KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

上越・ナルミズ沢

2019年08月25日 | 沢登り
日程:2019年8月24日(土)~25日(日) 前夜発一泊二日
同行:キタムラ、ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目 天候:
 行程:宝川林道広場7:20-広河原10:10-大石沢出合12:20-魚止めの滝13::20-二俣-テン場15:00
 
 今回は部の女子たっての希望で、お馴染みナルミズ沢へ。
 この二週間は剱、甲斐駒と体力的にハード系が続いたので、ホッと一息といったところ。
 ナルミズは2001年に土合から東黒沢からの継続で行ったきりなので、実に18年振り!かつての思い出通り美しいままであればいいけど・・・と期待十分、不安半分といった気持ちで出かける。
 
 前日の金曜、車で神奈川を出発。
 圏央道、関越道を走り、谷川岳方面と分かれ宝川温泉の林道へ。夏草を掻き分けノーマルのフリードで入れるだけ入ったところの大きな広場に深夜着。
 女子二人はシートをフルフラットにして車内で、自分はそばにテント張って仮眠。

 翌朝はまずまずの天気。
 やはりナルミズに来たからには晴れてもらわなくては困る。濃い青空があってこそ、あのグリーンの流れが映えるのだ。
 四駆ならもう少し奥まで入れるが、我々が駐車した大広場から奥の車止めまで歩いてもせいぜい20分ほど。
 車止めにも既に先客の車が2台ほどあった。

 
 
 この先、入渓点の広河原まで約2時間。
 しばらくは左手に宝川を見ながら平坦な林道を行くが、樹間越しに見る本流はこの時点で美しく、途中にはあの葛根田川を思わせる長いナメがあったりする。
 秩父の西沢渓谷同様、脇道があるからほとんどの人は先を急いで下流は割愛するだろうが、実際下流から水線通しで行ってみたらけっこう面白いかもしれない。
 
 ほぼ平坦な林道をちょうど一時間歩き終わったところから傾斜がキツい山道に入る。登りと山腹を巻くトラバース道がまた一時間ほど続く。
 途中ではマムート(マムシ)が現れるという一幕も。途中で小沢が流れ込み、ぬかるみからアプローチシューズを避けながら進んで行く。
 数か所悪い部分にはトラロープが設置されており、ありがたく使わせてもらいながら沢床へ降りていくと徒渉点。
 ここで沢装備に整える。
 
 小休止後、右岸に徒渉し、なおも30分ほど山道を進むと、左手からウツボギ沢が入ってきて、そこが「広河原」。
 さすがに18年前となると、ちょっと違うイメージがした。
 本流右岸には朝日岳へ延びる山道が続いているが、ここから入渓する。

 
 
 この先は文章では説明不要。
 緑の眩い美しい釜とナメ、数々のウォータースライダーとミニ・ナイアガラと、まさに沢のテーマパークである。
 ネコまっしぐら、弟子、大はしゃぎ!


 途中、釣り?に来ていた若者軍団と擦れ違うが、やはりこれだけ人気の沢では釣果は厳しいよう。
 しかし、少し行った先の浅めのプールでは20cmほどの岩魚がスス-ッと走るのが確認できた。
 
 陽射しはまずまずだが、本日は少々風があり、調子に乗って水に浸かり続けているとさすがに身体が芯から冷えてくる。
 途中のウォータースライダーでは自分は着地に失敗し、フワフワと足の届かない位置に流され、一瞬溺れるかとアセった。
 その他は特に危険な箇所もなく、それぞれのライン取りで進む。

 前方にはジャンクションピークのスラブ帯が聳え、これで回りが熱帯雨林の植物ならまさにジュラシックパークである。
 中間の大石沢出合を過ぎる。が、ナルミズ沢はまったく飽きさせない。

 

 
 途中で後続の中年女性二人組に先を譲り、この沢唯一の滝らしい「魚止めの滝」(8m)に到着。
 今回、念のため40mロープに各自ハーネスまで身に着けてきたが、ややヌメるものの慎重に登れば問題無し。
 滝の右側凹角を各自順番にフリーで越える。(Ⅲ級-)

 
 
 やがて二俣。ここは右俣へ。
 そろそろ沢形も狭くなり、時間的にはテン場を探さなければならない。
 最高の一等地があったのだが、残念ながら先行の女性二人組に一足先に取られてしまった。

 
 弟子のヒロイが空身で先まで偵察に行くが、スペースはあっても下が池塘ぽかったりしてイマイチ。しかたなく通過した二俣まで引き返す。
 一等地はかなり余裕があるので引き返し際、それとなく先ほどの女性に「上はいい場所、無いですね~。」と告げると「下の二俣にもありましたよ。」という返事。
 ちょっとぐらい分譲してくれてもいいのに!・・・と内心思いながら、まぁ自分らも、もしすぐ隣にうるさい連中がドヤドヤと押しかけてきたらヤダしなと思い、ここは我慢。
 二俣左岸高台に位置を決めた。

 
 
 流木の数は限られているが三人で何とか搔き集め、最初は火付きが悪かったものの女子二人が頑張ってくれてどうにか着火。
 水遊びし過ぎたおかげで、せっかく持ってきた冷えたビールは飲む気にならなかったが、それでもこのところ不発続きだった焚火の夕餉ができて本当に良かった。
 夜はシェルターの下、三人で川の字になって寝るが、一番沢側にいた自分は傾斜で夜中何回か外にはみ出していた。(もしかしたら二人に蹴飛ばされたのかもしれない。)

二日目 天候:のち
 行程:テン場7:30-修行の滝(仮称)8:30-天国の詰め10:15-朝日岳-分岐点-宝川林道広場15:00
 
 明るくなってから起き出し、まずは火起こし。
 昨日の熾きが残っていたので、朝のコーヒー、にゅう麺で簡単に朝食を済ませる。

 

 ごみを残さないよう、テン場を撤収。
 今回感心したのは、とにかくこのナルミズ沢は本当に周辺にごみや人工物が無く、美しいままであることだ。
 
 流れは次第に細くなってくるが、トイ状になってもなおも深い釜を持った小滝が続き、最後まで楽しませてくれる。
 どこで泊ったのか後続の男女三人組が追い付いてきたので、ここでも先を譲り、我々はチンタラと名残惜しむように詰めていく。

 

 
 
 そして最後は「天国の詰め」。
 前回来た時もたしかに綺麗だったが、近くで見ると草原というより笹っぽい印象が残っていた。
 が、今回改めて来てみると写真で見るイメージどおりで、天然芝とまではいかないが誰かが整備したんじやないかと思えるほど綺麗な草原だった。(自分はここに来るとなぜか頭にスピッツの「ロビンソン」がイメージ曲として流れる。)

 

 
 
 ひとしきり緑の草原をユルユルと登っていくと、ようやく笹原に代わり、先行三人組の後を追うように稜線へ詰めていく。
 本日は朝からガスが湧き、あまり遠くの展望は利かない。が、陽射しがキツイと却ってキツいので、曇天くらいの方がちょうどイイ。
 
 ジャンクションピークで小休止。木道を進み、途中で白毛門方面と分かれ、分岐を左に。
 スラブ帯のトラバース道から樹林帯の急な下り、そして沢沿いに合流し、最後は往路と同じ単調な林道でスタート地点に戻ってきた。
 
 宝川温泉は高いので、〆は湯の小屋温泉へ。
 当てにしていたクチコミの良い湯宿は残念ながら14時で終了のため、「湯元温泉」の内湯(800円)へ。
 源泉かけ流しといっても有笠のような覚悟の要るような熱湯でなく、ほど良い温度の素朴ないいお湯でした。
 
 ナルミズ沢は赤木沢(富山)や葛根田(岩手)より全然近いし、天気が良ければ毎年行ってもいいかも。(ただし、相手によりますが・・・。)


南ア・黄蓮谷右俣

2019年08月18日 | 沢登り
日程:2019年8月17日(土)~18日(日) 前夜発一泊二日
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目 天候:
行程:竹宇駐車場6:30-日向山登山道-尾白川林道7:30-尾白川本流8:50~9:00-黄蓮谷の二俣13:00-千丈ノ滝13:40-坊主滝14:30-逆くの字滝17:00-BP18:00
 
 さて先週の剱岳が終わって今週はレストのつもりだったが、急遽台風一過となり好天が期待できそうなため、上越か迷った末に山梨へ。
 夏の黄蓮谷は9年振り二度目。下流域は登れない滝が連続し高巻きも多いが、上流は南アルプスの天然水が流れる花崗岩のナメ滝をグイグイ登れて豪快かつ快適な好印象だった。
 対する相方は初めてで、いずれにしろいつかは行こうとしていた課題である。

 前夜発で、竹宇側の駐車場に深夜到着。
 けっこうな車の数で、これは明日の黄蓮谷も何パーティーか入るかもと思いながらテントで仮眠。

 翌朝明るくなってから出発。
 黒戸尾根方面へ少し進み、途中にある標識の所で右手の日向山方面への登山道に入る。
 ここから一時間ほど辛抱我慢の登りが続き、朝一番の身体には辛い。尾白川林道に合流し、そのまま左手奥へ進む。
 数年前の土砂崩れがそのまま林道を埋めていたり、途中のトンネルも出入口が土砂で狭くなっていたりで、この林道もますます自然に還っていく気がする。

 

 先行する三人パーティーを追うように、林道終点からFIXロープの設置してある急斜面を川床へ下る。
 下り着いた所で挨拶をすると、彼らは尾白川本谷へ行くとのこと。
 
 
 
 沢装備を身に付け、我々も出発。
 この辺りは我が山岳部の定番の遊び場だが、相変わらず黄色い川床に澄み切った流れが美しい。
 最初に出合う幅広滝は右岸(左側)の滑り台状スラブを登るのもウォーミングアップになるが、先も長いので割愛。
 しばらくは大きな釜を持ったスラブ状の滝が続き、右岸通しに巻いていく。
 その時点で気付いたが、どうも今回はいたるところに黒ヌルが付いていて、全体的に水流沿いは悪そうな気配がする。

 鞍掛沢出合を過ぎ、なおも巻いたりナメ床を歩いていくと「噴水滝」。
 噴水といっても、大きく水が吹きあがっているわけでもなく、言われてみて「ああ、たしかに少し噴水かも。」といった感じだ。
 左岸には特異な花崗岩の壁が大きく被さってくるように立っている。

 


 

 やがて顕著な二俣。右が尾白川本谷で、左が黄蓮谷。いよいよここから再スタートということで小休止。
 黄蓮谷本流に入ったすぐの釜で、すばやく泳ぐ岩魚を発見。ここまで来ると魚影は濃くないが、やっぱりいますな。

   

 この先、三段の千丈滝、坊主滝と直登困難な大滝が続くが、いずれも巻き。
 何となくこっちかなと左右どちらかに行ってみると大抵微かな踏跡の巻道がある。
 かつての相方タケちゃんの「なるべく本流から離れず、巻きも極力小さく。」の教えの通り進むが、それでも今回は少し適当に高巻いたため、本流へ戻るのに二回ほど短い懸垂下降を強いられる。(前回は一回もしなかった。)

  左が千丈滝。右が坊主滝。

 黄蓮谷の二俣となり、本流の右俣へ。
 自分では普通のスピードだと思っていたが、気が付くと前回より二時間遅れで少々焦る。
 やはり年々、体力は落ちているのか。

 この辺りから奥千丈滝となり、傾斜はそこそこあるが、登りやすい階段状の滝となり、稜線に向かってグイグイ高度を稼いでいく・・・そんなつもりでいたのだが、予報に反して空は曇りがちで肌寒い。
 なるべくシャワーを避けて右に左に適当に進むが、これまた予想していなかった黒ヌルがあり、けっこう進路を絞られる。

 


 「逆くの字滝」は寒いので水流を避けようと思ったが、やはり側壁はヌルで滑る。ここは軽くシャワーを浴びつつ頑張って直登。
 その先のスラブ状も前回は沢靴のフリクションを効かしてチャチャッと越えて行ったように記憶しているが、今回はヌルヌルしていてとても手が、いや足が出ない。

 左岸に逃げ、大高巻きしてテン場を探すが、平坦な場所は皆無。
 相方もかなり疲れた様子で、これ以上は暗くなってしまうというところで打ち切り。二人がギリギリ横になれる場所を見つけ本日のテン場とする。

 今回、持ってきたのはツェルト、タープでもなく、先日中古で買ったモンベルのフライとグランドシート。これにポールを組み合わせるとテントセットで持ってくるよりは軽いシェルター仕様となる。
 剥き出しのタープよりは虫を避けられ、ツェルトよりも快適スペースが確保でき、なかなか使える。
 ただ今回は場所が狭く、グランドシートの隅は宙に浮いた状態。焚き火もできないのが残念だった。


二日目 天候:
 行程:BP5:45-コーナースラブ9:00-稜線10:30~11:00-七丈小屋12:00-竹宇駐車場16:30

 あまり快適な場所ではなかったが、疲れもあってまぁまぁ眠れた。
 簡単な朝食をとって左岸の高巻きから続行。

 はっきりした踏跡はあるので不安はないが、それでもここは本当に黄蓮谷なのだろうか。
 前回来た時よりかなり様子が違うので、もしかしたらトポにある「三角岩の沢」へ入ってしまっているのでは。
 しかし、ちょっとした所には残置のハーケンやスリングがあったり、また本流の滝も何となく見覚えがある形だ。

 

 そうこうしているうちに前方に先行パーティー(男性二人?)を発見。
 やはりここは黄蓮谷で間違いなかった。それにしても前回こんなに大高巻きした覚えはないのだが。
 滝の状態によって年々高巻きするパーティーが多くなって踏跡も整備?されてきたのかもしれない。


 適当な所から奥千丈滝の上部へ降り、ようやく本流に戻る。
 奥の二俣を左に進み、最後はコーナースラブだ。
 先行Pのセカンドが左の壁伝いに抜けていったのを遠目に見つつ、近づいてみるとここも黒ヌルで覆われている。いやぁ、ここよく登ったなぁ。
 傾斜はそれほどでもないが、とても左の壁、コーナーに沿って行ける気がしない。
 しかたなく残置を最大限に使ってスラブから右側の草付きに逃げるようにクリアしたが、けっこう悪かった。
 
 
 
 最後、残置頼りの涸れ滝がもう一段あって、そこも遠慮なくA0クリア。
 後は踏跡を辿って少し登れば頂上直下に出たはずと記憶していたが、ここでも詰めを少し左寄りに採ってしまったようで、途中ハイマツ帯に入り込んだりしてけっこう長い。
 最後は予想をはずれて、頂上から15分ほど下の黒戸尾根に出た。

 晴れていれば、この場にザックを置いて頂上まで登っておきたいところだが、あいにく今日はガスっていて展望は期待できない。
 甲斐駒は二人とも何度も登っているので、今回は「ま、いいか。」と、頂上は割愛。靴をアプローチシューズに履き替え、そのまま下山する。


 しかし、下山も長い。
 結局、二週続けて日本三大急登と呼ばれるうちの二つ(早月尾根、黒戸尾根)を下ることになり、久々に大腿四頭筋に来た。
 
 道すがら色とりどりのキノコがあちこちにあるので、写真に撮る。
 前述のタケちゃん曰く、(素人による)食べられるキノコの見分け方として、
 
 ・色が地味
 ・表面がヌメっている
 ・笠の裏に黒い斑点が無い
 
 の三つがまず基本中の基本らしいが、やはり食用キノコの判別は難しい。
 誰かが言っていたが、「別に山でキノコ食べなくても生きていられるし、そこで冒険したくない。」という意見はもっともだと思う。

