KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

上越・大源太山 葡萄尾根-弥助尾根

2019年04月07日 | バリエーション・ルート
日時:2019年4月6日(土)~7日(日) 一泊二日
行動:単独

 さて、今回は他のメンバーと都合が合わず、久々に単独行。
 最初は南アの日向八丁尾根から甲斐駒などを考えていたが、事前の天気予報ではこの週末は天気は良くても標高の高い所では風速20m/s以上の強風が吹き荒れるとか。
 ちなみに自分が山へ行く時の目安として「風速17m/s以上からは台風」という概念があり、それならばと計画したのが(新潟側の)大源太山。
 標高1,600m弱ながら「上越のマッターホルン」などと呼ばれ、以前から行ってみたいと思っていた山だ。幸い天気も落ち着いていそう。
 
 大源太山の積雪期のルートとしては、弥助尾根、葡萄尾根、コブ岩尾根などがあるが、今回選んだのは葡萄尾根。
 ネットで記録を見るとコブ岩尾根が一番ハードなようだが、葡萄尾根もこの時期に単独で登っている人はそういないようで、パーティーによってはロープ必須などと書いてある。
 少々不安だが、ありきたりの所ではつまらないし、行ってみなけりゃわからない。とりあえず今回は偵察のつもり、ダメ元で行ってみることにした。

一日目 
 天候:
 行程:旭原9:00-葡萄尾根-大栗ノ頭14:30-コルの天場15:10

 土曜の朝、横浜の自宅を車で出発。
 一人なのでなるべく高速代を安くしようと、圏央道でなく第三京浜~環八経由で関越道に入るが、やはり少し渋滞に掴まる。
 今冬の初めはどこの山も雪が少なく一時はどうなることかと思ったが、谷川岳方面はけっこう真っ白でまだまだ雪山が楽しめる。

 湯沢ICで降り、登山口の旭原へ。
 ネットのレポでも確認していたが、この時期、ちょうど大源太山の登山口の所まで道路が除雪され、そこで通行止めとなっている。
 散歩していた地元の人に聞いたら、ここなら道路脇に駐車してOKとのこと。
 四方山話をしながら支度をして、山へ入る。


 少し進むと、今は雪で閉鎖されているゴルフ場に出る。
 誰もいない真っ白なゴルフ場の中を、正面に大源太山を見ながら一人突っ切っていく。
 適当な所から左手の葡萄尾根へ上がる。
 初めての場所だが、今日は絶好の天気で間違えようがない。
 
 樹林帯の尾根をタラタラと登っていく。
 数日前も雪が降ったようだが、小動物以外のトレースは一切無し。
 せいぜいスネ辺りの積雪だが、この時期の雪は重く、晴天ということもあり、あっという間に汗ダクになる。

 途中、ジャンクションピークで一息。振り返るとゴルフ場の施設が小さく見え、けっこう登ってきたのがわかる。
 ここから尾根は直角に左へ曲がり、下り気味にきれいな雪尾根が続いた後、主稜線に突き上げている。
 地形的には昨年登った仙ノ倉山北尾根と似たイメージだ。
 ラッセルというほどではないが、それでも一人でトレースを刻んでいくのはしんどく、20歩歩いては息を整えるという辛抱我慢の登りが続く。


 

 ようやく主稜線に合流。
 少し進んで大栗の頭(1,458m)に立つ。
 ここから大源太方面へはストンと一気に高度を落とす。

 ペースが良ければ天気がいい今日中に頂上を越えて弥助尾根の途中で幕とも都合の良い考えでいたが、さすがにそれは甘かった。
 この下りでは部分的に後ろ向きになるような急な傾斜に加え、雪庇や隠れたクレバスがいたる所にあり、慎重に歩を進める。


 

 最低コルに着いてホッと一息。
 上から見た通りそこは平坦で最高のテン場だった。まだ15時で少し早いが、この先、大源太の頂上までが今回の核心部であり、今日はここまでとする。
 ほとんど整地することなく、アライの「RIZE1」を設営。結局、今日はアイゼンは履かずにここまで来れた。
 
 斜陽に輝く大源太山はコルから見上げると二つの岩峰が丁度鬼の角のように聳えて、なかなか威圧的だ。はたして自分一人で行けるのか。
 単独の場合、とにかく引き際が肝心。その判断だけはミスらないようにしたい。後は成せば成るだ。
 
 夕方になると雲が広がり、明日の天気が少し心配になったが、その夜は風もなく静かに眠れた。

二日目
 天候:一時
 行程:テン場6:00-最初の岩峰-二つ目の岩峰-大源太山頂9:00~20-弥助尾根-林道徒渉点-旭原14:40
 
 朝、予定より少し寝坊して起床。
 外を見ると昨日の好天と打って変わってどんよりした曇り空。
 それでも雲の切れ間から朝陽が顔を出し、少し元気になる。

 
 
 簡単な朝食を済ませ、テントを畳んで出発。
 今日は朝一から核心部。メット、ハーネス、アイゼンを着け、気合を入れ臨む。
 
 まずは最初の岩峰へ。
 昨夜、テントの外で何やら気配がしたが、テントの周りにはやはり小動物の新しいトレースがあり、山頂の方へ続いていた。
 トレースは危うい雪庇ギリギリの所へ向かっており、それに騙されないよう安全ラインを取る。
 尾根は一部キノコ雪のようになっており、一見大丈夫そうなスノーリッジが実はフェイクで、なるべく右側のブッシュラインを目印に進んでいく。
 
 最初の岩峰は正面が灌木混じりの急なリッジで、それを避けるように右手の幅広いルンゼとのコンタクトラインを登っていく。
 幸い雪質も良くブッシュもホールドとして使えるのでそれほど不安はないが、上部に行くと傾斜は50度、足元はスッパリ数百mは切れ落ちており、絶対に落ちれないところだ。
 
 自分としては次の岩峰の方がより核心と思っていたが、多くのパーティーがロープを使った方が良いと言っているのはこの最初の岩峰のようだ。
 それでも先月の一ノ倉沢の一・二ノ沢中間稜の余韻が残っているため、自分なら大丈夫との思いがあった。

 
 
 最初の岩峰を越えると、距離は短いがまた不安定なスノーリッジとなる。
 ここまで来ると、退却も簡単にはできない。振り返りつつ覚悟を決めて最後の砦のような次の岩峰へ進む。
 こちらは遠くからでもはっきりわかる威圧的な壁だが、近づくほどにそれほど大きくはないことがわかる。
 ブッシュで手掛かり豊富そうだが、さすがに正面の壁に一人で突っ込むのはちょっとリスキー。ここは無理せず、セオリーどおり岩壁の裾を右に巻いていく。
 
 ここも落ちることは許されない傾斜だが、気を抜けないのはせいぜいワンポイント。案ずるより産むが易しで無事切り抜ける。
 最後は左手のコブ岩尾根と合流しドームをひと登りで頂上かと思ったら、ここから300mぐらい細いスノーリッジが続き、その先端が大源太の山頂だった。
 
 
 
 頂上は狭く、雪を切り崩してようやく休める程度。2016年に登ったボリビアのワイナポトシ(6,088m)もこんな感じだった。
 湯沢の町は近いが、それでも見渡す山々の中で今いるのはおそらく自分一人。どんよりした曇り空も相まってちょっと隔絶した雰囲気を味わった。
 写真など撮りながら20分ほど休み、下山開始。
 
 下りの弥助尾根もボリュームのある雪稜の連続で、こちらもけっこう傾斜があり油断できない。
 もしかしたらトレースあるかもと少し期待したが、やはり無く、雪庇や隠れたクレバス・トラップを慎重に判断しながら降りていく。
 それでも何回かハマリかけ、一回は落ちたら自力で上がれないような大穴を踏み抜き、ヒヤッとした。
 天気が悪くホワイトアウトになったりしたら弥助尾根もなかなか厳しく一人だと怖いと思う。
 
 下りは楽かと思ったが尾根は長く、重い雪と雪庇、隠れクレバスを回避しながらで時間がかかる。
 幸い視界は利き、地形もとてもはっきりしているので尾根通しに忠実に下り、沢沿いの林道に出る。
 林道に出た安心感からか最後に行く方向を間違え、少しタイムロスしたが、最後はところどころデブリに埋もれた林道を下ってようやく愛車の待つスタート地点へ。
 たった二日間、わずか1,600mの低山ながら、それなりの体力と緊張感を要し、やり切った感あり。
 念のため持参した30mロープは結局一度も使わずに済んだが、内容としてはなかなか濃かったと思う。
 
 最後は土樽の「岩の湯」で汗を流し、湯沢の「人参亭」でお約束のロースカツ定食。
 どちらも今は亡きタケちゃんとこっち方面の沢へ行った帰りはよく寄った思い出の場所。あの頃を想いながら山行を締め括った。

 

爽快!仙ノ倉山・北尾根

2018年03月18日 | バリエーション・ルート
日程:2018年3月17日(土)~18日(日)一泊二日
行動:単独
 
 今週はM田師匠とどこかへ出かける予定だったが、このところの春の陽気で雪崩を心配してか、師匠は気が乗らない様子。
 自分も年度末で疲労度MAXだが、直前になるとこの週末はこれ以上ないほどの好天が期待され、もったいないので一人で出かけることにする。
 
 今回選んだのは、以前からずっと気になっていた仙ノ倉山・北尾根。
 春の時期だけ条件が整う谷川連峰のバリエーション・ルートだ。
 ネットの記録では、核心部の雪壁がアイスになっているとロープが必要とのことだが、まぁ行ってみないことにはわからない。
 ダメ元で下見がてら出発する。
 
一日目 
毛渡沢出合10:45-群大ヒュッテ前12:30~50-小屋場の頭14:00-標高1,500m(にせシッケイの頭手前)テン場15:50
 
 朝早く車で家を出たものの、まさかの関越渋滞、事故3件!
 毎度のことながら、休日に限って事故起こす輩にはホント腹が立つ。そんなわけでスタート地点に立った時には随分陽が高くなっていた。
 
 既に登山口には入山パーティーの車が数台。
 自分も適当な空スペースに停め、出発する。

  
 
 しばらくは左に毛渡沢を見ながら雪に埋もれた林道をひたすら進む。
 途中、あまりにも考えずにトレースを追って林道を行き過ぎたりしたが、すぐに気付いて正規ルートへ。
 この道を歩くのはおそらく2006年の秋、東ゼン~笹穴沢継続をした時以来だから随分と久し振りだ。
 
