KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

晩秋の裏岩手縦走・八幡平-乳頭温泉

2017年10月29日 | ロングトレイル

日程:2017年10月27日(金)~29日(日)二泊三日 単独

 当初、一日休みを取って三日間で八丈島へ行くつもりだったが、直前になってまたしても台風発生。
 今年は週末になると、ことごとく天気が悪く嫌になる。
 関東甲信越は雨ということで、しからばと東北遠征を企てた。
 岩手はつい三か月ほど前に葛根田川~大深沢で行ったばかり。次回はゆったりした東北の山歩きと考えていたのだが、まさかこんなに早く再訪するとは思わなかった。
 
 今回も往きは高速深夜バス。
 前日の木曜夜に横浜を出て、朝6時ジャストに盛岡着。料金は4,400円。相変わらず安い!
 
一日目
行程:八幡平バス停11:30-八幡平頂上11:50-畚(もっこ)岳12:50-諸桧(もろび)岳13:40-嶮岨(けんそ)森14:40-大深山荘15:15
天候:曇のち晴れ
 盛岡発、八幡平頂上往きの始発バスはこの時期、9:40ということで3時間以上、駅の待合室で時間を潰す。
 まぁ、それでも苦にもならず文庫本など読んでのんびり構える。
 昨日までの予報では日曜まで天気はもちそうだったが、やはり台風は着々とこちらへ進んでいるようで三日目は雨となりそう。ちょっと憂鬱だ。
 七月の大深沢の一件以来、山の天気には少々過敏になっている。まぁ天気が崩れたら、途中で下山すればいいか。
 
 その後、二時間近くバスに揺られて八幡平頂上へ。
 岩手山の上部は既にうっすら冠雪している。紅葉もピークを過ぎてしまったようで、曇り空のせいかいまいち山へ向かう高揚感が湧かない。
 平日のせいか八幡平へ向かうこのバスも自分のほか途中から乗ってきた女性ハイカー二人だけだ。
 
 やがて八幡平頂上バス停着。
 ここは岩手県と秋田県の丁度県境。つい最近降ったようで路肩には雪がいくらか残っている。
 しかし風が無いせいか、それほど寒くない。道も少し白くなった所はあるが、持ってきた軽アイゼンは使わなくて済みそうだ。
 とりあえず最初のピーク、八幡平の頂上(1,613m)へ。
 ザックを道の脇の草むらへ隠して、空荷で遊歩道を行く。すると、20分ほどで着いてしまった。一応、ここも百名山。まったく意識してなかったが、新たにカウントを一つゲット。

 
 
 しかし、頂上には展望台となるやぐらが組まれているおり、正直何だかなぁといった感じ。
 おそらくここは最も簡単に登れる百名山ではないだろうか。
 もちろん深田久弥先生の選定基準はピークだけでなく、山懐も含めて広い範囲で八幡平という山を評価し捉えているのだろうが、うーん、それにしてもといった感じである。
 
 先ほどのバス停まで戻り、気を取り直していよいよ縦走路へ。
 車道を少し歩いて畚岳への登山道に入る。
 全体的にどこまでものっぺりした裏岩手の山にあって、畚岳はその名のとおり多少モッコリしている。
 登山者はほとんどいないが、それでも途中で外国人カップルと中高年のグループと擦れ違う。

 

 畚岳頂上。やや曇りがちだが展望は良い。
 これから向かう秋田駒ヶ岳が遥か遠くに見える。
 地図上の直線距離で約25km。これから行く裏岩手縦走路はかなり曲がりくねっているので実際には60kmぐらいか。
 感覚としては奥秩父全山縦走(瑞牆山-雲取山)に近い。
 ただ、高低差は奥秩父の比ではなく、あくまで滑らか。
 途中、池塘や名も無い池を見ながら歩を進める。

 
 
 
険阻森はその名のとおりピークが少しだけ険しくなっている。
 向かって左側(東側)が切れ落ち、眼下には鏡沼が見える。
 ここらの池(沼)には当然普通に歩いていける道は無いようで自然のまま。そして八幡平の地図を広げてみるとこういった池が大小数え切れないほどある。
 時間があればぜひ行ってみたいものだ。
 
 やがて何となく見覚えがある道を通って、大深山荘着。
 三か月前、びしょ濡れになってこの小屋にたどり着いてホッとしたのを昨日のことのように思い出す。
 時刻も早くまだまだ先に進みたかったが、次の八瀬森山荘までは登山地図のコースタイムで3時間以上。
 一応、ドーム型のシェルターも持ってきていて途中で泊まることもできるが、この周辺は熊が非常に多い。
 やはりここは無理せず、綺麗な大深山荘を使わせていただいた方が得策である。
 このエリアの「山荘」は全て無人の避難小屋だが関東甲信越のそれと較べるととても綺麗で立派。もちろん無料で、近くには水場もあり何ともありがたい。

 
 
 この日は先客が一人。地元盛岡の男性で自分と同年配。いろいろこの辺の山の情報を教えてもらう。
 家族がいるが時々こうして一人で「家出」するそうで、特にガツガツ歩くわけではなく、明日もここらでのんびり過ごし、この小屋でもう一泊するそうだ。
 そんな山登りも、この木の香りがする清潔な小屋ならしてみたい。

二日目 
行程:大深山荘6:10-八瀬森(やせもり)山荘8:50-曲崎山10:30-大白森山荘12:30-大白森13:00~10-田代平(たしろびら)山荘15:20
行程:晴のち曇
 夜半は冷えるかなと思ったが、持ってきたウェアを全部着て3シーズンシュラフで十分だった。
 餅入り棒ラーメンの朝食を終え、盛岡の人に見送ってもらい、出発。
 今日は長丁場だ。

 
 
 三か月前も来た大深岳に登り、その先の分岐を八瀬森方面へ。
 盛岡の人が言うには、分岐から先は笹のブッシュを刈っていない所があり、わかりにくいとか。
 確かにそうだったが、まぁ沢登りの詰めの藪漕ぎに較べれば大したことはない。
 それでも時折、完全に道を塞いでいる倒木がいくつかあった。
 そんな道を枝を掻き分け進んでいくと、ぬかるんだ地面にはくっきりとまだ新しい熊の足跡。
 今回はスタートの八幡平から常に熊鈴を鳴らして進んだが、ここらは完全に熊のテリトリーだ。

 

 両脇を丈のある熊笹の道をひたすら進み、次第に飽きてくるが、時折視界が開けてこれまで歩いてきた道程、そして目指す秋田駒が次第に近づいてくるのが励みになる。
 今の時期、高山植物も枯れ、乾いた色合いの風景の中を黙々と進む。

 
 
 やがて、またまた三か月前に訪れた葛根田川源流の八瀬森山荘に着。
 あの時は湿原に黄色いニッコウキスゲが咲き乱れ、別天地のようだったが、今は枯れすすきが一面被っており、寂しい限りだ。
 
 
 
 小屋で小休止した後、次のピーク曲崎山へ。
 曲崎山への登りは、おそらくこの裏岩手縦走路の中で一番の急登かもしれない。
 しかし、それも北アルプスのように途中何度も立ち止まって休憩するような苦しい登りではなく、何となく辛抱して歩いているうちにいつの間にか頂上へたどり着いてしまう、そんな感じだ。
 
 
 
 曲崎山からの下りでは珍しく年配のトレイルランナーに会った。
 高低差がそれほど無いので確かに走りやすいだろうが、悪く言えば単調。
 時折視界が開けるが、見渡す山はどれものっぺりしていては、ちょっと刺激が少ない。肉体的には楽かもしれないが、精神的にはきつそうなトレイルである。
 
 森と笹薮の道を黙々と歩き続け、ようやく次の小屋「大白森山荘」へ。
 ここで小休止。チョロチョロと流れる小沢で水を補給していると、熊鈴の音が近づいてきた。
 こちらもホイッスルで応えると、妙齢の女性が一人。
 話をすると神戸から夜行バスでやってきて、今朝松川温泉を出発。自分と同じコースをたどって来たらしいが、めちゃくちゃ速い!
 こちらはもう歳だし、二年前に左膝を故障してからは山でもそんなに急がなくなったが、それでも登山地図のコースタイムはそれなりに短縮している方だ。
 しかし、彼女のスピードは半端じゃない。見ると最近流行りの軽量ザックにWストックというウルトラライト・スタイルだが、只者ではないなと感じた。
 
 本日の行程の2/3を終え、宿泊予定の田代平山荘まで、コースタイムで約4時間半。まだそんなにあるのか。長い・・・。
 「お先に」と言って先へ進む。

 
 
 この先、大白森周辺は今回の縦走路のハイライト。
 広大な頂上湿原がベージュ色の草原となって広がる。
 今、この湿原にいるのは自分一人。そしてこの何とも言えない広々とした風景の中にいて、何となくデジャヴを感じたが、よくよく考えるとそれは三年前に行ったアフリカだった。
 そう、この広大な枯草の湿原は、まさにケニアのサバンナだ。
 おそらく夏はまったく違った爽やかな湿原なのだろうが、今はその辺の草陰から今にもヌーやバッファローの群れが出てきそうな雰囲気があった。 
 
 遥か遠くに見えていた秋田駒もだいぶ近づいてきたが、それでもまだまだ遠く感じる。
 岩手から秋田へ入って道も笹薮からブナ林に変わってきたが、単調さは相変わらず。 
 明日は天気も下り坂で今日のうちに下山し、夜行バスで一日早く帰ってしまうとという手もあったが、せっかくここまで来たので、予定どおり田代平へ向かう。
 途中で案の定、先ほどの健脚女性に抜かれ、最後の登りはヘロヘロになって田代平山荘着。

 
 
 この日の山荘泊は二人だけ。二階のコの字型スペースに離れてシュラフを広げる。
 いろいろ話をしたが、神戸から東北の山へ両夜行バスを使ってくるなんて本当に元気があるなと感心した。

三日目
行程:田代平山荘6:00-乳頭山6:40~50-笊森(ざるもり)山8:00-湯森山9:05-蟹場(がにば)温泉10:55
行程:曇のち雨
 夜半少し風が強くて心配だったが、朝にはやんだ。
 雨が強かったらこのまま最短距離で乳頭温泉へ下山するつもりだったが、それほどではないので行ける所まで当初の予定通り進むことにする。

 
 
 後から行くという彼女より先に出て、まずは乳頭山へ。
 西側から見るとわずかに盛り上がった貧乳だが、頂上付近は岩に覆われ、反対の東側はちょっとした断崖となっていて荒々しい。
 とりあえず視界は利いたが、どんよりと曇って景色はいまいち。
 ただ、この辺りは池塘があちこちに点在し、晴れていればさぞかし美しいトレイルだろうと思った。

 
 
 乳頭山の頂上付近で写真など撮っているうちに、その先の下りで、またまた先の健脚女性に抜かされる。
 そしてあっという間に見えなくなった。特段走っているわけでもないのに、こんなに歩くのが速い女性は初めて見た。
 この先、後ろからアオられることもないので、一人のんびり小雨の中をマイペースで行く。
 前半の単調なトレイルに較べて、この後半の乳頭山から秋田駒への道は晴れていればさぞかし美しい風景が広がるだろう。しかし、あいにくの天気で残念だ。
 秋田駒は〇十年前、高校生の時に家族旅行で来たことがあるが、ここはぜひもう一度季節を選んで来たいと思う。

 
 
 笊森山、湯森山と進んで、できれば計画どおり秋田駒まで進みたかったが、ここまで来ていよいよ風雨が強まってきて気持ちが折れた。
 最後は笹森コースを下って乳頭温泉郷へ下山。
 
 乳頭温泉郷はいくつもの温泉場から成り、今回はその味のあるネーミングに惹かれて「蟹場温泉」へ。
 地図の文字が小さくて、これまでてっきり「蟹湯」だと思っていたが、「蟹場」が正解。しかも読み方も「かにば」でなく「がにば」が正しい。
 何でも昔、沢蟹が沢山いた場所らしい。

 
 母屋から50m離れた外の露天は混浴。
 その後、風情のある内風呂にも入ったが、まぁまぁ。料金は日帰り入浴600円。「秘湯度」は思ったほどではなかったが。
 
 今回はちょっと季節外れで景色も寂しく、本来の東北の山の良さを感じるには不十分な気がしたが、下山して改めて地図を見返すとけっこう歩いたなという満足感は残った。
 近いうちに次回は岩手山、そして岩魚と温泉を求めて東北の山はこれからも再訪したい。