  
 

 五合目から下でもやはり早月尾根の時と同様、にわか雨に降られたが、たとえゴアテックスでも雨具を着れば蒸れそうな気温だったので、沢のウェアであることを幸いに濡れながら駒ヶ岳神社へと下った。
 今回は先週の剱の疲れもあって、ややハードな行程となったが、来月に控える別の沢?に備えて良いプレ・トレーニングになったということで相方には許してもらおう。

【今回の教訓】大雨が降った後の沢はヌルが多い(よーな気がする)

南ア・信濃俣河内(偵察)

2019年07月25日 | 沢登り
日程:2019年7月25日(木)前夜発日帰り
天候:
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
行程:畑薙第一ダムP 8:00-畑薙湖右岸林道8:30-吊橋9:00-信濃俣河内三俣手前13:00-ダムP 16:00

 今年の梅雨は特に長く、七月は毎週末クライミングのジム通いが続いた。
 それもようやく梅雨明けの気配となり、まずは南アルプスの信濃俣河内を計画する。昨年の易老沢に続く南ア南部第二弾だ。
 予備日を含め四日間、予報も悪くはなかった。
 しかしながら、直前になってまさかの台風接近。梅雨明けはおあずけとなってしまう。

 とりあえず行ってみようと前夜に出発。東名経由で清水ICから一般道を走るが、やはり南ア南部は遠い。
 峠越えのワインディングロードでは雨と霧により運転者本人でさえ車酔いしてしまう。
 これは先の剱岳北方稜線の入山時でも経験済みだが、視界不良による遠近感の狂いがめまいを生じさせているように思う。
 その夜は大井川鉄道「千頭」駅近くの道の駅でテント泊。
 
 翌朝はとりあえず晴れ。畑薙第一ダムの駐車場まで移動する。
 途中、東海フォレストバスの駐車場が何か大きなイベントでもやっているくらいに混雑しているのには驚いた。
 ダムに到着。もはや天候悪化が明確なので宿泊装備は車に置き、今回は最初から軽荷の偵察体勢で臨むことにする。
 
 ダムの右岸(左側)林道を30分ほど歩くと突き当たりとなり、その少し手前から右側急斜面を踏跡を辿っていくと立派な長い吊橋がある。(観光用ではない。)
 
 
 
 吊橋を渡り切ってからは二通りあり、右側は一旦高巻き道を下流側に戻り、その後、湖畔に下れるらしいが、今回はダム湖が増水していて無理。
 しかたなく左側のトラバース道を行くが、ザレた急斜面で踏跡の幅も狭く、ここはけっこう悪い。
 沢屋ならロープを出すほどではないが、最近ここで滑落し、入渓する前に敗退の記録もネットで見た。

  
 
 ダム湖からいよいよ本流に入るが、しばらく広い河原歩きと徒渉が続く。
 徒渉は深い所で膝上程度。右に左に10回くらい繰り返すが、長雨が続いたせいか流れが速く、時には二人で肩を組んでやり過ごす。
 
 
 
 

 しかし、この河原歩きと徒渉が思った以上に長い。
 結局、第一ゴルジュ手前の三俣までも届かず、制限時間いっぱいのため往路を引き返す。
 
  途中で鹿の角を拾う。
 
 今回一応、釣りの用意をしており、相方は見たらしいが、自分は魚影を確認できず。
 途中、二人で竿を出してみるが、下流域は流れの速い瀬ばかりでとても釣れそうにない。
 午後になり、いよいよ雨が降り出したので、増水になって閉じ込められる前に帰ってきた。

 
 
 楽しみにしていた梅雨明け第一弾の山行としては何とも冴えない内容だが、天気には勝てない。
 また地図で見ると距離も長く、位置的にも秘境感がある信濃俣河内だが、少なくとも下流は雰囲気も明るく、けっこう人が入っている感じだ。
 長い車と河原歩きのアプローチを考えると、またどうしても行きたいかと問われるとちょっと微妙な感じであった。まぁまた機会があれば・・・。

西丹沢・弥七沢中俣&左俣-小割沢下降

2019年06月16日 | 沢登り
日程:2019年6月16日(日)
天候:
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
行程:玄倉9:10-弥七沢出合10:10-右俣遡行-稜線-支尾根下降-弥七沢二俣12:10~30-左俣遡行-稜線14:10-小割沢下降-小割沢出合18:40-玄倉19:40
 
 さて、今週は梅雨の合間に沢登り。これが今シーズン最初の沢始めとなる。
 当初、部の研修山行として計画したが、皆さん都合が悪いようで結局集まったのはいつもの弟子一人。ま、いいけどね。(^^;)
 
 日曜朝に小田原集合。弟子の車で西丹沢に向かう。
 丹沢は高校の頃からのホームグラウンドで、さすがに最近はそんなに訪れることはないが、やはりたまに来ると懐かしいというか気持ちがホッとする。
 
 丹沢の沢は既に50本(通算だと70回近く)登っているが、今回の弥七沢は初めて。
 玄倉の無料駐車場で沢準備を整え、小川谷方面に向かって歩き出す。
 
 少し歩くと(このまま進むと)「ユーシンブルーへは行けません」の立て看板あり。
 誰が言い出したのか「ユーシンブルー」って、もはや観光スポットとしての名称なのかと再認識。

 

 林道を小一時間ほど歩いて、弥七沢出合。
 出合に掛かる橋の名称は判別できないが、手前で今回下降する予定の小割沢を確認しているので、まず間違いない。
 
 すぐに小堰堤の左岸越えから始まるが、出だしから相方の弟子が絶叫する。
 早くも大量のヒルがお出迎え。


 東丹沢は多いことは知っていたが、ちょっと目を離した隙に西丹沢もヤツらにしっかり制覇されたようだ。
 もちろん、こちらも「ヤマビルファイター」なる化学兵器を持参し、その時は「かかってきなさい!」ぐらいに軽く見ていたのだが・・・。

 
 
 弥七沢は全体的にゴルジュっぽい沢形の中、5m程度の小滝が適度に続く。緑の季節とあってまぁまぁの印象。
 ただ、ほとんどの滝にトラロープが掛かっているのがちょっと興覚め。魚影はほとんど見ないので釣り人が付けたわけでもないだろう。
 もちろん、我々はそんなものは無視して登れる滝は巻かずに進む。

 

 

 やがていくつか枝沢を分け、その都度トポと照合しながら進むが、ケルンがあるという二俣を気付かず通過。
 そのまま本流を進んでいくうちにいつしか流れは細くなり、源流らしい雰囲気に。既に稜線も近い位置にあり、そのまま詰め上がってしまった。
 雰囲気は悪くなかったけどちょっと物足りない沢だったなと思いつつ、「ま、たまにはこのまま早めに下って温泉でも」と支尾根を下りにかかる。
 しかし、どうやらあまりに近くの支尾根を下ってしまったようで、そのまま弥七沢に逆戻り。
 
 けっこう急な斜面を木の枝や根を頼りに慎重に下っていくが、もうすぐ沢床という所で自分が足を滑らせ、5mほどプチ滑落。
 すぐに相方に「気を付けて。」と言ったのだが、安全と思われた地点までトラバースし終わった相方も油断したのかここで足を滑らせ尻セード。
 それぞれ尻に軽い打撲と手指を突き指してしまったが、まぁ問題無し。
 
 着いた沢床から少し下流へ戻ると、往きに見落としていた二俣のケルンを発見する。
 既に25年前の「丹沢の谷110ルート」のトポにも記載されているケルンだが、(その後、何回か積み直されたのかもしれないが)、増水や山崩れにも負けず、こうして存在しているのに驚いた。
 ケルンは本流の右岸側にあり、左俣もこのケルンが無いとちょっと難しいと思う。
 
 とりあえず二俣で行動食を摂り、軽く小休止。まだ昼過ぎだし、右俣だけではかなり物足りないので、左俣も詰めることにする。
 こちらは高さはそれほど無いにしてもちょっとテクニカル(Ⅳ級程度)な滝がゴルジュの中に連続し、面白い。
 つまらない怪我をしたくないので、持参した40mロープを積極的に出し、極力直登する。

 

 

 
 
 中俣はあまり面白味は無かったが、左俣も遡行したので、まぁまぁの満足度を得て稜線着。
 そのままよく踏まれている小尾根を赤テープを頼りに下山する。
 
 尾根通しに下っても良かったが、テープに導かれるまま進んでいくといつしかまた沢へと下りてしまう。
 相方がスマホのGPSで確認すると、どうやら小割沢へ下りているようだ。
 元々その計画だったので、まぁ大したことないだろうと進んでいく。
 
 小割沢の下降はツルツルに磨かれた小滝が連続し、けっこう大変だった。
 クライムダウンは難しく、懸垂下降の支点は滝の落ち口にある灌木や倒木を利用できたが、そろそろ終わりにしたいと思っても出合までしつこいぐらいにロープを出した。
 先の「丹沢の谷110ルート」のトポ図では右岸側に巻道が続いているようだが、全体的にゴルジュなので、かなりの高巻道なのかもしれない。我々はほぼ忠実に沢芯を下る。

 
 結局、午後早い時間に終えるつもりが、陽も暮れた時間にようやく小割沢出合に到着。
 ウォーミングアップの沢始めが想定外のプチ修行となってしまったが、修行好き?の相方は十分満足したようで、それはそれで良かった。
 
 しかし、一方で日帰りの軽い沢に出かけた二人の下山連絡が夕方になっても無いということで、我が部内のLINEではひと騒動。
 ま、心配してくれるのはありがたいし、連絡が遅れたのは申し訳ないが、西丹沢って意外と電波が入らないんですよね。
 そこんとこよろしくです。(^^;)
 
 とにかく無事に車を停めてある玄倉に到着したが、最後に流血事件発生!
 濡れた沢のウェアを乾いた服に着替えようとタイツを脱いだ途端、思わず「太陽にほえろ!」松田優作アニキ扮するジーパン刑事のあのセリフを叫んでしまった。
 「なんじゃ!こりゃあっっ!」

 
 両膝回りにプックリと膨らんだヤマビルが7~8匹。足は血まみれである。
 今回、自分は甘く見て普通の化繊のズボンの下に一応沢スパッツを着けていたが、ヤツらはスパッツを這い上って主にヒザ周辺に総攻撃をかけていたのだ。
 一方、沢タイツを履いていた相方はやはりウェアやシューズのあちこちに小ビルがくっついていたものの、特に大きな流血は無し。
 ヒルの場合、特に痛みはないのであまり気にしていないが、しばらく血が止まらないので(ヒルの唾液に含まれるヒルジンという成分が血の凝固作用を防いでしまう)、これにはまいった。
 着替えのズボンが黒っぽい色なので帰宅時も回りの人には気付かれなかったが、薄い色のスボンだったら絶対大騒ぎになっていただろう。

  ※閲覧注意!クリックで拡大表示されます。
 
 梅雨時の丹沢へ行く方は完全防備の体勢をお勧めします。

南ア・易老沢

2018年08月05日 | 沢登り
日程:2018年8月3日(金)-5日(日) 前夜発二泊三日
行程:遠山川易老沢左俣遡行-光岳-右俣下降
同行:ヒロイさん(我が社の山岳部)
参考:その空の下で(by タケちゃん)
       「関東周辺の沢」白山書房・刊
 
 さて今回は南ア南部、易老沢から光岳へ。
 そもそもは光岳へ行ってみたいという相方の願いから発したプランだが、考えてみると自分も光岳は大学一年時の山岳部夏合宿以来だから、実に数十年振り。
 易老沢という名もかなり前から沢のガイドブックで見かけていて、少し気になる存在だった。
  
 前夜、仕事を終え、小田原を20時半に出発。新東名を浜松まで走り、その後、運転を代わって奥三河の曲がりくねった国道を行く。・・・赤石沢の時も感じたが、南ア南部はやはり遠い。
 「遠山郷・道の駅」に着いたのは日付が替わって午前1時頃。そそくさとテントを張り、就寝。
 
一日目
 天候:のち
 行程:遠山郷・道の駅6:40-芝沢ゲート7:55-易老渡9:00-取水堰堤9:53-右俣大ガレ(引き返し)11:00-二俣11:53-30m大滝15:15-1,600m付近右岸テン場17:30
 
 朝食を済ませ、まずは遠山川右岸の細い林道へ入っていく。
 この林道、右の谷側は所々ガードレールが無く、深夜に眠気を我慢して走るのはたいへん危険。昨夜は手前の「道の駅」泊まりとして正解だった。
 しかし、こんな山奥の土地にもポツポツと民家があり、人々が住んでいるのには驚く。
 時の流れが止まってしまったような村。まさに「遠山郷」だ。
 
 15kmほど走ると登山用駐車場の看板あり。その先に黒い門扉があるが、開いていたため、強気のヒロイさんはそのまま突破。
 (小心者の私は、もし後で門扉が閉められたらどうしようと内心ヒヤヒヤ。)
 しかし、そのままダートを少し走ると左側が広く開けた場所に出て、そこが芝沢ゲートだった。
 平日だというのに既に30台以上。中にはおよそ山とは無縁そうな黒塗りのクラウンも。
 以前はここから5kmほど先の易老渡まで車で入れたのだが、ここ数年(今後も?)車はここまでだ。
 
 沢支度をして、脇からゲートを越え小一時間ほど林道を歩く。
 易老渡に着。
 橋を渡って、直進は易老岳への登山道。我々は標識に沿って右側の踏跡に沿って進む。
 ここにはアプローチ短縮のため自転車も数台デポしてあった。

 
芝沢ゲートの駐車スペース(左)と、登山口の易老渡(右)
 
 FIXロープのあるガレをトラバースし、沢が近づいたところで取水堰堤を待たずして入渓。
 けっこうな水量である。
 自分は見かけなかったが、先行する相方は早くも魚影を確認。
 今回、二人とも釣りの準備はしてきたが、ネットの記録ではあまり釣れたという話は聞かない。果たして釣れるんだろうか。
 
 やがて取水堰堤。
 向かって左端の階段状が魚道となっているが、今日は水量少なく、とてもこの階段を岩魚が遡っていくとは思えない。
 沢はその上で二俣となり、我々は左俣へ進む。・・・はずだったのだが、目の前の小滝に夢中になって二俣にまったく気づかず。
 しばらくして左岸に大きなガレが現れ、そこでトポと照合し、ようやく誤って右俣に入ってしまったことに気付く。
 急いで二俣まで引き返す。

 
取水堰堤。左端に階段状の「魚道」がある。
 
 そして二俣。タケちゃんのレポにあるように、ここは二俣というより左俣が枝沢のように入ってくるので見落としやすい。
 すぐ遡っていくと、顕著な魚留の滝があるので、ここで再確認。
 進んでいくと多段18m滝。
 その後、ゴルジュとなる。

 
 
 相方はせっかくの沢だからと、積極的に流れの中心を選んで進もうとするが、さすがにゴルジュは水量多くて無理。
 40m大滝で最初の巻き(左岸)となるが、他の記録にあるようにグズグズの急斜面でけっこう悪い。
 一応、ロープを出して自分がリードするが、ちょっと良くないルートを選んでしまったかもしれない。
 被り気味の土壁でボロボロと崩れるホールドにヒヤヒヤしながら上に抜け、立木で支点を取り肩絡みでフォローを迎えるが、そこでいきなりドカンと強烈な引きが来る。
 自分の足場も悪く、引きずられるままこちらもひっくり返ってしまった。・・・落ちた?
 
