迫害大国

 

日本の戦後の平和教育の象徴でもあった「アンネの日記」関連の書籍の被害は今月２２日までに判明したもので３００冊を越えたと報道されています。東京２３区北西部と隣接する地域に集中し、杉並区がもっとも被害が多く、横浜にも波及しているそうです。なかには絶版で入手できない貴重な本さえあるようです。

「アンネの日記に留まらず、「私はホロコーストを見た」「アウシュヴィッツの手紙」など、一般的なユダヤ人への迫害に関する書籍の被害も続いており、これはユダヤ人への迫害を扱った平和書籍関連全般を狙ったものであろうと言う人もいます。単なるいたずらや、愉快犯かもしれませんが、政治的なメッセージをもった、平和教育教材に対するテロ行為ではないのか？と疑う人さえいます・・。昨年の「はだしのゲン」に対する攻撃との関連などを指摘する人も日本ではいるようです。

　一方、中国や韓国のマスコミでは日本の右傾化の風潮の顕れであろうとの見方を強めているようです。2月26日人民解放軍報は「日本のサイトで『アンネの日記は小説だ』(ねつ造)とする言論が大量に見いだされる」として、日本では歴史を否定する動きがあると批判し、日記を破いても（迫害の）「記憶を消すことはできない」と指摘したとも報道されています。韓国テレビは、日本でヒトラー生誕記念パーティー開催の呼び掛けがあったことも紹介し日本の右傾化に懸念を表明しています。

確かに、信じられない事実ですが、日本の政治家では「維新政党・新風」の元副代表・瀬戸弘幸氏が「アドルフ・ヒトラー生誕１２５周年記念パーティ」を呼びかけています。また、コリアタウンなどで最近、韓国人排斥デモを行っている在日特権を許さない市民の会（在特会）も「アドルフ・ヒトラー生誕１２５周年記念パーティ」を開催する予定であることが、同会公式サイトの活動予定スケジュールから明らかとなっています。在特会は1月19日には埼玉県蕨市でナチスを賛美するデモさえも開催しているそうです。（ナチスがユダヤ人を迫害した論理と今日、在特会が嫌韓して朝鮮民族迫害のようなヘイトスピーチを繰り返す論理は、何故か見事に合致しているようですが、これも最近はびこる、歪んだ日本のナショナリズムの結果なのでしょうか?。）

アメリカ・ロサンゼルスに本部を置くユダヤ系の人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は、昨年に麻生副首相の失言に対してして声明を発表しました。「ナチスのどのような手口に学ぶ価値があるというのか。ひそかに民主主義を損なうことか?」「ナチス・ドイツの台頭が世界を第２次世界大戦の恐怖に陥れたことを麻生副総理は忘れたのか」と批判をしていました。

また、「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のクーパー副代表は昨年秋の、マスコミのインタビューで、旧日本軍によって強制的に動員された慰安婦の存在を否定する主張に対し「（ナチスの犠牲になったユダヤ人少女）アンネ・フランクの日記がデッチアゲだとか、（ユダヤ人を虐殺した）ガス室がなかったといった主張は、ネオナチ間で人気のあるテーマだ。日本の友人として忠告するが、（韓国の慰安婦）問題を解決しなければ、憎悪は永久に続くことになる」とも語っていました。

　しかし、山本七平氏の著書「日本人とユダヤ人」のベストセラーでも日本人とユダヤ人との共通点が指摘されていましたが、日ユ同祖論といって（古代イスラエル人と縄文人）は共通の先祖を持つ兄弟民族であるという俗説さえもあるほどに、ユダヤ人と日本との友好関係は古く、戦前から日本民族の繁栄にも大きく貢献してきた歴史的事実を最近の日本の若者は全く知らないようです。

日露戦争の勝利は実はユダヤ人と米国ユダヤ資本の支援でもたらされたものでした。（日露戦争での日本への支援の直後、アメリカのユダヤ人ヤコブ・シフは、ユダヤ人を迫害した帝政ロシア打倒に立ち働きました。２０００万ドルもの巨費を「ロシア革命」に提供して、まがりなりにも、民衆解放を社会主義の名で成し遂げたレーニンを支援しました。）ヤコブ・シフ氏が来日した際、明治天皇は、当時の日本では最高位とされた勲章を贈っています。（「日本人はユダヤ民族に感謝の念を忘れません。かつてわが国はヤコブ・シフ氏に大変お世話になりました」とは新任イスラエル大使に挨拶された1966年の昭和天皇のお言葉でした。）

