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まあるい地球

雑多な内容のブログです。

日記 私の父 4

2023-06-03 07:02:00 | エッセイ
日記. 私の父 4


父はまた、オシャレさんでございました。


母が出産入院中、急に父に召集がかかり、母は、まだかまだかと父が来るのを待っていたそうです。

予想以上に遅れてやって来た父の着物姿を見て、母は怒り心頭になったそうです。

そう、父はわざわざ仕立てたばかりの着物に着替えて、母の待つ病室に現れたのでした。笑

着物姿を、看護師さんたちに見せたかったのでしょうか。笑



父は、サイズ的なこともあったのでしょうか、スーツ、着物などは自宅へ仕立て屋を呼んで、誂えておりました。


パーティー用のスーツ、何種類かの蝶ネクタイ、勿論、燕尾服などもございました。



髪は天然のクルクルパーマで、人に聞かれた際には、パーマを当てていると答えていたそうです。


歯なんかも、当時の流行りで、金歯が幾つか入ってございました。



そんなシャレオツな父でございましたけれど、休みの日には、楊柳のステテコと楊柳の七分袖の下着、腹巻きで畑作業に勤しむのでございました。(バカボンのパパですね。笑)


雪駄は、サンダル代わりでございました。



普段使いの車も普段は商業車のワンボックスで、高級外車は普段はシャッター付きの車庫へ仕舞っておりました。
















日記 私の父 3

2023-06-02 05:03:00 | エッセイ
日記 私の父 3


父は、例えば子供とキャッチボールをするといったような、遊び相手になりながら子供との関係性を築く、といった様な、所謂子育ては、ほとんどしない人でございました。


ただ、毎週日曜には子供たちを連れておもちゃ屋へ出向き、好きなオモチャを買い与えてくれました。


ファミコン以前のテレビゲームなんかも、近所ではうちにだけにしかなく、よく近所の子どもたちが遊びに来ておりました。


子供たちが欲しい物は、大概全て買ってくれました。


レストラン、食堂などへも毎週連れて行ってくれました。



父の散髪の際にも子供たちを連れて行き、待合室で散髪し終わるのを、私は楽しみながら待っておりました。


そこは家から歩いて5,6分ほどの、夫婦で営む理容院でございました。



蒸しタオルの熱い蒸気を飛すため、タオルに空気を入れる様。

その蒸しタオルを顔に当てがわれ、気持ちよくしている父の様。

白い陶器の器の中で、刷毛で泡を掻き立て、蒸しタオルを剥ぎ取って、顔にパタパタと泡を塗っていく様。

そうしていよいよ髭を、ジョリっと剃ってもらう。


子供ながらに、それがどれだけ気持ちの良いものなのか、私も髪はこちらで切ってもらっていたので、蒸しタオルの快感は、手に取るように、わかるのでございました。


また、そこの待合室には瓶の中に作られた、帆船の置物が飾ってございました。


同じく帆船が描かれた瓶のヘアクリームが幾つか並べられていて、父の髪にも付けるそのクリームの香りが好きでした。


重厚感があり過ぎる黒い散髪椅子。

適度に配置された観葉植物。



そんな光景を嬉々として眺めながら、父の散髪を楽しんだのでございました。












日記 私の父 2

2023-06-01 04:20:00 | エッセイ
日記 私の父 2


またこんな話しもございます。

町内の昔ながらのタバコ屋さんへお使いに行く都度、そこのお婆ちゃんは、あの時はあなたの父に助けられたんだ、ありがとうと、よく話して聞かせてくれたのでした。


その理由を詳しく母に聞けば、そのお婆ちゃんは、訪問販売のセールスマンに騙されて、布団を数十万円で買わされ、途方に暮れ困っている話を、タバコを買いに来た父に話したところ、父はその半値で布団を引き取った、との事でございました。

通りで布団は、フッカフカなんでございました。笑



父の死を、早すぎると周りからはよく言われたけれど、何に遠慮せずとも行きたい道を突き進み、それなりに達成感をも得、家族の事を考えれば無念ではあるけれど、それでもそれなりには、納得できた人生だったんじゃないかなて、そう考えるのでございました。



『 あんたんとこのお父さんはな、お母さんに惚れて惚れて惚れ込んで、結婚したのさ 』と、父の死後、酒で酔った親戚のおじさんは、まだ子供の私に話して聞かせるのでありました。


父の、母への焼き餅焼きは相当なものだったらしいです。


母からもそんな話しを聞かされておりました。


仕事に出かけたと思ったらひょっこり帰って来て、父不在中、逢引きでもしてなかろうかと、家の様子を伺ったりしたそうです。笑


そんな時に限って母は、寿司の出前を取ったりしていて、微妙にバツが悪かったと、苦笑いしておりました。



また母は、父からこんな事も言われていたようです。


『 もしおまえが他の男といたら、髪の毛を鷲掴みにし、脳みそを抉り出してやる 』とかなんとか、まあ所謂、脅しでありました。笑


歳も一回り以上離れた上に、幼い頃から美人さんで有名だった母を、父は心配で心配で、この上なく、心配だったのでしょう。笑



生来母は、浮気なんてする性分では到底なく、そんな脅しを聞かされても屁のカッパ、何一つ恐くないのでございました。