2017GW・谷川-巻機 縦走

2017年05月05日 | ロングトレイル

日程:2017年5月3日~5日
行動:単独

 残雪期の上越・奥利根縦走は以前から興味があって、昨年は一気に谷川から巻機、平ケ岳を回って尾瀬まで行けないかと大それた計画を立てたが、初日にまさかの吹雪となり、あえなく敗退。
 結局、一ノ倉岳までの往復で終わってしまった。
 そして今回。休みの関係もあって一気に縦走することは無理と判断。計画を分割することにし、まずは手堅く三日間で谷川岳から巻機山まで行くことにした。
 このコース、無雪期は藪に覆われているため残雪期ならではの人気ルートとなっている。
 地形からすると谷川岳より白毛門経由の方が自然で効率的だが、何となく百名山から百名山へ繋げたくてこのコースにしてみた。

5/3 天候:
天神峠11:00-トマの耳13:15-茂倉岳15:25-武能岳16:55-蓬峠17:30

 朝、横浜を発ち、高崎、水上経由で土合まで。
 久々の土合駅の階段だが、それほどキツいとは感じなかった。二泊三日で荷物はそれなりにあるが、やはりロープやガチャ類がいらない分、楽だ。
 登山と関係なさそうな鉄道ファンで賑わっている。

 


 駅周辺は雪解けが進み、春というより初夏の様相。雪があまり多くても大変だが、少ないとこのコースは藪が出てくるのでちょっと心配である。
 ロープウェイに乗って天神平のスキー場まで一気に上がる。
 昨年も出だしは天神尾根で楽するつもりだったが、強風のためロープウェイが運行中止となってしまい、しかたなく西黒尾根を登ったことを思い出す。

 天神平に上がると、豊富な残雪と明るい陽射しで思わずクラクラとしてしまった。
 スノボや雪遊びの観光客を尻目に、右手の天神尾根に向かって歩き出す。
 雪は固くもなく、かといってグズグズでもなく、アイゼンは着けずにキックステップで登っていく。
 途中の熊穴沢避難小屋は屋根だけ残してほとんど雪に埋まっていた。

 

 頂上から降りてくる登山者に上の様子を伺うと、予想に反してそれほど混んでいないという。
 広いドーム状の雪の斜面を登り詰めると、やがて肩の小屋、そして最初のピークであるトマの耳に到着。
 たしかにGW初日にしては、かなり静かだ。
 西の方、オジカ沢ノ頭や万太郎山方面はかなり夏道が出ている。

 一休みしてから縦走開始。
 オキの耳から先の岩場は鎖が出ていた。

 
一ノ倉岳では昨年は見かけた避難小屋が、今回はまだすっかり雪の中に埋もれていて、ちょっと驚いた。
 この先は他の登山者を見かけず、トレースはあるものの一人歩きとなる。
 人がいない分、一ノ倉岳から武能岳間は静かで気持ちよく、残雪の稜線を独り占めしているような気分になった。

 
 
 登り始めが遅かったせいで、そろそろ陽が傾いてきた。
 この日は頑張って蓬峠まで。武能岳から下りは夏道が出ていて時間を稼げたので助かった。
 蓬峠には既にテントが二張。どちらも単独行の人で、一人は二日かけて白毛門回りで来たらしい。
 この時期、ヒュッテはまだ閉まっていて、小屋周りに適当にテントを張って静かな夜を迎えた。

 

5/4 天候:風やや強し
起床5:00-蓬峠(出発)6:50-七ツ小屋山7:35-清水峠8:15-ジャンクション・ピーク10:15~30-檜倉山13:10~20-柄沢山15:10-テン場16:00

 昨日の疲れもあって、起きた時にはもう陽が昇ってしまっていた。
 朝食はマルタイラーメン。いつも水をケチって失敗しがちだが、昨日のうちに雪解け水を豊富に手に入れておいたので、かなり上手くできた。
 テントを撤収し、まずは七ツ小屋山へ向かう。

 
 
 大源太山への分岐を右に取り、清水峠へ。大きな三角屋根の建物は東電の管理用宿舎で、一般登山者用ではない。
 そばに小さな「白崩避難小屋」がある。こちらは小さいが、谷川岳周辺にあるカマボコ型のブリキ小屋に較べてけっこう綺麗に整備されていた。
 ここからジャンクション・ピークへの登りとなるが、この2時間の登りがなかなかキツい。
 ほとんど雪面だが、ほんの少しだけ藪の中を進んだり、ちょっとしたスノー・リッジを進んでいく。
 
 ようやくジャンクションに到着。一ノ倉岳から先、蓬峠で幕営していた二人以外は一切見かけなかったが、ここまで来るとやはり白毛門から縦走、あるいは反対側の巻機山からの縦走者の姿がチラホラ見受けられる。
 そして、この辺りから残雪量もぐっと増えてくる。
 
 大烏帽子への登りから檜倉山へ。
 檜倉山は、平坦なピークで残雪期は快適なテン場となる。
 よほどここでテントを張ってのんびりしてしまおうかと考えたが、この先、大きな柄沢山が控えている。
 時間もまだ早いし、明日の下山を考えるとやはり今日中に柄沢山は越えておきたい。
 
 しかし、この山域は北アなどの人気コースと違って、本当に静かだ。
 行き交う人もほとんど単独行で、それもポツポツと見かけるだけ。
 自分もイイ歳になって、クライミングだ、アルパインだと言うよりもこういった「山旅」の方がしっくり来るようになってきた。
 元々は1970年代のバックパッキングに憧れて山を始めたわけで、そういう意味ではこのエリアはあの頃の「原点」を感じさせてくれる。

 
 
 柄沢山は南側からだと見栄えがしていい山だ。
 途中にクレバスがあったり特に最後の登りは白い斜面が続き、気分としては疑似モンブランといったところ。
 
 山頂を越し、少し進んだところで先行していた単独の人に追い付く。
 途中、何人か追い抜いたが、この人にだけは追い付けなかった。
 話をすると、どうやら地元の山岳会の方で、先週は越後駒に登ったらしい。山馴れしていて、どおりで強いと思った。
 時間もちょうどいいし、テン場に手頃な場所だ。後からもう一人到着して、少し間隔を置いて三張が張られた。
 辺りは360度、上越、奥利根の山々が連なる。
 平ケ岳、尾瀬方面はもちろん、昨日登ってきた谷川岳もここからだとけっこう遠くに見え、けっこう歩いたなと感じる。


 
 持ってきたバーボンを飲みながら、このGW前半に突然、沢で一人逝ってしまった友人タケちゃんを想う。
 沢専門の彼だったが、GWは鹿島槍東尾根や前穂北尾根、北鎌尾根や剱の八ツ峰やなど付き合ってくれた。帰ったら葬儀に参列させてもらうが、まだ信じられない。

 

5/5 天候:
テン場6:10-米子頭山-巻機本峰10:00-清水12:00

 快適なテン場だったが、昨夜はなぜか結露がひどく眠りはイマイチだった。
 しかし、日の出の景色は素晴らしく、気分は悪くない。


 
 巻機山のなだらかな山容が近づき、いよいよこの山旅も終わり。
 先週の小川山で傷だらけのくるぶしが靴に擦れて痛いので早く下りたいと思う反面、この雄大な雪の稜線にいつまでも留まっていたいとも思う。




 
 米子頭山へのルートではスノー・ブロックが崩壊しそうな所や45度の雪壁などもあって、この縦走の中では刺激のあるアクセントとなった。

 
 
 巻機山手前の平坦な所で、しばし奥利根の山々を眺めながら一休み。来年の今頃はどうしているかわからないが、越後三山から平ケ岳、そして尾瀬は何年越しでも繋げてみたい。
 
 そして巻機本峰へ到着。
 以前、米子沢を遡行して以来だから、何年ぶりか。山頂は土が出ていた。
 下山は井戸尾根。日帰り軽装の登山者が続々と登ってくる。

 雪の状態は良く、途中300mほどシリセードも楽しめた。
 しかし気持ちが下界に行ってしまうと、この尾根も意外と長い。最後はちょっとヘロヘロ気味になりつつも、無事に清水の村に到着。
 バス停手前で、白毛門からそれぞれ単独で縦走してきたというお二人と出会い、タクシー相乗りで越後湯沢まで。

 
 
 最近は温暖化の影響で、このコースはGWでは遅いとも言われるが、今回の雪:夏道:藪の比率は7:2:1といったところ。
 結局、持参したアイゼンは一回も使わなかったが、これについては個人差があると思う。
 今回は天候に恵まれ快適な山旅だったが、途中には雪庇やクレバスがあったり、また天候が荒れてもジャンクションから巻機山までは途中でエスケープできない。必ずしも安心できるルートではないのでグループで歩いた方がいいのかもしれないが、やはりある程度経験が積んでから一人で静かに歩くのがいい。
 北アなどの喧騒に辟易している向きにはお薦めの、GWならではの好いコースだった。

奥秩父、一泊二日ならず

2013年11月04日 | ロングトレイル

日程:2013年11月2日(金)~4日(月・祝) 
行程:主脈縦走(瑞牆山荘から瑞牆山、金峰山、甲武信岳、雲取山を経て奥多摩駅まで) 単独

 11月頭の三連休は当初、山を離れて長年の懸案だった自転車(ミニベロ)による本州横断(太平洋~日本海)を決行するつもりだったが、天気予報に阻まれ敢え無く断念。
 代わりに、最近ヤマレコなどで話題の奥秩父主脈の早駆けに挑戦する。
 西は瑞牆から東は雲取まで、その距離約70km。普通の山歩きなら三泊四日あるいはそれ以上かけて歩くコースだが、できれば一泊二日でやってみたい。
 で、このコース。人それぞれ自己ルールに基づいてトライしているようだが、私は自分に次のルールを設定した。

 1.横浜から公共交通機関を使って一泊二日で帰ってくる。

 2.営業小屋には泊まらず、テント泊で行く。
 3.主脈から少し外れた瑞牆山、五丈岩、北奥千丈も含む。雲取からは石尾根経由で奥多摩駅まで歩く。

 トレランやってるツワモノなら、ほぼ24時間ぶっ通しで完走してしまうらしいが、とてもじゃないが今の自分にはできそうもない。
 せめて一泊二日なら・・・う~ん、言ったはいいが、できるのか?

一日目 天候:一時
 瑞牆山荘10:05~30-瑞牆山12:12-金峰山16:12-北奥千丈岳18:53-国師岳-東梓21:30

 土曜の始発の特急で韮崎駅下車、午前8時30分過ぎ。三連休とあって、なかなかの人出だ。
 暖冬の昨今、まだこの時期は積雪は無いと見込んだが、それでもシェルター(アライの「ライズ1」)、ダウンの3シーズン・シュラフや防寒着などを持つとザックはそうコンパクトにならず、36Lのものにした。
 靴はファイブ・テンのアプローチ・シューズ「Camp4」。念のため、軽アイゼンも持っていく。

 最初のバスは8時50分に出発で、スタート地点の瑞牆山荘へ着くのは10時過ぎ。
 一泊二日でやるには初日から大きなロスタイムで、これだけ人がいるなら声かけてタクシーの相乗りが正解かもしれない。
 この一週間の仕事疲れと朝から電車、バスと立ちっぱなしで珍しく乗り物酔いしてしまい、調子が悪いスタートとなる。

 瑞牆山荘前で20分ほど休むが、秋も深まり、今日はけっこう空気が冷たい。
 青い空と黄色い針葉樹のコントラストが美しい中、シングル・ストックの早歩きでスタート。

  

 30分ほどで富士見山荘着。水場でプラティパス大(2.5L)を満タンにし、そのまま瑞牆方面へ。
 途中、小川山分岐の所に余分な荷物をデポし、最低限の荷だけ持って瑞牆山頂までピストン。
 かつて登った大ヤスリ岩のハイピーク・ルートには今日も1パーティー取り付いていて、皆の注目を集めていた。

 賑わう山頂では数枚写真を撮り、ほぼタッチ&ゴーで先を急ぐ。
 瑞牆山は往復すると2~3時間余計にかかるため、主脈タイム・トライアルでは割愛されているようだが、やはり百名山の一つだし、自分としてははずせない気がした。
 瑞牆の登り下りでたぶん50人以上は抜いただろう。もっとも他の人たちはまったく急いでいるわけではないのだが・・・。

  
(左)瑞牆山頂                                         (右)山頂から見た大ヤスリ岩。クライマーが登っているのわかる?

