トランプ・アメリカ政権は、4月6日(日本時間7日)、国連安保理決議もなく(明確に国際法違反)、アメリカ議会の承認さえもなく、巡航ミサイル「トマホーク」59発を突然、シリアに発射しました。
これに対して、安倍首相は、トランプの狂気の軍事攻撃に対して「米国政府の決意を日本政府は支持いたします。」「米国の行動」を「理解している。」と同調の意思を表明し、東アジアの大量破壊兵器の脅威(北朝鮮問題)にも触れ次のように発言して、日本の国会承認もなしに、国際法違反のトランプの戦争行為に支持を表明しました。
「シリアにおいて再び化学兵器によって何の罪もない多くの一般人が犠牲となりました。幼い子供たちもが犠牲となった惨状を目の当たりにして、国際社会は大きな衝撃を受けています。極めて非人道的であり、国連決議にも反します。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を日本政府は支持いたします。その上で、今回の米国の行動はこれ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解しています。 そして、東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増しています。その中で、国際秩序の維持と同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを日本は高く評価します。 今後、米国を始め国際社会と連携をしながら、世界の平和と安定のために日本は果たすべき役割をしっかりと果たしてまいります。」(安倍首相)
トランプ氏のシリア攻撃については、米中首脳会議に先立って、フロリダ州パームビーチの声明でその主旨は既に発表されていました。トランプ米大統領は、習近平夫妻をパームビーチの「マールアラーゴ」に招いて夕食会を開き、その最中に攻撃は、実施されトランプ氏はその後、マティス国防長官から戦果について説明を受けて、記者団にシリアへの軍事攻撃を命令したことを正式に発表しました。 今回のトランプ政権の突然のシリア攻撃は、オバマ政権の2013年当時の戦争回避政策をも反故にしてしまったと批難されるべき卑劣な行為でした。(今回の攻撃で、シリアの民間人にも犠牲が出ていると報道されています。)
(今回のアメリカによるシリアへのミサイル攻撃に関し「テロと戦う政府への攻撃は過激派の思うつぼであり、地域および世界の安全保障に対する脅威を増すだけだ」とロシア外務省は述べました。2013年に、内戦が続くシリアへの対応をめぐって、ロシア・プーチン政権とアメリカ・オバマ政権とのシリア戦争回避の合意を思いだした人も多いと思います。2013年のホワイトハウスでのG20会議では、日本やアメリカを含む10カ国がアメリカの主張する「強力な国際的な対応」(シリアへの武力介入)を求めましたが、ロシア提案が発表されると、世界各国からは、和平を指示する意見が相次ぎました。ドイツのメンケル首相は、「国際社会は軍事行動を避けるため、あらゆる手段を模索すべき」と主張しました。当時もプーチンは「ノーベル平和賞を受賞したオバマ氏に言いたい。」「犠牲になるシリア市民のことを考えるべきだ。」「武力行使は紛争をシリアの外に広げるリスクがある」「安保決議承認のない攻撃は侵略だ」等とアメリカの戦争志向を真正面から批判しました。(チェチェンやウクライナやクリミア等、プーチン政権の暴挙は脇において、その主張は正論です。)2013年9月14日には、ジュネーブでシリアの化学兵器を廃棄する枠組をアメリカ・オバマ政権は受け入れ、シリア戦争は当面回避されました。そして、当時の国際社会はこの米ロ合意を支持しました。)
今回のフロリダの米中会議でトランプ氏は、対北朝鮮に対しアメリカの「単独行動も辞さない考え」を習近平氏に伝えたと報道されています。トランプの次の狂気の戦争行為で懸念されているのが、北朝鮮への攻撃です。(今回のシリア攻撃は、北朝鮮経済の「後ろ盾」となっている中国に対する警告行為ではないかと邪推する人もいるようです。ロシアのラブロフ外相はアサド政権軍が4月に化学兵器を使用したというのは「事実に反する」と主張し、国際調査を要求したと言われています。)
