック?)からリッジ、ガラガラの浮石テラスに上がってもう一つ小垂壁。
 難しくはないが、変化に富んだなかなか楽しめるピッチ。
 最後のフェースはほぼ垂直で、A0用の切れ掛かったスリングも残置されていてパワー勝負かと思わせるが、正面の岩に隠されたアンダー、そして落ち着いてフット・ホールドを見つければ、キレイに抜けられる。
 上がった所のピッチの終了点には、最近打ち足されたピカピカのリング・ボルト2本が待っている。

  
 4P目のリッジ。赤↓にJu9cho氏がいるの、わかります?

  4P目ラストの垂壁

5P目 20m J氏リード。
 もう頂上の安定した土の斜面がすぐそこに見えているが、最後のピナクルに残置ハーケンが見えたので「おまけ」として登っておく。
 立ってはいるが、正面のフレークに沿ってまっすぐ越えられる。

  
 5P目。正面のクラック沿いに直登する。

 終了点でロープを解き、風が強いので頂上の木陰に入って小休止。
 特に急ぐわけでなく、むしろじっくり味わうようにして登ったにも関わらず、所要時間は2時間弱。
 頂上はコマクサの群落という話だったが、季節がちょっとズレたのか、まぁ申し訳程度に咲いていた。

  終了点近く

  頂上に咲くコマクサ

 帰りはまだ二人とも登ったことのない「ニュウ」というピーク経由で下山。
 稲子岳~ニュウのコースは地図には正式な登山道として明記されていないようだ。
 ところどころ赤テープに導かれながらの道程だが、それ故に原生林の中を歩いている趣がある。
 ニュウは360度の展望が望めるピークで、北八ツの山々はもちろん富士山、そして思いのほか残雪の多い槍・穂の姿もはっきりと見えた。
 天気に恵まれた本日は小学生の遠足団体ご一行様で賑わっていた。

  
 ニュウ山頂より硫黄岳(左)と天狗岳

 二人ともかねてよりこの「ニュウ」という奇妙な山名の由来が気になっており、「やっぱり元はだろうか?まさか英語のNewじゃないよな。」などとおバカな会話を交わしていたが、帰り道の道標でやはり「乳」が正解だったと判明。

  「うーん、ダイレクトといえばダイレクトだけど・・。」
  「まあ、それでも(ちち)と書くわけにもいかないでしょう。」とこれまた、おバカな会話を続けつつ下山。
 特に早足で歩いたわけでもないのだが、結局、正午前には駐車スペースにたどり着いてしまった。

 野辺山周辺で昼飯を済ませ、13時過ぎには中央道に入ったにも関わらず、既にその時点で上りの渋滞30km超。
 ETCの休日割引はありがたい限りだが、どうにかならないもんか。

【お節介ながら、ルートの注意点など】
・登山道から取付まではイマイチわかりにくい。赤テープを探しつつ、岩壁のやや左を目指すこと。
・岩は概ねしっかりしているが、カタカタ動く大岩がルート中の随所にあるので慎重に。4P目途中の浮石帯で落石を落とすようでは要修行?
・ルートは特にトポが無くても、残置のピンを追いつつ、登りやすい所を選んでいけば間違いなし。
・岩角でけっこうロープが屈折するので、ランナーはヌンチャクより長めのスリング+カラビナの方が良い。(アルパインなら当たり前か。)
・他ルートもあるようだが、岩壁基部の堆石状況を見ると、かなり脆そう。安全で快適なクライミングを楽しみたいなら、左カンテ以外はやめといた方が良さそう。


三ツ峠 マルチ・ピッチ

2009年05月04日 | アルパイン(無雪期)

同行 ju9cho氏
天候 曇り時々晴れ
使用 アナサジ・ベルクロ

 三ツ峠は実に20年振り。
 裏登山道から1時間の登りで取付へ。
 このアプローチがあるから三ツ峠はフリークライミング・エリアとして認知されず、依然としてアルパインのためのゲレンデという位置づけなのだろう。落石もあり、メット必携ということもあるし・・。
 屏風岩に着くとあれだけ広い岩場なのに貸切状態。後からポツポツ現れ、都合4パーティーほどにはなるが・・。