アメリカと日本との戦後の関係でもユダヤ人の善意は日本の復興にとって大きなささえになりました。

また、広島の原爆ドームを設計したヤン・レッツェルはユダヤ人で、原爆を開発したオッペンハイマーらの科学者達もユダヤ人で、日米開戦の端緒となったハルノートを書いたハリーホワイトもユダヤ人です。戦後の日本国憲法の執筆者のチェールズ・ケーディスさえも実はユダヤ人でした。良くも悪くも日本の歴史とユダヤ人とは大きな係わりがありました。アインシュタインやスピルバークと言った著名なユダヤ人も日本では大人気です。

また、今日の日本ではもうタブーですが明治初頭の西郷隆盛らの思想の征韓論でさえ、大和民族の大陸ルーツは論じられていました。実際、今日のＤＮＡ解析の科学の視点からも、日本人(弥生人)のアイデンティティは日本の本州にはなかったのです。日本人も古代に祖国を追われたユダヤ民族と同様に大陸・朝鮮半島を追われた歴史をもったある種の被迫害民族だと見る人さえいます。

　しかし、欧米における、ナチス・アレルギーは中韓の靖国アレルギーにも負けません。当時のナチスと日本軍国主義は国際連盟を相次いで脱退し、軍事同盟も結び、確かに第二次世界大戦を引き起こしました。そしてナチスは１５０万人とも言われるアウシュビッツをはじめとするホロコーストでユダヤ民族６００万人を虐殺して迫害したことは疑いもない歴史事実です。

ビートルズのヘイ・ジュードは当時のアメリカ系のユダヤ人のフォークシンガー達（ボブディラン、サンモンとガーファンクル）への励ましと連帯の歌とも皮肉の歌とも解釈されました。(建前はポールがジョンを励ましたとも、ジョンの５歳の息子を励ましたともいわれていますが、ジュード：Judeと は明確にドイツ語でユダヤ人を意味します。また隠語ではヘロインを意味しました。そのため、「ヘイ・ジュード！」の呼びかけを「ユダヤ人よ！」と解釈する人もいるようです。ユダヤ人の歴史は欧米では迫害の象徴でもあります。）当時のアメリカでは反戦や人種差別告発や社会阻害を歌うフォークソングが大きなブームともなっていました。ビートルズのヘイ・ジュードのＢ面もまた社会批判でした。Ｂ面のリボルーション（革命）は、中国の文化大革命をも風刺しました。（But if you go carrying pictures of chairman Mao You ain't going to make it with anyone anyhow ：でも、毛主席の写真をかざしていたら　だれも相手にしてくれない）などとも歌われました。

ヘイ・ジュードは後に孫燕姿も歌い中華圏でもヒットしました。

 

 Hey Jude, don't make it bad

take a sad song and make it better
Remember to let her into your heart
Then you can start to make it better

Hey Jude, don't be afraid
You were made to go out and get her
The minute you let her under your skin
Then you begin to make it better

And anytime you feel the pain
Hey Jude refrain
don't carry the world upon your shoulders
For well you know that it's a fool
who plays it cool
By making his world a little colder

Hey Jude don't let me down
You have found her, now go and get her
Remember to let her into your heart
then you can start to make it better

So let it out and let it in
Hey Jude begin
You're waiting for someone to perform with
And don't you know that it's just you
Hey Jude, you'll do
The movement you need is on your shoulder

Hey Jude, don't make it bad
take a sad song and make it better
Remember to let her under your skin
Then you begin to make it better

ヘイ、ジュード　落ち込まないで

悲しい歌でも少しはよくなる
彼女を心に受け入れて
その時　全てが良い方向に向かいはじめる

ヘイ、ジュード　恐れないで
君は出て行って彼女を手に入れる事ができる
彼女を君の心に受け入れて
その時　全てが良い方向に向かいはじめる

どんなにつらい時でも　ヘイ、ジュード　思い出して
全てをひとりで背負い込まないで
クールにふるまう奴はおろかだと知っているよね
それは人生を少しつまらなくするだけ

ヘイ、ジュード　がっかりさせないで
君は彼女を見つけて手に入れる事ができる
彼女を君の心にいれて思い出して
その時　全てが良い方向に向かいはじめる

全てを捨て、全てを受け入れて
ヘイ、ジュード　はじめよう
君は誰かの助けを待っている
でもそれは君がやるべきこと
ヘイ、ジュード　君ならできる
君に必要なことは君にしかできない

ヘイ、ジュード　落ち込まないで
悲しい歌でも少しはよくなる
彼女を君の心に受け入れる
その時　全ては良い方向に向かいはじめる

 