しかし、実際に、アメリカが北朝鮮を攻撃し、北朝鮮が崩壊すれば、離散家族や拉致者が犠牲になるだけでなく、2,400万人の同胞が難民化し、実際、飢える北朝鮮の人民の面倒を見なくてはいけないのは、韓国です。ドイツの時とは全く違い、北朝鮮の実態経済は平壌を別にすれば、悲惨な状況です。現状で北朝鮮が崩壊すれば、韓国の国民一人あたりのGDPもいっきに低下するとみられています。しかも、北朝鮮の同胞の血を流すだけでなく、朝鮮戦争の時のように、地理的に近いソウル近郊をはじめとした韓国や中国にも大きな犠牲が出ることも推定されます。
1994年のクリントン政権の時代に、アメリカによる北朝鮮への先制攻撃の一歩手前までいったときに「もしも米軍が戦争を始めたとしても、韓国軍は一人たりとも動かさない」金泳三大統領は、述べました。しかも、集団的自衛権の行使が憲法上禁止されているという立場を当時の日本の内閣法制局は固持しており、沖縄を初めとする日本国内の米軍基地からの出撃に日本政府もいっさいの支援を不可能としました。そして、カータ元大統領が訪朝して金日成と会談し北朝鮮の核開発凍結と査察受け入れで合意し朝鮮半島の戦争は当時回避されました。
しかし、その後、2002年1月にアメリカのブッシュ大統領は一般教書演説において、テロ支援国家として北朝鮮を含む数カ国を「悪の枢軸」国と呼んで非難します。そして、アメリカは、9.11同時多発テロの犯人隠蔽疑惑を口実としてアフガニスタンに軍事侵攻し、タリバン・アフガニスタン政府を滅亡させます。アメリカは2003年3月19日、イラクに対して大量破壊兵器保有疑惑を口実として、トマホーク(コンプピュータ誘導の小型低空ミサイル)を大量使用した奇襲・先制の軍事攻撃をバクダットに実施してイラク戦争を開始します。そしてフセイン・イラク政府を滅亡させました。
悪の枢軸国とアメリカに名指しされた、北朝鮮は、アメリカの(アフガン・イラクの)次の行動の恐怖に怯え、北朝鮮は2006年に最初の核実験を強行しました。
北朝鮮の反撃やテロや難民は、韓国・中国だけでなく、日本にも向かいます。そんな、戦争のイニシアチブを、アメリカが取るのは同盟国の日本の意思であると考える人が、韓国では意外と多いのも事実です。朝鮮戦争の二の舞はごめんなのが本音でしょうか?どのような挑発があろうとも、度重なるテロや犠牲があろうとも、時の韓国政府の方針如何に関らず、北朝鮮への攻撃に、多くの韓国民は反対(2009年アンケートでは、韓国は、北朝鮮を助けるため日本と戦うべきとの驚きの回答も多かったそうですが・・。)をしているのが事実です。
(釜山市民の慰安婦設置を受けて引き上げた日本の駐韓大使の復帰を受けて、「韓国を侮辱するつもりはなかった。僕は戦前の生まれなので、韓国人に日本人がどれだけひどいことをしたか知っている。慰安婦像が設置されても仕方ないと思う。」とも述べた筒井康隆氏ですが・・慰安婦像に対する侮辱的なセクハラ的な発言が弁明で述べたように「冗談だ」としても、女性や韓国を侮蔑したかつての日本軍人のような野獣的な筒井氏の内心を暴露したかのような表現でした。そのおぞましい表現は、まるで日韓関係の悪化と女性蔑視を意識的に煽っているかのようです。)
(釜山市民の慰安婦設置を受けて引き上げた日本の駐韓大使の復帰は、5月9日の韓国大統領選に対応するためだけでなく、近づくトランプの予兆なしの北朝鮮攻撃に備えて、有事の際の韓国の邦人救助のためでないかと邪推する人もいるようです。新しい韓国政権は、親北的で反米的であろうとの予想を踏まえて狂気のトランプ政権が仮に仕掛けるとすればとの妄想的見解でしたが、突然のシリア攻撃で、それも荒唐無稽な見解とは思えなくなりました。北朝鮮外務省は4月6日にアメリカが北朝鮮の「首脳部」を狙った特殊作戦や核・ミサイル基地壊滅を図る先制攻撃を準備していると非難し「統制不可能な状況に達した」「断固たる先制攻撃で徹底的に粉砕する合法的権利を有す」等と北朝鮮側の軍事的対応も示唆しました。金日成の誕生百五周年の4月15日も控え挑発が懸念されています。)