 コールをかけ、無事を確認。その後、何とか登ってきてくれたが、聞くとアンダーで持っていた岩が土からスッポ抜け、そのまま二回転して止まったとのこと。約5mの滑落。
 彼女は慎重だし、登る技術も十分なのでまさか落ちるとは思わなかったが、こっちも油断してしまった。
 ほんの数秒の出来事だが、本人は転がりながら「もし上でセルフとってなかったら、このまま・・・。」と意外に冷静に考えていたらしい。
 とにかく大した怪我が無くて良かった。そこからはお互い一段と気を引き締めて進む。


 
40m大滝(左)は左岸巻き。30m幅広滝(右)はたけしレポに倣って右岸巻き。
 
 その先、30m大滝は左の枝沢を少し上がってから右岸巻き。
 微かに踏跡らしきものがあり、それを頼りに高巻いていくが、けっこう悪い。本当にこれであっているのか不安になる。
 それでもトポどおり再び沢に戻ることができた。

 
 
 しばらく平凡な小滝群が続き、途中右岸に小さなテン場を発見するが、まだ時間も早く、先の行程も長いのでそのまま通過。
 やがて上部のゴルジュ帯に入る。
 出だしの三段15mは越えるが、その後の40m滝は人を寄せ付けず右岸巻き。
 そろそろ夕暮れが迫ってきてテン場を決めたいが、ゴルジュに入ってしまったため、なかなか好適地が見つからない。
 左から入ってくる枝沢の脇にどうにかミニタープを張って、一日目の行程を終了。
 
 
 
 焚火を試みるが、周辺の木はどれも湿って火付きが悪い。
 今回の食事は基本的に焚火で炊飯、おかずは現地調達としていたため、急遽、行動食をやりくりするビバークとなってしまった。
 寝床は斜めだし、ヘッデンを点けるとやたら白い蛾がたくさん集まってくる。
 初日からヤレヤレな展開だが、それでも相方は凹むことなく、むしろこの状況を楽しんでいるようなので助かるが・・・。
 
二日目
 天気:/夕方
 行程:左俣1,600mテン場6:30-奥の二俣8:25-2,000m源頭部10:20-稜線-静高平12:00-光岳12:50~13:20-右俣2,000mテン場15:30 
 
 疲れもあって昨夜はぐっすり眠れたが、起きてみればここはまだゴルジュの途中。
 朝一から悪い高巻きが待っているという現実に一気に引き戻される。
 ガス節約のため、朝は相方が行きのコンビニで買った行動食の残りを食べて出発。

 
 ゴルジュはなるべく小さく巻きたいところだが、けっこう悪い。結局、大高巻きを強いられるが、これはこれで微妙に悪い。
 何とも頼りない木の根を掴んで、際どいボルダームーブなど駆使して進む。
 自分はけっしてルーファイが良いほうではないが、それでも進んでいくうちに野生の勘というか、どんなに本流から遠く離れても最後は沢筋に戻れるようになるから不思議だ。

 やがて、標高1,700mほどで顕著な二俣。
 周辺に良いテン場があるらしいが、特に確認しなかった。いずれにしても昨日は無理してもここまでたどり着けなかっただろう。
 この先、ゴルジュはまだ続く。しかも直登できない水量豊富なヤツだ。
 易老沢は名前からしてもっと癒し溪かと思っていたが、やはり南アルプス。なかなか厳しい。
 
 そのうち周りは青いトリカブトが群生し、明るく開けてくるが、それでもしつこいぐらいに小滝が続く。
 やがて正面に「三吉ガレ」と呼ばれるガレが見えると、沢は右に折れる。水流はまだ続く。
 標高2,000mほどでようやく水涸れ。

 
 タケちゃんの記録によれば、ここからすぐ右の小尾根に取付けば藪漕ぎ無しで稜線に到達するとのこと。
 何となく踏跡があるが、登り付いた所もイマイチ判然とせず。
 やっぱり南ア南部だと、登山道もこんな心細い感じなのかなぁとしばらく右往左往する。
 よく解らないまま一旦、易老岳へ戻る形で進路をとったら、一段低くなった南側に正規の登山道を発見。
 ずっと道無き道を進んできたので、こうした立派な道のありがたさを思い知る。
 
 光岳方面へ進んでいくと、ようやく登山者の姿もチラホラ。
 昨今のトレランやウルトラライトの風潮を受けてか、みんな思いのほか軽装だ。
 自分が今歩いているのは、かつて数十年前に50kg近い(合宿後半だから35kgぐらいだったかも)キスリングを背負ってひたすら苦行のように歩いた道。
 はっきりと覚えているわけではないが、この道はあの頃のままずっと変わっていないような気がする。

 
 途中の静高平は別天地。
 脇を流れる清水で喉を潤し、木道を進むと立派な光岳小屋に到着。さらに光岳へと進む。
 予報ではこの後、雨。実際、周囲はかなりガスってきた。
 私は少々シャリバテ気味で、沢を詰め稜線に上がってからは先を行く相方のペースについていくのがやっとだった。
 よほど天気を言い訳に「今日は小屋に素泊まり、明日は予定を変更して登山道から下りては?」と悪魔の囁きをしそうになったが、それとなく相方に「このまま予定通り?」と聞くと、「そうしましょう。」と力強い返事。・・・了解です。
 
 そして光岳登頂。
 学生の時以来、まさかもう一度ここへ来るとは思わなかったので、それなりに感慨深い。
 だが、これまでの行程、さらにこれから先の右俣下降を思うと、まだまだそんな気分にも浸れないのが事実。
 しばらく休んだ後、光石(テカリイシ)へ。ここは初めて。
 ヒカリゴケの付いた岩でもあるのかと思ったら、緑濃い光岳周辺でここだけ白い岩が堆積しているちょっと不思議な場所だった。
 
 
自分にとってはお久し振りの光岳(左)と今回お初の光石(右)

 一旦分岐まで戻り、西側の加々森山方面へ向かい、途中から右手の踏跡を辿り右俣源頭部のガレに入る。
 
 ガレはボロボロだが、慎重に行けばそれほど大きな落石を起こすことはなく、ロープも不要。
 けっこう長くガレは続き、ようやく水流が現れる。
 しばらく小滝をクライムダウンでやり過ごし、高度を下げるが、やがてゴルジュに入り高さのある滝に出くわす。
 最初は左岸、そして次は右岸からと懸垂二回で最初のゴルジュを越え、ホッと一息。
 
 タケちゃんの記録では、この辺り(標高2.000m付近)でテン場を捜さないとしばらく先も見つからないとのこと。
 周辺にやや古い焚火の跡が残っているものの、あちこち探してもこれといった場所が見つからない。
 易老沢は土質が脆く、そのため急なゴルジュになっているように思えるので、大雨でも降ればせっかくの平坦地もまたすぐに元の荒地に戻ってしまうのだろう。

 
 
 それでも何とか灌木の陰にタープを張る。昨日に引き続き傾斜地だが、しかたがない。
 本日はまだ時間も早いので、せっせと枯れ枝を集めて焚火開始。
 何とか恰好がついたが、さて飯盒で釜飯を、と思ったところで非情の雨。雷も鳴り出し、まったく何てこったい。
 
 しばしタープに避難し、焚火の成り行きを見守る。
 とりあえず飯はストーブで炊けたし、腹さえ満たせば自分は満足。
 しかし、相方はあくまで焚火に固執。夕立が止むと、ほとんど消えた濡れた焚火を再び根性で復活させてしまった。
 うーん、やるなぁ。いざサバイバルの局面に立ったら、やはり男より女の方が強いということか。

 
 
三日目
 天候:
 行程:テン場6:40-ゴルジュ-取水堰堤13:20-釣りタイム13:30~14:30-易老渡15:00-芝沢ゲート16:00
 
 いよいよ最終日。
 天気がやや心配だったが、今日も良い天気。昨日の夕立以外、三日間良く晴れてくれた。
 朝も焚火で暖をとり、昨夜の釜飯の残りを腹に納めて出発。
 
 すぐにまたゴルジュとなり、右岸を20m懸垂。
 ここはまず嫌らしい高巻きを10mほどトラバースしていくと、途中に支点となる木があり、苔の付いたスリングと環付ビナが残っている。
 しかし、太さはあるものの木自体は枯れてしまってグラついており、ちょっとヤバイ。
 他に太い木も無く、しかたなく直径5cmほどの若木にバックアップを取って懸垂したが、ちょっと怖かった。
 その後の左岸の懸垂にも、ほとんど自然と同化した苔むした残置スリングがあった。
 
 
 
 その後はしばらくはクライムダウン可能な小滝が延々と続くが、とにかく長い。やはり南アルプスだ。
 初日の遡行では主に自分がリードしたが、本日の下降は相方にリードを任せた。
 
 岩魚は居ないが、途中で可愛いサンショウウオを何匹も発見。
 さらに下流の巻道では、あわやマムシを踏みそうになったりする。何とも気が抜けない。
 ようやく左岸の大ガレが見え、その下の二俣は(自分は)気が付かないまま通過してしまう。
 もういい加減終わりにしてほしいと思ったところでようやく取水堰堤にたどり着く。は~、長かった。

 臨戦態勢のマムちゃん。
 
 最後は堰堤下で小一時間ほど二人で釣竿を出すが、淵に尺物が見えるもののまったくアタリがない。
 釣り人はそれなりに入っているようなので、やはり岩魚もスレてしまっているのだろうか。結局、二人とも釣果無し。
 
 易老渡から再び林道を小一時間ほど歩き、車を置いた芝沢ゲートにようやく到着。
 ここで待ってましたとばかりに、単独の登山者に声を掛けられる。
 聖岳から縦走してきて、車も無く途方に暮れているようなので乗せてあげたが、ここから国道まで約20km。
 我々の後にももう一組下山者がいたからいいようなものの、もし誰も来なかったら一体どうするつもりだったんだろう。
 自分もこれまで人さまにさんざんお世話になっているのであまり偉そうなことは言えないが、このおじさん昨日は到着が遅れて山小屋のオヤジに怒られたようだし、ちょいと無計画過ぎるような気がする。
 
 
現行ヒロイ号は今回がラストラン。有笠、瑞牆、伊豆城山、そして新穂高に遠山郷とよく走ってくれました。
 
 結局、今回は稜線以外では誰とも会わず、沢は我々で貸切だった。
 これでもし他にバーティーがいたら、わかりにくい高巻きなど協力し合えただろうが、それだけに今回二人でやり切った感は強く、久々に中身の濃い山行だった。
 相方のヒロイさんもこの三日間で「もののけ姫」のように逞しくなった。まぁあまり「もののけ」になっても困るので、ほどほどに。

奥鬼怒・魚沢-赤岩沢

2018年07月22日 | 沢登り
日程:2018年7月21日(土)-22日(日) 前夜発一泊二日
行動:単独
装備:沢靴(アクアステルス)、ロープ使用せず

 さて今週は、先週の「滝谷PTSD」を癒そうと、一人で軽めの沢へ。
 いくつかの候補のうち、余裕のある行程で二つの沢を遡下降できる奥鬼怒の魚沢、赤岩沢に決定。
 メジャーな存在ではないが、意外と古いガイドブックや山岳雑誌にも紹介され、ナメが連続する美溪のようだ。

 金曜夜に横浜を車で出発。
 東北道を宇都宮ICで降り、有料の日光道路、その後ナビに従ったが、途中で峠越えの道に入ったりしてけっこう遠い。
 深夜1時前に女夫渕の駐車場に到着。そのまま車中泊とする。
 既にご承知のとおり、かつてあった女夫渕の温泉宿は今は無く、広く立派な駐車場があるのみだ。

  女夫渕駐車場。60台ほど可。無料。

一日目
天候:
行程:女夫渕P6:30-魚沢出合7:00-20mナメ滝8:00-ミニゴルジュ8:30-15m滝(高巻き)8:50-三俣11:00-黒沼田代12:00~30-赤岩沢・上ノ大滝13:50~14:15-1,700m幕営地14:30

 翌朝、日頃の寝不足か、すぐに歩き出す気力がなく、しばらくウダウダ。のんびりオニギリなど食べてから出発する。
 まずは駐車場から右手、黒沢の右岸林道に沿って30分ほど。
 魚沢の出合はすぐに見つかり、沢に降りる。出合の流れはそれほど大きくない。
 
 遡行を開始すると、すぐに綺麗な淵と小滝が現れる。緑の中を流れる明るい沢だ。
 魚影も確認。少し期待するが、イワナの姿はそこまでだった。

 最初の6m滝は中央右寄りの倒木が懸ったラインが登れそうだったが、シャワーもろ被りなので却下。左から登る。

 

 やがて20mナメ滝。
 ど真ん中直登は無理。水流右の草付きを利用して越える。

 その先はミニゴルジュ。ちょっとジュラシックな景観。
 足を開いて、突っ張りで正面突破。楽しめる。

 
20mナメ滝(左)とミニゴルジュ(右)

 ゴルジュを抜けると待望のナメが現れるが、倒木で少し荒れているのが残念。(だが、お楽しみはこれからだった。)

 その先、15m滝。ここの高巻きが魚沢では核心のようだ。
 まず滝の下段右側からショートカットしようとしたが、抜け口がボロボロのスローパーで悪く、一旦クライムダウン。
 左から滝芯の裏を潜って左岸を高巻く。
 グズグズの斜面で高さもあり、多少気が張ったが、慎重にクリア。
 パーティーで行く場合、ここはロープを出した方がいいだろう。

 15m滝の左岸高巻きは少し悪い。

 すぐに続く6m滝はシャワーを浴びれば直登できそうだったが、こんな所で頑張る必要もないので、そのまま右岸巻き。

 

 この先、綺麗なナメが続く。
 奥秩父・釜ノ沢の「千畳のナメ」より長くて立派。
 沢の師匠タケちゃんの記録によれば「五千畳のナメ」と言ってもいいくらいとあるが、たしかに!
 