 先々週の八ヶ岳ほどではないが、トレースはあるもののやはり春の雪は足に重く、途中から今回持参した秘密兵器スノーシューを履く。
 といっても自分のはネットで新品5,000円もしない「なんちゃってシュー」だが、これが思いのほか歩きやすい。
 アップダウンの激しくない雪道なら、なかなかどうしてワカンよりもよほど使える気がした。

  
 
 快適な二時間ばかりスノーシュー・ハイクを終えると、右手に赤い群大ヒュッテが現れる。
 スキーが立て掛けており、何人か山に入っているようだ。
 道はここで左に折れ、雪に埋もれたコンクリート橋を渡ると目の前の斜面が北尾根の取付きである。
 
 軽い昼食後、尾根に取付く。
 ワカンのトレースが続いていたので、自分もそのままスノーシューで突っ込むが、やはり「なんちゃってシュー」ではここまでが限界。
 急斜面のジグザグ登高だと横滑りしてしまって、残念ながらここでお役御免となる。

  
 
 樹林帯の中のトレースを登っていくと、やがて視界が開け、最初のピーク小屋場の頭(1,182m)着。
 ここは北尾根の絶好の展望台で、今日のような晴れの日は白い美しい雪稜が延々と延びているのが一目瞭然だ。
 
 上部に目を凝らすと、はるか先の稜線に5~6名ほどの大所帯パーティーを発見。
 自分のスタートが渋滞で遅れたせいで、おそらく行程としては3時間くらい差が付いているだろう。
 雪稜の醍醐味としては、できれば純白無垢の尾根に自分のトレースを最初に刻んでいくことだろうが、そこまで贅沢は言わない。
 トレースあっても十分美しいスノーリッジが続いていた。

 
 
 特に危険を感じるほどではなく、程良く切れたリッジを進み、尾根が右にL字型に曲がって少し進んだ所でテン場捜し。
 その先、傾斜がグッと上がる「にせシッケイの頭」手前の尾根を簡単に整地して、軽量シェルターを張る。
 標高約1,500m。夕暮れになると北西側に湯沢の夜景が灯り、何ともイイ場所だ。

  
 
 宵の口には少し風に煽られたが、夜が更けるにつれ風は止み、静かな稜線の夜だった。
 
 
二日目 
テン場6:10-シッケイの頭6:40-大雪原7:10-仙ノ倉山頂8:45~9:15-平標山頂10:05~20-松手山コース-元橋バス停12:30
 
 この日は朝4時半には起きたが、日頃の睡眠不足もあり二度寝してしまい、全て用意をして出発したのは6時過ぎになってしまった。
 
 本日の出だしは、このルートのおそらく核心部、斜度40~45度の急斜面である。
 ここがアイスの状態で単独フル装備だとけっこうシビレる思いだろうが、本日の雪は幸いこれ以上いくらいのGood Condition.
 アイゼンの前爪がしっかり刺さり、その上ヘンに崩れず、シャカシャカと快適に上がることができた。

  
 
 さらに白い稜線は続き、シッケイの頭への急な登り。
 それを越えると、ちょっと日本離れした雄大な大雪原が眼前に広がる。
 標高2,000m程度ながら何ともスケールの大きな景色で、少し大げさだが写真で見る南極の地にいるような気さえしてくる。
 
  
 
 昨日先行していた大所帯パーティーはここで一泊したのだろう。大雪原の一角に浅く削られたテン場の跡があった。
 昨夜は風も緩く快適だっただろうが、遮るものがまるでないため強風時はけっこうキツいだろう。
 
 さらに真っ白いドームの仙ノ倉山北峰への登り。
 結局、昨夜のテン場からはそこそこキツい登りが間隔を置いて三つほど続くが、傾斜としてはやはり最初のものが一番急だった。

  
 
 仙ノ倉の北峰から本峰へはすぐ。
 一面真っ白なので、この辺り遠近感が狂ってしまっている。
 
 仙ノ倉山では、しばらく誰もいない山頂を独り占め。
 誰にも煩わされることなく、静かな山頂で30分ほど孤高のひと時を過ごす。
 
  
 
 とにかく今回は最高の天気、最高の雪質に恵まれた。
 ミーハーな自分はこれまで雪稜といってもグラビア・ルートと呼ばれる人気の場所しか歩いていないが、その中でも今回のルートは素晴らしい内容だった。
 近くて良し、簡単で良し、それでいて極上の雪稜と言えるだろう。
 
 帰りは平標山経由の松手山コースで下る。
 毛渡沢に置いてきた車に戻るには往路を引き返した方が良いだろうが、これから雪が緩むだろうし、あの急斜面の下りはロープ無しだとやや不安である。
 
 平標山頂の前後は数多くの山スキーヤーやボーダーで賑わっていた。
 短いと思っていた下山のコースも疲れた身体には程々に感じられ、やはり安全策を選んで正解だった。

 
 
 下山してからも路線バスで越後湯沢に出て、駅にある日帰り温泉「ぽんしゅの湯」で時間調整。
 タクシーを使わず上越線下りの列車に乗って土樽まで。ここで車を回収と、効率よく節約できた。
 
 今回、もう一つの候補として近くの大源太山を考えていたが、さしずめあちらが「上越のマッターホルン」なら、こちらの仙ノ倉山は「上越のモンブラン」といったところ。
 仙ノ倉北尾根は割とよく知られた方だが、この周辺は残雪期でしか登れない好ルートがたくさんあり、今後も通いたいエリアだ。

冬の赤岩尾根~両神山、完結

2017年01月29日 | バリエーション・ルート
日程:2017年1月29日(日)前日発日帰り
天候:
同行:まっちゃん、ノトっち(我が社の山岳部)
行程:起床4:30-赤岩橋・出発5:45-赤岩峠6:45~55-赤岩岳7:20~25-P49:00~10-P110:40-八丁峠11:10~20-西岳12:10-両神山14:05~25-上落合橋17:15

 この週末は一人で軽い山へ行ってスノーシューで遊んでこようと思っていたところ、直前になって我が社の山岳部・若手二人からお声がけいただき急遽、両神山へ計画変更。
 冬の両神・赤岩尾根は、私は過去二回単独でトライしているが、いずれも八丁峠までで時間切れ。両神山までは達していない。
 やはり横浜を当日朝に出発していては登山口に着くのが9時過ぎになってしまうので、今回は前日発。これで三度目の正直としたい。
 横浜から両神山は圏央道により多少は近くなった気もするが、高速を下りてからもなかなか遠い。 
 本当はもっと明るいうちに着いて廃村となったニッチツ住居跡のシュールな景観を見てもらいたかったが、夕暮れになってから到着。
 シェフ・ノトっちの山メシとそれぞれ持ち寄った酒を飲んで明日に備える。
 
 翌日曜。ヘッデンを点け、未明に出発。
 夜明け前だとわかりにくいかなと思ったが、さすがにこれまで二回も行っていたので道を覚えていた。
 ルートに詳しいといっても終始、自分が先頭を行ってはつまらないだろうから今回は基本的に若い二人に先を任せる。
 我が社の山岳部の中でも特にパワーが有り余っている二人だけに、おじさんは付いていくのに早くも汗ダク・・・。

 赤岩峠着。
 積雪はそこそこあるが軟らかく、アイゼンを着けるほどではない。
 そして驚いたことに、昨日歩いたかのような真新しいトレースがあり、これから進む赤岩尾根へと続いている。
 ネットで検索すると、無雪期の赤岩尾根はもはやポピュラーなバリエーションだが、冬の記録となるとほとんど無い。
 そんな変人は自分ぐらいしかいないということか?

 ラッセルの必要は無い積雪量ながらルーファイが重要となる赤岩尾根にとって、このトレースはかなり時間短縮となり、今回大いに助けられた。

 尾根を少し登ってから正面の岩からそれて左へ樹林帯をトラバース。雪のルンゼ、そしてちょっと細い岩のリッジを辿っていく。
 「これで一般ルートですかぁ?」とノトっちがボヤくが、まぁ一応バリエーションとなってます。
 赤岩岳に到着。木陰から大ナゲシ、遠く浅間山方面を遠望して小休止。先へ進む。

 

 

 続いて1,583m前衛峰。一応、このルートの核心か。
 正面突破はⅢ級の岩登り、やや左のFIXロープ沿いにも行ける。チャレンジャーのまっちゃんは前者、堅実派のノトっちは後者を選ぶ。
 私は前二回とも正面を登っているので今回はノトっちの後からFIXロープ沿いに登ってみた。
 過去の記録にはFIXロープはかなり年季が入っていて却って頼るのは危険と書いてあったが、今(2017年現在)はもう一本比較的新しいのがしっかりハンガーボルトでセットされ、不安はない。
 まぁ瞬間的にほぼ垂直の箇所もあるが、慣れた人ならロープを頼らずに登れる。

 続いて1,583m峰。
 向かって右側、南側面をトラバースして段差のあるスラブ状の岩場を登っていく。
 ピークから一旦高度を下げ、尾根は続く。登り返した所が樹林帯の中のP4。
 ここまでで赤岩尾根の約半分か。八丁尾根から両神山までまだまだ長い。

 

 

 簡単に跨げる小キレット、ちょっと悪いトラバースを経てP3。そしてⅢ級のチムニーを越えてP2へ。

 この先、古いFIXのトラバースがあってP1に到着すると記憶していたが、ロープが雪に埋まってしまっていたのか全く気付かず南側の一段下がった巻道へ進んでP1を飛ばしてしまう。
 特にピークに拘るつもりはないが、P1は赤岩尾根の中で一番展望が良いのでせっかくなので、まっちゃんと共に登り返す。省エネ派のノトっちは割愛。
 これで赤岩尾根はほぼ終了。後はタラタラと快適で緩やかな道を下って八丁峠着。

 

 

 多少のタイムロスはあったが、誰かのトレースと以前よりも増えた赤テープに導かれ、ここまでペースは順調。
 多少疲れはあるが、小休止後、予定通りに八丁尾根へ継続する。
 この先は私も初めて。

 赤岩尾根がルーファイが求められる細かいアップダウンの連続だとしたら、八丁尾根はルートこそ明瞭だが、大きく鉈で断ち割ったような鎖場が続く。
 これが赤岩尾根からの継続だと、体力的に響いてくる。

 

 

 「長いなぁ、シンドイなぁ。」とボヤキながらもういくつ目となったかわからない鎖場を登り切って、ようやく両神山山頂に到着。
 やっと終わった。

 だが、まだ安心できない。
 下山口の上落合橋までの最後の下りも一応作業道とされているが、一般ルートでなく、いわゆるバリエーション道だ。
 特に雪の時期だけに状況がわからず、ここはヘッデンを使わず明るいうちに突破したい。
 ネットの記録を参考に通行止めのトラロープを二回潜り、雪の沢筋へ。