 分岐でデポしておいた荷を回収し、大日岩へショートカット。
 おそらくあまり歩かれていないコースだろうが、道は思いのほかハッキリしていて、途中には小川が流れる静かなテン場もあった。
 周りに誰もいないので、念のため熊鈴とホイッスルを鳴らしながら行く。

 大日岩で主脈縦走路に合流。晩秋の日没は早く、既に西陽が射し始める。
 
 五丈岩に到着。
 金峰山は今回で三回目。いずれも晩秋から初冬にかけての時期に来ているが、五丈岩に登るのは初めてだ。
 ザックを基部に置いて空身で取付く。

 思ったよりもテクニカル。まぁ少しでもクライミングをやっていれば何てことないと思うが、落ちたら痛いしギャラリーも多いので恥ずかしいし。
 マントル、スメア、微妙なバランスなどインドア・ジムの6~5級はあるんじゃないか?
 岩のてっぺんに立つと金峰山頂にいたオバチャンたちから茶色い(?)声援をもらった。

  
 (左)五丈岩                                         (右)金峰山頂

 金峰山荘に下りていく団体さんを尻目にさらに先を急ぐ。夕暮れと共に気温がグッと下がってくる。

 朝日岳の手前、鉄山で完全に日が暮れ、ヘッデンを出す。
 長年、山を歩いてきたが、いつもこの夕暮れから夜にかけての時間が一番心細く不安になり、むしろ完全に夜になってしまった方が開き直れる。

 夜の大弛峠着。この時期、まだ車でここまでアクセスできるとあって多くのテントで賑わっている。
 この時間に先へ向かうとあらぬところからお咎めを受けそうなので、小屋の前はそっとスルー。

 この先、国師まではよく整備された木の階段の道。段差もそれほど高くないので、疲れた脚には助かる。
 分岐に着き、ザックを置いて北奥千丈岳までピストン。やはり奥秩父最高峰は踏んでおかないと。

  
 (左)夜の奥秩父最高峰                                  (右)東梓先の樹林帯で仮眠をとる。

 国師を過ぎると鬱蒼とした樹林帯の道。
 間隔を置いて木々に付けられたテープをヘッデンで照らしながら進むが、けっこう倒木などもあり、うっかりすると道をすぐに見失ってしまう。
 迷った時はすぐ引き返して正しい道を見つけたが、ペースは二の次でとにかく慎重に進む。

 できれば初日に甲武信小屋まで足を延ばしてそこで仮眠をとりたかったが、東梓の辺りで「甲武信まであと3時間」の標識を見て心が折れる。
 平坦な場所を見つけてライズ1を張り、昼の行動食の残りと温かいスープだけ飲んでシュラフにもぐった。行動時間約11h。


二日目 天候:時々
 東梓3:30-甲武信岳5:40-雁坂峠8:50-笠取山11:34-唐松尾山13:30-将監峠14:46-飛龍山-狼平手前18:35

 睡眠サイクルを考えて昨夜は22時に寝て今朝は2時起き。たった4時間の睡眠だが、疲れは思ったより取れて、眠くない。
 そそくさと撤収し、出発。

 甲武信への登りでは、暗い中、早くも逆方向からの登山者数名と擦れ違う。
 こんな時間から行動するなんて。やはり雲取からのタイム・トライアルだろうか?
 何気に聞いてみると「まさか!違いますよ。」との返事。

 日の出前に甲武信岳到着。
 3時間と見込んでいたが、2時間で着いたのは嬉しい誤算。昨夜の時点で諦めかけていた一泊二日が再び「行けるかも?」という希望に変わった。
 ただ、遠くに見える富士山に怪しい笠雲がかかっているのが気にかかる。

  
 (左)甲武信岳山頂。まだ暗い。                             (右)遠くに富士山。頂上付近は小さく笠雲に覆われていた。

 甲武信小屋で見込んでいた水の補給もこの時期、思いのほか消費が少なく、そのままスルー。
 木賊山のピークは以前踏んでいるのでここは巻き、西破風、東破風を通って雁坂峠へ。

 この辺りから特に意識はしていないが、単独の女性と前後して進むようになる。
 とても美人の山ガールだが、歩きはかなり達者。テント持ちで私よりザックも一回り大きい。
 自分も歳の割にはまだ少しは歩ける方かなと自負していたが、ちょっと気を抜くとあっという間に離されてしまうほど強い。
 ま、追いかけてたわけじゃないけど・・・。
 旅は道連れではないが、長く単調な奥秩父の後半戦にあってポイントごとに顔を合わせて会話できるのはイイ刺激となって助かった。

 気持ちの良い雁峠、笠取山の鉄砲登り、長く嫌気が差す唐松尾山の登りをこなして将監峠へ。
 途中で大きな鹿を見る。尻だけフサフサと白い毛に覆われ、何とも言えない美尻の雄鹿だった。
 今日は将監小屋でテント泊という彼女にまたまた心が折れそうになるが、ここは気持ちを鬼にして(?)別れる。

  
 (左)日本三大峠の一つ、雁坂峠                            (右)笠取山の一気登りはキツかった。

 飛龍山へのトラバースで二回目の夕暮れとなる。
 高低差はそれほど無いがひたすら長く感じ、疲れる。
 さらに飛龍山の辺りで雨が降り始める。ヘッデンでさらに歩き続けるが、雲取まではまだ遠い。
 この辺り、崩壊した斜面の上に板を渡した道やブッシュに覆われた細いトラバース道で、暗い中たびたび右足を空間に踏み外し、何度か転げそうになる。

 何とか雲取山頂の避難小屋までと思ったが、雨脚も強くなり、あと3時間はかかりそうな雰囲気に敢え無く断念。
 適当な平地を見つけて二回目のビバーク。この日の行動約15h。


三日目 天候:
 狼平手前6:35-雲取山頂8:00~50-石尾根-奥多摩駅14:50

 昨夜は至近距離で鹿の鳴き声がビービーとうるさかった。おそらく不意の不審者に「こんな所で寝てんじゃないよ。」と文句を言っているのだろう。
 一泊二日はならず、さらに朝起きると雨で、既に心は折れている。今日はもうのんびり行こう。

 それでも撤収し歩き始めると、にわかに朝陽が射し込んできた。
 雨だったらトットと最短コースで降りるつもりだったが、これも神の思し召しか。やはり最後まで諦めず、雲取からは長い石尾根経由で下山しよう。

 結局、二回目のビバーク地は狼平のすぐ手前で、そこから雲取まで1時間半ほどで着いてしまった。
 山頂ではゆっくり朝食や写真で小一時間も費やしてしまう。

  
 (左)朝の狼平。オオカミはいないがシカはたくさんいる。            (右)雲取山頂
 
 
 石尾根は小さなアップダウンがあり、疲れた脚には結構こたえる。
 この時期、鷹ノ巣山から六ツ石山の間が素晴らしい紅葉だったが、それでもこの長い尾根の間で四人ほどしか擦れ違わなかった。

  
 (左)石尾根を下っていく。                                (右)鷹ノ巣避難小屋

 ようやく舗装路に下りてからも駅までは意外と距離がある。
 結局、最終日はほぼコースタイムどおり。二泊三日では並の記録だが、それでも最後まで歩き通せたので満足だ。

 最後は奥多摩駅前で山女魚の塩焼き(500円)と缶ビールで〆。

  
 (左)ゴールの奥多摩駅                                  (右)山女魚の塩焼きが自分への完歩賞?

【感想】
・終わった直後は二泊三日でも十分だと思ったが、季節やコース、装備等をもう少し真面目に考えれば一泊二日は十分に可能。来年リトライするかも。
・睡眠時間は4時間も取れば疲労は回復することがわかった。
・奥秩父は高低差も少なく、ほとんどがフカフカの樹林帯の道なので、脚に優しい。
・もう歳なのでトレランを本格的にやろうと思わないが、ライト&ファストは今後の自分のテーマとして面白いと思った。

その他、参考までに私が素晴らしいと思った記録をいくつか。
既に何度もトライしている奥秩父の達人 http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-68109.html
ビール飲みながら完全一泊二日は凄い http://blogs.yahoo.co.jp/pilbara_00/65687833.html
究極はこの人。冬の奥秩父全山三日も! http://exploremylimits.blog.fc2.com/blog-entry-37.html 

写真集・晩秋の奥秩父主脈縦走


初夏の飯豊縦走

2013年07月01日 | ロングトレイル

2013年6月28日(金)夜行-7月1日(月) 前夜発二泊三日 単独

 今週末は女房の友人が我が家へ泊まりに来るというので、おじゃま虫は山へ避難。
 梅雨の合間を狙って飯豊へ向かう。

一日目 
天候:のち
行程:(JR米沢駅4:30~5:50-小国駅7:25~8:00-)梅花皮荘8:40~50-飯豊山荘10:00~15-丸森峰13:15-地神山14:43-門内小屋15:55(泊)

 前夜、新宿から夜行高速バスで米沢、そこから始発のJR米坂線で小国へ。
 以前、上の息子がこちらの学校に行っていたので、この辺りは何回か来ており、周辺景色が懐かしい。

 

 小国駅ではバスを待つ間、東京から渓流釣りに来たニイちゃんと地元のニイちゃん、それに私の三人で四方山話。
 鄙びたローカル駅の前でのこんなひとときがいかにも「テレ東・旅番組」的でイイ感じ。

 飯豊の山形県側は7/1から山開きということで、本日の路線バスはまだ登山口手前の梅花皮荘まで。
 飯豊に登るのは初めてだが、梅花皮荘は何度か泊まったことがあるのでこれも懐かしい。

 梅花皮荘からは一時間ほど林道歩き。
 天気は上々、夏の陽気で早くも汗ばむ。
 この辺り、マタギの里でも知られるように国内一のツキノワグマ出没地帯であるため、熊鈴を鳴らしつつ登山口へ。

 

 登山口の飯豊山荘からは有名な石転び沢をはじめ、いくつかコースがあるが、今回はフツーにまったり縦走しようと丸森尾根にする。
 しかし、この尾根、そのやさしそうな名前と裏腹に出だしからなかなかの急登。蒸し暑い陽気もあって一気に滝汗となる。
 急登というとよく甲斐駒の黒戸尾根などが引き合いに出されるが、その比ではなく、北アでもこんなキツイ登りはそうそう無いんじゃなかろうか。
昨年の仙台・二口山塊もそうだったが、東北の山というと何となく朴訥で柔和なイメージを持ってしまうが、実はかなりシンドイ急登であるのを改めて思い知る。

 途中、単独の人を一人抜き、ようやく我慢の樹林帯を抜けて視界が開ける。
 丸森峰の少し上から豊富な残雪が現れ、先にもう一人、単独の人の姿が見えた。

 雪渓から流れる冷たい水を飲みながら小休止していると、脇の草陰にまだ真新しいゴミを発見。
 まったく、何でこういうことするのかね。野口某ではないが、ちょっと目に余るので回収する。

 ところがその先、雪田を一つ上がったところでさらに見たくないモノが。
 何と先ほど見えた単独のおっさんが道のど真ん中で用を足している。もちろん

 こちらの存在に気付いてないようなので、悪いと思ってしばらく待ったが、なかなか終わらない。(というか、下半身モロ出しでこちらに向かって仁王立ちしている。)
 こちらもいつまでも待っているわけにもいかないので頃合いを計って「すみませーん!通りますよっ!」と声を掛けるとさすがに慌てたようだが、しかし最近は山ガールも多いし、こんな道の真ん中でするかね。

 どうやらこの御仁、私が通り過ぎてもまだバツが悪そうにしゃがんでいて、どうやら腹を壊しているようだ。
 で、思い出したのが先ほどのゴミ。紙に包んでオニギリが半分残っていた。
 山に来て食べ物を捨てるなんてまず無いし、もしや・・・?。よっぽど問い正そうと思ったが、初日からイザコザを起こしても疲れるので不問にして先を急ぐ。(もし濡れ衣だったらすまないけど。)

 

 丸森尾根の急登もようやく終わり、地神山を越えて、この日は門内小屋泊。
 時間的にはその先の梅花皮小屋まで行けなくもなかったが、石転び沢から上がってくるパーティーが多そうだったので、予定通り今日はここまで。
 エアリアマップに表記は無いが、近くの雪渓から水は豊富に確保できた。