 
 
 二条8m滝は左側の水流を直登。ここも快適。
 さらにナメが続き、途中ボロボロの小滝などを登っていくと、やがて三俣。
 ここはセオリーどおり右俣へ。(ちなみに左俣が一番水量多い。)

 

 上部へ行くと、黒いスラブ滝が現れる。
 下から見るとそれほど傾斜を感じないが、実はこういうのが曲者。
 上に行ったら難しくなって、大いにハマるのがよくあるパターン。ここは無理せず、右側の草付きを頼って無難に越す。

 やがて水涸れ。
 何となく踏み跡ぽい所を選んで、斜め右30度位の見当で進んでいくと、労せず黒沼田代(湿原)に到着した。
 後にも先にも人はいない。静かだ。
 時折、聞こえるのは季節外れのウグイスの声くらい。

  黒沼田代

 それほど急いだわけでもないが、一人だったせいもあって時間もかからず、まだ正午になったばかり。
 頑張れば、このまま赤岩沢を下って十分日帰り可能だが、明日も日程を取っているのに特に追加のプランを考えていなかった。
 駐車場まで戻っても焚火も温泉も楽しめないので、ここはペースを落として、途中で敢えての沢中泊とする。

 黒沼田代の湿原も草がフカフカで寝るには気持ちよさそうだったが、水が得られないので、とりあえず赤岩沢を少し下ってみる。
 湿原をそのまま北東側へ突っ切り、やや開けたブッシュの中に踏み込むと、すぐに沢形が現れ、チョロチョロと水が流れ始めた。
 ネットの記録では、けっこうこの田代で彷徨したというのを聞くが、ルーファイの良くない自分としては今日は上出来。
 まったく迷うことなく、ドンピシャで沢から沢へと継続することができた。ちなみにこの辺り、特に赤布の目印無し。

 下っていくと、それは赤岩沢の支流で、すぐに本流へと合流。
 最初に現れた黒い10m滝は、落ち口から覗き込んで、左側をクライムダウン。

 赤岩沢上部の黒滝

 少しナメが続くと、二段50m滝の落ち口へ。
 ここは右側のブッシュから大きく高巻いてクライムダウン。
 灌木が頼りになるが、途中かなり壁が立っていて、しかも岩が少し脆い。
 50mロープを持ってきているので本来なら懸垂下降だろうが、回収も引っ掛かりそうだったので、自己責任でオール・クライムダウンとした。
 先週の滝谷効果か、けっこう頑張れちゃうところが自分でも怖い。(^^;)
 何とか安全地帯まで降りるが、二日間の行程中、やはりここが一番の核心だったかも。

 幕営地を捜しながら降りていくと、標高1,700m位の地点にこれ以上ないベストな物件を発見。
 よく使われているようで焚火跡もあり、時刻はまだ14時半と早いが、ここでタープを張ることにした。

 

 魚影は相変わらず期待できないので、一人のんびり焚火を楽しむ。
 沢で冷やしたウォッカのウィルキンソン割で、しばしまどろむ。
 ウェアも焚火でそこそこ乾かしたので、その夜はシュラフカバーで快適に眠れた。

二日目
天候:
行程:幕営地6:30-赤岩の大滝下7:30-黒沢林道8:50-女夫渕P10:00

 今日も、まずはナメから始まる。昨日の魚沢と合わせて、とにかくナメが多い。
 途中の小滝は大抵左側がブッシュがよく育っており、これを頼りにクライムダウンで下っていける。時折、岩がヌメっているので注意は必要。

 やがて最後の大物、赤岩の大滝50m。
 ここも上の大滝同様、右側からブッシュを頼りに降りる。
 下から大滝を見上げると、明るい陽射しの下で何とも開放的な景観が広がる。  
 かつて、ここを登ったタケちゃんもmoto.p氏も今はもう居ない。諸行無常なり。

 
赤岩沢・上の大滝(左)と赤岩の大滝(右)。共に50m。下降の場合、右岸巻き。

 その後、二つほど小滝を下ると伏流となり、後は巨岩のゴーロとなる。
 再びチョロチョロと水流が現れたところで、ふと水たまりに岩魚を発見!
 急いで石で堰き止め、手掴みを試みるが、タッチの差で逃げられてしまった。残念!

 やがて現れた巨大堰堤は右側から越し、流れの浅い黒沢本流を渡ると、林道に出た。
 しかし明るいうちはいいが、日帰りで帰りが暗くなった場合、ちょっとわかりにくいと思う。

 

 後は荒れた林道を約一時間。
 途中、右手を流れる本流に下りて魚影を探索するが、上部堰堤に貯まった濁り水の影響か、確認できない。
 この辺り、あの葛根田川を思わせる美しいナメの渓相だけに、若干濁って匂いのする水流は何とも残念である。

 無事、女夫渕に戻って、帰りは川治温泉「薬師の湯」へ。
 川沿いの混浴露天。内風呂もあって、JAF会員なら300円だ。
 水着、バスタオル不可の上級者向け?だが、この日は妙齢の女性客も。

  

 さっぱりした後は、舞茸の天ぷらと手打ちそばで腹を満たし、帰路は高速を避けてR4号のバイパスで。
 途中、「自治医大」の標識にふと気付き、何気にバイパスを下りたら、タケちゃんの墓のすくそばだった。呼ばれたのかなぁ。
 猛暑が続いているので、墓に打ち水して手を合わせる。

 「守護霊さま、これからも頼むよ。」

初夏の奥秩父・大荒川谷

2018年07月01日 | 沢登り

日程:2018年6月30日(土)-7月1日(日) 前夜発一泊二日
天候:両日とも
行動:単独
参考:webサイト「その空の下で」
  「奥秩父・両神の谷100ルート」「関東周辺沢登りベスト50コース」山と溪谷社・刊

 今年は観測史上最も早い梅雨明けということで、ナント六月中に梅雨が明けてしまった。
 で、こちらは週末をフル活用して山へ行くつもりが、そういう時に限って皆さん別件が入っていたりする。
 ということで今回、一人で行こうと決めたのが、奥秩父北面の大荒川谷。
 奥秩父の中でもコアな位置にあり、以前から気になっていた沢だ。
 今は亡き相棒のタケちゃんによる沢リスト「たけしミシュラン」でも「行くっきゃない!」と評価された最高の四つ☆沢。これは自分も行くっきゃないか。

一日目
行程:R140号「出会いの丘」6:30-入川渓流釣り場6:50~7:30-赤沢谷出合8:30-登山道-柳小屋10:45-金山沢出合14:40-ゴンザの滝16:35-ビバーク17:00

 前日の金曜夜に横浜を出発。その夜はR140号の雁坂トンネルを抜けた「出会いの丘」PAで車中泊とする。
 ここは2005年6月にタケちゃん、juqcho氏と豆焼沢へ行って以来だから実に13年振り。月日が経つのは早いものだ。

 さて、大荒川谷を単独で行く場合、考えなければならないのがそのアプローチだ。
 奥深い位置にあるため入渓口と下山口が離れている。
 二人以上のパーティーでそれぞれ車を持っているなら、そのうち一台をあらかじめ下山口へ回しておくことができるのだが。

 で、今回はチャリンコ作戦で行く。車にミニベロを積んで「出会いの丘」にデポ。
 そのまま約7km離れた入川溪谷釣り場へ車で移動し、ここからスタート。
 入川釣り場の駐車料金は普通車で500円/日。管理人不在の時は備え付けの封筒に車のナンバーを記載し、釣り場のポストに入れてと書かれていたので、あらかじめ二日分払うことにした。

 

 そこからしばらくは、よく踏まれた林道を進む。
 入川と並行して延びるこの道はそのまま十文字峠へ経て、小川山のある川上村まで繋がっている。昔のトロッコ軌道が残っていたりして、なかなか趣のある道だ。

 一時間ほどで赤沢谷出合着。
 本来、大荒川谷でより大きなスケールの沢登りを味わうなら、ここから入川のゴルジュに入って金山沢→大荒川谷と繋ぐべきらしいが、今回は単独だし、自分は泳ぎも上手くない。
 ヘタにゴルジュ突破にこだわって時間を食ったり低体温症になったりしても良くないので、今回は割愛。
 さらに進んで十文字峠への登山道の途中から直接、金山沢出合に到達するルートを選んだ。

 登山道は所々に「十文字峠へ→」と道標があり、わかりやすい。
 赤沢谷出合からは入川と離れ、ぐんぐん高度を上げてしまうので少し不安になるが、しばらくするとまた山腹を縫うトラバース道となる。
 事前のネット情報では途中の道標の所から左の谷底に向かって、赤テープで目印があってわかりやすいとなっている。
 途中、二か所ほどそれらしい道標を通過。しかし、自分が見た記録では出発から三時間となっていたのに、最初の道標は二時間で着いてしまい、もう一つの道標にしても沢へ導く赤テープが見当たらない。

 何となくどちらもこれだという決め手が無く汗ダクになって進んでいくうち、入渓口よりずっと先の柳小屋まで来てしまった。
 うーん、やっちまったか。これは痛恨のアプローチミス!
 しかたなく今来た道を戻る。しかしやはり柳小屋に近い方の道標の周りには赤テープが見当たらない。
 暑いし時間も押してきたしで、適当な所から沢を降りてみる。
 そのまま入川上部の流れを1時間ほど行ったり来たりするが、どうも肝心の金山沢出合が見つからない。
 再び急な斜面を登り、登山道に戻る。まさか、今回はここで敗退か?

 

 よほど居心地の良さそうな柳小屋に戻って今回は釣りに専念しようかと思ったが、ダメ元でもう一つの道標まで戻り、改めて周辺を見て回る。
 すると「あった!」
 赤テープだ。ただ少し斜面を下った所の木にかなり色褪せた感じで付いているので、パッと見ただけではまずわからない。
 それらしい踏み跡をたどっていくと、次々と赤テープが見つかるが、どれもこれも古びた感じでちょっとわかりにくい。
 足元の悪い急な斜面を降りていくと、まさにそこが金山沢出合だった。

 入川ゴルジュをパスして時間を稼ぐつもりが、とんだアプローチミスで大幅にタイムロス。しかし、気を取り直してここから再スタート。
 しばらくゴルジュ帯を進む。
 滝はそれほど高さはないが釜はどれも深そうで、また滝の水量から見てもとても直登できないか、する気になれない。


 途中、左手に細引きがFIXされたりしているが、適当に右に左に巻いていくと、やがて「ゴンザの滝」。
 ここも直登は無理で、左岸から巻く。
 で、本日のところはゴンザの滝上まで。右岸のビバーク適地にタープを張る。

  ゴンザの滝。左岸から巻く。

 火を熾した後、1時間ほど釣りをする。しかし、当たりが無い。
 入川本流ではけっこう魚影を見かけたが、ネットの記録では(タケちゃんも含めて)ここ荒川谷ではあまり釣れたという話を聞かない。
 とにかく今日は疲れた。酒を飲んだらそのままタープの下で爆睡してしまった。


二日目
行程:ゴンザの滝上6:20-小荒川谷出合7:35-20m滝9:40-三俣10:55-稜線12:30~13:00-雁坂小屋14:00-黒岩尾根-出会いの丘16:40

 昨日は汗ダクになって山道を徘徊したものだから股ズレができてしまい、かなりヒリヒリしていたのだが、一晩経ったらまぁ何とか大丈夫そうでホッとした。
 朝、軽く火を熾してまた釣りをしてみる。
 昨夕と同じく当たりも魚影もまったく無し。場所が悪いのか。
 早々と諦め、ビバーク地を撤収して遡行を再開。

 タケちゃんの記録では「ゴンザの滝を越えるとナメが多くなってくる」とあるが、ナメというよりは小滝が続く。
 やがてゴルジュの中の三段(?)滝。
 彼らは泳ぎ覚悟でシャワーを浴びながら突破したらしいので、敢えてゴルジュへ。
 しかし、一段上がってみると、奥の滝は水流激しくとてもその気になれない。
 

 
 しまった!騙されたか(笑)と思ったが、もはや後の祭り。
 一段上がると下降もイヤらしく、とにかく右か左か壁を登ってゴルジュから抜け出さなければならない。
 で、今回の遡行で一番シビれたのはここ。
 左壁は落ちるとそのまま、さらに下の深い滝壺にドボンなので右壁(6mほど)を選ぶが、ここも一か所がツルツルでまるでフェルトソールが効かない。

 途中、古い残置ハーケンがあった。が、根本まで打たれておらずグラグラしているので、とてもA0する気になれない。
 しばらく迷った後、最後は気合のボルダームーブで何とかツルツル壁を突破。上段は被ったルーフ状のチムニーになっているので空荷で登って後からザックを釣り上げた。
 おそらく5級ぐらいだろうけど、一人なのでけっこう緊張した。

 
ゴルジュの中の悪いツルツル壁。カムを持ってきて正解だった。

 ゴルジュを過ぎると、左から小荒川谷と出合う二俣となる。
 沢はここまでは金山沢で、ようやくこの先から大荒川谷と名前を変えるようだ。
 大荒川谷に入り、しばらく岩がゴロゴロした小滝群が続く。流れの中を行ったり、軽く巻いたりして先へ進む。
 今の季節、緑の苔がとても鮮やか。昨日、今日と大荒川谷は自分一人で貸切である。
 
 小荒川谷出合
 
 とある淵でフイに岩魚を発見!急いで身を隠して釣り糸を垂れるが、やはり釣れず。残念!
 よほどスレているのか、それともこちらの腕が悪いのか。たぶん後者だろう。

 やがて大きめの滝(15~20m級)が間隔を置いてドカンドカンと現れる。
 この辺りからが大荒川谷のハイライトである。
 思いがけず大滝が現れると、「マジか!」「ここ一人で越えられるのか?」と一瞬不安になるが、案ずるより産むが易し。
 この大荒川谷は高さはあるが直登できるもの、あるいは奥まで進むと簡単に越えられたりと技術よりも度胸を試される滝が多い。

 

 


 上部に行くと滝もスダレ状になり、陰鬱なゴルジュから癒しのナメ系に溪相が変わってくるが、それでも次々と見栄えのする滝が現れ、まだ来るか、そう来たかとまったく飽きさせない。


 やがて三俣。
 水量比は向かって左から3:2:1で、特に一番右の枝沢はブッシュに被われ、チョロチョロとした流れなので目立たない。
 ここはセオリーどおり左俣へ。
 すぐに倒木が入り乱れた沢筋となり、そのまま長いゴーロとなる。
 タケちゃんの記録で上部は小さいブヨが顔に集まり「こりゃぁたまらん状態」になったというので、今回は防虫ネットを用意。
 これはとても役立つ。夏の沢では必携である。

 大荒川谷は奥秩父の中でも奥に位置する割にはやはり人気なようで、詰めはヘンにハズさなければゴーロの中に踏み跡が見つかる。
 それなりにシンドイものの、足場は比較的しっかりしていた。
 そのままヤブ漕ぎ無しで、破風山と雁坂嶺との間のコルに到着し、ここで沢装備を解く。
 後は雁坂嶺、雁坂峠と歩いていく。
 
 
 
 雁坂小屋からの下山は最短の黒岩尾根へ。(終点の出会いの丘にミニベロをデポしてあるため。)
 距離は少し長くなるが、単独で自転車も無い時はもう一つの突出尾根も使えることがわかった。
 
 黒岩尾根は距離にして8km弱らしいが、疲れた身体にはけっこう堪える。
 それでも最後に嬉しいプレゼント。出会いの丘から車の置いてある入川釣り場付近まで約7kmのミニベロ・ダウンヒルは爽快だった。
 
 
 
 往きは中央道経由だったが、帰りは秩父回りで。道の駅「大滝温泉・遊湯館」で〆。
 今回、8mm×30mのロープを持っていったが、使わなかった。総合力が求められ、中級者向きの良い沢だと思う。

奥秩父・鶏冠谷右俣(ロング・バージョン)

2017年08月26日 | 沢登り
5日程:2017年8月26日(土)日帰り
天候:時々
行動:単独
行程:西沢渓谷入口6:30-鶏冠谷出合7:20~40-魚止めの滝7:50-逆「く」の字滝8:40-右俣25m滝9:15-40m大滝11:15-源頭部13:15-甲武信岳14:15~45-戸渡尾根・徳ちゃん新道-西沢渓谷入口18:05
使用:キャラバン「奥利根」(フェルトソール)
 
 今年の夏は天候不順続き。この週末もすっかりジムでお茶を濁すつもりだったが、直前になり予報が好転。急遽、夏らしく(?)沢登りに出かけることにした。
 奥秩父の沢は久し振り。たぶん2005年にタケちゃんと行った東のナメ沢が最後だったような気がするので12年振りか?
 