 しばらく真っ直ぐ雪の急斜面を下っていくが、やがてクライムダウンも厳しそうな凍った小滝に行く手を阻まれる。
 ロープを出して懸垂下降かと思ったが、そこさえ越えれば安全かという保証はなく、無雪期にあれだけ多くの人が下っているならこんなに悪い筈がないという気がした。
 すると、まっちゃんが向かって右手の方に道標となるピンクのテープを発見。いや、これはファインプレイ!
 以後、向かって右手の山裾をトラバースする作業道をピンクテープに導かれ、延々と下る。

 しかし、この下りもなかなか長い。
 無雪期だと1~1時間半と書かれていたりするが、とんでもない。
 この時期だと不安定な雪の箇所などあって、思いのほか長く感じられ、「下りは短く、楽勝(なはず)だから。」と事前に説明していたオヤジは、若い二人から不信のまなざしを向けられてしまった。

 それでも何とかヘッデンが要らないギリギリの時間に安全地帯である林道に到着。良かった。
 技術、体力的には一人で行けても、この下りは単独では泣きが入ったかも。若手二人には精神的に大いに助けられた。感謝!
 帰りは大滝温泉で汗を流して、秩父市内のちょっとレトロな洋食屋で夕食。

 
 
 行動時間約11時間半。

 結局、持参したロープもアイゼンも今回は使わなかったが、翌二日間はフルマラソン級の腿筋バキバキ状態が続いた。畏るべし藪岩魂。
 冬の赤岩尾根から両神山、これにて完結。

秋の戸隠・P1尾根

2016年11月05日 | バリエーション・ルート

日程:2016年11月5日(土)日帰り
天候:
行程:横浜4:30-鏡池(登山口)9:00-(取付ミスにより40分ロス)-出発10:00-熊の遊場12:00-P1(弁慶岳)13:00~20-本院岳14:20-八方睨16:13~30-鏡池19:00
同行:M田師匠

 
 今日は師匠のリクエストで冬の偵察も兼ね、戸隠へ。
 まさかあの本院岳ダイレクト?と思ったら、少し易しめのP1尾根と聞いてホッとする。(^^;)
 一応こちらも登山地図では点線で示される難ルートで、長野県の指標では西穂-奥穂と同レベルとか。

 紅葉シーズンのせいか往きの関越が多少混んでいたが、上信越道を経由して割とスムーズに登山口の鏡池に到着。
 初冬のキリリと締まった青空と紅葉のコントラストが鮮やかだ。
 ささっと用意を済ませて歩き始める。


 ところが最初からいきなり凡ミス。ゲートを跨ぎ、少し行った所でそのまま林道を突っ切り谷へ向かって下って行く所を、右手の林道へ進んでしまう。
 そのまま林道を20~30分ほど進んだところで道は忽然と消え、間違いだったことに気付く。(赤テープもあったのに・・・。)

 急いで引き返し正規ルートに戻るが、この時点で早くも午前10時。本日のコースが約8時間と想定しているので、この後、時間に追われる形でペースをやや上げることになった。
 
 気を取り直して谷に向かってぐんぐん下る。
 いかにも熊が出てきそうな気配。時折ホイッスルを鳴らして牽制する。

 谷に降り、水量の少ない流れを飛び石伝いに三回ほど渡渉し、対岸のP1尾根に取り付く。
 急登をジクザグに進んでいくとやがて前方が開け、目指すP1を始め戸隠西部の山々が望める。
 ギザキザとした岩の稜線だが、ここから見る限り先々週の妙義に較べるとまだおとなしい印象だ。

 しばらく広い道を行くと、その先はタラタラとした緩い落葉の道が続く。
 朝方は空気もヒンヤリしていたが、ここまで来ると陽射しが暖かく、二人とも大汗をかく。師匠はハンカチで頬かむりをして何とも怪しい恰好。
 黙々と歩くしかない我慢の時間帯だが、回りの紅葉が心を癒してくれる。

 

 やがて傾斜が急になり始めた辺りで先行の単独行者をロックオン。
 聞くと我々と同じく日帰りでP1尾根と言う。
 我々はその先、本院岳経由で縦走するので少々時間をアセっているが、P1まで行くにしてもこの人、このスピードで大丈夫かなと余計な心配をしてしまう。

 登り始めて二時間、「熊の遊場」下で最初の休憩を取る。
 右手には本院岳ダイレクトが複雑な形で延びている。
 今は緑に覆われ、それほど迫力はないが、積雪期は一体どんな威容を見せるのか。



 鎖場を登って「熊の踊り場」。そこからは左へトラバースするように斜上し、またまた長いルンゼの鎖場。
 冬はここは完全な雪壁となって核心となるだろう。
 その先「無念の峰」からの10mほどの下りや途中の細いリッジも今は鎖や梯子が使えるが、冬はエグいポイントとなりそうだ。

 


 最後にちょっとした岩場を登って、ジャスト3時間でP1に到着。
 P1は元々「弁慶岳」という名前があるようで、字が霞んだ古い標識が残っていた。

 

 よく澄んだ秋空の下、展望を楽しんだ後、戸隠本峰への縦走路へ。
 まずは本院岳。すぐ近くに見えるが、下りの日陰部分にかかると雪が普通に残っている。
 軽アイゼンを出すほどではないが、両サイドが切れ落ちた細い道なので慎重に足を進める。
 本院岳は灌木に覆われているが、それでも高妻山は良く見える。



 
 
 その先、キレットへの下りがこの縦走路の核心か。
 確かに悪い。冬など完全にアルパインの世界になるだろう。

 

 
 次第に夕暮れが迫る中、キレットの底から登り返して八方睨のピークへ。
 最初知らずにここを戸隠本峰かと思ってしまった。360度の展望、頂上は大きな岩が鎮座しており、いかにもフィナーレといった感じのピークだが、実際の戸隠本峰はさらに30分ほど先にある。
 できればそこまで踏んでおきたかったが、朝一番のタイムロスにより、ここはきっぱり諦める。


 
 
 八方睨からの下りはまたなかなかのインパクト。
 鎖はあるが、細い岩のナイフリッジがあり、疲れた足でも最後まで気が抜けない。
 時間としてはギリギリで、これ以上暗くなったら初見でここをヘッデン下降するのはシビアだったろう。

 

 
 ようやく安全圏内に入ってホッと一息。
 後はただ足を前に出して進むだけだが、それでも暗くてよくわからず、最後に正規の道をまたまた通り過ぎたりオマケもついて、鏡池のパーキングに19時着。
 
 脇の草むらには狸の目があちこちで光り、その他に狐やイタチも目撃した。
 関東の山だとほとんど鹿か猪しか見る機会がないので、これはなかなか新鮮だった。

 
 せっかくなので翌日は百名山でもある高妻山へ登る予定だったが、天気はあいにくの予報。
 しかたなく有笠のクライミングへ急遽転進とし、そのまま戸隠を後にした。

秋の妙義山・裏編

2016年10月23日 | バリエーション・ルート

 一日目、表妙義を縦走し温泉に浸かった後、裏妙義登山口の国民宿舎跡へ。
 宿舎は今年(2016)3月末で閉館となったばかりだが、暗闇の無人の館は何となく恐ろしく不気味な感じがしないでもない。
 昨夕も巨大イノシシが道路を横切るのを間近で見たが、夜半、コツコツと車の周りを叩く動物の気配が何度かあり、少し怖い夜を過ごした。
 
二日目
天候:
行程:国民宿舎跡6:30-(登山口がわからず迷走・約1h20)-出発7:50-三方境-谷急山11:00~20-三方境12:30-丁須の頭-国民宿舎跡16:10

 朝、スタートするが、さっそく道に迷う。
 今回、私が持ってきた2010年版の昭文社「山と高原地図」だと、妙義の最高峰、谷急山への最短登山口は宿舎から僅かに戻った林道を10分ほど先へ進み、そこから右手の沢を飛び石伝いに渡って尾根に取り付くことになっている。
 示された通り、現在ゲートの閉まっている林道を進み、登山ポストがあるという渡渉ポイントを探すがそれらしいものはまったく無い。
 林道先の星穴沢橋まで行っては引き返し、また適当な所から右手の沢へ降り、比較的登りやすそうな対岸の尾根に取り付くが、どうも違う。

 うーん、これはまさか取付き敗退・・・?

 参ったなと思いながら、しかたなくスタート地点に戻ると、ありがたいことに向こうから中年の男女二人組がやってきた。
 聞くと女性の方はこの春に谷急山に登ったと言う。しかし、その時はこちらへ下ってきたので、登り口の記憶が何となく曖昧。
 しばらく三人で林道を行ったり来たりして道を探す。

 やがて対岸の樹林の中に白い道標を発見!
 そこから沢へ降りると、たしかに飛び石伝いに渡れるようになっていて、無事、登山道に出る。
 (後で最新の地図を見たら、現在は宿舎から別のルートで道がきちんと整備されているようだ。やはり地図と女房は新しい方が良い。)

 一応、道を見つけたのは自分だが、一緒に探してくれたお二人に御礼を言って先を急ぐ。
 ジャンクションとなる三方境へは、樹林帯の中の展望の効かない道が続く。 
 掃除すれば良いボルダーになりそうな巨岩が幾つもあり、しげしげと観察。
 途中でちょっとわかりにくい曲がり角などあるが、そういう所は目印となるテープが導いてくれる。

 

 

 やがて分岐点となるポイント、三方境に到着。期待に反してここもまだ展望は利かない。
 スタートが遅れたので、大した休憩も取らず、そのまま谷急山へ向かう。
 
 ここからは点線(上級)コース。
 しばらくは歩きやすいが、次第に尾根は細く岩も出てくる。
 右手には木の枝越しに谷急山の前衛鋒とも言える険しい岩塔、そして背後には本場アルプスのドリュを思わせる烏帽子岩が見える。(もしかして未登?)
 コースは明瞭だが、やはり表妙義に較べると格段に人が少なく、なかなかワイルドな雰囲気である。
 
 やがて鎖場、鋭いV字キレットが現れる。
 昨日の七人パーティーもそうだったが、今日のお二人も見た目に寄らず足は達者で、こちらが離したと思ったら知らない間に追い付かれ、そして抜かされてしまう。
 最近、自分の周りでも北鎌と谷川で二件の転落事故があったので、こちらが慎重になり過ぎているのかもしれないが、「妙義ウォーカー侮り難し!」といった感じだ。

