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念願の平等院鳳凰堂へ、雷が響く

2017年05月01日 | 旅行記
水に映る平等院鳳凰堂(京都府宇治市)を見るため、宇治に宿を取った。

大学の授業で知って以来、鳳凰堂へ行くのは念願だった。
昨年、法隆寺(奈良県斑鳩町)へも行ったが、個人的な日本美術史研究のためであって、宗教的意味は持たないことを明記したい。

さて、当日の天気予報は「晴れだが急変に注意」「ひょうが降る可能性」である。
8時30分の開門15分前、10人ほど並んでいたのが、あっという間に長蛇の列になった。
参道はくねくね曲がり、寺院というより広い庭のようである。
かつて平安貴族の別荘だった所に建てたので、開山して建立する一般的な寺と異なる印象を与える。

【藤の花が満開、腹の大きな蜂が夢中で花の蜜を吸っていた】

拝観券(600円)を購入して門をくぐり、本堂内部拝観(300円)の整理券を受け取り、20分ごと50名ずつ入場する。
朝一番で整理券をもらっても堂内拝観が9時半からなので、1時間は待たなければならない。
しかし、新緑の美しい平等院を散策し、近づいたり遠のいたりしながら鳳凰堂を見学、グッズを買っているうちにあっという間に時間が過ぎていった。

写真では華やかな朱色に見えるが、くすんだピンクに近い朱色であった。
平成の大修復では、創建当時と同じく、使う毎に土を混ぜて塗料を作ったそう。

鳳凰堂がはっきりと水に映るのは、朝の10分間だけだった。

前日の午後訪れた時は、もっとぼんやりとしていた。
人の気配で池の中の鯉が活気づき、水が濁ってしまうのだろう。

名前の由来となった鳳凰像(レプリカ)
正面が東向きなので、鳳凰のバックに太陽が沈む。
「平等院ミュージアム鳳翔館」(拝観券で入場可)にある実物は、金箔が剝げ落ち全体が青銅色になっているが、精巧で美しく堂々たる風格。

屋根瓦なども一つ一つ丁寧に修復されている。

本堂内に安置されるのは、1053年に定朝(じょうちょう)が造作した「阿弥陀如来像」と、周囲の長押(なげし)に掛かる「雲中菩薩像群」(約半数はレプリカ。実物は「平等院ミュージアム鳳翔館」所蔵)である。
雲中菩薩は雲に乗り、子供のような姿で歌や舞い、奏楽などをしている。
壁絵も見られるが、老朽化が激しかった。
それにしても堂内の宇宙観。平和、調和、安穏……。
当時の浄土信仰や末法思想の始まりは、この仏像を中心に広がっていったのだろう。


突然、空が暗くなり、雷の低い唸りとともに雨が降り出した。
人々は傘を差したり、木や屋根の下に駆け込んだりしている。
その時私は阿弥陀如来像の傍に立ち、本堂内にいさえすれば、絶対に永遠に大切に守られるような気がした。1000年近く守り続けられたこの仏像のように。

雨も、私の気の迷いも、一瞬の事だった。
やがて雷も遠のいていった。

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