 鶏冠谷はこれまで二回単独で遡行しているが、いずれも左俣。
 左俣の場合、下山はチョイ悪の鶏冠尾根となるが、もうそんな気力もないので、今回はまだ行ったことのない右俣へ。
 右俣はネットでも多くの記録があるが、そのほとんどが奥の二俣、40m大滝手前で遡行を打ち切り、右側の戸渡尾根へ上がるお手軽バージョンだ。
 理由としては、その後も同じようなナメ滝が延々と続き、最後の詰めのザレが悪いからということだが、今回自分は故・タケシ師匠の意志を重んじて源頭部まで詰め上げ、さらに甲武信岳まで足を延ばす「ロング・バージョン」とした。
 
 土曜未明に横浜の自宅を出発。
 圏央道開通のおかげで奥秩父も近くなった。前夜発ではなく、当日早朝発で十分。
 朝6時には無料駐車場に着き、30分後には出発。
 最近はフリーやボルダーの人気が高く、泥臭いアルパインや沢登りは人気薄かと懸念していたが、奥秩父に関してはけっこう沢登り組が健在で、ちょっと嬉しくなった。
 
 林道を進み、田部重治の文学碑の所から左下へ進む。
 車好きだった氏を想って、この奇妙な形の石碑となったようだが、何か違和感を感じるのは自分だけか。

  

 車の形をした田部重治の文学碑(左)と看板に偽り無しの鶏冠谷出合(右)

 ヌク沢出合を過ぎ、やがて二俣。吊橋を渡って、すぐ右側が東沢の入渓点。
 昔は立入禁止の表示や張り綱がしてあったと記憶しているが 今はこの先の鶏冠山が山梨百名山に選ばれてから公的にもオープンとなったらしい。
 
 河原伝いにも行けるが、右岸に巻道があったので、それ使って進んで行くとすぐに鶏冠谷出合。標識もあり、一目瞭然。
 ここで準備。後続パーティーもやってくる。(東沢釜の沢、鶏冠尾根、鶏冠谷右俣の計三組。)
 
 中年男性二人組とほぼ同時に鶏冠谷入渓。
 陽射しがイマイチで、最初のうちは暗い雰囲気。岩とフェルトの感触を確認しながらゆっくり行く。
 
 流れのある大きなゴーロ状を少し進むと「魚止めの滝」12m。
 改めて見ると、けっこう立っている。以前、左俣遡行の時はロープ無し、上部はA0で突破したが、もはやそんな気力無し。
 おとなしく左岸から巻く。
 
  
 出だしのゴーロ帯(左)と魚止めの滝(右)
 
 左から奥ノ飯盛沢が入る所の三段ナメ滝も久し振りに見ると印象が違った。改めて見るとなかなか見事。
 ツルツルで正面突破は無理なので、ここも左岸からサッサと巻く。
 二人組は足並みが揃っていて、けっこう早い。こちらが写真など撮っていると、すぐに見えなくなってしまう。

  
 奥ノ飯盛沢出合付近のナメ滝を行く先行二人組
 
 続いて下部ハイライトの、逆「く」の字滝。20m。
 最近、ネットの記録では「逆さくの滝」とか書かれていて、最初「さかさくの滝?」と読んで随分違和感を感じたが、これは『逆さ「く」の字の滝』の意味だった。
 日本語は難しい。やはり『逆「く」の字滝』でいいんじゃないかと個人的には思う。
 
 この滝は最初の時、最上部で足を滑らせ下の釜まで20m不覚のウォーター・スライダー(早い話が「滑落」)した覚えがある。
 その時は軽い打撲程度で、そのまま最後まで遡行を続けたが、何となく自分の中でトラウマとなっていて気が抜けない。(ちなみに二回目は緊張しつつもソツなくクリア)
 
 その時のヌメリ具合や水量にもよるが、本日はすこぶる快適。
 下部は問題なくスタスタ上がり、屈曲部で軽くレスト。右側からはお助け用に残置スリングが数本垂れ下がっていて、それを頼りに右上にも抜けられるが、ここは自然の形に沿って逆「く」の字型に行く。
 右側の出っ張った岩を使ってレイバック風に進み、最後のほんの一歩が滑りそうで緊張するが、フリーで突破。

 
 鶏冠谷下部のハイライト、逆「く」の字滝。20m。上部にはお助け用の残置スリング数本あり。

   
 
 逆「く」の字の上は、大きく左岸の土砂が崩れ、倒木が景観を損ねているが、いずれまた自然の力で掃除されるかもしれない。 
 その後はちょっとしたゴルジュ、そしてナメ、ナメ滝と続く。

  
 
 やがて鶏冠谷の二俣。予定どおり右俣へ。
 右俣はすぐ前衛の4m滝、その上に顕著な25m大滝かが懸る。
 左からも巻けるらしいが、今回はセオリー通り右(左岸)から大高巻きとする。
 ぐるっと遠回りするようにして高さを稼ぎ、後は滝の落口に向かって水平トラバースだが、頼りになる灌木の間が空き、斜面も崩れやすい箇所がある。
 落ちれば20mぐらい急な斜面を滑落することになるので、注意が必要。大きく巻き過ぎて沢へ戻るのに懸垂したという話もある。
 
 4m倒木の滝。
 倒木が無いと登れないと某記録に書いてあったので、敢えて木を使わないようにしてトライ。
 右側の岩にサイドガバやアンダーホールドが豊富にあり、面白く登れる。
 ただ木が絶大な安心感を与えてくれていることは確か。

  
 右俣に入ってすぐの25m大滝は左岸から大高巻き(左)。4m倒木滝は倒木無しでも登れる。(右)
 
 30m多段滝。
 直登は無理そうだったので、右から小さく巻く。ここも絶対に足を滑らせてはならないポイント。
 この後、しばらくナメとナメ滝がこれでもかといった具合にしつこく続く。

  
 30m多段滝は右から小さく巻く(左)。右のナメ滝は左側のコンタクトラインを直登。
 
 やがて二俣。水量は左1:右2。
 水量では当然右だが、よく見ると左奥にけっこう大きな滝が落ちており、こちらが本流かと一瞬迷う。
 近づいてみると左側の大滝は高さ約20m。威圧的だがよく見ると意外と中央が階段状で、登れる人なら直登できそうだ。
 タケちゃんの記録では大滝は40m、直登はまず無理と書いてあったので、この滝は件の滝ではないだろうと判断。
 一旦戻って、右側の本流に復帰する。この二俣についてはあまり他の記録には書かれていないので、ここでは「ニセの二俣」と呼ぶことにする。

  
 
 少し行くと、またも二俣。今度は水量比1:1だ。
 ちなみにこの二俣から奥に40m大滝が見えるとあるが、私には見えなかった。
 試しに左俣を少し上がると曲がった先に大滝出現。間違いなくここが「鶏冠谷右俣の二俣」だろう。

   右俣の40m大滝
 
 通常はここで打ち切り、右の支沢から戸渡尾根へ上がってしまうようだが、今回はできるだけ源流まで詰めるので、そのまま大滝へ。
 直登は無理なので、セオリー通り左岸を巻く。よく見ると踏跡があるが、少しわかりにくいかも。
 下から見るとなんてことない巻きの傾斜も上に上がるとけっこう高度感あり、ここも絶対落ちれない場所。
 
 40m大滝上でさらに二俣(奥の二俣)。
 水量は1:1。右俣を選ぶ。すぐの三段ナメ滝はルーファイに注意しながら、正面突破。
 
 さらにこの後もしつこいぐらいにナメとナメ滝が続く。
 先の右俣大滝下で打ち切る通常バージョンのパーテイーの記録にもよく「ナメとナメ滝が飽きるほどに続く」と書かれていたりするが、源流まで詰めないと「あなたはまだ鶏冠谷右俣の本当のしつこさを知らない」と言いたい。
 ナメとナメ滝の連続というとまるで「癒し系のデート沢」と勘違いされそうだがそうではなく、神経を使う数回の大高巻きも含めて、この鶏冠谷右俣はある程度経験を積んだ中級者向きだと思う。

 いよいよ水流も細くなり、水枯れ直前の滝は小粒ながら釜に胸まで使ってシャワークライム。
 その上で水も枯れ、いよいよ詰めかと思ったらそれはフェイクで、伏流の後またチョロチョロと水が流れるナメが続く。
 
 最後は枯れ滝を正面突破しようと試みるが、完全に垂直でザックを背負っていると若干被り気味にも感じる。
 先人の古いハーケンと残置スリングが残されているが、今ここまで訪れる物好きな沢屋はそうそういないだろう。
 直登はフリーソロではちょいとリスクを感じ、微妙なトラバースの末、右側の灌木帯とザレの境界線へ逃げる。ここが今回一番イヤな汗をかいた。

  
 
 最後の詰めは鳳凰三山のような白く脆いザレを慎重に上がる。
 単独だからいいが、他にパーティーがいる場合、落石注意だ。
 藪漕ぎゼロで戸渡尾根上部の登山道に出る。
 
 沢の中では曇りがちですっきりしなかった天気もここに来てようやく回復。
 せっかくなので甲武信岳を目指す。
 戸渡尾根と奥秩父縦走路の分岐点の陰に濡れて重くなった沢用品一式をデポし、登り続ける。
 
 甲武信岳山頂は快晴。ここで大休止とする。
 しばらくは数人しかいなくて落ち着いていたが、やがて男女高年者の大所帯パーティーが到着。案の定、シャッター押しを頼まれる。
 しかし人に頼んでおきながらオババが自分でアングルを決めたいのか、なかなかi-phoneをこちらに渡してくれない。
 あのー、こっちも忙しいんですけど。
 「大丈夫です。ちゃんと撮りますから。」と言ってようやく撮影にこぎつけ、撮った写真を確認してもらいようやく無言の「ヨシ!」という判断が下りた。
 代わりに同伴のかわいいオバちゃんがえらく恐縮して「どうもありがとうございました。」と言ってくれたが、こういうオババのように年を取りたくないなぁ。(すみません、グチです。)

  
 
 帰りは分岐点に残したデポを回収し、戸渡尾根、徳ちゃん新道経由で下山。
 しかし、もう少し若い頃は小走りであっという間の下山と思っていたこのルートも久々に歩くと非常に長いっ!
 一昨年、左膝を故障してからトレーニングとしてランニングは一切していないので、体力、持久力の欠如を痛感した。
 
 まぁ今回、鶏冠谷右俣の延長オプションとして源流から甲武信岳ピストンを加えたので、通常のパターンより1.5~2倍はハードだと思う。
 ちなみに古い「改訂・東京付近の沢(白山書房・刊)」によると「前夜発日帰りなら健脚者でも(40m大滝を越え右に入ったなら)適当な所でヤブをこいで戸渡尾根に出る。」とあったので、さらに甲武信岳まで行く自分はまだ世間一般的には健脚とされるのかもしれない。(むしろ年寄りの冷や水の感あり)
 
 最後はヘロヘロになって下山。途中休憩2時間込みで、ほぼ12時間。
 残業にはならなかったが、ふだんヘタなフリークライミングしかしていない自分にはいい運動になった。
 下山後はいつもの「小作」でほうとう。さらに「ほったらかし温泉」で〆。

  

岩手・葛根田川から大深沢継続遡行(後編)

2017年07月18日 | 沢登り
三日目
 天候:
 行程:大深沢北ノ又沢9:15-左岸を藪漕ぎと小窪を登下降しながら前進-4m幅広滝先でビバーク15:30

 朝3時頃、ポツポツとシェルターを叩く雨音で目が覚める。
 時折、遠くでピカッと光る。そして雷鳴。
 入渓前の予報では本日は一日曇り、明日の午後に小雨だったはずが、何とこの時間から雷雨である。
 
 それでも雷雨だからすぐに通過してしまうに違いない。
 雨量は大したことないので、そのまま明るくなるまでシェルターの中で過ごす。

 やがて朝。
 外は明るくなったが、雨は降り続き、雷はまだ鳴っている。 
 こりゃしばらく停滞だな。

 仕方ないのでゆっくり構えることにし、もう少ししたら朝のラーメンでも作ろうと考えていた。

 シュラフの中でウトウトしていると、そのうち頭上で飛行機が飛んでいるような音が鳴り始めた。
 ゴォーッとその音はしばらく続き、そしていつまでも終わらない。

 変だな?
 まさか視界不良でこっちに落ちてくるんじゃないだろうな、とシェルターのファスナーを開けて「あっ!」と驚いた。
 濁流の波がすぐ足元まで押し寄せていた。目の前にある東ノ又沢が大きく膨れ上がっている。
 ヤバいっ!

 あっという間だった。
 裸足のままシェルターごと濁流の中から掬い上げ、そのまま50cmほど高い岸側に装備をぶん投げた。

 外に置きっ放しだった物は、既に濁流の中にプカプカ浮いていたり沈んだりしている。
 ズブ濡れになって濁流の中に引き返し、手当たり次第に拾い上げる。



 鉄砲水だった。
 雨量が大したことないので甘く見ていたが、おそらく東ノ又沢上部で倒木などにより大量の水が堰き止められていたのだろう。
 それが水勢で一気に決壊したに違いない。
 間一髪だった。

 身も装備もズブ濡れのまま、避難した葉陰で今の状況を確認する。
 まずは装備だ。ザック、シェルター、シュラフ、マット、食料袋、トレラン・シューズ。・・・愕然とした。沢靴が無いっ!

 急いで先ほどの幕営跡に目をやるが、完全に濁流の中だ。まだ沢の途中なのに、沢靴を失くすなんて・・・マジか。
 ただトレラン・シューズは両足とも無事だ。
 こいつは水中でもけっこうグリップ力があり、ちょっとした沢なら何とかなる。
 幸い一段上には秋田パーティーがいるので、こうなったらロープを持っている彼らに同行をお願いしよう。
 そう思って一段高い所にある彼らのテン場に行って、愕然とした!
 
 誰もいない!綺麗に撤収された後だった。
 一体いつ出発したのだろう。
 そういえば朝、微かに人の声が聞こえたような気がしたが、雨と沢の音が激しくてはっきりとはわからなかった。
 
 ・・・これはマズイぞ。どうする?どうする?
 為す術なく目の前で荒れ狂う濁流を呆然と眺めながら、いろいろな思いが頭の中をグルグルと回る。
 今までそれなりに修羅場を経験してきたつもりだが、今回はかなりマズイ。
 
 もう一度手元にある物を確認する。
 すると失くしたと思っていた沢靴が見つかった。両足とも。マジか!
 昨夜、少しでも乾かすため外に放置していたのだが、逃げる瞬間、本能的に真っ先に掴んで高台に放り投げていたのだろう。
 この時ばかりは自分のファインプレイを誉めた。
 
 かつて中津川で同じ目に遭った今は亡きタケちゃんとmoto.p氏が見守ってくれたのかもしれない。 
 どうでもいい小物は別として、あとはカメラとコッフェルが見当たらなかった。
 カメラは命に関係ないとしても昨日までの写真が全てパーかと思うと悲しかった。
 諦め切れず少し流れが変わって水が引いた瞬間に再び捜索する。

 ・・・すると、あった!
 見当違いの所に流され、岩の隙間にかろうじて挟まっていた。
 濁流に揉まれたものの、防水カメラゆえ電源も入り無事だった。
 沢靴といい、カメラといい、まさに奇跡だ。
 
 何もかもズブ濡れだが、とりあえず身の回りの物をパッキングする。
 朝の8時頃になると少し空が明るくなり始めた。上空の風で雨雲が流れているのがわかる。
 よーし、このまま晴れてくれ。晴れなくてもいいからせめて雨やんでくれ。
 そう願うも、再び黒い雲が押し寄せ、雷雨はなかなか立ち去ろうとしなかった。くそー、ダメか。
 
 いろいろ考えたが、選択肢は二つ。
 一つは、このままこの高台でビバークするか。
 明日、天気が回復し水が引いたら予定通り遡行を続ければ問題ないだろう。
 しかし、もし雨が続き、水が引かなかったら・・・そう思うとゾッとした。
 日程延長→下山日になっても帰らず→捜索開始といった構図が目に浮かぶ。
 いざとなったらそれも覚悟しなければならないが、やはりそれは何としても避けたい。
 
 もう一つはとにかく行動すること。
 こんな状況だが、幸い自分は怪我をして動けないわけじゃない。
 こんな所で全身濡れたまま、明日晴れるかどうか何もしないでただ長い一昼夜を一人で過ごすなんて耐えられない。
 だとしたら、沢は無理でもこのまま左岸の藪漕ぎをして少しでも先へ進んだ方がいいのではないか。
 