 

 木の枝越しに見るとずっと先の方まで似たようなピークが続き、あれかなぁ?まだまだ遠いなぁと思いながら足を進めていくと、昨日の夕方、表妙義で見かけた単独の青年とバッタリ。
 そしてそこからすぐの所が谷急山の山頂で、先行していた先のお二人がランチを始めていた。
 
 山頂はそれほど広くなく、周りは草木に覆われているが、それでも少しは展望が利く。
 間近に見える筈の浅間山は今日は上部が雲に隠され残念だが、頂上台地が特徴的な荒船山が印象的だ。
 先のお二人も単独の青年も妙義に来るだけあって、両神やその他、西上州の藪岩尾根に興味を持っているようで、しばらく話をしてくつろぐ。

 

 一休みしたところで下山開始。
 スタートでもたついて時間を食ってしまったので、どうしようか迷ったが、コースタイム的に三方境へ戻るリミットを12:30に決める。
 その時間を過ぎてしまったらおとなしく往路を下山。間に合ったら当初の予定通り裏妙義の奇岩「丁須の頭」まで行ってみることにする。
 少し足に来ているが、谷急山の急な細尾根を慎重に下り、三方境を制限時刻1分前に通過。そのまま「丁須の頭」を目指す。
 お二人は往路を戻ったようだが、青年は丁須の頭へ向かったはずだ。
 
 国民宿舎から谷急山へは自分も含めて三組しかいなかったが、丁須の頭方面からはけっこう大人数の中年パーティーが何組かやって来てちょっと驚く。
 ここも点線コースで不安定な鎖のトラバースなど随所にあるが、行き交うオバチャンらは元気で、このちょっとスリリングなハイキングを楽しんでいる。
 
 で、この三方境から丁須の頭へのコースが予想以上に良かった。
 烏帽子岩を始め、ドリュのような岩峰がドカンドカンと行く手に聳え立ち、それが丁須の頭まで「天空の尾根道」といった感じで続いている。
 同じコースでもおそらく三方境から丁須の頭へ向かう方が景色が良く、この風景を見るためここまで来る価値はあると思う。
 やがて青年に追い付き、前後しながら進む。





 





 けっこう時間がかかるかと思ったが、予想より早く最後の絶景ポイント「丁須の頭」に到着。
 ここはやはり岩の上に立ちたい。 
 昨日からずっと軽登山靴だったが、サイズがやや大きいため、ここは持ってきたシューズ(5.10のスパイア)の出番。
 まぁ、鎖もあるので度胸さえあれば軽登山靴でも登れるだろうが、より慎重に。
 さすがにクライミング・シューズだと妙義の岩は吸い付くように快適だ。
 

 

 


 

 後から来た青年と共に丁須の頭に立つ。いや、少し風が強くて、立つのは怖かったけれど・・・。
 
 裏妙義を十分満足して、下山は熊沢コースへ。
 途中、獣道からコースを外してしまい、あらぬ方向の尾根に入りかけたが、コースはほとんど沢をダイレクトに下っていく。
 随所の岩に黄色いペンキマークや木々にテープが巻いてあるので、それらを追っていけば迷うことはないが、沢伝いの道なのでけっこうワイルドで、ヘッデン下降になるとやや辛いだろう。
 
 やがて国民宿舎跡に無事到着。
 一緒に下ってきた青年に別れを告げ、帰りは名物「横川の釜めし」で夕食とする。

 
 
 こじんまりとはしているが、ダイナミックでちょっとした秘境感も味わえた妙義の二日間だった。

秋の妙義山・表編

2016年10月22日 | バリエーション・ルート

日程:2016年10月22日(土)~23日(日)前夜発一泊二日 単独

 いつか行きたいと思っていた妙義山へ。
 金曜夜に圏央道→関越→上信越道と乗り継ぎ、日付が変わって休日深夜割となるのを見計らって高速を下りる。
 そのまま「道の駅みょうぎ」で車内ビバーク。

一日目
天候:
行程:妙義神社7:00-大の字-相馬岳11:00~20-バラ尾根-堀切-中間道-大砲岩分岐-東岳-中之岳12:45-第四石門-中間道-妙義神社16:20

 朝5時には起きて早出するつもりが、一週間の仕事疲れか軽く寝過ごす。
 そそくさと用意を済ませ、妙義神社からスタート。
 急な石段を登り詰め、奥の本社の右手から登山道が始まる。
 この時点で表妙義の核心である「鷹戻し」の鎖場が付け替えのため現在通行禁止であることを初めて知る。
 うーん、残念だがまぁしかたない。

 

 

 神社の奥からは、しばらく樹林帯の登りが小一時間ほど続く。
 いつの間にか元気のいい中年の単独行者が追い付いてきた。
 5~6mほどの鎖場を登って、最初のポイント「大の字」へ。白い大きな鉄製の目印で山麓からもよく見える。
 
 山中の案内板だとこのまま縦走コースが続いているようになっているが、「大の字」からは一旦分岐まで戻り「辻」と呼ばれる方向へ。
 少し行くとトラロープが横に張り渡してあって一見立入禁止のようになっている。
 道は続いているのでそのまま構わずロープを潜って先へ進むと、岩に黄色く目印がありコースが正しいことがわかる。

 鎖場を伝っていくと、洞窟状の「奥の院」へ到着。右手にはやや長い急な鎖場が控えており、ここからいよいよ表妙義の上級コースとなる。

 





 「見晴」という所からは西上州の山々を一望。少し霞んでしまっているが浅間山も大きく見える。
 この後、ビビリ岩、背ビレ岩と岩場が続く。低山にしてはなかなかの高度感だが、鎖があるので慎重に歩けばまぁ安心。

 やがて先行していた男女七人(夏物語?)パーティーに追い付き、途中で先を譲ってもらう。
 紅葉のピークにはまだ少し早いようだが、気持ちのいい岩稜を歩き続け、表妙義の主峰、相馬岳(1,104m)へ。
 「大の字」で会った単独行の人、途中で先を譲ってもらった七人パーティーもすぐに追いついてきて、ここで大休止。
 頂上からはこれから向かう西側の金洞山(鷹戻し、東岳など)のギザギザした稜線が望める。

 

 単独の人と少し話をする。穂高のジャンダルムへ行きたいため練習として妙義へ来たらしいが、ここまで不安なく来たならまぁ問題ないのでは?
 それほど広くはない頂上に他にも何組かやってきて、この先、渋滞になりそうなので軽く行動食を摂って自分は一足早く出発する。

 ここからバラ尾根(茨尾根)をどんどん下る。途中、反対側から来たパーティーに工事中の「鷹戻し」の様子を聞くと、やはり現在は迂回するしかないとのこと。
 下りきった所が「堀切(ほっきり)」

 本来ならここから登り返しで「鷹戻し」への長い鎖場が続くようだが、通行止めの注意書きに従ってしかたなく中間道へと下る。

 中間道は表妙義の南側のトラバース道となっていて、「関東ふれあいの道」の一部?らしい。もちろん、危ない岩稜歩きではなく安心して歩ける普通のトレイルだ。
 すぐに長い鉄階段の登りとなり、その後、岩壁の裾をくりぬいたトラバース道となる。
 やがて分岐に着いたので近くにいた若い連中に道を確認し、再び山側に向かって登っていく。

 
 
 樹林帯から再び視界が少し開け始めるとちょっとした鎖場があり、登り詰めて東岳、さらに細いリッジを繋いで中之岳へ。
 これで表妙義の縦走はとりあえず終了。
 核心の「鷹戻し」を迂回したため思ったよりも早く終わってしまったが、それでも1,000mそこそこの山とは思えない高度感と岩峰の迫力に満足した。
 中之岳からの下りもほぼ垂直の鎖場。最後までなかなか気が抜けない。





 それにしても今回コース上で一緒になった熟年男女七人パーティーには感心した。
 大抵、七人もいると途中でバラけて時間がかかったりするものだが、このパーティーは実に足並みが揃っていて、こちらがちょっと回りの景色など撮ったりしているとあっという間に抜かされてしまう。

 この後、中之岳神社に下りようと思ったらスタート地点の妙義神社へはバスの便が無いらしく、「良かったらタクシー相乗りしませんか?」と七人パーティーの男性が声をかけてくれた。
 ありがたいと思ったが、登山地図を見たら何とか暗くならない内に戻れそうなので、丁重にお断りして一人、中間道を妙義神社へ歩いて向かう。
 奇岩の第四石門や大砲岩など見学。不思議な自然の造形に感心する。

 

 

 岩尾根の上級コースを歩いた後だと、中間道は平凡なトレイルでそれほど面白くない。特に午後からは曇ってしまってやや暗い雰囲気なのでなおさらである。
 さっさと歩いて、明るいうちに妙義神社へ戻った。

 下山後は近くの「もみじの湯」で温泉と夕食。ここの露天風呂は、すぐ目の前に妙義の岩峰が望めてなかなかイイ感じ。
 コンビニで買い出しし、明日は裏妙義である。


雪の秩父・赤岩尾根 またしても・・・

2015年03月14日 | バリエーション・ルート

日程:2015年3月14日(土) 日帰り
天候:時々
行程:赤岩橋8:35-赤岩峠9:30-赤岩岳10:23-1,583m峰11:28-P4・12:53-P1・14:31-八丁峠15:36-西岳手前16:12-上落合橋17:31-赤岩橋18:02
行動:単独

 先週、今週と八ヶ岳の予定だったが、三月の気まぐれな天気予報に惑わされ、二週続けて見送り。
 相方のK氏とは住まいが離れているため今回は一緒に行くのを諦め、お互い適当な近場でお茶を濁すことにする。

 で、今回の場所は秩父の赤岩尾根。
 昨年冬にも行ったのだが、その時は初めてということもあり、最初の登山口さえよくわからず大幅にタイムロス。
 結局、目標の両神山まで行くことができず、途中の八丁峠から下山となった。
 一応、それでも赤岩尾根は縦走したことになるのだが、今回はやはり両神山まで辿り着きたい。

 土曜の未明に横浜を出発し、登山口の落合橋に着いたのが8時過ぎ。
 相変わらず寒々しい廃村風景だが、前回見ているので少しは慣れてしまった。

 
(左)登山口の赤岩橋                        (右)山と廃屋

 簡単に支度を整え、8時半スタート。
 一回来ているので、迷うこともない・・・はずだったが、赤岩峠までの樹林帯の登りで一回道を見失い、しばらくガレ沢を登り詰めるハメとなった。
 そのまま沢を詰めても峠に着きそうだったが、ガレて歩きにくいので左手にある正規の山道へ軌道修正。
 フリーやボルダーが楽しめそうな岩を2~3つ見送り、1時間ほどで赤岩峠に到着する。