ウクライナ大統領を解任されたビクトル・ヤヌコビッチ氏は、ロシアに逃亡しています。ロシアでは、現在も正統的な大統領であると主張し、ロシアのプーチン大統領に対しウクライナ新政権に強硬路線をとるよう呼びかけたと言われいます。欧米は、かつてのチェコの『プラハの春』のような、ロシアの軍事介入を警戒しています。

現在、政変の混乱にあるウクライナの隣国スロバキア共和国（1992年チェコから分離独立）は、かつてはチェコ共和国と連邦しチェコスロバキア共和国として同一の国家でした。チェコスロバキア共和国は１９９０年、無血のビロード革命で民主化されたことでも有名です。

チェコは中世においてユーロッパ最大のゲットー（ユダヤ人強制居住地）があったといわれます。ユダヤ人がチェコに住み始めたのは11世紀頃と言われ主にプラハとその周辺に住み続けました。反ユダヤ運動も起きますが、ヨーゼフ2世(1780年～)の時代には、宗教の自由が認められたため、ユダヤ人が一般職に就くことも許されました。

1918年に成立したチェコスロヴァキア共和国は、世界で初めて、ユダヤ人を一民族として認めたとも言われています。プラハのユダヤ人の家庭に生まれたフランツ・カフカの文学は世界的に有名です。1930年頃からのナチスのユダヤ人迫害政策で、プラハは一時期、ユダヤ人の亡命拠点にもなりました。

しかし、1938年～1939年においてチェコはナチスドイツ主導のもとに国家が解体されドイツ・ハンガリー王国・ポーランドに併合されます。プラハの中心部にあるピンカスシナゴーグ記念館の内壁には、ナチスに殺害された約８万人の近くのユダヤ人の実名の姓名と死亡場所、そして生没年が書かれています。チェコ北部のテレジーン強制収容所のユダヤ人捕虜の中には、１万人を超える１５才未満の子供もいました。戦後は戦前のファシズムへの憎しみから、チェコ内のドイツ人は財産没収の上追放されました。約３００万人のドイツ人がチェコを離れました。

 

 １９６８年にビートルズが「ヘイ・ジュード」を歌った年、チェコスロバキア­では民主化運動『プラハの春』が、ソ連軍の侵攻によって断たれた歴史があります。チェコの国民的歌手マ­ルタ・クビショバは、ヘイジュードに祖国への思いを込めた歌詞をつけてカバーし、ソ連への抵抗を歌いチェコで大ヒットさせました。しかし、直後マルタのヘイジュードは禁止され、その後彼女は、弾圧を受けてその後極貧の生活を過ごしますが、その後もヘイジュードはチェコの学生運動と革命のシンボルとして歌い継がれていました。１９９０年の無血のビロード革命の勝利後、学生達は彼女の「ヘイ・ジュード」をふただび聞くことができました。

 

 

ヘイ・ジュード  涙があなたをどう変えたの

目はヒリヒリし 涙があなたを冷えさせる

私があなたに贈れるものは少ないけど

あなたは 私たちに歌ってくれる

いつもあなたと共にある歌を

ヘイ・ジュード　甘いささやきは一見心地よいけれどそれだけじゃないのね

韻の終わりのある全て歌の裏には陰がある

私達に教えてくれる

人生はすばらしい　　　人生は残酷

ヘイ・ジュード　自分の人生を信じなさい

人生は私達に傷と痛みを与え

時として傷口に塩をすり込み杖が折れるほどたたく

人生は私達をあやつるけど悲しまないで

ヘイ・ジュード　あなたには歌がある

皆がそれを歌うとあなたの目が輝く

そしてあなたが静かに口ずさむだけで

全ての聴衆はあなたにひきつけられる

あなたはこっちへ　　私は向こうに歩きだす

ヘイ・ジュード　あなたと遠く離れても

心はあなたのそばに行ける

今、私はなす術もなく、あなたの歌を聴く自分を恥じている

神様、私を裁いて下さい

私は、あなたのように歌う勇気がない

ヘイ・ジュード  あなたは知っている。

口がヒリヒリ　石をかむような辛さを

あなたの口からきれいに聞こえてくる歌は

不幸の裏にある真実を教えてくれる！

 

 

ウクライナといえばナターシャ・グジーでしょうか？Ｐ

チェルノブイリの核による迫害も有名ですが、日本民族も広島・長崎で迫害され、戦後も第五福竜丸で、そして福島原発で核被爆の迫害を受けています。

 旧ウクライナ・ソビエト社会主義共和国初の原子力発電所のチェルノブィリ原発は１９８６年の事故で、ウクライナの約４万1700平方キロ、ロシアの5万7千平方キロ以上、ベラルーシの4万6600平方キロ以上が、放射能に汚染されました。汚染地域には、694万5千人の人が居住していました。

