日記 私の父 2
またこんな話しもございます。
町内の昔ながらのタバコ屋さんへお使いに行く都度、そこのお婆ちゃんは、あの時はあなたの父に助けられたんだ、ありがとうと、よく話して聞かせてくれたのでした。
その理由を詳しく母に聞けば、そのお婆ちゃんは、訪問販売のセールスマンに騙されて、布団を数十万円で買わされ、途方に暮れ困っている話を、タバコを買いに来た父に話したところ、父はその半値で布団を引き取った、との事でございました。
通りで布団は、フッカフカなんでございました。笑
父の死を、早すぎると周りからはよく言われたけれど、何に遠慮せずとも行きたい道を突き進み、それなりに達成感をも得、家族の事を考えれば無念ではあるけれど、それでもそれなりには、納得できた人生だったんじゃないかなて、そう考えるのでございました。
『 あんたんとこのお父さんはな、お母さんに惚れて惚れて惚れ込んで、結婚したのさ 』と、父の死後、酒で酔った親戚のおじさんは、まだ子供の私に話して聞かせるのでありました。
父の、母への焼き餅焼きは相当なものだったらしいです。
母からもそんな話しを聞かされておりました。
仕事に出かけたと思ったらひょっこり帰って来て、父不在中、逢引きでもしてなかろうかと、家の様子を伺ったりしたそうです。笑
そんな時に限って母は、寿司の出前を取ったりしていて、微妙にバツが悪かったと、苦笑いしておりました。
また母は、父からこんな事も言われていたようです。
『 もしおまえが他の男といたら、髪の毛を鷲掴みにし、脳みそを抉り出してやる 』とかなんとか、まあ所謂、脅しでありました。笑
歳も一回り以上離れた上に、幼い頃から美人さんで有名だった母を、父は心配で心配で、この上なく、心配だったのでしょう。笑
生来母は、浮気なんてする性分では到底なく、そんな脅しを聞かされても屁のカッパ、何一つ恐くないのでございました。