 
(左)赤岩峠                           (右)赤岩岳北面のルンゼ

 さてここからいよいよバリエーションの世界だが、長丁場となるため今回は軽量化に努めた。
 前回の経験から(自分は)ロープ、ハーネス、ピッケルは不要と思い、ヘルメットとアイゼン、長めのスリングだけ持つ。

 峠には積雪あるもののコース全体の半分以上は岩と土が出ていそうなので、最初はアイゼンを履かないでいく。
 そして前回同様、「フィックス・ロープなどの人工物には一切頼らず、木の枝や草付など自然のものだけ使ってOK」という自分だけのルールを課した。

 さっそくスタート。やはり冬の時期に来る人は少ないのか人のトレースは皆無で、雪の上にはケモノの足跡しかない。
 赤岩岳の正面壁が近づいた所で岩壁の裾を左へトラバースするのだが、この斜面が北面で日陰のせいか凍っていて、アイゼン無しだと早くも難儀する。

 
(左)大ナゲシ方面を振り返る                   (右)赤岩岳山頂

 それでも灌木を頼りに雪のルンゼ、そして岩のリッジをひと登りで赤岩岳到着。
 朝のうち晴れていた天気もこの頃から曇り出し、小雪がチラホラ舞い始めた。
 天気は大きく崩れないだろうと見込んで、先へ進む。

 少し行って1,583m前衛峰。
 ここでちょっとした岩登りが出てくる。
 左側のルートは昨年には無かった真新しい赤と黒のロープがフィックスされていたが、登るにはあまりよろしくない。
 ここはやはり前回同様、正面突破で行く。
 せいぜいアルパインの3級程度。15mほどの岩だが、一人なので慎重に登る。
 ここを登ってしまうと、ロープ無しではもう退却は厳しい。

  
(左)前衛峰               (中)前衛峰にある新しいFIXロープ    (右)1,583m峰

 前衛峰を越え、1,583m峰との間に切れた細い箇所があり、雪が不安定に乗っていて少しイヤらしいトラバースとなる。

 続いて核心と言われる1,583m峰だが、実際には前衛峰よりは難しいことはない。
 セオリー通り、右側をトラバース気味に下降してから緩傾斜の岩場を登り返す。
 フィックス・ロープがあるが、何とかここも頼らずにクリア。

 1,583m峰を過ぎ、もう後は楽勝と考えていたが、まだまだ気の抜けないアップダウンが続く。
 途中でガサガサと大きな音がして、一瞬「熊か!」と身構えると、灰色の毛をした大きなカモシカだった。
 途中のピーク、P4、P2は確認できたが、P3は知らない間に通り過ぎてしまった。

  
 (左)1,583m峰の残置FIX          (右)P4

  
 P1から来た道を振り返る

 何度か支尾根に入り込んでしまうが、進むうちにおかしいと気付き、際どいトラバースなどしながら軌道修正。
 展望の利くP1に着き、ホッと一息。この辺りは下界もあまり開けた土地では無いので、何とも奥深い所に来たなぁと感じてしまう。

 そこからまたしばらく進み、ようやく八丁峠手前の祠に到着。
 が、ここでまたまたルートミス。右側の支尾根に入ってしまい二回ほどリングワンデリングとなってしまう。
 とにかくしばらく進んで目印のテープを見失ったら、ルートミスと思った方がいい。

 

 何とか元の位置まで戻り、八丁峠に15時半到着。

 半ば意地になってアイゼン履かずに通したおかげで、予想以上に時間がかかってしまった。

 この先、八丁尾根を伝って両神山までおそらく標準タイムで2時間半。
 今からだとヘッデン下山になるのは確実である。
 夏ならともかく、この時期一人で初めての藪岩コースを行くのはちょっとリスクが大きい。

  両神山はまだまだ遠い・・・

 それでも諦めきれずに峠から30分ほど登ってみる。
 見晴らしの良い途中のピークから前方を眺めると、八丁尾根はまだまだ大きなギャップが続き、時間がかかりそうだ。残念ながらここで諦める。
 雪の状態やコースミスがあったとはいえ、やはり今の自分のペースでは登山口の赤岩橋を朝5時半にスタート、赤岩峠を日の出頃の6時半に出ないと両神山までは厳しい。

 八丁峠に戻り、そこからの下りも少し凍っていたが、ここまで来たら最後までノー・アイゼンを貫き通す。
  このような冬の低山では、着脱の簡単なスノー・スパイクのようなものが便利だと思った。

 

 雪の時期に二回、赤岩尾根を歩いて感じたことは、それほど難しくはないが、けっして気を抜けないということ。
 特に冬はあまり人が入らないので、滑落や道迷いなどした時にはリスクも大きい。
 ハイキング以上、アルパイン未満と言われるが、少なくとも八ツの阿弥陀北稜などよりは気が張ると思う。

 で、今回一番怖かったのは下山してから。
 車に戻り、さて帰ろうとふと周りを見ると、少し離れた場所の小さなバラックにかすかに明かりが点いていた。
 (たぶん鉱山関係者だと思うけど)人の気配がまったくない夜の廃村で、これはけっこう怖かった。

  赤岩尾根


冬の愛鷹・鋸岳-その尾根、凶暴につき?

2015年02月15日 | バリエーション・ルート

天候:
行程:山神社7:30-北沢コース-稜線-位牌岳11:30~40-蓬莱山13:38-割石峠13:03-呼子岳14:20-越前岳15:14~30-愛鷹山荘16:40-山神社17:09
単独

 さて、今週は静岡県の愛鷹山へ。行くのは初めて。
 もちろん名前は知っていたが、偉大なる富士山の陰に隠れて標高はその半分にも満たないので正直これまであまり興味がわかなかった。
 
 今回は概念を掴んでおこうと、主要なピークである位牌岳と越前岳を結ぶコースとした。
 その間には鋸岳という痩せ尾根があり、現在は基本的に立入禁止(自粛?)。行くならあくまで自己責任となっている。
 でもネットで見るとけっこう多くの人たちが通過しており、それならどんなもんかと行ってみた。

 未明に横浜を出て、北側の登山口、山神社へ。
 先週登ったばかりの富士山が大きい。今朝は予報通り大雪煙が舞っているが、下界はそれほど風は無い。

 

 駐車場はけっこう広く30台は停められそうだが、今日の先客は3台ほど。
 隣にいた二人組に挨拶してからスタート。鋸岳がどの程度悪いのかわからないので、一応メットにハーネス、30m補助ロープなどを持参。

 しばらくは沢沿いの雪道を南に向かって進む。正面には時折、鋸岳のギザギザが見える。
 今朝は人が少ないが、これまで多くの人が歩いているようでトレースはバッチリ。涸沢を二回ほど渡ってしばらく行くと分岐となる。

  

 実はこの時点で失敗。
 本当は大沢橋という地点の手前で左へ分かれ、前岳、位牌岳と進む予定だったのだが、私が持っているのは古い地図で現在のコースが載っていない。
 
 途中で気がついたが、面倒なのでそのまま北沢コースを進む。
 そこは位牌岳と割石峠を結ぶ稜線の途中に突き上げるルートで、どちらかというと登路というより稜線からのエスケープ・ルートのようだ。
 そのため冬はトレースも少ない。随所にある赤テープを頼りに、足首から膝下までのラッセルで登っていく。

 ようやく稜線に到着。真冬の鋸岳はネットの記録もほとんど見つからず不安だったが、着いてみると新しいトレースがしっかり刻まれていた。
 時間も少し押してしまい、これは計画倒れに終わるかと思ったが、まずは近い方(左手)の位牌岳を目指す。
 ちょっとスリリングな鎖のトラバースをこなし、ひと登りで位牌岳着。

 

 名前は暗いが、頂上は明るい雰囲気。樹間からは富士山が見える。頂上の登山者ノートに記帳し、再び今来た道を戻り鋸方面へ再スタート。

  
 山と警告。ここからは自己責任で。

 「警告」の看板を過ぎて少し下ると、先ほどの鎖のトラバース。足元が不安定だが、まだこの辺りは序の口。
 ここで不安を感じる人のために途中で北沢への下降路があるのかもしれない。

 先ほど登り着いた北沢の鞍部を過ぎると、進むにつれ尾根は次第に細く悪くなる。
 最初、鎖やフィックス・ロープに一切頼らずやってみようと思ったが、足元の雪が不安定なので、全体重をかけないよう補助程度に使わせていただく。
 警告の看板があるのに無理をして事故を起こしたら、それこそこっぴどく叱られるだろう。
 途中、かなり切れ落ちた下りの箇所があり、ここを鎖やロープを使わずにクライムダウンするのはかなり怖ろしい。

  

 位牌岳からだと前半は主に北面のトラバース。鋸岳が近づいた所で狭いギャップを通過し、そこから今度は南面のトラバースとなる。
 南面は日当たりが良く雪も解けているので、脆い浮石に注意。
 ここも鎖やロープに半分頼りながら通過。何とか無事に鋸岳の稜線を突破できた。
 もっとわかりづらいかと思ったが、視界が良ければルートは明瞭。たぶん冬の方がブッシュも少なく、アイゼンも効くので、夏よりもかえって不安が無いかも。

  鋸岳・危険コース 

   

 蓬莱山でしばし小休止。木々に囲まれてあまり展望も利かないので、そのまま割石峠、呼子岳と先を急ぐ。

  位牌岳から鋸岳の稜線を振り返る。

  進行方向、越前岳の向こうに富士山

 本日最後のピーク、越前岳へはダラダラと長い登りが続いて意外と遠かった。
 南面は雪が解け、道も泥だらけとなる。

  

 途中、中高年男女三人組と擦れ違い、陽が西に傾き始めた越前岳(1,504m。愛鷹山塊の最高峰)に到着。
 黄金色に輝く駿河湾が美しい。

 その後、北東側の富士見峠へと進む。途中、朝の駐車場で会った男二人組と遭遇。
 もう下山しなければならない時間なのに、まだ越前岳の手前でこれから山頂へ向かおうとしている。大丈夫なのかな?
 