 結局、後者を選ぶ。
 左岸といっても沢に沿ってそのまま数m上を水平にトラバースできるわけじゃない。
 下部は急斜面のため、当然、藪を掻き分け上部へ追いやられる。
 コンパスを見ながらひたすら東へ向かうが、四方八方藪だらけで、時折方向を見失いそうになる。
 
 沢音も途絶え、さすがにこれ以上進むと道迷いになりそうな時は、少し高度を下げると大雨でできた小窪に出くわす。

 それを下っていくと、やがて本流に突き当たり、自分の位置を見失っていないと一安心。
 再び小窪を登り返し、適当な所から東へ向かって藪を突き進む。山の斜面でアミダくじ風に藪漕ぎしているようなものだ。
 
 この日はそんなことを5~6時間続けたが、さすがにこれ以上進むのは無理と思われる藪に突き当たり、気持ちが折れた。
 次に出てきた小窪を頼りに本流際まで一旦戻る。
 もう全身ボロボロの泥だらけ。体力も随分消耗してしまった。

  三日目のビバークサイト
 
 水際数m上に小さなスペースを見つけ、ヨレヨレになったシェルターを木の枝で吊るし、その夜はグショ濡れのまま寝た。
 濡れたダウンシュラフはもはや意味なく、コッフェルも無いので満足な食事も作れない。使えない物はよほどその場に捨てて行こうかと思った。

 増水が引かなければ脱出するのにいつまでかかるかわからないので、残りの行動食を計算し、セーブする。
 今朝はドーナツ半切れ、昼は魚肉ソーセージ1本、今夜は残りのドーナツ半切れだ。
 夜中にさすがに腹が減って酒のツマミに持ってきたアタリメを口にしたが、これは噛むほどに味がしばらく後を引き、空腹の気休めになった。

四日目
 天候:のち
 行程:北ノ又沢4:50-大深山荘9:40-大深岳(ピストン)11:20-松川温泉13:40

 朝4時頃、目が覚める。
 雨は止んだ。だが、まだ曇っている。
 気のせいか沢の音がおとなしくなっている。おそるおそるシェルターをまくり上げ、数m下の本流を葉陰から覗き込む。

 減水している!
 よっしゃ!水量はまだ多く勢いもあるが、濁りは消え、これなら何とか行けそうだ。
 急いで支度を整える。次の雨が来る前にさっさと稜線に詰め上がるのだ。

 ソーセージ一本の朝食を終え、スタート。
 ここが本当に北ノ又沢の本流で間違いないか、念のため一回下流まで戻る。
 少しの間、なだらかなナメが続き、やがて4~5mほどの高さの幅広滝の落口に出る。
 どうやら本流からははずれていないようでホッとする。引き返し、このまま遡行を続ける。

 しかし、考えてみると昨日はおそらく半日かかって直線距離で500m進んだかどうか。
 それでもヌメリが多いという先ほどの幅広滝を回避できたので、ヨシとしよう。
 快適なナメが続き、本来なら歓声が上がりそうな渓相が続くが、今はドンヨリ曇っていて楽しむ余裕はない。
 とにかく安全地帯へ抜けるまでだ。

 

 
 他の記録ではこの先、難しくはないが念のためロープを出した滝もあると書いてあった。
 水量が多かったらという不安はあったが、特にそういった滝も無い。
 忘れた頃にようやく5m二条の滝が現れたが、これは左の階段状から簡単に登れた。

  大深沢北ノ又沢・最後の5m二条滝

 トポでは最後まで本流を詰めず、標高1,350m付近の小窪から東へ詰めると最短で登山道に出られるとあった。
 昨日の三俣でプロ・トレックの高度を地図表記の992mにリセットしておいて良かった。
 
 それらしい小窪が左から入ってくるのを発見。
 念のため、そのまま本流を源流近くまで遡行を続けるが、他にそれらしい小窪は見つからなかった。
 間違いないだろうということで小窪を詰める。
 水流が消え、ここからいよいよ藪漕ぎだ。他の記録で40分、タケちゃんの遡行図でも密笹とあるから心してかかる。
 
 コンパスで東を目指して藪を突き進む。
 40分経過したが、まだ藪の中だ。
 踏み跡も赤布も無く次第に不安になるが、もうコンパスを信じて進むしかない。
 
 1時間10分かかって、ふいに登山道に出る。・・・やった。
 そこから少し南下すると、立派な大深山荘があった。
 ここも無人の避難小屋だが、しっかり管理がされていて床など住宅のフローリングのように綺麗だ。
 ようやく晴れ間も出てきてホッと一息。
 濡れた全装備を広げて太陽で乾かす。窮地から脱出できた喜びに浸る。
 
 しばらくすると地元の巡視員の人が来たので、いろいろ話をする。
 周辺の小屋の管理や登山道の整備をしているそうで、自分もそういう仕事をしたいなと思わせる何とも気持ちの良い人だった。

  
 大深山荘(左)と大深岳山頂(右・1,541m)

 
 ゆっくり休んだ後、せっかくなので最寄りの大深岳まで空身でピストンしてから、松川温泉へ下山。
 最後の道中、豊富な高山植物や雄大な岩手山が目の前に広がる。
 大深沢で散々な目に遭ったにも関わらず、岩手の山が好きになった。

 

  

  

 
 
 松川温泉は「日本秘湯の会」登録の白濁湯。
 檜の内湯と混浴の露天で500円。湯加減絶妙。最後はまた極楽を味わい、その日の夜行で予定通り無事帰京できた。

  
 松川温泉「峡雲荘」と、その露天風呂

 結果だけ見れば三泊四日中、雷雨で一日停滞し、岩手山まで行く予定が縮小になっただけに見えるが、内容的には天国と地獄だった。
 特に三日目は悲壮感漂い、もし帰ったらフリークライミングは続けても、もうアルパインや沢はやめようと本気で思った。
 でも、たぶん喉元過ぎれば熱さ忘れるんだろうな。

岩手・葛根田川から大深沢継続遡行(前編)

2017年07月15日 | 沢登り
日程:2017年7月14日(金)-17日(祝)両夜行三泊四日
行動:単独

 エメラルド・グリーンの瀞と豊富な岩魚。
 岩手の葛根田川はもう何年前も前から考えていた宿願の沢だったが、計画を立てるたびに雨で流されてきた運の無い沢でもあった。
 今回、7月の「海の日」の三連休が何とか天気ももちそうなので、定番の葛根田川から大深沢継続、さらには岩手山まで継続する欲張った計画を立てる。
 これまで何人かの友人と一緒に行こうと話を進めてきたが、日程でなかなか折り合いも付かないので、勝手ながら単独で行くことにした。(約束していた人たち、ゴメンナサイ。)

一日目
 天候:
 行程:東京22:30(夜行バス)5:45盛岡7:44(JR)雫石8:00(タクシー)地熱発電所8:30-大ベコ沢出合10:35-お函11:20-大石沢出合11:50-葛根田大滝13:20-滝ノ又沢出合15:00(泊)

 13日、夜行バスで東京を出発。
 今回は三列シートのデラックス・バスで行く。これが大正解。
 シートはそれぞれ独立し、ロール・カーテンによる間仕切りで隣に煩わされることもなく、実に快適。
 料金は片道7,000円。これで遠く岩手まで寝ているうちに着いてしまうのだから何とも楽である。

 朝の盛岡駅に到着。
 始発のJRには間に合わなかったので、次の便で葛根田の最寄り駅「雫石」へ移動。
 途中、小岩井を通過。晴れた空の下に雄大な岩手山を望み、ついに来たなぁと実感する。

 雫石から予約していたタクシーで入渓口の地熱発電所まで。
 道中、運転手さんからいろいろ地元の話を聞く。
 これから向かう滝ノ上温泉も客足途絶えて閉鎖されてしまったこと。
 この周辺は熊はもちろんいるが、滅多に会うことはない。動物は他にカモシカ、タヌキ、キツネなど。ふつうのシカはいないらしい。
 今の時期もいいが、10月の紅葉時期が素晴らしいので、ぜひ来てほしい・・・などなど。
 地熱発電所前で下車。周辺はいたる所で蒸気を噴出している。タクシー代は6,600円。

 二俣を右のゲート脇を越え、林道を少し行く。
 やがて着いた「葛根田橋」で沢支度を整え入渓。ここからしばらく高さはそれほどないが幅広の堰堤が4つほど続く。
 ほとんど単調な河原歩きとなので再び林道に上がり、終点から再度沢に入り直す。

  

 葛根田川の出だしは、沢というより完全に「川」だ。
 爽やかな陽光の下、清流が続く。
 もう少し穏やかな流れを想像していたが、けっこう水勢があり、徒渉を繰り返していると意外と疲れる。

 
 
 右から入ってくる明通沢を通過。
 さらに行くとやはり右手に最初の見どころ、大ベコ沢の丸っこい坊主のような滝が現れる。
 正面から見ると、向かって左側はカマクラのように穴が空いており、不思議な自然の造形美だ。滝行にうってつけの場所?

  

 やがて流れは鮮やかな緑色の瀞と淵となる。そして岩魚がそこかしこに現われる。
 中にはわざわざ水面まで上がってきて、こちらに向かって投げキッスをして挑発してくるヤツも!
 よしよし、待ってろよ。

 今日は平日とあって葛根田も自分だけで貸切かなと思っていたが、先ほどから先行者らしき足跡があるのに気づく。
 しばらく行くと、単独の釣り人に追い付いた。埼玉から来たそうだ。
 昨日は別エリアへ行ったがあまり釣れず、今日はこちらへ転進してきたとのこと。

 少し話をした後、ここからは自分が先行。
 核心の「お函」は増水時は通過が厳しいと聞いていたので若干不安だったが、今年は雨が少ないようで、難なく右側(左岸)を通過する。
 もっとツルツルの岩を想像していたが、フリクションの効く目の粗い岩床で、それほど心配はなかった。

  

 大石沢出合に到着。
 ここでまた別の釣り人二人組と会う。
 軽く挨拶だけして素通りしようと思ったが、盛んに手招きするのでそのまま呼ばれ、ソーメンをごちそうになる。
 東京から来て、もう20年来通っているらしい。
 昨日は葛根田も団体パーティーが入り、おかげで釣果はサッパリだったようだが、今日は大石沢でそこそこ釣れたとのこと。
 脇には尺サイズの良型が並べられていた。
 「一杯ぐらい。」という甘い誘惑を何とか固辞し、小一時間ほど休憩してから再び出発。
 何とも親切で気持ちのいいお二人だった。

  

 さらに進むとナメとなり、中ノ又沢との分岐に到着。左から入ってくる中ノ又沢の方が水量が多く感じる。
 そのまま本流を進むと小滝、そして直登不能と思われる葛根田大滝に到着。
 大滝は右から巻く。

 そして滝ノ又沢出合に到着。今日はここまでとする。
 事前の情報通り、分岐50mほど手前、左岸台地にこれ以上ない快適なテン場を発見。
 モノポール・シェルターを張り、周りに残されている焚き木を?き集め、寝床の準備は完了。
 さっそく夕餉の岩魚を仕入れに行く。

 支流の滝ノ又沢に入り立て続けに三尾、さらに本流に戻って追加の一尾。
 ポイントさえ選べば、ほとんど1~2投につき一尾の割合で釣れてしまう。どれも尺近い良型だ。
 もちろん釣るのは自分でいただく分だけ。今宵は四尾もあれば十分である。



  

 一人東北の沢で、焚火と岩魚とバーボン。
 他に何もいらない。至福の一夜である。

  葛根田川滝ノ又沢出合にて


二日目
 天候:
 行程:出発6:15-最初の支沢出合6:30-支沢右俣-稜線9:10-八瀬森山荘10:00~10-関東沢下降-関東沢二俣11:20-大深沢との合流点13:00-ナイアガラ13:45~14:30-大深沢三俣15:40(泊)

 今日もいい天気。マルタイラーメンを食べ、出発する。
 少し行くと、左から支流が入ってくる。八瀬森の稜線に上がるには本流をこのまま詰めるのではなく、こちらの支流が効率的だ。

  八瀬森へ上がる支流出合の滝

 
 出合の7mほどの滝を左側の階段状から越えると、しばらく平坦な流れが続く。小さなナメもある。
 やがて二俣となり、右を選ぶ。
 トポによるとこの先大滝があるというが、水量もだいぶ減り、この緩い傾斜が続いた状態で本当にそんなものがあるのかと疑ってしまう。

  
 巨大フキの葉(左)と真新しい熊の足跡(右)


 平凡な流れにそろそろ飽きてきた頃、ようやく前方に大滝登場。25mほどか。水流は多くないが、高さはある。下流の葛根田大滝より大きいぐらいだ。
 他の記録だと「登れそう」とあったが、一人で重荷では「登れるか、こんなもの!」といった感じ。
 左の支流側から高巻くが、ちょっと小さく巻き過ぎたようで、途中灌木頼りのゴボウ登りとなる。もしここで枝が抜けたりしたらと思うと少々心臓に悪かった。

 続け様に10m滝。
 ここは右壁のクラックから半分上がり、後のスラブはボコッとしたホールドを選んでクリア。
 特に難しいわけではないが、ふだんのクライミングがこういう時に役立つ。

  
 葛根田川支流右俣の25m大滝(左)とその後に続く10m滝(右)

 その後はさすがにタラタラとした平凡な流れがいつまでも続く。
 癒し系は大歓迎だが、倒木やブッシュも目立ってくる。
 途中、ブッシュを避けるため枝沢に入ってしまったりしたが、何とか引き返す。
 人の痕跡乏しい東北の沢ではコンパスでの方角判断が必須だ。

 本流に戻り、さらに進む。
 流れはだいぶ細くなり、最後まで沢型を詰めると、いよいよ藪に突入。
 とにかく右も左も藪だらけなので、方角を北に絞って進むしかない。
 すると呆気なく10分もしないうちに登山道に出た。
 
 現在位置がわからないので、まずは右手(東側)へ進むが、しばらく行くうちに登山道の曲がり具合から経由地の八瀬森と反対側へ進んでいるようだ。
 今来た道を反対側へと引き返し、やがて八瀬森湿原に到着する。
 黄色いニッコウキスゲが鮮やかな緑の別天地。葛根田川のラストにふさわしい楽園だ。

  
 八瀬森湿原(左)と八瀬森山荘(右)

 無人避難小屋の八瀬森山荘で八幡平からの登山者と少し話をした後、いよいよ今度は関東沢の下降である。
 高山植物へのローインパクトを心掛けながら湿原を横切り、目星を付けて進むとすぐに関東沢に当たった。
 関東沢は最初ブッシュが多かったが、大きな滝も無く、ロープ無しでぐんぐん下っていける。
 途中、まるで自然のアトラクションのように平らな滑床があったりして、小綺麗で楽しめる沢である。

 右から支流を分け、小滝を右の段差から下りたりしながら下降を続けると、やがて顕著な二俣。
 最初、ここが大深沢本流との合流点かと思った。
 念のため、コピーしてきたトポやタケちゃんの遡行図と照合する。
 ここまでたしかにロープ無しで来れたが、他パーティーによると下降が急で念のためロープを出した滝があるという。
 また、その下に続く長いゴーロ帯というのもまだ通過していない。
 結局、そのまま下降を続けて正解だった。
 八瀬森から関東沢を下ってきた場合、奥に5~7mほどの小滝が見えたらそれはまだ途中の二俣と考えていい。

  
 関東沢右俣。上部の穏やかな流れ(左)と二俣下の4m二条滝(右)


 その少し先で4m二条の滝に到着。右岸(右側)の巻道から下りるが、最後が少し急である。慎重にクライムダウン。
 その後は長いゴーロ帯。といっても乾いた河原状ではなく、大岩がゴロゴロしながらもしっかりした流れがある。

 やがて大深沢と合流。小休止の後、遡行を続ける。
 少し行くと10m滝。
 ネットでは水流左際を直登している例もある。実際階段状だったが、今日は水量多くてちょっと気が引けた。
 ロープ無しの重荷だし、ここは安全を期して左の苔むした巻道から上がる。

  

 さらに進むと、突然眼前に今回の沢旅のハイライト「大深沢のナイアガラ」が現れる。
 おぉ、素晴らしいっ!