民主化したウクライナは、ソ連時代と違い民衆の要求にそった政治改革やＥＵへの統合もすぐに実現すると当初は考えられていました。しかし国内政治は、「ドタバタ劇場」とも批判され経済も低迷しました。ＧＤＰも貿易も落ち込みむ一方で消費者物価指数は大幅に上昇したと言われます。チェルノブイリの事故後の処理の重い負担も放射能漏れもまだ続いており、将来の廃炉の見通しも福島同様にまだついていません。

2004年の大統領選挙では、ロシアとの関係を重要視したヤヌコビッチとＥＵの帰属を唱える野党代表で前首相のユシチェンコの激しい一騎打ちとなります。開票の結果、大統領選挙におけるヤヌコビッチの当選が発表されると、大統領選挙で不正があったとのデモがおこり大規模なゼネラルストライキにまで発展し、野党勢力を支持したＥＵとアメリカの後押しがあり、再度投票が行われることとなりました。再投票の結果、野党のユシチェンコが逆転しウクライナ政権は交代しました。欧米はこれをオレンジ革命と称えました。

しかし、成立したユシチェンコ政権は、政権内部の抗争を続けたため民衆も離反し、最終的に支持率は一桁に落ち込み、２０１０年の大統領選挙では、ロシアが指示していたヤヌコビッチが逆転勝利し、ウクライナ大統領に就任しました。ウクライナ政権でのウクライナ憲法裁判所は2004年のオレンジ革命で成立した政治改革法を違憲と判断し、同法によってもたらされた憲法改正は無効とする判決を下すに至り、オレンジ革命の成果も大きく後退することとなったと言われました。

 

　19世紀末、ウクライナ全土では約200万人ものユダヤ人が住んでいたと言われています。ナチスがホーランドを占拠した時期、ウクライナのリヴィウでは1941年から1944年までの3年もの間に、リヴィウに住む約35万人ものユダヤ人がナチスによって強制収容所に送られ、そして虐殺されたと言われます。（ウクライナ全体では約９０万人市民が虐殺されたと言われています。）

強制収容所での虐殺だけでなく市民によるユダヤ人迫害事件もありました。1941年、リヴィウでは、一般の市民によるユダヤ人迫害行為（市民の手によるホロコースト：ポグロム）さえありました。（日本にも1923年関東大震災直後に日本で発生した、数千とも言われる朝鮮人虐殺、数百とも言われる中国人虐殺、非国民の日本人に対してさえ・・日本市民の手によって虐殺した迫害の不幸な歴史がありますが、ポグロムと呼ばれたユダヤ人虐殺の規模は、その比ではありませんでした。）

それは、約6万人ともいわれるユダヤ人がウクライナ市民によって虐殺された事件でした。第一次世界大戦の後、ポーランド人とウクライナ人との間に紛争が起きて、リヴィウはポーランドに併合され独ソ不可侵条約でソビエトが占領し1941年にはナチスドイツが攻撃して占領しました。ウクライナ社会主義ソビエト共和国時代は農業集団化の計画経済政策は、事実上「人工的な飢饉」（ホロドモール）と呼ばれる程に失敗して数百万人の飢餓が発生していました。当時、ウクライナ市民には、ユダヤ人政権とも言われたソビエトへの反発心や復讐心が募り、「ユダヤ人は共産主義の先導者である」とウクライナの一部の民族主義者のグループは考えていました。占領したナチスはそんなウクライナの民族主義者のグループの心を煽り迫害するよう仕向け支援したのでした。

その後ナチスの強制収容所での虐殺もあり、世界大戦中のリヴィウ近郊のユダヤ人口は一時60万人に達していたと言われましたが、戦争が終わって結局生き残ったユダヤ人は2名だけだったと言われています。

 リヴィウ市民によるユダヤ人強制連行と虐殺　　　　　　　　　　　　

 
　ヒトラー・ナチスが煽ったナショナリズムの主張は、共産主義者（ソ連ボルシェビキ・コミンテルン）と国際金融資本（欧米のユダヤ系資本）が第一次大戦でドイツの敗北を招いた犯罪者であると決め付けた妄想的なものでした。しかし、それが法律、規則の上の、人権制限や迫害に発展しました。（各反ユダや法で、公職追放、国籍の剥奪、著作禁止、各種就業の禁止、兵籍剥奪、ユダヤ人との結婚まで制限しました。）そして、やがて民衆によるユダヤ人の迫害にまで繋がったと言われています。今日、中韓における反日キャンペーンにも、ヘイトスピーチに煽られる日本の世相にも、同様の危険なナショナリズムの妄想があると指摘する人もいます。