  
 途中にあった愛鷹山荘。無人無料。六畳一間ぐらいでカーペット、毛布等あるが、よほどでない限り利用することは無さそう。

 後はタラタラと道なりに下り、山神社の駐車場に着。

 登りは若干コースをはずれてしまったが、予定通り位牌岳-鋸岳-越前岳と愛鷹山のメインコースを歩けたので、とりあえず満足。
 帰りは途中にある「大野路」の露天風呂で浸かってから帰宅。

  


[メモ]
・愛鷹山の公式(?)HPはこちら。「愛鷹山ハイキングガイド」http://www2u.biglobe.ne.jp/~rss/
 鋸岳稜線の両端にある位牌岳と蓬莱山にはどちらも警告の看板があり「立入禁止」となっているが法的根拠までは無いようで、現状は「自粛、自己責任」のようだ。

・ネットの記録では、蓬莱山から位牌岳へ向かうパターンが多い。前掲のHPでもそちらを推奨している。

・今回ロープは持参したものの不使用。ヘルメットは落石、滑落のためというより、しばしば木の枝に頭をぶつけるので有効。
 またハーネスもフィックスロープにセルフビレーを取りながら進めるので、着けていると安心。

・鎖は中には新しく付け替えられたものもあるが、ほとんどが古く支点もどれだけ信用していいものか怪しい。
 外国のヴィア・フェラータのように整備されているものでないと思うので要注意。

・車で日帰りだと今回のコースで十分だと思うが、探してみたら電車・バスで北麓の十里木まで行って越前-鋸-位牌-愛鷹と縦走し、東海道線の原駅まで日帰りで行っている強者ハイカーの記録もあった。
 けっこうハードだと思うが、今度やってみようかな。http://chmastian.blogspot.jp/2014/05/blog-post_10.html

・同程度のルートとして「那須・朝日岳東南稜」、「秩父・両神山赤岩尾根」、そして「愛鷹山・鋸岳」の三つを、冬に一人で行った経験をあえて比較すると、
 朝日岳東南稜・・・一番アルパインぽく、すっきりしている。風が強いと厳しい。懸垂一回必要。
 両神山赤岩尾根・・・両神山まで行くと一番長丁場。ルーファイも必要で体力がいるが、技術的には(私は)残置物に一切頼らず行けた。
 愛鷹山・鋸岳・・・正味悪い箇所は小一時間ほどで短いが、残置物に頼らないとかなり悪いし、その残置物も不確か。

 
 シャモニ針峰群?・・・いえいえ静岡針峰群 


冬の秩父・赤岩尾根

2014年02月01日 | バリエーション・ルート

天候: 
行程:日帰り
   赤岩橋10:00-赤岩峠11:00~10-赤岩岳11:42-1,538m峰12:47-P1・14:40-八丁峠15:13~46-赤岩橋17:23
行動:単独

 この週末は泊まりの山行を予定していたが、日曜の天気が悪いというので日帰りに変更。
 以前から何となく気になっていた両神山のバリエーション、赤岩尾根へ。
 一般登山道では飽き足らないハイグレードハイキングの枠でも難易度高め。藪と岩稜が連なり、相応の技術とルートファイングが求められるコースとか。

 登山口の小倉沢地区はかつて「日窒」という会社が大規模に鉱山を運営していて、この山奥に二千人もの人が住んで繁栄していたらしい。
 が、今や完全なゴーストビレッジ。
 朽ちた住宅や学校、公衆浴場などの廃屋がノスタルジーを通り越して寒々しい。
 最近、にわかにブームとなっている廃道、廃線、廃墟を好むマニアの間では隠れスポットにもなっているようで、WEB上で「秩父 日窒 廃墟・・・」などと検索するといろいろ出てくる。

  

  廃屋の向こうに赤岩岳
 
 この時期、道路も凍っていて車はあまり先へ進めない。
 適当な空き地に駐車し歩き始めるが、ボーッとしていてスタート地点の赤岩橋を過ぎ、ずっと先の落合橋まで来てしまい、これで往復1時間もロス。
 引き返して登山口の廃村エリアを確認し峠への登り口を探すが、以前はあったらしい道表示が無くなって違う方向へ進んだりして、またまたロスタイム。
 結局登り始めたのは午前10時。
 赤岩尾根→八丁尾根→両神山と行く予定だったが、こんな遅いスタートでは赤岩尾根も途中まで、ただの偵察登山に終わりそうで少々アセる。

 簡単に登山口を説明すると赤岩橋の所から「立入禁止」となっている左手の廃村エリアに入り、少し進んで小さいY字路に突き当たったらそのまま右へ。
 ほんの少し先、左手に保育所跡があり、そこを右へ直角に上がっていくのが登路である。
 だいぶ煤けているが登山の注意を促す立札もあり、2014年2月現在「山火事用心」と書かれた大きな赤い横断幕が林の中に掲げてあるので、それが目印。

  登山口は保育園跡の右手、一段上にある。

 赤岩峠への道は小さな九十九折が続くが、途中左手の植林帯にもピンクテープが続いているので、そちらに導かれないよう注意。
 下から見えた赤岩岳方面へ向かってほぼ真っ直ぐ登っていくと、やがて前方枝越しに大きな白っぽい岩場が見えてきて、それを左にやり過ごして大きな九十九折でさらに登っていくと赤岩峠。
 ここまでの道も日陰では少し凍っていて、峠から先はもちろん雪があるので、ここでアイゼン、ハーネス、ヘルメットを身に着ける。

  
 登り始めて約一時間、赤岩峠に着く。                       樹林越しに見る大ナゲシの岩峰

 最初のピーク、赤岩岳はすぐそこ。
 正面岩壁も見てみたかったが、時間も押しているのでセオリー通り左に延びる巻き道を辿り、ルンゼを上がって北稜のコルから岩稜伝いにまずは赤岩岳登頂。
 岩のリッジはむき出しでちょっと高度感があるが、ホールド、スタンスともに大きく、ここで腰が引けるようならこれ以上先に進まない方が良い。

 さらに行くと1,583m前衛峰と呼ばれる15mほどの小岩峰。
 ちょっと立っているが正面突破。アルパインの3級ぐらいか。他の人の記録では、ここを核心部とみる人も多い。

  
 赤岩岳、そしてその後に続く1,583m前衛峰

 そして次が1.583m峰。ガイド本ではここが核心らしい。
 正面の顕著なカンテ・リッジは見た目にもハイグレード・ハイキングの域を超えていて、一般的にはこのリッジの脇を右下にトラバース下降。降りたコルから右側面(南面)のスラブっぽいフェースを斜上していく。
 スラブはアイゼンを履いているとやや細かいが、カチを拾いながら登る。
 技術的な核心はとりあえずここまで。無事に1,583m峰の頂を踏み、少しホッとする。

  
 1,583m峰                             P2直下のチムニー

 この後、八丁峠まではP4~P1と岩峰があり、その間にも細かいアップダウンが続く。
 途中、小ピークからクランク状にルートが直角に曲がる箇所があり、迷いやすい。
 要所要所に赤テープがあるが、中には小指の爪ほどのビニールテープが細い枝に括り付けられ、それが古くて色も煤けているものだから、けっこうビミョー。
 ある程度、人気のコースでそこそこ踏まれているが、ルートミスの踏み跡もあるから、迷った時は正解の所まですぐ戻った方がいいだろう。

 1,583m峰を過ぎたら八丁峠まですぐと思ったが、思ったより長く感じた。 
 他の人の記録で見かけるP2真下にあるチムニーっぽい岩場のフィックスは、今は無かった。
 ここは少し右に下りてピークの先に巻き上がることが可能。
 P1は頂上が開けて、歩いてきた赤岩岳方面、そしてこれから進む両神山方面を見渡せ、展望が良い。
 午後になって空が霞んでしまったが、浅間山らしき雪の山容が大きく見えた。

  P1より赤岩尾根を振り返る

  前方、両神山を望む

 八丁峠に着いたのが15時過ぎ。
 それなりに急いだつもりだったが、赤岩尾根(赤岩峠~八丁峠間)だけで4時間かかってしまった。
 せっかくなのでまだ登っていない両神山まで行きたかったが、冬のこの時期、今から八丁尾根を登ろうとしたらヘッデン下山は確実。
 ルーファイの悪い自分はまず止めておいた方が無難だろう。

 八丁峠ではこんな時間から登ってきた単独行の人としばし休憩。
 まだ山を始めて間もないようで、ロープの使い方などいろいろ質問をされてしまった。
 まぁいいんだけど、あまり山のことを知らないみたいで、こんな時間から一人で登っているし大丈夫かなとちょっと心配になった。

  八丁峠から赤岩岳方面は「立入禁止」の表示アリ

 下りは半分凍り始めた道を一気に上落合橋へ。夕暮れの中、最後は今朝も歩いた車道をトボトボ歩いてスタート地点の赤岩橋に帰ってきた。


 赤岩尾根の岩稜部分は概ねアルパインの2~3級程度。「北鎌」のミニミニ版といった感じだが、ホールドとなる岩は割としっかりしている。
 今回はトレーニングとして、フィックスには一切頼らず、すべて手袋&アイゼンで通過。そこそこ刺激のある内容だった。
 実際は真冬でも岩場に雪や氷が乗ることがまず無いので、岩の部分はアイゼン無しの方が楽。ただ日陰の下り斜面は凍っていたりするので、こまめな着脱が必要になってくる。

 補助ロープも持参したが、赤岩峠から八丁峠へ進む場合、慣れた人ならロープは不要。
 逆に八丁峠から赤岩峠へ進む時は急な岩場を下ることになり、懸垂下降の準備をした方が良いだろう。
 ルートもわかったので、次回来る時はもっと軽い装備でサクッと両神山まで片付けたい。

  アプローチで通る素掘りのトンネル


秋の剱岳・源次郎尾根~北方稜線~下ノ廊下 #4

2012年10月09日 | バリエーション・ルート

天候:
行程:出発6:10-白竜峡7:00-大タテガビン前9:00-内蔵助谷出合10:10-黒部ダム12:10

 いよいよ最終日。今日もイイ天気。
 
 下ノ廊下も歩くうちに次第に慣れてきて、だんだん単調に感じてきた。
 しかし、クライマックスはこれから。
 エアリアマップで「危険」マークが連続している地点、白竜峡と呼ばれる辺りがスリリングで面白い。

 

 側壁には手摺となる針金が延々と整備されていて、よほどの高所恐怖症で無い限り足がすくむことはないが、空間に飛び出すように木橋が設置されてたり、もうこれはアトラクションそのもの。
 足元もけっして平らではなくゴツゴツと岩が飛び出しているので、写真を撮ったり景色に気を取られたりしてちょっとつまづけば簡単に数百m落ちてしまうだろう。
 危険度としては北鎌と同レベル。それでも中高年登山者には人気が高く、言うなれば、おばちゃんたちのヴィア・フェラータといったところか。