 

 30~40代の男性二人組が既に来ていて、地元・会津山岳会とのこと。
 ここ数年、八ヶ岳や甲斐駒、あるいは谷川などで少なからず身勝手な山岳会の人たちを見てきたが、このお二人はとても穏やかで何とも好感が持てた。

 先ほどのおっさんの残像が頭に残り、イマイチ食欲なし。
 今回は気楽な尾根歩きのため軽量化はあまりきにせず、酒とつまみは十分に持ってきたので夕方には早々と酔いつぶれてしまった。

 


二日目
天候:のち
行程:起床4:45-出発5:50-梅花皮小屋7:30-御手洗ノ池9:30-御西小屋11:10~40-大日岳12:55~13:35-御西小屋14:45-飯豊山16:30~45-本山小屋16:55(泊)

 昨夜はけっこう風が強く小屋の屋根を叩いていた。
 朝起きると一応晴れているが、ガスが西側から吹き上げ、展望はあまり利かない。
 いつものように餅入りマルタイラーメンの朝食を終え、お二人さんより一足早く出発。

  
 
 反対側からやってくる数パーティーと擦れ違い、北股岳では団体さんと一緒になるが、その後しばらくは登山者も途絶え一人歩き。

  

 梅花皮岳から御西岳の稜線はまだ残雪が豊富で、ほとんど雪の上を歩く。
 今回、靴はローカットのアプローチ・シューズ(ファイブテンの"Camp4")。軽アイゼンは持ってきたが、まぁ何とか履かずに雪面の凸凹を拾って進む。
 
 

 途中にある御手洗ノ池。
 よく見ると小さな黒いサンショウウオが泳いでいた。

 ガスがなかなか切れず景色がイマイチなのが残念だが、まぁ仕方がない。その代わり、さすがに飯豊は高山植物が豊富で飽きさせない。
 花に興味が無くてもついつい足を停めてマクロで撮ってしまう。

 

 

 やがて御西小屋に到着。
 ここには管理人が既に入っていた。素泊まり2,000円、食事付きだとプラス1,500円とか。
(飯豊の小屋は基本的に避難小屋なので期間外ならタダ。協力金は任意で。シーズンになると管理人が常駐して有料になるようだ。)
 本来の水場が雪で隠れてしまっていたため、少し手前まで戻り雪渓からチョロチョロ流れる水を補給する。

 

 ここから飯豊最高峰の大日岳までピストン。
 ピーク直下の最後の登りは長く縦走してきた足にはちょいとシンドい。
 頂上の標識は一番高い所より一段低い広場にあった。
 周りには誰もいなく、山頂独り占め。ゆったりとした気分でしばし休憩する。

 その後、御西小屋へ戻り、本日のラスト、飯豊山へのゆったりとしたトレイル。
 ここはまた何とも気持ちの良い山道で、イメージ的にはバックパッカーが歩くアメリカのロングトレイルのよう。

  

 飯豊山頂。ここも当然独り占め。
 さっきまでいた大日岳が随分と遠くに見える。
 飯豊は稜線に上がるまでが急登で大変だが、一旦上がってしまえば後は比較的緩やかな勾配で、時間の割に思いのほか距離を稼げる。

 本日の宿泊地、本山(ほんざん)小屋に到着。
 日曜の夕方だし貸切かと思ったが、私より年配の男性二人組、さらに二階に年配夫婦が一組。
 岐阜から来たという男性二人組は何とも親切で、(別に欲しそうな目で見ていたわけでもないのに)ビールとつまみを差し出してくれた。どーもすみません!


三日目 
天候:
行程:起床4:30-出発6:00-三国岳8:20-川入11:45

 いよいよ最終日。
 御来光は雲がかかってイマイチだったが、その後どんどん雲が切れ快晴に。
 最初は小屋の前で写真を撮っていたが、たまらず年配夫婦の後を追って昨日に引き続き飯豊の山頂に立つ。
 最後になって飯豊の主稜線を一望にできて満足だ。

 

  飯豊山頂からのパノラマ

 しばらく山頂で写真を撮りながらのんびり過ごし、小屋を軽く掃除してから下山。
 先の二組はもうずいぶん前に出発してしまった。

 

 飯豊山から三国岳への道はこれまであまり見なかった濃いピンクの百合が見事。
 今日から山形県側は山開きのためか朝からヘリが上空を旋回していた。

 三国岳の直下は剣が峰と呼ばれる岩稜。ここは最近、中高年の転落事故が立て続けに起きているようだ。
 両脇はそれなりに切れ落ちているが、幅があり岩も階段状なので慌てなければ別に怖いことはない。
 ただ岩のフリクションがいいので、逆に靴底を岩角に引っ掛けたりしてバランスを崩してしまうんじゃなかろうか。

 

 岩稜から樹林帯に入り、途中の分岐から川入方面へ。
 昨夜のお二人さんが新しくできたという飯豊トンネルからのコースの入口に車を停めているというので頼めば乗せてもらえそうだったが、あつかましいので当初の予定どおり川入からタクシーを呼ぶことにする。

 途中、何とも細い樋状にえぐられた道を行き、最後は巨大なブナや杉の木が聳え立つ登山口へ下山。
 後は川入の民宿村から電話を入れタクシーを呼んで終わりのはずだったが、最後になってケチがつく。

  

 民宿村はケータイの圏外なのでどこかで電話を借りようと思っていたのだが、まるで人の気配が無い。
 とある一軒の玄関が開いていたので声をかけ、奥の方からようやく現れたオバちゃんが言うには「ここで電話してもいいけど、すぐ下に温泉があるから、せっかくだからそこ行ってみ。」とのこと。
 地図で「いいでの湯」という日帰り温泉があることは知っていたが、たしかここからは5~6km先だったはず。
 「いや、歩きだったらけっこうかかるでしょう?」
 「いんや、歩いても15分だから。すぐだから行ってみ。」

 

 もしや、また別に新しい温泉でもできたのかと半信半疑ながら歩き出したが、30分歩いても何も見えてこない。
 途中、渓流釣りのおじさんがいたので聞いてみると、やはり先の温泉までまだまだ距離があると言う。

 結局、アスファルトの道を歩くこと1時間以上。ようやく電波が入り、タクシーを呼んで事無きを得たが、一体どういうつもりだったんだろう。 (少なくともまだそれほど耳が遠くなく、ボケてもなさそうだったのだが)

 「いいでの湯」は入りたかったが、電車の時間もあり見送り。会津若松まで出て、駅からすぐの「富士の湯」へ行く。
 ちょっとゴテゴテ感があるが、390円で数々の風呂を堪能できて先ほどの怒りをようやま鎮めることができた。

 帰りは再び高速バス。
 飯豊は横浜からだと距離が遠く、交通費がかさむものと思い込んでいたが、今回往きのバスが4,700円、帰りはネットの早割りで何と2,500円!
 その他、JRや地元バスなどの運賃がかかるが、こんなに安く行けるとは思わなかった。
 次回はもう少し雪の残る時期、石転び沢からダイグラ尾根など歩いてみたい。

飯豊写真集


おまけ 飯豊・花の写真集


新雪の後立山縦走 #4(白馬大池~栂池)

2011年10月11日 | ロングトレイル

天候:時々
行程:起床5:00-出発6:00-栂池ゴンドラ駅8:10

 いよいよ最終日。今日は下山だけ。

 昨日までの三日間、ずっと晴れ続きだったが、今日はさすがに曇り空。
 晴れていればなかなかの癒し系ロケーションの白馬大池。
 例年だとこの時期、紅葉と青い池のコントラストが美しいはずだが、今朝は人の気配もないので荒涼としている。
 まぁ、これはこれでイイ雰囲気。

 

 道は、白馬大池の縁を回ってゴロゴロした岩の道を小ピークの乗鞍岳まで登っていく。
 大きなケルンを過ぎると、その後はまたゴロゴロした岩の道をペンキ表示に導かれながら下る。

 

 

 

 いい加減、岩の道に飽きてきた頃、尾瀬のような湿原の中の木道に変わり、そしてようやくゴールのゴンドラ終点駅へ。

 

 

 今年の北アはやはり冬の訪れが早過ぎたようで、紅葉が見れたのはロープウェーでだいぶ麓に近づいてからだった。

 

 下山後の温泉は、栂池高原「元湯・栂の森」へ。平日の朝イチだったため、当然ウチらで貸切。
 途中、松本でカツ丼を食って、四日間の山旅を締め括った。

  
 
 紅葉の裏剣に行けなかったのは残念だったが、後で知ったところでは予定していた下ノ廊下も崩壊があって通行不可になっていたようだし、まぁこれも時の運か。
 とりあえず初冬の後立山メインコースを一気に歩いて、しばらくフツーの山歩きはもう結構といったところ。 お疲れさんでした~。


新雪の後立山縦走 #3(不帰~白馬)

2011年10月10日 | ロングトレイル

三日目

天候:強風
行程:起床4:30-出発5:30-不帰キレット6:50-天狗平8:45-白馬鑓ヶ岳9:40-杓子岳10:45-白馬頂上山荘12:05~40-白馬岳13:00-白馬大池15:35

 本日は朝イチで不帰キレット越え。
 連日とも起きてからテント撤収、出発までキッチリ1時間でこなせているのはなかなか効率的だと思う。

 

 昨夕擦れ違った単独のニイちゃんの話では不帰2峰の北峰側にスッポリ穴が抜け落ちていて要注意とのこと。
 鎖や鉄梯子を頼りに岩場をトラバースしたりクライムダウンで通過していくが、肝心の穴はそれほど大きくはなく、ロープなどが必要なわけではなかった。
 まぁ念のため、それ以上周りを踏み抜かないように慎重に通過。

  不帰二峰・北峰に開いた落とし穴

 不帰キレットは以前GWに白馬主稜から継続して通過したことがあり、これが二度目。
 登山地図では熟練コースになっているが、気を入れて臨めば意外とあっけない。
 途中、反対側からのパーティーとも擦れ違う。

  

 

 登り返しはまたダルい登りが続き、天狗の頭、そして既に今季営業終了となった小屋のある天狗平を通過。
 この辺りから西風が猛烈に強くなり、普通に歩いていても「欽ちゃん走り」のようになってしまう。
 天気が良くて助かるが、風は完全に冬山だ。

 

 

 たぶん私の方がザックは重かったと思うが、Y岡が気を利かせてロープを持ってくれる。
 冬用の靴を履いているだけでもハンデだったので、これは助かった。
 まぁ考えてみるとY岡は私の長男と同じ歳。このぐらい、いたわってもらわないと・・・。

 白馬に近づくにつれ、多少雪が増えてきた。
 それに加えてこの辺りは山肌が白っぽい砂地なので、眩しさと空気の薄さで頭がクラクラしてくる。
 西風は相変わらず強いが、せっかくなので、ここでも白馬鑓、杓子岳と律儀にピークを踏んでいく。

  白馬鑓山頂

  杓子岳山頂

 30年以上も前に大学山岳部の新人合宿で登った双子尾根など覗いてみるが、今、改めて見るとボロボロ。
 雪が付いていればもう少し安定しているのかもしれないが、よくもこんなガレキのリッジを登ったもんだ。

 村営の白馬頂上宿舎は既に営業終了、さらに上部の白馬山荘へ。
 こちらは営業中だが、三連休の最終日とあって登山者はほとんどいない。
 ちょうど昼なので食事を期待していたY岡だが、カップヌードルぐらいしかないと聞き、ガッカリ。
 しかたなく、ここでまた菓子など購入。水はタダで分けてもらえた。

 

 小屋で大休止後、いよいよ白馬岳へ最後の登り。
 昨日まではかなり賑わっていただろうが、今日の山頂はウチら二人だけ。
  
 白馬岳頂上。Y岡は初めて、私はこれで四回目(春2回、秋2回)。
 これまで歩いてきた稜線を眺めながら、しばし休憩。いやー、こうしてみると、けっこう歩いた。

 

 

 大雪渓を下って終わりにしても良かったが、日程的には十分なので本日は白馬大池泊まりとし、明日、栂池下山とする。
 下り始めると、それでも大池の方からポツポツと登山者が上がってくる。