 

 
 葛根田川もここに来るまでの序章に過ぎなかった、といっても過言ではでない。
 横幅数百mにわたって大まかに右、中央、左と三つの滝が複雑なしだれ状の滝となっている。
 そして、そこら中の淵には大きなイワナが悠々と泳いでいる。

 
 大深沢ナイアガラの一部。さらに画面外にもう一つ左滝がある。

 
まだ先があるが、あまりの好釣り場に思わず竿を出し、釣りタイム。
 当たりはあるが焦っているのか小一時間で尺一尾のみ。小振りのも釣れたがこちらはリリースした。
 とりあえず最低限のおかずはゲットしたので、遡行を再開。
 
 大滝はネットの情報どおり中央滝の水流左際を直登する。
 実質の高さは8mほどか。
 下部は赤土混じりの岩が積み重なっており簡単そうに見えるが、長年の水勢に浸されてボロボロ。
 自分が取付いた時も50cmほどの岩が二枚剥がれてしまった。
 何とかごまかしながら下部をクリア。
 上部はしっかりした黒い岩だが、傾斜も立ってくる。ホールドをしっかり選んでザックの重荷に負けないよう慎重にクリア。
 ふー!これで核心は突破した。
 
 そして、その後のナメがまた素晴らしい!
 今までいろいろな沢を経験してきたが、先ほどのナイアガラ+このナメの連続で「大深沢、自分の沢ランキング第一位!」といった感じだ。

 
 
 興奮冷めやらぬままにナメを通過し、仮戸沢、北ノ又沢、東ノ又沢が合流する三俣に到着。
 男女四人組が到着していて、挨拶を交わす。
 秋田からのパーティーで、今日は仮戸沢を下降してきたそうだ。
 テン場は北ノ又の左岸、東ノ又との間に高台の好適地があるが、既に彼らの二張でいっぱいのため、私は一段低い東ノ又沢の岸にシェルターを張る。

 

 
 寝床と焚火の準備が出来上がると、しばし釣りタイム。
 しかし、彼らのテンカラと同様、なぜかこの周辺では釣れず。というかナイアガラからここまでの間でまったく魚影が見当たらなかった。
 これは一体どうしたことか。
 話によると先週ここらで大量に釣り上げた連中がいたらしく、さすがに岩魚もバカじゃないので危険を感じて集団疎開したのではあるまいかという結論に落ち着く。
 彼らには申し訳ないが、それでも私はかろうじてナイアガラ下で一尾確保していた。
 この夜も自然の恵みに感謝しつつ、沢の畔で眠りについた。 (後編に続く)

南ア・尾白川支流鞍掛沢 釣行

2017年05月28日 | 沢登り
日程:2017年5月27日(土)~28日(日)一泊二日
天候:両日とも
同行:ノトっち、まっちゃん(我が社の山岳部)
 
 今週末は外岩予定だったが、相方カワベ氏が先週の奥多摩・天王岩で「指皮持っていかれた」と(気色悪い)画像を送ってきたので、急遽別動隊の渓流釣りに参加させてもらう。
 場所は甲斐駒山麓の鞍掛沢。ネットではよく出てくる人気沢だ。
 
 一日目。土曜朝、横浜を発ち、日向山登山口へ。
 既に駐車スペースはほぼ満杯。ほとんどが日向山に登るようだが、前後して鞍掛沢に入る人たちも二組ほど。
 まずは尾白川林道でアプローチ。
 ここを歩くのは2010年夏の黄連谷遡行以来だ。
 廃道となった林道の終点から沢筋に降りるが、年齢的にボケが始まっているのか、ここの下りはこんなに悪かったっけと以前の記憶があまり無い。

 
 
 トラ・ロープを辿って急な斜面を沢床へ。
 今回は沢の遡行というより釣りメインでとの申し合わせで、さっそく出だしから竿を出す。
 既に昼近くで気温が上がってしまっているが、ポイントを変えても同じだろうとしばらく粘る。

 

 

 まずは、まっちゃんが一尾get!
 お、やりますなぁと感心しつつ、自分も後を追う。
 
 だが、しばらくして早くも最初のアクシデント。
 私が最初の1尾を釣り上げて少し離れた所にあるビクに獲物を入れ、戻ってきた時になぜか竿の先端が折れている。
 
 何で・・・?
 立て掛けておいた竿が倒れてその衝撃で折れてしまったのか、それともちょっと目を離した隙に小動物でも横切ったのだろうか。不思議だ。
 まぁ、ここで自分を手ブラで帰すわけにはいかない。
 先端の折れたボロ竿を応急処置し、そのまま続行。
 結局、出だしのポイントでまっちゃんは4尾、自分は3尾釣り上げる。
 他にも三回ほど途中でバラしてしまったが、うち1尾は金色に輝く尺オーバー。膝元まで寄せ、今まさに掴もうとした瞬間のバラしだった。
 逃がした魚は大きいと言うが、後々夢にまで出てきそうな痛恨の極み。やはりタモさんは必要である。

 

 
 
 その間、ノトっちは上流へ向かってポイントを変えつつ、一人先行。
 日帰りのまっちゃんは夕方に帰ることになったが、最初の打ち合わせが曖昧だったせいで、自分はどこで落ち合えばいいのかしばらく上流の途中まで沢を彷徨。
 行ったり来たりを繰り返した後、もう上にしかいないだろうと思い、沢を詰めていくとノトっちが起こした焚火の煙が。
 乗越沢の出合でようやく合流。
 ノトっちは2尾釣り上げ、ようやくビールと塩焼きの夕餉となる。

 

 
 
 泊まりの沢で焚火を囲むのはもう二年半振り。
 クライミングや雪山も楽しいが、今さらながら沢登りの野趣溢れる楽しさを実感する。
 ピーク時は今は亡きタケちゃんと毎週のように沢へ行ってたが、今から思うと本当に自由で贅沢な週末を過ごしていたんだなぁと思う。
 日々の仕事疲れもあって、私は「電気ブラン」で撃沈。

 
 二日目。外は既に明るいが、ノトっちがまだ眠っている間に目が覚め、近くの小淵で朝まずめを狙ってみる。
 
 狙い通り、ほぼ立て続けに4尾get!やはり釣りは時間帯だ。
 昨夜の焚火を再び起こし、朝から塩焼き。
 今回はこれ以上の遡行はせず、そのまま下降しながら適当に竿を出すことにする。
 私はその後1尾追加し、昨日と合わせて計8尾、ノトっちは2尾追加で計4尾。


 


 
 
 で、最後に自分があろうことかトラブル・メーカーに。
 よせばいいのに最後にもう一振りと欲を出し、ノトっちと別行動にしてしまったのが良くなかった。
 沢から林道への登り口を別の赤テープに惑わされ、違う尾根を一時間余り徘徊してしまう。
 早く帰宅するつもりのノトっちに大変な迷惑をかけてしまった。返す言葉がございません。猛省いたします。m(_ _)m
 
 それでも久々の沢は楽しかった。しばらく離れていたが、今後は釣りメインでの沢登りを再考しようと思う。

追悼

2017年05月14日 | 沢登り
 これまで多くの沢や山に一緒に行ったタケちゃんこと弘田猛くんが突然逝ってしまった。
 「その空の下で」http://sonosoranoshitade.web.fc2.com/

 報せを受けたのは5月1日で、私はGW前半の小川山から帰ってきたばかりのことだった。
 家のPCでメールをチェックしていると、静岡のある山岳会の方から「弘田さんが」というタイトルでメールが届いていた。
 彼が単身、奈良まで遠征し、下多古川本谷「琵琶の滝」で滑落死したという内容だった。

 見つけてくれた方はこちら 「峰さんの山あるき」http://bisutari.exblog.jp/26637085/
 知らせてくれた方はこちら 「静岡の山と渓」http://sizuokanoyamatotani.blog58.fc2.com/

 「嘘だろ。」と思いながら強い衝撃を受け、その反面、ついにやっちゃったかという気持ちも正直なところあった。
 それは彼だからというわけではなく、自分だったかもしれない。山をやっている以上いつかは起こり得ること・・・と自分でも不思議なほど冷静に受け止めてしまっていた。
 山には、いや人生には「絶対というのは無い」と、この歳になってようやくわかってきたような気がする。

 彼と一緒に行ったのは、たしか2003年の上越・万太郎本谷が最初だった。(その時は三人だった)
 きっかけはお互いのHPを見て、どちらからともなく「今度一緒に行きませんか?」というやり取りから始まった。
 彼は基本的には沢指向だったが、付き合い始めてからは残雪期の北アルプスのバリエーションなども共にした。
 
 こうしたネット繋がりを安易なインスタント・パートナーと決めつけ非難する向きもあって、タケちゃんは少し気にしていた時もあったようだ。
 だが、それはあくまで最初のきっかけであって、それぞれのHPなど見れば大体の実力や経験、山に対する指向もうかがえて、クライミング・ジムで知り合い、一緒に外の岩場に行くのと何ら変わらない。
 非難する側の意見もわからないでもないが、最近では組織である山岳会でもけっこうお粗末な遭難事故があったりするのでどっちもどっちとも言える。脱線するので、話を元に戻そう。

 そんな出会いだったが、彼とは歳は違えど誕生日が一緒ということで、何かしらウマが合うところがあった(と自分で勝手に思っている。)
 思い出は数えきれない。
 
 毎週のように沢に行くので、GWの鹿島槍東尾根でもそのままザックに釣り竿をしまい込んでいたこと。そして夜中に寒いといきなり起き出し、ハイ松燃やして焚火を始めようとしたこと。
 そのすぐ後、秩父の和名倉沢では暑くて沢の水を飲みながら遡行していたら、すぐ上に大きな鹿の死体があって二人して大騒ぎしたこと。
 熊に襲われ、顔など十数針縫い、クッキリ歯形が残るほどふくらはぎを噛まれたにも関わらず、その二週間後には「沢、行きませんか」と声をかけてきたこと。
 越後の沢の帰りは、二人でいつも湯沢の「人参亭」で特大のロースカツ定食を食べるのが約束だったこと。
 焚火は最低でも1mの火柱を上げないと納得せず、食料は持ってもストーブは一切使わないというのが「タケシ流」であった。
 そして(こちらが年上のせいもあるかもしれないが)二人で大きな沢へ行っても核心のいわゆる「オイシイ所」はさり気なく「いやー、ここはお願いします!」と譲ってくれ、本当に危険を感じる所は「うーん、ちょっと行ってみますね。」と自らリードを買って出る優しさを持っていた。 
 
 葬儀は、GWの最終日に行われた。
 前日のお通夜には共通の友人であるjuqcho氏やかっきー、知人ではきのぽん氏が来られたようで、告別式の日は私の友人ではSakurai氏(あの悪絶な丹沢・西沢本棚沢を同行)と職場の上司であり沢を通じた仲である常吉さんが参列した。
 もちろん他にも沢を通じての友人はいたかもしれないが、遺族にとって山の友人というのはある意味「極道仲間」として見られてもいたしかたないので、はたしてどういった顔でお会いしたらよいのか正直戸惑うところもあった。
 ありがたかったのは最初の報せを受けて過去の計画書を頼りにまだ面識の無い奥様に連絡した時に、こちらの名前を告げたらすぐに奥様が理解してくれたことである。
 タケちゃんが「いやぁ、同じ誕生日でヘンな人がいてさぁ。」と今まで話してくれていたのかもしれない。

 

 会場には、棺に納まった彼の姿と、階下には彼の山の写真や装備が飾られていた。
 自分で買ったのか残置を抜いてきたのかわからない不揃いのハーケン、長年使い込んだサレワのハンマー。
 ヘルメットは最初に出会った頃はガリビエールの白だったが、たしか一緒に行った鹿島槍で落としてしまい(たぶん尻セードの時)、随分悔しがっていた。
 その後、BDの青色のを被っていたが、熊からの一撃で陥没していたのを覚えている。
 今回会場にあったカンプの黄色のメットは私には馴染みのないもので、それだけに「最後の双六谷からいつの間にか随分経ってしまっていたんだな。」と思ったりした。

 2003年から約十年にわたっていろいろな所へ出かけたが、彼は飽くなき沢の追求、私は下手の横好きへと、少しずつやりたい方向が違ってきて、また年齢と共に体力差も開き始めお互いに負担になるまいと感じてきたのも事実である。(もちろん自分の方が体力は無い)
 今回の事故でもし自分が同行していたらそれはそれでショックは大きかったと思うが、相方の一人として最後に一緒にいてやれなかったことはたいへん申し訳なく思う。
 
 霊感の強い友人から見てもらったところ彼には「強力な守護霊様」が憑いているそうで、それがこれまでの危機一髪を救ってきたと語っていた。
 それも2011年越後の小チョウナ沢で熊に襲われ、その後、吾妻連峰の大滝沢で滑落し前歯を折った頃から少しずつ霊力が薄れてきたようだった。
 本人もそれはかなり自覚していて、以降、安全には人一倍配慮し、けっして無茶はしなくなったように見受けられたのだが。

 棺の中の姿を見ても、自分にはまだ現実のものとして受け入れられなかった。
 おそらく生身の彼を知っている者なら、誰もがそう感じたのではなかろうか。
 ギョロッとした目をひんむき「マジでーっ?」と豪快に笑い飛ばす彼は、嘘みたいに静かに眠っていた。

 発見された時、彼は仰向けの姿だったらしい。
 何となく、落ちても滝に必死にしがみつくようにうつ伏せの姿を想像してしまったが、最後は自身のHPのタイトル通り「空」を見上げていたのかなぁと何とも切ない思いがした。
 今となってはそれも知る由もない。
 調べてみると、下多古川本谷は琵琶滝さえ巻いてしまえばけっして難しい沢でないと聞く。
 きっと癒し系だけでは満足できない彼の性分で、最後に立派な琵琶滝を見てムラムラと来てしまったんだろう。
 遺族の方の悲しみは計り知れないが、「まぁ好きなことやってこうなったんだから・・・。」とどこか達観された思いもあって、それは私も同感である。

 沢でも私よりたくさん彼と行動を共にした人はいるし、音楽関係でももっと親しかった人はいるだろう。
 いろいろと勝手なことを書いてしまったが、ご容赦願いたい。
 
 最後に、自分が一緒に行った山行を列記しておこう。
 どれも記憶に残るものばかりで、彼が相方でなければ成し得なかったものも多い。「今までありがとう。」と改めて言いたい。
(☆印は二人で行ったもの)

【上越】
2003年8月 魚野川・万太郎本谷
2004年8月 五十沢川・下ノ滝沢
2006年9月 マチガ沢~東南稜 ☆
2007年8月 湯檜曽川・白樺沢、抱き返り沢 ☆
2007年9月 魚野川万太郎谷・オタキノ沢 ☆
2007年10月 谷川・オジカ沢 ☆
2008年9月 谷川・鷹ノ巣A沢 ☆
2010年10月 一ノ倉沢本谷~四ルンゼ ☆