 
 
 交通の便の良さから下ノ廊下は黒部ダムから阿曾原へ抜ける「北上」組が圧倒的に多いと思う。
 しかし、それだと上流から下流に向かうことになり、景色の迫力としては半減するのではないかと思う。
 実際、白竜峡辺りはゴルジュの中に滝が連続し、北上するパターンだとそれらを振り返るようにチラチラと見ることしかできない。
 それに対して南下パターンだと下流から上流へ向かって歩を進めるので、自然と小さな滝も次々と目にするとができ、私としては絶対、阿曾原から黒部ダムへ南下するパターンの方がお薦めである。

 

 白竜峡、大タテガビンとクライマックスを過ぎると次第に道は易しくなり、やがて前方に丸山東壁が見えると内蔵助谷との分岐はすぐそこ。
 しばし休憩を取り、この四日間の山旅を振り返る。

  

 あとは歩き慣れた道を行くだけ。
 最後の黒部ダムへのキツい登りを終え、トンネルの中に入ると一気に人間くさい世界へ引き戻される。

 

 帰りは大町温泉郷「薬師の湯」。
 いつも露天のある新館へ行ってしまうが、今回は旧館の岩風呂も堪能。こちらも渋くてなかなか良かった。

 

 源次郎尾根~北方稜線~下ノ廊下と三つのライト・バリエーションを一気に繋いで剱を巡るコースは紅葉の裏剱というオマケも付いて充実したバリュー・セット。

 天気に恵まれれば。オススメです。


写真集[黒部・下ノ廊下(仙人ダム→黒部ダム)]


秋の剱岳・源次郎尾根~北方稜線~下ノ廊下 #3

2012年10月08日 | バリエーション・ルート

三日目

天候:
行程:出発7:50-仙人池ヒュッテ9:00-仙人温泉小屋10:30-仙人ダム(高熱隋道)12:30-下ノ廊下某所15:10
 
 昨夜はけっこう冷え込んだ。
 
 で、朝起きると雲一つない快晴。
 前半二日間のスッキリしない天気のツケを一気に取り戻した気分。
 周辺には霜が降り、テントの外側もうっすらと凍りついていた。

  池ノ平小屋のテン場

  朝の剱

 朝食を済ませ、出発前に散歩がてらカメラだけ持って下の平ノ池まで行ってみる。
 
 ちょうど剣に陽が当たり始め、平ノ池から見る裏剱は実に見事。
 既に大判カメラを構えたセミプロのような人がいて、この人の写真に関するウンチクが興味深かった。
 
 曰く
 ・風景写真はシャッタースピード1秒。絞りに絞って画面全体にピントを合わせる。黒澤明の映画もそうで画面全体にピントが合っている。だから葉っぱ一枚が風で揺れてもダメ。

 ・裏剣といえば仙人池から撮るのが多いが、もはやカレンダーや絵はがきになっているプロの作品には勝てない。

  いかに違う場所から違うアングルで撮るかが大事。・・・云々。

 ここまでくると単なる写真というよりもはや勝負の世界である。

  平ノ池からの裏剱

 
さんざん写真を取りまくった後、私もようやく重い腰を上げて出発。
 池ノ平小屋のテン場を後にするが、歩きながらもついつい背後の剣が気になってしまう。

 

  

 池ノ平から仙人池ヒュッテまでは木道が続くなだらかな道で何とも気持ちいい。

 仙人池でまた写真タイム。
 池に映る紅葉の「逆さ裏剣」は、やはり文句なしの美しさ!
 この歳になるとちょっとやそっとの景色では感動しなくなるが、この風景は一度は絶対見ておくべきだと思う。


 It's a perfect day!

 次のポイント、仙人温泉小屋へは沢沿いにどんどん下っていく。ここで、ようやく剣が見えなくなる。
 下っていくにつれ、沢の対岸の山腹に湯煙が二つ見えてくる。やがて仙人温泉小屋着。

  仙人温泉の湯煙

 先が長いのでここはスルーし、先ほどの湯煙のそばをかすめてひたすらガーッと下っていく。
 そろそろ足もヨレてきて、ヒザに堪える長い下りだ。

 やがて沢を横切る橋に到着。
 長い下りから解放されて大勢の中高年登山者が休んでいた。
 
 さらに沢沿いの水平トラバース道を進んでいくと上から見えていた仙人ダムに到着。
 朝方はダウンジャケットを着ていても寒かったが、ここまで下ってくるとさすがに秋の陽が暖かい。

  仙人ダム

 今日はこれから下ノ廊下を行けるところまで行くつもりだが、その前に阿曽原小屋の露天風呂に入っていきたい。
 で、そちらへ向かおうとしたのだが、初めてということもあって少し迷ってしまった。
 持参した登山地図が10年前のものでルートが変わっていることもあるが、ダムの脇から関西電力の建物内に入っていく通路は辺りが暗くて初見だとまず迷うだろう。

 そして、ここがあの「高熱隧道」であり、熱風の吹きつける削ったままの坑道は工事関係者の苦闘が感じられ迫力がある。
 sudoさんに倣って私も吉村昭氏の「高熱隧道」を読んだが、実物を見て、改めてまた読み返したくなった。

  高熱隧道

 隧道は見ておいてよかったが、ダムから阿曾原小屋まで一時間ほどかかると聞き、時間が無いので今回は露天風呂は諦め下ノ廊下へ向かって歩き出す。

  下ノ廊下へ

 高度感のある東谷吊橋を渡ると、いよいよ水平歩道の始まりとなる。
 この時間、南下コースを行くのは自分一人だが、向こう側から北上してくるパーティーはポツポツいる。

 コの字型にくりぬいた水平歩道や眼下に流れる黒部川の景観はなかなかワイルドで、ヒマラヤのトレッキングでもしているような気分。

  
 (左)東谷吊橋を渡る。                      (右)コの字にくりぬかれた水平歩道

 本日は、下ノ廊下の某所でビバーク。
 指定地以外はテント禁止なのかもしれないが、ゴミは残さないので勘弁ね。

 熊の出没に怯えつつ、その夜は黒部のど真ん中で眠る。

   
 十字峡

写真集[池ノ平~仙人ダム(高熱隧道)]


秋の剱岳・源次郎尾根~北方稜線~下ノ廊下 #2

2012年10月07日 | バリエーション・ルート

二日目
天候:一時、のちから
行程:出発5:00-源次郎尾根取付6:10-Ⅱ峰懸垂地点-剱本峰10:20~40-三ノ窓13:10-池ノ平小屋16:10(テント泊)

 朝4時起床。

 幸い雨は止んでいるが、星はまったく見えない。
 ちょっと迷うが、ここでグズグズしていてもしかたないので出発を決める。

 本日は長丁場。
 まず源次郎尾根だが、ヒロケン氏の「チャレンジ!アルパイン~」によれば無雪期で6時間。
 これに真砂沢から取付まで1時間、剱本峰から三ノ窓まで3時間、さらに小窓雪渓を経由して池ノ平小屋まで3時間を見込むと計13時間にもなってしまう
 途中、三ノ窓ビバークも考え水2.5Lを加えたが、これで初日より荷物は重くなってしまった。
 こんなで本当に行けるのか?

 既に周りのテントはポツポツ明かりがついているが、天気がはっきりしないので皆、しばらく出発を見合わせている様子。
 そんな中、ヘッデンを点けて剣沢の左岸を詰めていく。

 源次郎尾根の下部は尾根ルートとルンゼ・ルートがあり、今回は一人なので簡単な尾根ルートとする。
 長次郎谷の出合を過ぎ、さらに少し行くと白い特徴のある大岩があり、そこが取付の目印と聞いていた。
 見ると、右手の草付き斜面にくっきりと踏跡が確認できた。

  源次郎尾根取付
 
 草付きを登っていくと、上が狭い棚になっていて、ここでギアを装着。
 とりあえず今日は私が源次郎一番乗り?のようで、下を見ると剣沢小屋方面からやってきた三人パーティーが追いついてきた。

 すぐに出だしの壁。
 古い残置ロープが垂れ下がっており、荷物が重いのでこれを使ってゴボウで上がろうとしたが、ロープが伸びてしまってかえって登り辛い。
 しかたなく手頃なカチとガバを拾って、自力で越える。
 他の記録ではⅣ級ぐらいと書かれたりしているが、Ⅲ+ぐらいか。

 そこからしばらく木登り・・・というより、ルートは木々で囲まれたトンネルのようになっていて、ここを潜り抜けていく。

 その後、ちょっと開けたテラスに出て、右側はルンゼ・ルートに合流するようトラバースの踏跡が続いていた。
 木登りもかったるいので右側のトラバース道を選ぶが、これが大失敗!

 最初のうちこそ良かったが、やがてV字状のルンゼに突き当たり、ここが悪そうだったため、再び左手の尾根ルートに合流するようラインを選んだのだが、この斜面の脆さは相当なもの。

 一歩踏み出すごとに足元のザレと一緒に周りの岩が転がり出し、その恐ろしさは、あのおぞましい丹沢・西沢本棚沢の大滝を思い出してしまったほど。(それでも、あの時はフォローだったが・・・。)

 もし後続パーティーが同じラインを辿ってきたら、落石でタダでは済まなかっただろう。
 幸い彼らは尾根通しに来てくれたので助かった。
 これから登ろうとする人には、無雪期のルンゼ・ルートはやめた方がいいとハッキリ言っておきたい。

  激悪ルンゼ

 何とか切り抜けて尾根に合流。
 下部の樹林帯から抜けると、眼前にスラブ状の緩い壁が広がる。
 フリクションを効かして適当に登っていこうとしたが、安易に取り付くと結構手強い。
 「こっちに踏跡ありますよー。」と後続Pの人が声を掛けてくれ、軌道修正。
 相変わらずのルート・ファインディングの悪さを反省する。

  
 途中で見たブロッケン

 三人組に先を譲り、そのままリッジ状を進むが、その先でまたブッシュに阻まれ方向が分かれる。
 彼らが左側の悪そうなラインを選んだのに対し、私は右側の草付きの中の踏跡を行く。今度はこちらが正解で再び彼らの前に出てⅠ峰直下に出た。