 
 「また山へおいでよ」 byニセ島崎三歩

 少し行ったところで雪の道の真ん中で、ストックにしがみつくようにしてヘタリ込んでいる単独のおっちゃんに遭遇。
 ナップザックを背負っているが、明らかに軽装でもうヨレヨレ。擦れ違うにも、道を空ける気力もなくヘタっている。
 「大丈夫ですか?」と聞くと、一応「大丈夫です。」との返事。

 で、擦れ違って、しばらく進んだところで気になり振り返ってみると、まだ雪の上にヘタリ込んだまま。
 私 「大丈夫ですかぁーっ?」
 おっちゃん 「・・・大丈夫・・・ですかね?」

 はぁ?何言ってんだ。もう一回尋ねてみる。
 
 私 「大丈夫ですかぁーっ?」
 おっちゃん 「上、行っても・・・大丈夫・・・ですよね?」

 いやいや、そんなこと聞かれても知るかい!
 私 「そうじゃなくて、あ・な・た・が・大・丈・夫・なんですか!」
 おっちゃん 「・・・・・・やっぱり、やめときます。」

 とりあえず無茶はしないで諦めるようなので、ウチらもそのまま下り始める。
 その後、追いついてきたが、本当は小蓮華山まで行こうとしたところ通り過ぎて白馬の頂上手前まで進んでしまったらしい。
 まぁ、いろんな人がいるもんだ。

 

 白馬大池のテン場はウチらを含めてわずかに三張りほど。
 山荘のスタッフはいたが、もう今季は営業終了とのことで幕営料はタダだった。

 

2011年秋 北アルプス・後立山縦走(三日目)


新雪の後立山縦走 #2(五竜~唐松)

2011年10月09日 | ロングトレイル

二日目

天候:無風
行程:起床5:30-出発6:30-五竜岳10:20~40-五竜小屋11:40-唐松山荘14:10-唐松岳14:45-BP16:00

 結局、昨夜の鳴き声の正体はわからず。
 朝になって、Y岡が夜中に足音がしたといって薄い雪の上に付いたアイゼン付きの足跡を示すが、まさか真っ暗闇の凍りついたキレットを通過する人間がいるとは思えず・・・。

 朝食のマルタイ・ラーメンは小さいコッフェルで二人分作ってしまったので水分が足りず、「天下一品」のこってりのよう。だからといって旨いわけではなく、しょっぱいだけ。 

  朝の剣

  キレット小屋

 朝のうち凍り付いているのを心配したキレットから五竜への登りは、南側斜面のため思いのほか雪が溶けていて、特に問題なし。
 もちろん急な登りでダルいにはダルいが・・・。
 振り返ると、北側斜面は初冬の装い。

  

  前方に五竜

  際どいトラバース

 

 ガーッと下ってガーッと登り返して、五竜岳・着。
 雲一つ無い青空の下、360度の展望。
 新雪をまとった剣。遠く富士山も見える。

 ケータイが通じるようなので、横浜の軟式クライミング部の面々に写メ報告。

 

 五竜岳山頂から五竜小屋への下りは、チョイと雪が凍りついてイヤらしかった。
 まぁアイゼンを着けるほどではなく、慎重に下る。

 

 

 で、また唐松小屋までガーッと下ってガーッと登る。
 唐松岳は比較的手軽に登れる八方尾根の終点にあるせいか、なかなか盛況。
 ここで、水を補給。

 

 飲料水は500mlのペットボトルで300円となっており、高いなぁと思っていたら、それとは別に歯磨き用の水は同じ500mlで80円とのこと。
 小屋番スタッフの女子に聞くと煮沸すれば問題なしとのことなので、貧乏隊の我々は迷わずこちらを購入。
 ありがたいことに2Lで300円とほんのちょっとだけオマケしてくれた。

 で、本日は唐松岳を踏んだところで幕。
 今日は終日イイ天気だった。

 

 to be continued・・・

2011年秋 北アルプス・後立山縦走(二日目)


新雪の後立山縦走 #1(鹿島槍~八峰キレット)

2011年10月08日 | ロングトレイル

日程:2011年10月7日(金)夜~11日(火)
同行:Y岡(軟式クライミング部)

一日目

天候:のちガス
行程:扇沢6:00-種池山荘9:20-爺ケ岳・中峰10:45-冷池山荘12:00-鹿島槍ヶ岳・南峰14:15-B.P16:10

 今回、当初の計画では扇沢から入って剣岳周遊(源次郎尾根-北方稜線-下ノ廊下)を予定だったが、剣御前小屋の話では既に積雪5~10cm。
 雪というよりはむしろ中途半端に凍った状態で、源次郎尾根など完全冬山装備のエキスパートでないと厳しいらしく、また、その手前のアプローチ(内蔵助谷)でも崩落情報ありで、あまりに条件が悪い。
 まったり山の温泉&紅葉モードでいたので気持ちの切替ができず、かといって「さわやか信州号」のキャンセル代ももったいないので、扇沢からの別コースとしてオーソドックスな後立山縦走とした。

 新宿から夜行バス「さわやか信州号」に乗り、未明に立山黒部アルペン・ルートの玄関口「扇沢」着。

  朝の扇沢ターミナル

 で、いざスタートしようと思ったら、早くもトラブル発生。
 ナント、相方のY岡が食料をほとんど忘れてしまったとのこと。・・・キム兄のセリフじゃないが、それって「ありえんぞ?

 まさかここまで来てすぐにUターンで撤退するわけにもいかず、ターミナル内の売店を物色するが、あるのは土産用のお菓子ばかりで、まともな食料はほとんど無い。
 しかたなく私の食料を小分けにして、後は途中の小屋で補充しながら行くことにする。・・・一体どうなることやら。

 スタート地点、爺ヶ岳の登山口はターミナルから一旦舗装路を引き返し、「扇沢」という沢の脇から。
 長野県警?の人が詰めていて、ここで登山届を出す。

  登山口

  ボチボチ行きますか。

 軽装の小屋泊まりの人たちに抜かされつつ、テント泊重荷の我々はマイペースでフゥフゥ言いながら進む。

  最初の経由地、種池山荘

 黒部川を挟んだ向こうの立山方面は予想以上に真っ白。これじゃ、とてもじゃないが剣は無理。

  あの鐘を鳴らすのは、あなた?

 山を始めて間もないY岡は今回のコースは初めて。なので、できる限りピークを踏んでいく。

 

 

 最初のピーク、爺ヶ岳南峰を過ぎ、同・中峰へ。

 冷池山荘に着いたところで、水を補給。
 0.5Lで150円・・だったかな?1.5Lほど購入。Y岡は夕食としてカップ麺を買う。

 テント泊指定地としては本日はここまでとなるが、まだ昼になったばかりだし、既に山は半分冬の状態。
 大きな小屋を除いてほとんど営業終了となっていることから先へ進ませてもらう。
 小屋でこの先の状況を聞くと、手前の鹿島槍南峰までは問題ないが、その先は雪が付いて別世界とのこと。
 まぁウチら、今回オーバー・スペック気味にピッケル、アイゼン、30mロープまで持ってますんで。

 

 それにしても足が重い。
 Y岡はソール固めのトレッキング・シューズなのでまだ良いが、私は新雪の山に手頃な靴を持っておらず、冬用の重たい靴を履いているので、なかなかペースを上がらない。
 
 かったるい登りをこなして、鹿島槍の南峰、着。
 それまで秋晴れだった空はここにきて非情のガス。
 山頂にいるのは我々の他、熟年夫婦と単独行の三組のみといった寂しい風情。

 

 立ち止まっているとたちまち冷えてくるので、先へ進む。
 本日、この先へ進むのは我々のみ。

 で、この先がたしかに悪かった。
 急な下りはアイゼンを履くには中途半端な形で凍り付いており、けっこう際どいクライミング・ダウンを強いられる。
 ロープを出して懸垂かと思われるポイントもあったりして、まるで気が抜けない。

 

 ほとんど冬山状態に北峰は割愛。

 

 八峰キレット小屋は既に営業終了。
 今夜は適当なところで幕とする。

 明日に備えて早々と眠りにつくが、夜半になって正体不明の大型動物が「ギャオ!・・ギャオ!・・ギャオ!」と一定の間を置いてわめき散らし、やかましい。
 熊でもなく、鹿の声でもない。たぶん猿だと思うが・・・?それにしてもウルセーな。一体、何時だと思ってるんだ!静かに寝てろや。

2011年秋 北アルプス・後立山縦走(一日目)


北ア 黒部・東沢から笠ヶ岳へ #4

2011年08月08日 | ロングトレイル

四日目
天候:
行程:笠ヶ岳キャンプ場4:50-笠ヶ岳5:30~6:00-クリヤの頭7:30-槍見温泉11:40

 いよいよ最終日。
 今日は半日行程だが、バスの時間もあるので、そうそうのんびりしていられない。
 朝3時起床、4時出発のつもりだったが、寝坊して一時間ほど遅れてしまう。
 左足首の痛みは昨日と変わらず。キツめにテーピングすれば、まぁ大丈夫だろう。

 山荘でトイレを借りてから頂上へ。
 さっきまでガスが立ち込めていて今日は景色は無理かと諦めていたが、登るにつれ雲が切れ、周りのガスがオレンジ色に染まっていく。

 

 笠ヶ岳の頂上に到着。
 今年のGW、そしてつい二週間前も西穂から槍を回ってここまで来る計画を立てていたが、やはり遠かった。
 今回は計画どおり来れたので満足。やはり途中リタイアしなくて良かった。

 

 頂上は南北に長い形で、北側に祠がある。でも、なぜか南側の頂上の方が人気があるようで、みんなそちらに集まっている。
 西穂、奥穂、槍の稜線はもちろんのこと、雲海に浮かぶ木曽御岳が素晴らしい。

  遠くに御岳

  槍・穂の稜線

 さんざん写真を撮りまくって十分景色を堪能した後、錫杖方面へ下山開始。
 頂上へいた多くの人たちはこちらからは下山しないようで、みんな山荘へ戻っていった。

  槍見温泉への下山コース

 笠から槍見温泉へ下るコースは、下るにつれ荒れていて、けっこう悪い。
 特に道のあちこちに積み重なっている岩が曲者で、これがシューズのソールによっては実によく滑る。
 今回、沢以外ではNIKEのトレラン・シューズを履いているが、土やザレではグリップが効くものの、濡れた岩、特に笠~錫杖間の岩にはまるでダメ。けっこう神経を使った。

 下っていくと、前方に四人組の先行パーティー発見。
 「クリヤの頭」付近で追いつく。

 メットを持っているので、どこかバリエーションのルートですかと聞いてみると、「打込谷」とのこと。
 アプローチで車が林道の奥へ入れず、また途中の雷雨や増水で沢中三泊、予備日も使って下山中だとか。
 やはり、北アの沢は途中、雨が降ったりすると怖い。お疲れさまです。

  錫杖が見えてきた。

  ブナ林を行く

 右手に錫杖の岩峰が見え始めると、あと少し。
 途中の沢筋でまたまた岩魚の魚影を確認し、竿を出してみるが、やはりこちらの気配を先に感づかれたか、ほんの少し近づいただけで食いついてはくれなかった。

  岩魚クンはいるけれど・・・。

 標高を下げるにしたがい、蝉の声と夏の暑さが甦ってくる。

  ようやく・・・。

 昼前には無事下山。
 槍見温泉はこの時間ちょうど清掃中だったが、すぐにバスが来てくれたので平湯へ移動。
 こちらのバスターミナルにある露天風呂で四日間の汗を流した。

 東沢で履いたモンベルの「サワー・トレッカー」は、今回が引退試合。
 これまで南アの赤石沢などでも頑張ってくれました。お疲れさん。

 


 【写真集・四日目】


北ア 黒部・東沢から笠ヶ岳へ #3

2011年08月07日 | ロングトレイル

三日目
天候:、途中(二回)
行程:東沢2,400mBP(二俣インゼル)4:45-東沢乗越6:15-水晶小屋7:20-鷲羽岳8:40-三俣蓮華岳10:45-双六岳12:05-双六小屋13:20-抜戸岳17:40-笠ヶ岳キャンプ場18:50

 朝起きると、ありがたいことに晴れていた。
 眼下にはこの二日間で歩いてきた沢筋が黒部湖まで延々と伸びている。

 三日目の今日は長丁場。
 まずは稜線に上がって少しでも笠ヶ岳に近い位置まで進みたい。
 登山地図のコースタイムで休憩時間抜きでも12~13時間かかるようだ。

 