【越後】
2005年10月 三国川黒又沢・五竜沢 ☆
2007年9月 水無川・オツルミズ沢 ☆

【北ア】
2004年4月 鹿島槍ケ岳・東尾根 ☆
2005年4月 槍ケ岳・北鎌尾根
2006年5月 前穂高岳・北尾根~明神岳主稜 ☆
2007年5月 剱岳・八ツ峰
2014年9月 金木戸川・双六谷

【中ア】
2012年9月 正沢川支流・幸ノ川

【南ア】
2008年8月 赤石沢
2010年8月 大武川・篠沢 ☆
2011年6月 大武川・一ノ沢~石空川・北沢下降 ☆

【八ヶ岳】
2003年12月 赤岳・西壁主稜 ☆

【秩父】
2004年5月 大洞川・和名倉沢~市ノ沢下降 ☆
2005年6月 滝川・豆焼沢
2005年10月 笛吹川・東のナメ沢 ☆

【丹沢】
2005年8月 中川川・西沢本棚沢
2009年5月 中川川・下棚沢

※記録は旧サイトのものもあるので、改めて「たけしアーカイブ」としてリンク張って整理する予定です。


  

 

2016GWその2・丹沢継続遡行

2016年05月03日 | 沢登り

日程:2016年5月2日(月)~3日(祝)朝発一泊二日
行程:大倉-水無川本谷-塔ノ岳-オバケ沢(下降)-四町四反ノ沢-丹沢山-大滝沢(下降)-原小屋沢-蛭ヶ岳-檜洞丸-西丹沢
天候:一日目、二日目(午後
行動:単独・ビバーク
参考:「丹沢の谷110ルート」1995年・山と渓谷社

 
 もう二十年以上も前からいつかやろうと温めてきた計画。
 先日の上越・奥利根縦走が消化不良のまま敗退してしまったので、ちょうどいい機会だ。
 
 地図で確認してもらえばわかるが、今回のプランは表丹沢の大倉を起点に沢と尾根を繋いで西丹沢へ抜けるもの。
 昔の人は穂高の継続登攀を「パチンコ」と呼んだが、これは云わば丹沢の「パチンコ」遡行である。
 
 本日は連休狭間の平日だが、それでも渋沢駅前の登山者の姿は多い。大倉行きのバス停も一台では乗り切らないほど長蛇の列だ。
 しかし、沢屋らしきメットを持ったのは自分一人。今は沢登りも完全なマニアックな部類なのだろうか。
 それにしてもみんな綺麗でオシャレな恰好をしているな。
(大倉尾根を登るのにスポルティバのトランゴ・キューブなど
要らんだろ。オレにくれ!)

  
 朝から長蛇の列の渋沢バス停(左)と登山口の大倉(右)
 
 以下、ステージに分けてまとめてみた。
 
1st Stage 水無川本谷遡行
・大倉から戸沢林道へ入るのは自分一人。久しぶりに歩く林道は随分凸凹が無くなり、普通の2WD車で十分走れそうだ。
・林道途中の小屋にはヒル除けの塩が無料提供されていた。ありがたいことです。
・入渓するまでのアプローチとして1時間と読んでいたが30分ぐらいオーバー。途中の小屋を過ぎてから水無本谷F1までが意外とかかる。
・F1はいつものように左から。鎖は使わず、水をどっぷり浴びない程度のラインを。擦り減ったフェルトの感触を確認しつつ登る。
・F4は右壁に残置のハーケンとスリングがある。それほど高さはないが、少し立っているので足を滑らさないようA0で突破。
・F5は少々高さがあり、右側に太い鎖が設置されている。今回ロープは無しだが軽量ハーネスは持ってきたので安全のため、ヴィア・フェラータ方式で登る。
・ここでハタと気付いたがF2~F4間でハーネスに着けていたプロトレックを落としてしまった。
 ヤフオクで8,OOO円で買った中古で、もう傷だらけだし、
年数的にも減価償却済みだからそれほど未練は無いけれど・・・ちょっと悲しい。
・書策新道を横切り、ゴーロを進みF6のCS滝。ここは適当に巻く。
・F8(20m)はけっこう立っている。岩もどれほどしっかりしているかわからないので当然巻く。でもタケシ師匠なら登りそう。
・巻き道は右手に上がり、再びガレルンゼを跨いで戻るようにトラロープがFIXされている。整備する遭対協の皆さんも大変だろう。
・詰めを誤り、F9へ行く前に一本手前の枝沢に入ってしまう。このため表尾根に出るまでが少々長く苦労する。
・塔ノ岳へは自分が設定した関門時刻の正午を少しオーバー。200人ほどがいる山頂で一息付くつもりもなく、行動食も取らずに次のステージへ。

   F1(10m)とF4(7m)

   F5(13m)

  

  
 小振りの桜のような?梅のような?花があちこちで満開(左)。賑わう塔ノ岳山頂(右)
 
2nd Stage オバケ沢下降
・塔ノ岳から丹沢山方面へ少し進んだ最初の鞍部から適当に右手の斜面を降りる。
・斜面はそこそこ急でザレているが、小尾根に鹿道が続いていてこれを伝ってしばらく下っていく。
・やがて下降不能の涸滝にぶつかる。自分が下っていたのはオバケ沢の右俣のようで、ここからトラバースして下りやすい左俣へ移動。
・さらにしばらく下っていくとクライムダウンが厳しそうな滝、そしてゴルジュに下降を遮られる。
 オバケ沢は2008年10月に自分でも一度下降しているのだが、そんなに強烈な印象が無かった。
 しかし今回、左岸の急な斜面を大高巻きで下ったが、けっこう悪い!
 周辺は植林エリアで林業の人たちも入っているようだが、崩れやすい斜面を一歩滑ったら大滑落といったヒリヒリと緊張する下降が続く。
・下降は2時間と踏んでいたが、予想以上に長く3時間以上かかってしまう。・・・疲れた。
 
  
 オバケ沢は最初は歩きにくいゴーロが続く(左)。クライムダウンできない滝は大高巻きでやり過ごす(右)

  
 下部にはナメ滝もあり(左)。ようやく出合の林道終点に合流(右)
 
3rd Stage 四町四反ノ沢遡行
・四町四反ノ沢はキュウハ沢の枝沢的存在。キュウハは以前登っているので今回はまだ登っていないこちらをチョイス。オバケ沢出合とキュウハ沢出合はすぐ隣りだ。
・4つの堰堤を越し、まずはキュウハのゴルジュ帯を進む。泥の詰まったフェルトがメチャクチャ滑り、苦戦しながらも慎重に越えていく。
・ゴルジュの最後は左から大きく巻く。すると左手から入ってくる四町四反ノ沢に合流。
・トポにある最初の二俣はよくわからないまま通過。
・トポでは「きれいなナメが続く」とか「かつてはすばらしいゴルジュがあった」などと書かれているが、そのような趣は今は無い。
 曇っているせいもあるが、倒木も多く、割と平凡な様相。まぁ、このトポも既に20年以上も前のもので、その間何度も台風が通過しているわけだからしかたないか。
・トポにある二つの手前にもう一つ左手に大きなCSの涸沢あり。
・上部のナメもあまり大したものではない。全体的には明るく登りやすい沢だが、トポにある「ナメが美しい、とっておきの沢」というのは2016年現在、やや大袈裟。

  
 キュウハ沢最初のミニゴルジュ(左)。四町四反ノ沢F1?(右)

  
 F4・二段10m?(左)と上部のナメ滝(右)
 
 結局、時間が押して残業になってしまい、ヘッデンを付けて丹沢山を通過。
 丹沢は稜線上はテント、キャンプ禁止なので、適当な所でマットとシュラフだけでビバーク。
 本当は丹沢山の「みやま山荘」に泊まるつもりだったのだが、今回は事前に電話を入れた時点で満員で断わられてしまった。
 植生も痛めていないし、ゴミも火も不始末はしていないのでビバークは許してもらおう。

  二日目。ブナと日の出。
 
4th Stage 大滝沢下降
・下降点は丹沢山から蛭ヶ岳寄りに少し下りた早戸川乗越という名の最低鞍部から。いくつか下降点があるが、昨日のオバケ沢より緩やかで下りやすい。
・しばらくは平凡なゴーロ。傾斜も比較的緩く、不安定なザレも無く、快適に下っていける。ここを下降ルートとして選んだのは正解。
・やがて全体の2/3くらい下った辺りで「早戸の大滝」に遭遇。まずは上の落口から観察してみる。高度感が半端ない。
 トポでは落差50mとあるが、実際には下にも三段くらい前衛の小滝があるので、上から見ると100mぐらいの高度差を感じる。
・右岸にFIXされたトラロープを伝って下降していく。途中「タキツボ新道」と書かれた方へ下り、下の鑑滝ポイントへ。
 遠巻きだが、それでも凄い迫力だ!水勢も豪快で中間部は深くえぐれて洞窟状になって水しぶきが渦を巻いている。
 かつてはここを登った記録があったというから驚きだ。西沢本棚を登る人はいても、今ここを登ろうとする人はまずいないだろう。
・大滝を過ぎ、下流域はテープがあったり、徒渉ポイントにはケルンが積んであったりして、明るければわかりやすい。
 そのまま下って早戸川本流が合流する雷平に到着。

  
  大滝沢は下降しやすい穏やかな渓相(左)。早戸大滝の落口に立ってみる。(右)

  
  大滝の右岸にはトラロ-プで巻き道が整備されている(左)。樹間越しに見る早戸大滝(右)

 
 
5th Stage 原小屋沢遡行
・二年ほど前に行っているので、記憶は比較的新鮮。前回は出だしからなるべく積極的に水流の中を攻めたが、巨岩越えが多くまともに取り合っていたらとても時間がかかる。
 時間短縮のため最初の「雷滝」まで右岸、左岸の踏み跡を繋いで飛ばしていく。要所要所にテープ有り。
・「雷滝」到着。水量豊富で相変わらず見事だ。左から大きく巻き、しばらくナメと小滝を進んでいく。
・やがて顕著な二俣。前回は騙されて右手のカサギ沢へしばらく進んでしまったが、さすがに今回は騙されない。
 トポでは原小屋沢はまっすぐ描かれているが、実際は次の「バケモノ滝」は沢が直角に右に曲がってすぐの所にある。流れを図にするとちょうどアルファベットの「F」の字のようになっている。
・バケモノ滝は前回同様、左の斜面から高巻く。
・続くF5三段は前回の記録では「登れそう」などと書いたが今回改めて見ると、とても突っ込む気になれず無理。
 やはり5月始めと8月では水量も多少違うのか。すぐさま巻き決定。
・F5の巻きは右側の斜面から。トポでは最後15mの懸垂下降で沢床に降りるとあるが、今回ロープは持ってきていない。
 前回何とかしたんだからとクライムダウンで下りるが、崩れやすい斜面を頼り無い木の根を伝ってジリジリと下っていくのはけっこう神経を使った。
 以前はどうしたんだろうと後で確認してみたら左側から巻いたようだ。今日見たところ、とても巻けそうになかったが・・・うーん不思議だ。
・その後、手軽に登れるナメ滝がいくつか続く。快適!
・そしてクライマックス「ガータゴヤの滝」。前回はど真ん中のラインを一人で直登したが・・・今回は絶対無理!
 水量の違いとか荷物の重さなどもあるが、よくあそこ登れたなと我ながら呆れてしまった。
・ガータゴヤは左から巻く。トポには「ルンゼ」とあるが、どちらかというと草付スラブ。古くて太い鎖がしつらえてある。
・最後の滝も細い鎖が左側にセットされているので、それを伝ってトラバース。その後はヒタヒタした穏やか細流がけっこうしつこく続く。
・トポでは水涸れをそのまま真っ直ぐ突き上げると稜線にぶつかるように書いてあるが、実際には水が涸れてから沢筋は左手の稜線とほぼ並行して続いている。
 帰路を蛭ヶ岳方面に採るなら左手斜面が20mほど上に見えたらさっさと上がってしまった方が楽。運が良ければ登山者の姿も発見できるはず。

  
 
原小屋沢F2「雷滝」15m(左)とF4「バケモノ滝」10m(右)

  
 F5三段20m(左)と左岸巻き道の下降路(トポで懸垂15mとなっている部分)

  F7「ガータゴヤの滝」30m

  
 ガータゴヤの滝を巻くには左側の草付スラブから(左)。その上に最後の「鎖のある滝」(右)

 
6st Stage 蛭ヶ岳-檜洞丸-西丹沢
・いよいよ最終ラウンド。昨日からの疲れもあり、ラストがとてもキツかった。
・昨日、時計を失くしてしまったので、蛭ヶ岳山頂にいた親子連れに聞くと西丹沢最終バスまで残り時間4時間50分。地図のコースタイムも同時間!
 もう少し若い時なら余裕だが、今の状態でははたしてどうか。期せずして最後はタイムトライアルとなる。(泣)
・左膝に爆弾を抱えている状態だが、下りはストックを使いながらも小走りでこなす。
 これで時間に貯金ができた筈だが、午後から吹き始めた強風でたちまち残りの体力を奪われ、ヘロヘロになって歩き続ける。
・最後のピーク、檜洞丸は疲れ切った老体にはまるで巨大な壁のように立ち塞がり、思わず気持ちが負けそうになった。
・檜洞丸を過ぎツツジ新道はひたすら下りだが、ゴーラ沢出合に降りてから西丹沢のバス停までの距離が意地悪く長い!
・ここまで来たら足などまたどうなってもいいぐらいの覚悟で飛ばす。ヘッデンも点けず沢靴のままゴール!時間は終バス5分前だった。
 
 「燃えた・・・燃え尽きたよ、おっつゃん。」・・・気持ちとしてはまさにそんな感じだ。

  

  
 
 こうして長年の宿題は終わった。両日とも行動時間はそれぞれ12時間オーバー。
 できるならもっと若い元気な時にトライすれば良かった。それぐらいハードだった。

 今回は表丹沢から西丹沢まで沢を5本、主要ピークを4つ繋ぐルートとしたが、丹沢は尾根と沢がコンパクトにまとまっているので、他にもいろいろ面白いラインが描けるだろう。
 物好きな人はぜひチャレンジしてほしい。(もちろん自己責任でお願いしますよ。)

滝を見に行く

2015年09月22日 | 沢登り

 本日も外岩の予定だったが、ヒザの大事をとって見送り。
 しかし、せっかくの連休の晴れ間。このまま家で引きこもっていても気持ちが落ち着かないので、思い立って渓流釣りへ。(M田師匠、すみません。)

 場所は西丹沢の某管理釣り場。
 一応、放流もしているらしく、ネットでもそこそこ釣れたという話だったが、ものの見事に坊主。
 回りを見回しても今日釣れていたのは15センチ未満のが二尾ほど。
 自分の腕が悪いんだろうけど、ここ本当に放流しているのかね。魚影はまるで見えなかったが。

 そんなわけで釣れない釣りをとっとと切り上げ、せっかくここまで来たので帰り際に滝見物。
 つい最近「滝を見に行く」というタイトルの映画があったが、西丹沢で必見といえばやはりここ。

 中川川西沢・本棚沢F1(70m)と下棚沢F1(45m)
 
 

 前者は2005年8月、後者は2009年5月に登攀。リードしてくれたのはタケシ師匠。
 久々に見たけど、やっぱりそこそこ立っている。よくこんなの登れたな。
 丹沢は地盤が緩いため、沢も年々土砂に埋まり水涸れしているようだが、この二つの滝は自然遺産としていつまでも後世に残っていてほしい。