【左フェース】
●鶴ルート Ⅳ+ ★★ 3ピッチ(+2ピッチ)
 1P目 私がリード Ⅳ+
  垂直に立った威圧的なフレークをステミング、キョンを交えながら行く。
  ホールドはガバだが、正対だと絶対パンプするパワフル系。
  上部のフレークは大胆に岩の外側に出て越えるのがダイナミック。

 2P目 ju9cho氏リード Ⅳ+
  ダイナミック系から一転、ホールド微妙なトラバース混じりのバランス系。

 3P目 私がリード  Ⅲ~Ⅳ
  短いクラック・フェースを上がった後、階段状の岩場を上がって懸垂支点へ。
  バンドの上は小石が無数に浮いており注意。

 本来はここで終了らしいが、よくわかっていない二人はそのまま上を目指してしまう。
 
 4P目 ju9cho氏リード Ⅲ+
  出だしは残置ハーケンに導かれ立ったランペ沿いに上がるが、その上で残置を見失う。仕方なく、弱点を突いてブッシュ交じりのバンドを左に向かう。

 5P目 私がリード Ⅳ+
    立ったクラック・フェースを上がるが、けっこう悪い。特に出口はボロボロでヌンチャクを残置に掛けたとたん、ボロッとハーケンの頭が欠けた時はかなりアセった。
  その上もボロボロで、スイカ大の浮石が随所にあり、泣きそうになりながら山頂直下へ抜ける。
  ハイカーで賑わう山頂で一休み後、浮石だらけの岩場を懸垂下降するわけにいかず、フラットソールをつっかけたまま山荘経由、取付まで戻る。

【中央フェース】
●中央カンテ Ⅳ+ ★★★ 3ピッチ
 次は逆V字ハングの人工でもと考えていたが、外人くん混成パーティーが取り付いていたし、先ほどの「鶴ルート・ダイレクト」で精神的に疲れてしまったので、今度は癒し系の人気ルートとする。
 
 1P目 ju9cho氏リード Ⅲ+
  階段状を上がって第一バンドへ。上がった所には「鋼鉄製のビレイ・ポイント」があり、ビックリする。
  

 2P目 私がリード  Ⅲ~Ⅳ+
  トポの1~2P目を私が一気にロープを伸ばす。
  ルート名はカンテだが、実際はカンテの脇の凹角を行くようになっている。
  簡単な左上ランペから立ったクラック。手はジャミング、足はステミングで高度感を味わいながら気持ち良く登る。
  

 3P目 ju9cho氏リード  Ⅳ
  凹角からカンテの弱点を突いて終了点へ。
  さすがトポに三つ★付いているだけあって、岩も堅く快適なルート。懸垂で取付へ。

●直登カンテ A1.5 ★ 3ピッチ
 最後に一本。せっかくアブミを持ってきたので人工をやる。

 1P目 ju9cho氏リード  A1.5/Ⅳ
  トポではA2となっていたので、人工が嫌いでないju9cho氏に最初を任せる。
  垂壁から小ハングの乗越し。ボルトは古いリングがほとんどだが、間隔も近い。
  A2までは無い感じ。

 2P目 私がリード  A1
  カンテ上のボルトラダー。単調だが、長くてけっこう疲れる。
  ここで練習すれば「ミズガキの大ヤスリ岩」や「丸山東壁の緑」のほとんどはイケルでしょう。
  
  

 3P目 ju9cho氏リード Ⅲ
  私が中途半端な所まで上がってしまったため、残りの凹角を詰めてテッペンまで。
  立木を使って懸垂3ピッチ。すっかり暗くなってしまった。

 ヘッデンを点け下山。けっこう充実した内容だった。
 河口湖で「ほうとう」など食べてから、高速道激混みを避け、道志みち経由で帰京。それでも3時間ちょいの所要時間で正解