日程:2017年10月27日(金)~29日(日)二泊三日 単独
今年は週末になると、ことごとく天気が悪く嫌になる。
関東甲信越は雨ということで、しからばと東北遠征を企てた。
岩手はつい三か月ほど前に葛根田川~大深沢で行ったばかり。次回はゆったりした東北の山歩きと考えていたのだが、まさかこんなに早く再訪するとは思わなかった。
今回も往きは高速深夜バス。
前日の木曜夜に横浜を出て、朝6時ジャストに盛岡着。料金は4,400円。相変わらず安い!
行程:八幡平バス停11:30-八幡平頂上11:50-畚(もっこ)岳12:50-諸桧(もろび)岳13:40-嶮岨(けんそ)森14:40-大深山荘15:15
天候:曇のち晴れ
まぁ、それでも苦にもならず文庫本など読んでのんびり構える。
昨日までの予報では日曜まで天気はもちそうだったが、やはり台風は着々とこちらへ進んでいるようで三日目は雨となりそう。ちょっと憂鬱だ。
七月の大深沢の一件以来、山の天気には少々過敏になっている。まぁ天気が崩れたら、途中で下山すればいいか。
岩手山の上部は既にうっすら冠雪している。紅葉もピークを過ぎてしまったようで、曇り空のせいかいまいち山へ向かう高揚感が湧かない。
平日のせいか八幡平へ向かうこのバスも自分のほか途中から乗ってきた女性ハイカー二人だけだ。
ここは岩手県と秋田県の丁度県境。つい最近降ったようで路肩には雪がいくらか残っている。
しかし風が無いせいか、それほど寒くない。道も少し白くなった所はあるが、持ってきた軽アイゼンは使わなくて済みそうだ。
ザックを道の脇の草むらへ隠して、空荷で遊歩道を行く。すると、20分ほどで着いてしまった。一応、ここも百名山。まったく意識してなかったが、新たにカウントを一つゲット。
しかし、頂上には展望台となるやぐらが組まれているおり、正直何だかなぁといった感じ。
おそらくここは最も簡単に登れる百名山ではないだろうか。
もちろん深田久弥先生の選定基準はピークだけでなく、山懐も含めて広い範囲で八幡平という山を評価し捉えているのだろうが、うーん、それにしてもといった感じである。
車道を少し歩いて畚岳への登山道に入る。
登山者はほとんどいないが、それでも途中で外国人カップルと中高年のグループと擦れ違う。
地図上の直線距離で約25km。これから行く裏岩手縦走路はかなり曲がりくねっているので実際には60kmぐらいか。
感覚としては奥秩父全山縦走(瑞牆山-雲取山)に近い。
険阻森はその名のとおりピークが少しだけ険しくなっている。
向かって左側(東側)が切れ落ち、眼下には鏡沼が見える。
ここらの池(沼)には当然普通に歩いていける道は無いようで自然のまま。そして八幡平の地図を広げてみるとこういった池が大小数え切れないほどある。
時間があればぜひ行ってみたいものだ。
三か月前、びしょ濡れになってこの小屋にたどり着いてホッとしたのを昨日のことのように思い出す。
一応、ドーム型のシェルターも持ってきていて途中で泊まることもできるが、この周辺は熊が非常に多い。
やはりここは無理せず、綺麗な大深山荘を使わせていただいた方が得策である。
家族がいるが時々こうして一人で「家出」するそうで、特にガツガツ歩くわけではなく、明日もここらでのんびり過ごし、この小屋でもう一泊するそうだ。
そんな山登りも、この木の香りがする清潔な小屋ならしてみたい。
二日目
行程:大深山荘6:10-八瀬森(やせもり)山荘8:50-曲崎山10:30-大白森山荘12:30-大白森13:00~10-田代平(たしろびら)山荘15:20
行程:晴のち曇
餅入り棒ラーメンの朝食を終え、盛岡の人に見送ってもらい、出発。
今日は長丁場だ。
盛岡の人が言うには、分岐から先は笹のブッシュを刈っていない所があり、わかりにくいとか。
