岡山の仕事先の近くでは、
川の氾濫で家が壊滅しているところがある。
それでも、それは、ほん、川の近く。
運が悪いというか
立地条件が悪かったというか
致し方ないな。と、思う事で、胸にちかっと刺さる痛みを緩和している自分がいた。
そして、ある日。
マイ・カーの試運転をしようと高橋が言う。
「試運転?」
なんで、試運転なのだと腑に落ちない。
「ほら、メーターの・・・」
あっ、そうだ。
車検後、スピードメーターが壊れた。
60kmで走ってるのに、30kmとか、とんでもない「嘘」をついてくれる。
で、メーターを直して
コンデンサ交換だけだったとニコニコ。
で、ついでに?
メーターの板?を直す。(黒い部分)
製図して、コピーして、白いところは切り抜き
な~~~んか、細かい作業をしていたところを見ると
メーター針?の方にも不具合があったのだろう。
そのメーターの調子を見ようということで、
「試運転」なのだ。
代理、用事があり、
2~3時間ほどなら、付き合うということになった。
それで・・・
真備・・・のほうに向かった。
営業している店があるのが、不思議なくらい。
あちこちの家がすべての窓をはずし、開け放たれ
家の中には、荷物もない。
被災して人が住んでいない目印のごとき、
開け放たれた家々が続く。
こんな状態で店を開けてお客さんがくるのだろうか?
それでも、真備を生活を復興させようという思いを一心に
店を開くのだろう。
なにか、別の場所の川の近くの家の倒壊については、
運が悪いというか
立地条件が悪かったというか
致し方ないな。と、思う事で、胸にちかっと刺さる痛みを緩和している自分がいた。
と、痛みを逃れることができたが、
真備は、・・・
真備も・・そうとしか言いようがない。
運が悪い。
立地条件が悪い。
真備も‥そうとしか言えないところはある。
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政府は2005年、各地方自治体に浸水のリスクと避難所の場所を示す「ハザードマップ」の公表を義務付けた。
倉敷市でも2年前、ハザードマップが作られた。この地図上で、真備の大部分は紫色で塗られている。洪水が起きた場合、浸水する可能性が高いことを示す。
そして、この紫色の地域は、実際に今回の豪雨で浸水した地域とほぼ重なる。しかし、真備の住民に、このハザードマップは周知されていなかった。
気象庁によると、7月6日の1日の降水量は138.5ミリ、倉敷市としては観測史上2番目の多さだった。7日未明、小田川と高馬川の3カ所で堤防が決壊し、真備に水が流れ込んだ。
倉敷市のハザードマップは降雨量の少ない地域であることを前提に作られている。岡山県のホームページは「晴れの国、おかやま」として、年間を通じて雨が少なく、日照時間が多いとことを伝えている。
ただ、同時に河川が短く急な斜面を流れていることから、いったん大雨が降ると洪水が起こる危険があるとも示されている。
浸水した家からボートで救助されたある80歳の男性は、ハザードマップについて「役所から来た何かのお知らせの1つだと思った」と話した。「水がすごい速さで上がってきた。警戒が足りなかった」。
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深いところでは、5m以上の深さになったという。
被害者は、高齢の方が多く、仮に2階は浸からなかったとしても
2階に避難する間もなかった。
元気なお年寄りばかりではない。
水が流れ込んできたと判ったときには、もう水平移動は不可能で、
垂直移動(2階にあがるなど)するにしても、
流れ込んできた水に足を取られ、階段にたどりつけないまま
1階で亡くなった方がほとんどで、原因は溺死だったと・・。
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廃墟というと違うのだけど、
人が住めない・住まない家が、何軒も続いている様子をみていると、
廃墟という言葉が廃虚という言葉に置き換えられてくる。
廃れ(すたれ)虚しい(むなしい)
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ところが、その試運転から何日かたったある日。
岡山の仕事先のプログラム確認にでむいた。
成羽川と高梁川が合流するあたりを通り
総社をぬけ、倉敷を回って帰ることにしたのは、
たっぷり、時間があったせいと、
いつもの通り道では、昼食場所がないということで、
遠回りになるが、そちらを帰ろうということになったのだが・・・
県外の人間の認識不足であった。
倉敷の地名が出てくるあたりになると、
高梁川の土手の右下手に、窓をあけ家財のない水害にあったと思われる家がいっぱい見える。