 BPを撤収し、左俣を詰めて行く。
 朝のうちは水が冷たそうで心配だったが、水流脇が階段状の登りになっていて、それほど濡れずに上がっていける。
 途中で下を見下ろすと、自分が泊まった二俣から少し上がった右俣の所に黄緑色のエスパースが小さく見えた。
 昨日言ってたもう一人の単独行者だろうか。

 さらに登ると雪渓。
 沢靴のフェルト・ソールと雪渓の相性はあまり良くないはずだが、この時期の雪渓は水っぽいのかスプーンカットの上にフラットに置けばそう滑ることは無い。
 雪渓が終わると最後は踏んでいくのが躊躇われるような野生のお花畑を掻き分けて東沢乗越へ。

 

 やっと稜線に出た。ホッと一息ついたところで、単独の山ガールがやってくる。
 まだ買ったばかりという一眼デジカメを持っていたので写真を撮ってあげた。

  お返しにオヤジも一枚

 水晶小屋の登りでは、さらに別の京都弁?山ガールと話をする。
 黒部ダムから上がってきて笠ヶ岳までテント三泊で行く予定だと言ったら、「そのザックによく納まりますねー。」と感心された。
 前回の穂高に較べて今回は釣りと焚火があるので、沢靴、釣り道具、そして酒は欠かせない。
 さすがに28Lザックは無理で40Lにしたが、それでもスカスカ。見た目はせいぜい二泊三日小屋泊まりといった感じか。

 この辺り、昔から「裏銀座コース」と呼ばれていて、銀座だから女性が多いのか?
 山ガールも(小屋泊まりでも)一人でこの辺まで歩けるようなら、一応合格でしょう。
 「水晶岳まで(ピストンで)行きますよね。」と誘われたが、先が長いのでパス。ちょっと残念。
 小屋の女性従業員が言うには、今は晴れているが、また午後から崩れるとのこと。ここ数日、ずっと不安定な天気らしい。

  水晶小屋

 多少、雲が湧いているが、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳と稜線伝いに進む。
 この辺り、登山者はそれなりに多いが、穂高や剣と違ってまさに北アルプスのど真ん中にいるという感覚があって、実にイイ。
 遠くに見える雲ノ平や黒部五郎岳など緑の稜線と白い雪渓のコントラストが何とも鮮やかで、「天上の楽園」という表現がピッタリ。
 来年の夏は雲ノ平にこもり、午前中は周辺の小沢を登り、午後はビール&昼寝なんて計画を早くも考える。

  鷲羽岳への登り

  三俣山荘への下り

  三俣蓮華岳

 このあたり山ガールもいるが、トレイル・ランナーもちらほら。
 ただ、登りにしろ下りにしろ、彼らはけっして自分たちから道を譲ろうとしない。
 ウチら一応走っているんで道、空けてよね、といった無言の圧力を掛けられているようで、ちょっといただけない。

 また、その先では偶然にも一昨日、平ノ渡しまで一緒だったおじさんとすれ違う。
 このおじさん、見た目はかなり華奢なのだが(←そればっかり)、昨日は読売新道を一気に登り、今日は双六まで行ってから黒部五郎と休み無しに駆け巡っていて、ちょっと驚く。

 しかし、予報どおり、双六岳の登りで早くも雷雨に見舞われる。
 雷が近くに落ちそうな気配は無かったが、こんな午前中から降られていたら、とても笠まで行けそうにない。

  

 また、雨に気を取られていたせいか、ある指導標に騙され、本当は一直線に双六小屋まで抜けられるところを、わざわざ双六岳をピストンする形のコースになってしまった。
 これで少なくとも30分のタイムロス。

 また、三日目とあって疲れが出てきたのか、双六小屋への下りで左足首にイヤな感じの痛みが出てくる。
 昨年痛めた箇所だが、もう走ったりしても大丈夫だったのに、なぜここに来て・・。
 特に下りがダメで、もしこのまま雨が降り続けるようなら、今日は双六小屋泊まりとし、明日は最短距離でリタイアしようかと日和った気持ちになる。

  双六小屋への下り

 それでもまだ時間が早いので、双六小屋で小休止後、とにかく行けるとこまで行くことにする。
 午後になると、双六から笠ヶ岳方面へ進む人は、距離が離れているせいか、ほとんどいない。
 この先、まだ鏡平もしくは杓子平経由とエスケープ・ルートは2コース残されているので、いざとなったらそちらへ降りよう。

 弓折岳の登りでは、本日二度目の雷雨。
 登山道は水溜りに覆われ、もうどうにでもなれといった感じ。

  ←コヤツが雨男か?

 左足は痛みを増し、平らな道でも半ば引きずるような感じだが、やはりここまで来たら笠まで行かないともったいない気がして意地で歩く。
 ペースは遅々として進まず10kg程度なのにザックも重く感じてきて、遥か昔のおぞましい記憶、大学山岳部での夏合宿を思い出してしまった。

 一旦晴れるが、抜戸岳への登り、秩父平と呼ばれる辺りでまた鬱蒼と暗くなる。
 本日三度目の夕立かと覚悟したが、今度はどうにか堪えてくれた。

 

  抜戸岳周辺

 左手、雲の合間に槍・穂の姿を眺めながら稜線を行くが、抜戸岳は頂上までがやたら遠い。
 道はトラバース道となっているので、途中ザックを置いてピストンで登っておく。久しぶりにブロッケンを見る。

  抜戸岳頂上と歩いてきた道

 陽が西へ傾き、オレンジ色の陽射しの中、タラタラと続く稜線を一人歩いていく。午後4時を過ぎると、さすがにここらを歩いている者など誰もいない。
 12時間行動となり、そろそろ今夜の天場を確保しなければ。
 笠ヶ岳はまだまだ遠い感じで、せめて頂上まで一時間圏内の所にテントが張れれば上出来である。

 あと少しあと少し・・・と歩き続けたが、さすがに日没が近づいてきた。
 次に平坦な所が見つかったらどこでもいいから今日はそこで終わりにしよう。そう思ったら突然、眼前の薄闇の中にテントが一つ。
 誰かが適当な所に張っているんだなと思ったが、よく見ると他にもテントが間隔を空けて建っている。

 すぐ脇に絶好の平坦地を見つけたので、ザックを降ろし、自分もそこに張る。
 ようやく一息ついて改めて地図をよく見たら、いつの間にか笠ヶ岳のキャンプ場までたどり着いてしまっていた。

  夕暮れの天場

 本日の行動時間、休憩も含めてだけど約14時間。
 我ながらよく歩いた。
 沢中二泊後の平坦地はやはり落ち着く。
 残りの酒を飲んでメシ食って爆睡・・・。

 
 【写真集・三日目】


北ア 黒部・東沢から笠ヶ岳へ #2

2011年08月06日 | ロングトレイル

二日目
天候:のち
行程:一ノ沢手前6:45-二ノ沢(釣りタイム)8:30~9:30-二俣2,400m17:00

 さて二日目。今いる所が標高約1,570m(黒部湖から一日がかりでほとんど標高が上がっていない)、今日の目的地が標高2,400mぐらい。
 標高差にして約800mだから行程的には楽(のはず)。その分、途中で釣りを楽しむ計画である。

 朝のうちは晴れ。まずは昨日のプール状の溜まりに糸を垂れてみる。

 
 
 ・・・反応なし。
 その後、ポイントを変えつつ流し込んでみるが、やはりダメ。なかなかうまくいかないもんだ。

 いつまでも釣れない釣りに没頭していても先に進まないので、とりあえず竿を置いて朝食。
 いつもの定番「モチ入りマルタイ・ラーメン」など。

 朝食を終え、放ったらかしにしていた竿をしまおうと思ったら、下の方で針が引っ掛かっている。
 「ちっ、根掛かりか。」
 ブツクサ言いながら慎重に糸を引っ張ってみると、・・・ナ、ナント先端に岩魚クンが掛かっていた!

 

 狙ったわけでなく偶然の釣果なので気分は何となく微妙だが、・・・ま、いいか。
 サイズはやや小ぶりで20cm弱といったところ。
 朝飯は済ませてしまったし、小さくてちょっと可哀相なので、これはリリース。まだ先は長い。

 で、東沢の河原歩きが延々と始まる。
 といっても、もちろん渡渉は何ヶ所もある。
 流れは速く、渡れるポイントの見極めはそれなりに頭を使う。途中、流れの途中でコケたら低体温症になること必至。

 右岸から左岸に渡り、沢が大きく右に曲がると、その先で大きな倒木が川を跨ぐように架かっていた。
 直径70~80cm、長さは10m以上ありそう。立派な倒木だが、これを渡って再び右岸に移らなければならない。

  左上から右下に向かって渡る。

 かなりしっかりした倒木なので大丈夫だろうが、絶対とは言い切れない。
 水面まで中途半端に高さもあり、ちょっと怖い。
 万が一、途中で腐っていたり、どちらかの端が崩れたりしたら、股間をしこたま打って悶絶したまま激流に流されてしまう。それはあまりにもイヤ過ぎる!

 単調な河原歩きと聞いていたのに、ゴルジュ、渡渉、倒木渡りと、けっこうインディ・ジョーンズばりの想定外が続く。
 倒木は斜めに架かり表面がヌメっていたので、後ろ向きの馬乗り状態のままズリズリと対岸に渡る。

 

 そこから少し行くと、左手の大岩の陰から沢が入り込んでくる。
 これが一ノ沢か?思ったよりショボイ。

 さらに進んで二ノ沢?地図を見ると出合からほど近い所に滝マーク。
 せっかくなのでザックを背負ったまま、滝を見に行く。

 股辺りまで水に浸かりながら二ノ沢を上がっていくと・・・見えた。あれが大滝か。
 下から見ると七段ほどの階段状。下から5m、5m、12m、5m、15m、10m、20m。・・・計70mぐらいあるだろうか。
 ツルツルで、とても全部に取り付けそうもない。
 こんな辺鄙な所だし、もしかして未登か?それとも志水哲也氏あたりが登っているか?

  東沢・二ノ沢の大滝?見えてるだけでも七段70m。

 滝の写真を撮ってさて戻るかと、ふと脇の淵を見ると視界の端に魚影が動いた。
 ・・・いたっ!けっこうデカい。
 こちらの気配を察知されてしまったかもしれないが、ここはやってみる価値あり。で、ザックを降ろして釣りタイム。

 先ほど魚影を見た淵を狙うとすぐに大きなアタリがきたが、これはタイミングがずれ、うまく合わせられず。
 ちょっとアセったか。
 しばらく別のポイントで魚の気をそらせ、その後また最初の淵に糸を流したところ、今度はヒット!
 
  Get!