   Ⅰ峰からⅡ峰への登り返し

 すると前方から人の声。見ると岩の向こうに男女ペアの二人組が先行していた。
 一体いつ取り付いたのだろう。
 
 Ⅰ峰のクライムダウンは簡単、Ⅱ峰への登り返しも見た目しんどそうだが、取り付いてみるとそうでもなかった。
 先行の二人組に追いつき聞いてみると、彼らは前夜、源次郎尾根の途中でビバークしたとのこと。どおりで早いわけだ。

 先を譲ってもらい、そのままゴジラの背のような水平リッジを辿っていくと、その突端がⅡ峰の懸垂地点。
 太い鉄杭と極太の鎖、それに多くの残置スリングが掛かっている。
 一番先にロープをセットさせてもらったが、中間に結び目ができてしまい、後続のお二人さんを少し待たせてしまった。・・・すみません

 下降は50mの折り返しでピッタリ。最後ちょっとクライムダウンがあるが、問題ない。
 その他にも中間支点があるので、場合によっては30m一本でも何とかなるかもしれない。

  Ⅱ峰からの懸垂下降

 二人組のうち男性の方は横浜在住で、私が「現場監督」の名を出すと「あっ、知ってます!ネットで見たことありますよー。」と言われる。いやーそれはそれは。嬉しいですねぇ。

 Ⅱ峰を懸垂で降りると、あとは本峰まで簡単な登り。
 トポでは源次郎尾根は一本の真っ直ぐなリッジのように書いてあるが実際には幅広く、右から左へ斜上するように登っていく。
 そのまま登山者で賑わう頂上に到着。

  五回目の剱頂上

 取付からの所要タイム、4時間10分。
 50過ぎのオヤジが一人でテント、シュラフ、三日分の食料・・と、家財道具一式担いでこのタイムならまずまずでしょう。
 当初、6時間を見込んでいたが、これでいくらか「貯金」ができた。

 剱は今回で五回目の登頂。(これまでは夏に八ツ峰と剱尾根から、春は八ツ峰と小窓尾根からと各一回ずつ)
 残念ながらガスに包まれ展望は利かない。

 いつものように記念撮影をするが、ふと祠が無いことに気付く。
 二ヶ月前まではあったのに、一体どうしたのだろう。
 積雪前に一時解体でもしたのか?それともカミナリが落ちて焼けてしまったのか?
 ・・・不思議である。
(追記:後で調べてみたところ、祠は老朽化によりヘリで降ろされ下界で修繕。2013年6月頃に復旧するとのことです。)

 頂上で少し休んでから北方稜線に向け、歩き出す。
 ほとんどの人が室堂からの往復なので、ここからまた静かな歩きとなる。

 今にも降りそうな空だが、そのうち白いモノがチラつき始めた。
 うーん、北方稜線で雪は勘弁してほしいぞ。まぁ何度か歩いているので、それほど不安は無いが・・・。

 途中でガタイのいい三人組と擦れ違う。
 富山県警山岳警備隊の人たちで「北方稜線は経験ありますか?」と職務質問されたので、「はーい、大丈夫でーす。」と答えておいた。

 しかし、ガスに巻かれるとやはり北方稜線はわかりにくい。
 つい二ヶ月前に歩いているはずなのに、また1~2回道を間違えてしまった。
 本峰~長次郎ノ頭の間には7mほどの壁があるが、八ツ峰側から登ってくる場合は補助ロープがあった方がいいかも。本峰から下っていく場合はⅢ+程度の登りとなる。

 池ノ谷乗越への下りも相変わらず岩が脆くてイヤらしい。下に人がいることが多く、ここは特に落石厳禁
 乗越への下りは、上から見て右寄りの方が比較的岩がシッカリしていると思う。

 池ノ谷乗越はすっかり雪が解け、我々が二ヶ月前にテントを張った場所は今ではまったく設営不能。

 さらに悪名高き池ノ谷ガリーを落石を起こさないよう三ノ窓へ下り、一息入れた後、今度は小窓王への急な登り。北方稜線の核心はここまで。

  三ノ窓から小窓王への登り返し

 小窓王の登りも回りがガスに包まれていると何とも恐ろしげな壁に見え、こんなとこロープ無しで登れるの?って印象だが、実際取り付いてみるとちょっと急なザレた斜面で特に問題無し。
 この辺りから同じ方向へ向かう人が二人いて、何となく三人で池ノ平小屋まで共に行動するようになる。

 小窓王からはsudoさんのHPでの予習どおり、30mほど尾根を進むと尾根通しと小窓雪渓経由のトラバース道との分岐となる。
 
 最初、尾根通しで行くことを考えていたのが、同行の一人が「尾根通しはヤブがひどくて時間がかかる」と言うので素直にトラバースを選んだ。

  小窓雪渓へ

 トラバースの道はところどころ涸れ沢のような所を降りていく。
 このままトラバースで池ノ平に着いてしまいそうな感じだが、馬の背状の「小窓」から踏跡は右手の急な草滑りの斜面へ急降下。そのまま小窓雪渓に降り立つ。

 雪渓の傾斜は緩く、表面は適度にデコボコしているので、ストックだけ使ってアイゼンは履かなかった。

 雪渓から再び左岸の斜面に上がる所がガスっているとわかりにくいが、視界が利く時にチェックできたので助かった。(雪渓の左岸、岩がボコボコボコと3つぐらい突き出ている所がポイント)
 
 あとは池ノ平までほんのわずかと思ったが、途中で雨も降ってきて、さらに一時間ほどかかってしまう。

  池ノ平小屋

 雨にも濡れ、けっこう疲れたので、今夜は少し贅沢して小屋で素泊まりでもいいかなと思ったが、既に小屋は満杯。
 素泊まり料金も6,000円というので、やっぱりおとなしくテント(一張り600円)にする。

 「今日はどちらから?」と受付で聞かれたので「源次郎から。」と言うと、「えっ!一人で?それはハードだねぇ!」とお褒めの言葉をいただく。(まぁ「ダイ・ハード」好きですから・・・?)

 その夜はけっこう雨が降り、また夜半になってから随分冷え込んだ。
 小屋の人は「明日は大丈夫!晴れるよ。」と言うが、果たして・・・?

写真集[剱岳・源次郎尾根~北方稜線]


秋の剱岳・源次郎尾根~北方稜線~下ノ廊下 #1

2012年10月06日 | バリエーション・ルート

2012年10月6日(土)~9日(火) 単独

 今回のプランはそもそも前年に企画したものだが、その時は直前に剱が予想外の積雪となってしまい、やむなく後立山へ変更。
 三泊四日で扇沢から栂池まで歩いたのだが、もし当初の計画を縮小して下ノ廊下へ行ってたら大変な目に遭っていただろう。
 (2011年のこの時期、群発地震による土砂崩れで下ノ廊下で死傷事故が発生、ルートも崩壊となった。)

 で、あれから一年。
 改めて源次郎尾根から北方稜線、そして下ノ廊下と剱をぐるりと回る周遊コースに一人でトライすることにした。
 
 今回ももちろん軽量化に努めたが、ザックの重さは水無しで約15kg。
 源次郎尾根で懸垂下降があるので50mロープは必要。あとはテント、シュラフ、四日分の食料・・・を入れると切り詰めてもこのぐらいにはなってしまう。(紅葉の時期なのでカメラもミラーレス一眼を持っていきたいし・・・)
 なるべくコンパクトにしようと最初これらを無理やり36Lザックにパッキングしたが、さすがに無理があり、最終的に50Lザックに変更。
 今年は暖かくまだ雪が降りそうにないので足回りはファイブテンのアプローチ・シューズ(Camp4)とし、念のため、軽アイゼンも持つことにした。

 けっこう大きな荷物になってしまったが、まぁ何とかなるか。

一日目
天候:一時、夜
行程:黒部ダム7:10-内蔵ノ助平10:00-ハシゴ谷乗越12:00-真砂沢ロッジ13:10

 前夜、新宿から高速バス「さわやか信州号」で出発。
 GWや梅雨明け直後に較べると、都庁下駐車場の賑わいも割と静か。

 未明に扇沢着。
 空は晴れてまずまず。昨年に較べると今年は暖かく、周りの山々にも新雪は無い。
 扇沢は紅葉目当ての登山者がマイカーで押し寄せ、早くも長蛇の列。
 6:30の始発トロリーバスでまずは起点の黒部ダムへ。

  
 (左)賑わう扇沢                          (右)トロリーバスと山ガール

 本日の行程は真砂沢ロッジまでで、つい二ヶ月半前にjuqcho氏と剱尾根の際に歩いたばかり。
 その時はダム下へ向かうパーティーはほんの僅かだったが、この時期、下ノ廊下は「期間限定」なだけにかなりの人だ。

 まずは黒部の川床まで下って、木橋を渡って左岸の道を行く。
 扇沢では晴れていたのに、ここまで来るとどんより曇っていて気分は冴えない。

 

 一時間ほど歩いて下ノ廊下との分岐。
 ほとんどの人たちが右手の下ノ廊下へ入っていった。

 一段高くなった丸山東壁のベースにはテントが一張り、さらに先に進んだ河原にも一張りあった。
 見上げると緑ルートに1パーティー。ちょうど第一ハングを越えた辺りに取り付いている。
 私が登ったのはもう4年前のこと。

  
 丸山東壁

 とりあえず今日の行程は短いので、写真など撮りながらのんびり行く。
 少し前に歩いているため距離感覚が残っていて、ハシゴ谷乗越の登りも真砂沢への下りもそれほどキツく感じなかった。

 

  内蔵助平

  紅葉の剱

 真砂沢の渡渉点は赤布で誘導されていたが、何だかハッキリせず、結局この前と同じ地点を飛び石伝いに渡る。
 
 そこから一登りで真砂沢ロッジに到着。
 時刻は早く、できればもっと歩を進めたかったが、源次郎尾根の取付付近で良いテン場が期待できないのでおとなしく今日はここまでとする。

 受付に向かうと小屋番のおやじさんから「おっ、〇〇さん・・だよね!」と声を掛けられる。
 誰か山の知り合いと間違えているようだが、しらばっくれて「どーも、お久しぶり。」などと言ったらビールぐらい奢ってくれたかもしれない。(な、わけないか。)

 昼間、一度は陽射しが見えたものの午後になるとますますどんより。
 小屋番氏によると「今夜は雨、明日は回復する。」とのこと。
 まぁ、今悩んでもしかたがない。テントを張って持参したワインを飲んだら3時間も昼寝してしまった。

  真砂沢のテン場

 夜になると予想どおり小雨が降り始める。晴れ男のはずなのにナンだかなぁ。