「え?高梁川が決壊した?増水した?」
一瞬、そう思った。
だが、今までのルートでは、決壊・増水した痕跡が見当たらなかった。
おかしいなあ。と、思った時だった。
倉敷市真備町の地名標識がみえた。
なんともいえない複雑な気分だった。
個人的な感慨なのでお許しいただきたいが
「総社をぬけて、倉敷・2号線にでよう」
と、言われたとき、
ー真備のほうは通らないよねーと、確かめた。
高橋も前回、真備の状態を見たのが応えていたんだろう。
「むごい様子はみたくないからね」
と、真備は避けて帰れるものだと思っていたようだった。
だから、なおさら、2階まで浸水した住居をみても
ましてや、恐ろしいほど広い高梁川の川の水害のあと(木や土手の様子)をみれば
高梁川のどこかで、増水した?と考えてしまった。
その高梁川が増水したらもっとひどいことになっていたとは思うが・・・
真備が高梁川と小田川に挟まれた地域で
もう少し下流で高梁川に小田川が合流している。
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県河川課などによると、新たに決壊が確認された5カ所は、高馬川の右岸1カ所、末政川の左岸2カ所と右岸1カ所、真谷川の左岸1カ所。小田川との合流点付近が破堤しおり、約300~20メートルにわたって崩れていた。真備町地区では全体の3割に当たる約1200ヘクタールが浸水し、約4600戸が浸水被害を受けたとみられている。
現地調査した岡山大大学院の前野詩朗教授(河川工学)は「豪雨によってバックウオーター現象が本流の高梁川と小田川との合流点付近でも起き、小田川の水位が上がって高馬川など3支流の水が流れにくくなり、堤防の破断につながった可能性が高い」と分析している。
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世帯数は約9000世帯(もっとかもしれない)
店や工場や病院など公的施設も4600戸の中に含まれるとしても
単純に1世帯に1戸と考えると
全世帯の半分が被害にあっている。
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しかし、被害と一口にいってしまうが、
深いところでは5,3m
これは、2階建ての2階の床上浸水
平屋なら屋根がすっぽり埋まる。
加えて、土地の高低もある・・・。
山手町の冠水で当家も床下浸水に相なったが、
一室の床・床板を直しただけで終わっている。
それも、状態としては、通気口を塞いだなどの処置で
被害が一番少なかった床下である。
他は床下換気扇などを配置しており、
換気扇ごと水没していたから、他の場所は浸水したと思われる。
当家の床下は増築、建て替え?などの履歴があり、
床をはぐると、各部屋ごとに床下の様子が違っている。
以前の基礎が残っていたり、床の土地の高さが違っていたり。
このため、被害ははぐってみないと判らないが
建物の裏側まで水がついて、裏口を開けると、20cm~30cmくらいの
水たまりができていた。
いっさい、床上に水があがってはきていないのだが・・・
治した床下も、わずかに水が入り込んだようだった。
その威力というと、なんだけど・・・
一部の床板が湿気で朽ちていた。
(経年劣化の関係もあるが)
水がほとんど入ってなくてもこの調子だった。
忙しさにかまけて、床下の直しが進められず
最近、やっと、浴室あたりの2畳ほどをはぐってみたのだけど・・・
5~6年前に床板を替えたものが、裏側は湿った状態で、もう、黒い黴を発生させていた。
床下浸水で、この調子なのだから、2階まで浸かった家は、
よほど、風通し・水はけの良いところでないと
朽ちていくだろう。
さいわい当方の床下換気扇は音がわるくなったものの
無事稼働したので、水が引いてからずっと、喚気している。
これも、何年か前に高橋が床下に潜り、取り外して掃除しておいたのだが
その時に、羽に土埃がこびりついていた。
それを掃除しておいたのが良かったのだと思う。
もしも、そのままだったら・・冠水で、溶けた泥が細部に入り込んで
動かなくなっていたかもしれない。
が、真備で窓をあけて換気している家は電気も通って(通して)いないだろう。
床下に扇風機をいれたりして換気をはかることもできない。
そして、泥水はいろんなものを飲み込んでしまっている。
娘の冠水した車はそこらじゅうをはぐり、水洗いしまくったが
バックシートがなかなかかわかず、かわくまで、腐った漬物のような異臭がただよった。
それが、家ごとつかったら、建材のなかまで泥水がしみこむ。
おまけに、水洗いすることもできない。
一切合財の家財をなくし、住むこともできず、家の補修をする。家財を整える。
そんな金をどうやって工面できるだろう?