 今回の山行でボウズだったらどうしようと思っていたが、朝のまぐれと、このヒットでとりあえずホッ!とする。
 まだ先が長いので、ハラワタを取り塩をまぶして、今夜のおかずとしてテイクアウト。

 それにしてもコヤツ、胃袋の中に大きな幼虫みたいなのを三匹も残したまま、まだ食おうとしたのか。
 腹を捌いたら赤い細かい粒々がいっぱい出てきたのでメスのようだった (もちろん、この卵もその場でおいしくいただく。)

 釣っている間に早くもポツポツ来たが、やがて午後になるとますます雲が厚くなり本降りとなってしまった。そして雷。

 雷は谷筋にはまず落ちないので、その点は安心だが、増水がかなり心配になってきた。
 ある程度、川幅があるので遠目にはそれほど変化が無いが、流れはかなり速くなってきて、水煙を上げるほど渦が巻いている。
 とにかく途中で進退窮まる事にならないよう、雨と競争するように上流を目指す。
 倒木もそれから二回ほど渡る。

  荒れ出す東沢

 しばらく先へ進んでいくと、まったく予期せぬ形で先行パーティー二人組に遭遇。
 こちらは何となく足跡らしいものは確認できていたが、まさか他にいると思わなかった。
 それより向こうは、この雨の中、オヤジが一人でフラフラ現われたから、もっとビックリしただろう。

 行程を聞かれたので「昨日、扇沢から入って昨夜は一ノ沢の手前でビバークした。」と言ったら、「速いですねー!」と言われる。
 そういや平ノ渡しの乗船名簿に自分より一日早く東沢へ入る夫婦らしき二人の名前があったので、その人たちか。
 彼らはきちんとロープも持ってきていて、出だしのゴルジュでは大高巻きをしてしまい沢床へ戻るのに三回も懸垂下降をしたとか。
 また、他にもう一人、単独の人が先に進んでいるらしい。

 しばらく話をした後、軽装のこちらは先を急がせてもらう。
 川幅は次第に細くなってきてはいるが、ガスが辺りを包んでどれだけ進んでいるのかよくわからない。
 プロトレックの高度計と地図を照らし合わせて、現在位置を確認する。

 

 枝沢を何本か見送り進んでいくと、やがて前方の雲の切れ間に雪渓の残る山肌が見えてきた。
 さすがにそろそろ上流か。

 

  サンショウウオくん

 そのまま進むと沢幅いっぱいに雪渓が現われた。
 底が抜けていて、上に乗るのも下を潜るのも危険な感じ。
 ここは右手に枝沢があったので、そちらを詰めてから藪を左へトラバース。うまく雪渓の上に抜けることができた。

  水が冷たいっ

 そして、大きな二俣。水量はほぼ同じ。
 地形的にはまっすぐ延びる右俣の方が本流っぽいが、こちらはさらに上部で二俣に分かれ、そのどちらにも悪そうな滝が見える。
 それに対して、左俣は緩い階段状でそのまま草原状の稜線に突き上げているように見える。コンパスもこちらが正しいように示している。

 少し迷ったが、東沢は厳しい滝など一切無いという話だし、もうここまで来たら多少間違えても藪漕ぎで何とか稜線まで抜けられるだろう。
 (冷静に考えてみたら、右俣は水晶小屋に突き上げ、左俣は東沢乗越へ突き上げていた。やはり左俣が正解。)

 結局、二俣の標高2,400mインゼルの所にかろうじて一人用テントが張れる草地を見つけ、そこで一夜を明かすことにする。(よく見たら焚火の跡もあった。)
 後方の二人組は一体どの辺りにいるのだろう。増水で立ち往生していなければいいが。

  二日目の天場

 だいぶ小降りにはなったが、雨はまだ降り続いけている。残念だが、今夜は焚火はお預け。
 テントの中、ガス・ストーブで午前中釣り上げたイワナを焼く。プリプリとした肉付きで、満足。
 一尾だけでも釣れて良かった。

 半日以上、雨に降られ、また雪渓も近いので夜はヒンヤリ。
 濡れたテントの中でちょっと寒々しいが、しかたない。明日は晴れることを祈りつつ眠りにつく。


 【写真集・二日目】


北ア 黒部・東沢から笠ヶ岳へ #1

2011年08月05日 | ロングトレイル

一日目
天候:のち
行程:扇沢7:30-黒四ダム7:50-平ノ小屋11:15-平ノ渡し12:00~20-奥黒部ヒュッテ14:00-東沢・一ノ沢手前16:00
単独

 今年の一人夏山合宿?第二弾。
 前回の焼岳~槍は一応「ウルトラライトハイキング」のつもりだったが、今回は釣りと縦走を軽荷でこなそうと「フィッシュ・ライトハイキング」?
 服部文祥氏に倣って、せめて夕飯のおかずは現地調達のつもり。

 今回行く東沢は黒部川最大にして最長の支流ということだが、沢登りというよりは渓流釣りの対象。
 出だしでほんのちょっとゴルジュはあるものの途中に滝は一切無く、終始河原歩きとなるらしい。
 沢としては単調で面白くなさそうだが、黒部ダムから延びて北アのど真ん中に突き上げるダイナミックさに惹かれ、いつか行ってみたいと思っていた。

 アプローチは毎度の (狭くてあまりさわやかではない) 「さわやか信州号」で扇沢へ。
 予定より早く着いてしまい、また平日なのでトロリーバスの始発も遅く、ここで3時間待ち。
 まぁしかたない。

 トロリーバスで黒部ダムへ行き、ここで多くの観光客や登山者と別れ、奥黒部へ。
 黒部湖左岸の道を行くが、今日この道を行くのは私のほか年配のおじさん一人だけ。

  朝の黒部湖

  放水の様子

 平ノ渡しまで長くクネクネと単調な樹林帯の道だが、途中で数ヶ所、沢が流れ込んでいて、歩きやすいハイキング道が続く。
 反対側からはけっこう多くの人たちが下ってきて、みんな奥黒部へ行ってきたのかと思ったが、聞いてみると立山から五色ヶ原経由で下ってきたとのこと。
 なるほど、それなら納得。

 

  平ノ渡しへの道

 途中から一人歩きとなるが、一度すぐ後ろの藪の中でガサガサと大型の獣の気配がして驚く
 鹿かもしれないが、自分の経験では鹿はある程度群れるため、自分たちの道(鹿道)に沿って行動する。
 外敵から逃げるため林の中を走り回っている鹿はよく見るが、鬱蒼とした藪を掻き分けている鹿など見たことない。
 あれは絶対、熊だ。

 先日、沢の師匠タケちゃんがやられたばかりなので、今回はザックに鈴、ショルダーストラップにはホイッスルを付けている。
 他に登山者もいないことから一定間隔ごとにピーピー吹きならして進んだ。

 そろそろ単調な道に飽きてきた頃、平ノ小屋に到着。ほとんどコースタイム通り。
 途中抜いた単独のおじさんもすぐにやってくる。
 このおじさん、見た目60後半ぐらいか、けっこう華奢で大丈夫かいなとちょいと不安に見えるが(←失礼)、足はなかなか達者。
 ここへ来る前は車で北海道の山を回っていたとかで、何とも元気な人だ。
 さっきの熊らしい話もしたが、北海道の山へ行ってきたばかりだからか、あまり怖がっていなかった。

  平ノ小屋

  平ノ渡し

 平ノ渡しは予定通り、正午の便に乗る。
 渡船場には手漕ぎのボートも一つあって、おじさんは「二人しかいないからあの小さいヤツだったりして。泳げないんで、もし転覆したらいやだなぁ。」と不安がっていたが、小屋の主人はちゃんと大きい方のしっかりした船を出してくれた。

 湖を対岸に渡り、さらに進む。
 ここからの道は年々崩壊しているのか、木の梯子段がアップダウンを繰り返しながら山肌にくくりつけられている。
 途中、地元の土木屋さんたちが梯子段を補修していた。ご苦労さまです。

  奥黒部ヒュッテへの道

 ここまで来るとまったく人がいないが、それでも二人組の若いニイちゃんと擦れ違う。
 手に竿を持っていたので「どーですか?」と聞くと「まだ、今年は人がそんなに入ってないので魚もスレてないね。尺までは行かないけどイイんじゃないスか。」と気さくに応えてくれた。 
 渓流釣りというよりパチスロ屋が似合いそうな感じで(ゴメン!)、どちらかというとこの若いニイちゃんの方がよっぽとスレた感じ。
 
 
湖から離れると道は格段と良くなって、まるでアメリカの「なんとかトレイル」のようなフラットな道となる。 (行ったことないけど・・)
 持ってきた古い登山地図では平ノ渡しから奥黒部ヒュッテまで3時間となっていたが、結局フツーに歩いて半分ぐらいの時間で着いてしまった。

  奥黒部ヒュッテ

 さらに奥に進もうと思ったら小屋のおじさんに呼び止められ、ここで登山届を提出。
 一人でこれから東沢なんて書くとお咎め受けるかなと思ったが、特にダメ出し無し。 (ホッ!)

 さて東沢だが、今回もまた事前学習をよくしてこなかったのだが、出だしのゴルジュが一苦労。
 側壁は高く切り立っているわけではないので、それほど威圧感は無いのだが、とにかく流れの勢いが強い。とても沢の中を行くわけにはいかない。

  出だしの開けたゴルジュ。流れは深く速い。

 タケちゃんの教えのとおり、ここはなるべく小さく巻き、行き詰ったらまた小さく巻きの繰り返し。主に右岸通しで行く。
 今回は河原歩きの渓流釣りのつもりで来たのでロープはおろかスリング一本すら持ってきていない。あまり大きく巻いてしまっても懸垂下降などできないのだ。

 ブッシュを小さく巻き、またヘツリを繰り返しながら何とかゴルジュを抜け、どうにか歩けそうな河原帯に入る。
 予定では初日に枝沢である一ノ沢との出合まで行きたかったが、そこまで届かず。
 けっこう時間がかかってしまった。

 快適な砂地もあったが、万が一の増水に備え、大きなテーブル・ストーンの上に「ライズ1」を張る。
 焚き木を拾い集めてから、さっそく今回のメインイベントである岩魚釣り。

  一日目の天場

 セオリーどおり、まずは早瀬の落ち込みを狙うが、まったくアタリ無し。
 しばらく様子を見ていると、何と自分が立っているテーブル・ストーンのすぐ下のプール状の所に2~3尾、手頃な大きさのが優雅に泳いでいる。

 たぶんヤツらはこちらの存在にとっくに気付いていたに違いない。
 すぐに岩陰に隠れ、落とし込み釣りで狙ってみたが、まるで反応しない。よく言われる「見える魚は釣れない」とはこのことか。

 岩魚がダメだと焚き火をしてみても、どうも冴えない。
 今回、最初の二日間は「おかずは現地調達」のプチ・サバイバルなので、夕食はレトルト釜飯と粉スープのみ。
 しかたない。さっさと食ってさっさと寝る。


 【写真集・一日目】

  


実践?ウルトラライトハイキング(穂高~槍・編)#3

2011年07月18日 | ロングトレイル

三日目
天候:のち
行程:南岳キャンプ場3:15-槍ヶ岳6:20~30-水俣乗越9:00-横尾11:40-上高地14:25

 前日の反省を活かして、本日は2時起床。3時過ぎには出発する。
 南岳は暗いうちに通過。右側の東の空がオレンジ色に明るくなってくるが、やはり天候悪化が近づいているのか前二日に較べると雲が多い。

 

 南岳から槍ヶ岳への道はそれまでの岩稜帯から一変、なだらかな尾根道で、まるで普通の散歩道のように感じる。
 実際、遠いと思われた槍ヶ岳まで朝焼けの写真を撮りながらかなりのんびり歩いても、登山地図のコースタイムより短縮できた。

 

 

 

 

 

 で、せっかくなので槍の穂先まで登っておく。
 槍は、1979年GW(槍沢経由)、2001年夏(北鎌・上半部、単独)、2007年GW(北鎌・上半部)に引き続き、今回で四度目か。

   

 
 歩いてきた道のり。右手に低く焼岳、そこから左上に向かって西穂-奥穂。

 

 南岳から槍へのなだらかな稜線でのペースで、この先もう一泊すれば笠ヶ岳まで行って下山は十分可能と思われた。
 しかし、槍ヶ岳山荘で確認した天気予報では、明日は
 雨に濡れながら歩き続けるストイックさは、とうの昔に持ち合わせていないので、そのまま下山。
 せっかくなので、歩いたことのない東鎌尾根を水俣乗越経由で下りることにした。

 東鎌尾根は槍ヶ岳東稜や北鎌尾根の展望が良く、槍沢経由のダラダラした下りに飽きた人には

 

 

 

 最低鞍部の水俣乗越から右手の槍沢へ下り、後は横尾-徳沢-上高地とお決まりの道を行く。

 

 

 

 連休最終日とあって、バス・ターミナルに着いた時点で次に乗れるのが3時間半待ちという状態だったが、同じく並んでいた山ガール二名+カップルに声を掛け、タクシー相乗り作戦に成功。 (松本までバス+電車で@2,400円のところタクシー15,000円/5人=@3,000円)
 
 帰りの「特急あずさ」も満席状態だったが、ブルース・ウィリス似のアメリカにいちゃんの隣が空いていて、とってもラッキー! (日本人は外国人が隣だと緊張して遠慮するからね。)
 ブルース氏は持っていた端末で「ナデシコ、コングラチュレイション!」と教えてくれたり、フレンドリーでなかなかイイ奴だった。

 というわけで、とりあえず北ア・ウルトラハイキング第一弾は終了。
 こうしてみると、かつて「山ヤさん ことH井くんが単独で一気にこなした北鎌(末端より)-奥穂-西穂-焼岳の記録はかなり凄い!と改めて思う。
 やはり、このぐらいの体力があってこそアコンカグアやデナリに登ることができるのだろう。
 