確かにそうだったが、まぁ沢登りの詰めの藪漕ぎに較べれば大したことはない。
そんな道を枝を掻き分け進んでいくと、ぬかるんだ地面にはくっきりとまだ新しい熊の足跡。
今回はスタートの八幡平から常に熊鈴を鳴らして進んだが、ここらは完全に熊のテリトリーだ。
あの時は湿原に黄色いニッコウキスゲが咲き乱れ、別天地のようだったが、今は枯れすすきが一面被っており、寂しい限りだ。
小屋で小休止した後、次のピーク曲崎山へ。
曲崎山への登りは、おそらくこの裏岩手縦走路の中で一番の急登かもしれない。
しかし、それも北アルプスのように途中何度も立ち止まって休憩するような苦しい登りではなく、何となく辛抱して歩いているうちにいつの間にか頂上へたどり着いてしまう、そんな感じだ。
曲崎山からの下りでは珍しく年配のトレイルランナーに会った。
高低差がそれほど無いので確かに走りやすいだろうが、悪く言えば単調。
時折視界が開けるが、見渡す山はどれものっぺりしていては、ちょっと刺激が少ない。肉体的には楽かもしれないが、精神的にはきつそうなトレイルである。
ここで小休止。チョロチョロと流れる小沢で水を補給していると、熊鈴の音が近づいてきた。
話をすると神戸から夜行バスでやってきて、今朝松川温泉を出発。自分と同じコースをたどって来たらしいが、めちゃくちゃ速い!
こちらはもう歳だし、二年前に左膝を故障してからは山でもそんなに急がなくなったが、それでも登山地図のコースタイムはそれなりに短縮している方だ。
しかし、彼女のスピードは半端じゃない。見ると最近流行りの軽量ザックにWストックというウルトラライト・スタイルだが、只者ではないなと感じた。
「お先に」と言って先へ進む。
広大な頂上湿原がベージュ色の草原となって広がる。
そう、この広大な枯草の湿原は、まさにケニアのサバンナだ。
おそらく夏はまったく違った爽やかな湿原なのだろうが、今はその辺の草陰から今にもヌーやバッファローの群れが出てきそうな雰囲気があった。
明日は天気も下り坂で今日のうちに下山し、夜行バスで一日早く帰ってしまうとという手もあったが、せっかくここまで来たので、予定どおり田代平へ向かう。
途中で案の定、先ほどの健脚女性に抜かれ、最後の登りはヘロヘロになって田代平山荘着。
いろいろ話をしたが、神戸から東北の山へ両夜行バスを使ってくるなんて本当に元気があるなと感心した。
三日目
行程:田代平山荘6:00-乳頭山6:40~50-笊森(ざるもり)山8:00-湯森山9:05-蟹場(がにば)温泉10:55
行程:曇のち雨
雨が強かったらこのまま最短距離で乳頭温泉へ下山するつもりだったが、それほどではないので行ける所まで当初の予定通り進むことにする。
西側から見るとわずかに盛り上がった貧乳だが、頂上付近は岩に覆われ、反対の東側はちょっとした断崖となっていて荒々しい。
とりあえず視界は利いたが、どんよりと曇って景色はいまいち。
ただ、この辺りは池塘があちこちに点在し、晴れていればさぞかし美しいトレイルだろうと思った。
そしてあっという間に見えなくなった。特段走っているわけでもないのに、こんなに歩くのが速い女性は初めて見た。
前半の単調なトレイルに較べて、この後半の乳頭山から秋田駒への道は晴れていればさぞかし美しい風景が広がるだろう。しかし、あいにくの天気で残念だ。
最後は笹森コースを下って乳頭温泉郷へ下山。
地図の文字が小さくて、これまでてっきり「蟹湯」だと思っていたが、「蟹場」が正解。しかも読み方も「かにば」でなく「がにば」が正しい。
何でも昔、沢蟹が沢山いた場所らしい。
その後、風情のある内風呂にも入ったが、まぁまぁ。料金は日帰り入浴600円。「秘湯度」は思ったほどではなかったが。
近いうちに次回は岩手山、そして岩魚と温泉を求めて東北の山はこれからも再訪したい。