仮に政府がなにもかも面倒を見てくれるとなっても、
この先の不安はなにも解決していない。
高梁川も堤防すれすれまで水があがってきていたのではないだろうか?
この先の天候もどうなるか判らないし
河川の含水能力も限度がある。
再び、真備に戻る気持ちになるだろうか?
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実際、山手も2年前(2016年 )よりひどい冠水をうけてしまい
あちこちのアパートが空室状態だし
当方も、もう少し安全な場所に越した方が良いのではないかと考えを巡らせてはいる。
だが・・・
現状の敷地や、間取りを考えると、見合う条件の立地物件はなく
あれば、懐のほうが条件拒否を起こす。
そして、いくつかの空き家を検討してみると、
いずれも、浸水被害を懸念せねばならないか
生活に不便な場所ばかりだった。
山手を出ていこうかと考えてしまう大きな原因が
やはり、芦田川の保水力だろう。
床下・多少の床上は対処のしようがあるが
怖いのは、芦田川の増水・決壊である。
そこを思うのが、河口堰でもある。
画像中央の河口堰。右側は海である。
今回、満潮が重なり、河口堰をあけると、海の水が川のほうにはいってくるということだった。
そういう点では確かに堰になって守られているのだが・・
逆に堆積土が河口堰から流出していかないということで、
定期的な堆積土の除去を行う必要もある。
だが、実際は広大な範囲の堆積物を苗床に木々が生い茂り
今年は、かなりの木々を根から伐採していた。
川向こうに福山の町がみえるようになったが
まだまだ、木々は多く
おまけに、苗床になっていた堆積土までは除去できぬまま
今回の災害になり流れてきた土が堆積し
今は、川の中に砂漠が見える。
おそらく、河口堰近辺も堆積土だらけになっているだろう。
国体の時にカヌー会場になった芦田川河口も、
カヌーを漕げないほど堆積土がつもっていると聞いた。
来年の梅雨時までに、これをすべて取り去ってくれれば
なんとか、安心できるかもしれないが
この写真でもわかる通り、木々はへったが、
堆積土がふえた状況で同じ保水確保は無理だと思う。
むろん、山手町冠水は芦田川決壊ではなく、
排水ポンプの停止(水没したと聞く)によるもなので
排水ポンプの設置場所改良やポンプ増設で切り抜けることはできる。
真備の河川バイパス工事が50年前から案があり
来年いよいよ着工ということらしかったが
結局、間に合わなかった。
あぶないと判っていても、生活の利便性を考えてしまう。
マーケットが近い。医者が近い。学校が近い。
ましてや、老人が車の運転がおぼつかなくなり
高台から平地に居を移すこともおおくなったろう。
真備で・・・
不便に苦しみながら高台で生き延びたことと
利便性に富んだところで2階にさえ逃げれなかったことと
あるいは、同じことだったのかもしれないと思う。
高台で足が萎えてしまえば生き延びるのはむつかしかったかもしれない。
同じことだったかもしれない。
だとすれば、少しでも楽にくらせてこれた平地に過ごせたことが良かったのかもしれない。
******
高橋はやっと本業をおえて、裏がわのかけおろしの土台を直している。
前回、水が侵入してきた部分を囲んでいる。
なんとか、せめても、同じことにならないように
いろいろ、対策はねらなきゃいけない。
*******
なにも、川や土手ばかりが悪いわけじゃない。
あちこち、舗装して、土の中に水が逃げ込むことなく、
水は地表を走っていく。
あるいは、各家が雨水貯水槽をもたなきゃいけなくなってきているのだろう。
いずれ、建築条件に設定されるのかもしれない。
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