 とりあえず自分も一回につき3~4日の行程で、北アルプスを日本海まで歩き繋げてみたいと思っている。

 山行中にも何人かの人にザックの中身を聞かれたので、参考までに。
・ザック(マムート28L。ウェストベルト抜き)約900g
・テント(アライテント「ライズ1」。ポール込み)約960g
・ゴアのシュラフカバー+アライテントのフリース・シュラフライナー。マットはザック背面のパッドのみ。
・ゴアのレインウェア上下。
・モンベルの薄手ダウン(防寒用。コンパクトで良い)、パタゴニアのフーディニ・ジャケット(幅広い気温に対応できて、これも良い)、ノースフェイスの半袖シャツ(三日間着たままでもほとんど無臭)。
・靴はファイブテンのアプローチ・シューズ「Camp4」
・食料は朝はマルタイ・ラーメン+切餅。昼は大福(夏はベタベタになって×)orナビスコ「オレオ」。夜は魚の缶詰+普通のレトルト五目飯をオジヤで。行動用としてカバヤのクエン酸入り塩飴はなかなかgood。
・水は3L。プラティパスのドリンキング・チューブ付き。
・チタンのEPIガス・ストーブ+カートリッジ1個(中身は半分もあれば十分)
・軽アイゼン(雪渓用に持参したが、今回は使わず。)
・ストック(以前、甲斐駒で拾ったヤツ。岩稜コースではかえって邪魔。持つなら二段式のが一本あれば十分。)
・他にはヘッデン、地図、救急用具、帽子、タオル、替え下着、デジカメ、それにi-podなど。あと本当は、夏でも薄手の速乾性グローブは持った方が良いでしょう。

 

 写真集(三日目)
 


実践?ウルトラライトハイキング(穂高~槍・編)#2

2011年07月17日 | ロングトレイル

二日目
天候:一時ガス
行程:西穂5:00-天狗岳6:55-ジャンダルム8:35-奥穂9:40-北穂13:25-南岳小屋キャンプ場16:15 

 午前3時起床。
 4時には出発するつもりでいたが、まだ暗く二度寝してしまうが、これは失敗。
 もたもたしているうちに、早くも2時に西穂山荘を出発した組が続々と上がってくる。
 結局、西穂を三番目スタートとなる。

 

 

 ここから奥穂までのコースは、多くのHPで紹介されているので、詳細は省く。 (←単に面倒くさいだけ?)

 一応、一般登山路では「最難関」と言われているだけあって、それなりのことはあると思った。

 

 

   

 主な点としては、
・乱雑に積み重なる岩は最初のうち、どれもこれも浮いているように見えるが、割としっかりしていた。

・皆が気を張っているだけあって、落石はそれほど無い。

・ただ、やはりところどころで大きな岩が浮いていて、それが崩れたりして、本日も流血事故は二件。

・うち一件は額をけっこうパックリ切ってしまい、ヘルメットを被っていれば防げたかも。私は今回ノーヘルで行ってしまったが、大体八割方がメット着用。

 

・ルートは要所要所に白や黄ペンキで「」とか「→」、ダメな方には「×」と表示してあり、これを見失わないこと。つまりガスや雨の時はわかりづらく、けっこう危険。

・岩は乾いていれば、逆層でもフリクションは快適。ロープはまず使わないが、奥穂から西穂へ向かうコースの場合、「馬の背」の下りなどパーティーによってはあった方がいいかも。

  

・思ったよりはしっかりした岩とペンキの表示、鎖などの安全要素はあるが、私は北鎌上半部とほぼ同等と感じた。ずっと昔に冬にトレースしたはずだが、不安定な残雪期などは同時期の北鎌や前穂北尾根などより悪いのではないか?

といった感じ。

 結局、奥穂までの間に二人抜き、一人に抜かれて本日は二着でゴール。 (別に競争したわけじゃないけど・・)
 西穂山荘から奥穂までは早い人で5~6時間、遅いパーティーで10時間、平均して8時間が大体目安ですかね。 (ヘボオヤジの私が軽荷にして実質7時間ほど)

 奥穂は、1979年冬(西穂経由)、2002年GW(南稜経由、単独)に引き続き、今回で三度目。 

 それにしても着いた山頂は物凄い人!おそらく200人はいるんじゃないだろうか。
 小栗くんが映画「岳」の中で「山においでよ!」と言ったせいか知らないが、山ガール(それも一昔前には考えられなかったような美女)もかなり多い。
 あまりの混雑にいたたまれず、写真を少し撮っただけでスルーし、穂高岳山荘前で小休止。

 涸沢岳まで一登りし、ここから北穂までの鎖場を含むアップダウンがまた、かったるい。

 

 北穂山頂では、居合わせたトレイル・ランナー氏と話をする。
 今日のコースを聞くと、今朝、上高地の帝国ホテル前からスタートして西穂-奥穂-北穂と駆け上がって、これから下るとか。マジですか!
 でも、その人によれば「自分はハセツネにもフル・マラソンにも出たことなくて、この程度ではまだまだ並」とのこと。
 本当にやっている人はさらに槍まで行って、その日のうちに上高地へ帰るとか。
 こちらがウルトラライトなどと粋がりつつ二泊三日もかけてしまうコースをわずか一日で・・・。
 「荷物が軽けりゃ行けますよ。」とその人は謙遜していたが、うーん・・・改めてトレイル・ランナー恐るべし!

 さらに、ここでもう一人、西穂方面からやってきたグリーンTシャツのニイちゃんと出会うが、このニイちゃんがまたパワフル。
 彼は大型ザックの一般登山スタイルだが、昨日は新島々から入って徳本峠越え、西穂山荘前でキャンプ。この日は私同様、西穂から奥穂を経由し、南岳まで。さらに後二日で槍-大天井-常念と回って下山するつもりとか。
  しかも裸足にトレッキング・シューズだし。 (←石田純一か!
 それにしても強者は、ホントどこにでもいるもんだ。つくづく自分の年齢と非力さを痛感させられた。

 で、ここから先の大キレットは、まず見た目からしてウンザリ。
 あんなに下って、また登り返すのか。

 

 北穂からの下りは所々ザレていて、やはり気を抜けない。
 今日一日、岩稜続きでの精神的疲労に加え、そろそろ足にも来ていてペースは遅々として進まず。

 

 

 よほど途中のスペースにテントを張ってしまおうかと思ったが、酒を目当てに何とか頑張る。

 

 夕立も来そうな雰囲気だったが、何とか天気ももちこたえ、ようやく南岳小屋へ到着。
 さっさとテントを張り、小屋で缶チューハイを買い、やっと落ち着く。疲れた・・・。

 

 写真集(二日目)
 


実践?ウルトラライトハイキング(穂高~槍・編)#1

2011年07月16日 | ロングトレイル

 体力の衰えを感じる昨今、せいぜい歩けるうちに北アルプスのメイン・コースをトレースしていこうと思い立ち、まずはその第一弾。
 今回は焼岳-西穂-奥穂-北穂-槍までを二泊三日のテント泊で。 (本当はもう一泊して笠ヶ岳までの予定だったが、台風が近づいているので行く前からは気持ちは断念。)

 ちなみにこのコースで過去に歩いたのは1979年(古っ!)の冬に山岳会の合宿で西穂から奥穂まで。
 後はピークをその都度登っているだけで、ラインとしてはほとんどトレースしていない。

一日目
天候:
行程:中の湯6:10-焼岳9:50-西穂山荘14:05-西穂16:25 (単独)

 前夜、横浜を深夜バス「さわやか信州号」で出発。 (座席は窮屈であまり「さわやか」ではないが・・・
 夏山シーズンということで今の時期、バスは沢渡で地元の低公害バスに乗り換え、釜トンネルの入口「中の湯」で降ろしてもらう。

 

 他に二組下車。私は準備を整え、後からのんびり出発したが、肝心の焼岳への登山口がよくわからない。
 釜トンネル入口の駐在員二名に聞いたところ、左手のちょっと行った先に登山道があったような・・・という返事。

 これを信じたのがそもそもの間違いだったが、その前に私が持っていたのは1993年版(今から18年も前)の昭文社のエアリア・マップ。
 まだ、中の湯も移転前、安房トンネルも開通前の地図で、そこには釜トンネルのすぐ脇から登山道が延びている。

 とりあえずトンネルから左へ200mほど先、土嚢の積まれた工事現場の脇に古い指導標を見つけ、そこから登り始める。

 

 最初のうちは踏跡もあったが、すぐに無くなり、左手に復旧工事中の大きな土砂崩れの跡を見ながらザレと藪こぎで上がって行く。
 先の二組は本当にこんな悪い道を上がっていったのだろうか。沢登りの詰めでルートをミスったような急斜面でかなり悪い。

 そのうち完全に道を誤っていることに気付いたが、今さら正しい道を探して登り返すのも面倒なので、そのままコンパスと勘を頼りに適当に詰めていく。

 この辺りは熊がよく出ると釜トンネルのおじさんに注意されたが、もはや自分がいる場所は完全にそのテリトリー内。実際、熊が住んでいそうな穴倉をいくつも見かけた。
 用心のためホイッスルを吹き鳴らしながら、背丈を越える熊笹を掻き分けていく。

 結局、怒涛の藪こぎをすること約二時間。ようやく正規の登山道に出てホッ。 (←こんなのばっか)
 後から聞いたところでは、現在は移転後の中の湯温泉の裏手(国道旧158号の7号カーブ?)あるいはもっと先の駐車場のある安房峠の所から焼岳の登山道が延びているとか。
  
 自分の採った藪こぎコースはラインとしてはショート・カットだが、体力的には大幅にロス。
 結局、焼岳までたっぷり四時間もかかってしまった。

 

 

 焼岳は今回が初めて。
 登るにつれ硫黄の匂いで、早くも温泉&ビールが恋しくなる。
 山頂はツアー客も含めて多くの登山者で大賑わい。
 落ち着かないので、写真を数枚撮って早々と退散する。

 

 焼岳には山上湖があり、見た感じディカプリオの映画「ザ・ビーチ」の舞台となったタイのピピ島を思わせ、ちょっとテントを張って一泊したい場所である。

 

 眼下の焼岳小屋は間近に見えるが、小一時間ほどかかる。
 小屋は鄙びた感じで、なぜか玄関脇に高齢のご一行様がずらりと並び、湯治場風?

 

 ここから先、西穂山荘への道は人の数もグッと減る。
 樹林帯の道で、朝一の藪こぎ、さらにこの日の暑さもあってちょっとグッタリ。小休止してはそのまましばらく居眠りしてしまう。
 今年のGWにこのコースを逆から歩いて焼岳に行こうとしたが、やはり地形が複雑でトレースが無いと自分には無理だったというのが改めてわかった。

 西穂山荘に到着。
 雪の無い時期に、ここに来るのは初めて。
 ものすごい賑わいで、色とりどりのテントがビッシリ張られている様子は、まるで夏の湘南海岸。

 

 暑さで水をだいぶ消費してしまい、山荘で水2L+ポカリのペットボトルを調達。
 今回はテント泊だがあまりストイックにならず、水などはコンビニ代わりに山小屋で補給することにした。

 本当は一日で焼岳経由で奥穂まで行くつもりでいたが、ここにきて自分の思い上がりを痛感。
 とりあえず行ける所まで行くことにする。

 

 独標までの登りはかえって雪のある時期の方が登りやすい感じ。
 頂上では、おばちゃんたちが「ここから先は上級者だけが行く道だから。」などと話していたので、見た目、完全に日帰りハイカーの私は注意されそうだったが、彼女らがよそ見しているうちにサッサと擦り抜ける。

 独標からの最初の下りはちょっと悪い。
 その先、西穂までは13ぐらいの小ピークがあり、13→12→11・・・とカウント・ダウンする形でアップダウンが続く。ピラミッド・ピークは8峰。

 

 独標から先は天場が少ない。
 なるべく先に進みたかったが、夕立も来そうな気配だったため、そろそろ天場を探しながら進む。

 結局、西穂山頂の一角に一人用テント一張り分の平らなスペースを見つけ、そこに陣取る。
 冬だと風が厳しそうだが、張り綱用の岩は十分。360度の展望が広がる最高のスペースだ。

  

 一つ先のピークでは四人組がやはりテント泊のようで、夕暮れの中、彼らの黄緑色のエスパースが蛍のように光ってなかなか幻想的だった。

 

 写真集(一日目)