(中国学生と日本留学生らの浴衣の打ち水・8月8日ニュースより)
アメリカ軍は8月8日イラク北部で勢力を拡大するイスラム教アルカイダ系のゲリラ軍「イスラム国」(ISIS)に対して空爆を開始したと発表しました。少数派住民への迫害が深刻化しているとの理由でオバマ大統領は8月7日に限定的な空爆を承認しました。
アメリカ・オバマ政権は、2011年12月にイラク戦争の終結を宣言しイラクからアメリカ軍を完全撤退したはずなのですが・・。今回の空爆は大きな方針転換だとも言われています。
撤退大国は、準備周到でした。6月には既にアメリカの支援する新生イラクを支援するため、最大300名のアメリカ軍による軍事顧問団と称したアメリカ中央軍の特殊武装軍隊がイラク入りが公表されていました。その特殊部隊の目的の一つが「イスラム国」(ISIS)の情報収集であることも報道されていました。
シリアではロシア外交に屈服して軍事介入を見送り、アメリカが支援する新生ウクライナではロシアの覇権に屈して、ガザではイスラエル軍の戦争を容認するアメリカ外交への批判も高まる中で、共和党勢力からイラクでの弱腰外交も猛批判され、11月に控えたアメリカ中間選挙に向けて国内批判の沈静化を図ったとも言われています。
安倍政権のイラク空爆支持も集団的自衛権行使容認の閣議決定も、アメリカ軍の覇権維持・拡大に大きな支援になっていると評価する人もいます。イラク空爆と時を同じくパレスチナ自治区のガザでは停戦延長協議が不調に終わり、イスラエル軍はガザへの空爆を再開しました。
ガザの戦闘では、7月8日からの戦闘による死者はパレスチナ側で民間人を中心に1890名、イスラエル側も67名の犠牲者が出ていると報道されています。(アメリカにとっては、世界のどこかで、軍事緊張と戦争がなければならず、死の商人としてもアメリカの規模は、圧倒的であり、世界各国の軍事勢力が保有する約7割の軍事兵器は、アメリカからの購入とも言われます。)
撤退と言えば、瀋陽の伊勢丹(沈上ハ伊势丹百货有限公司)は、2013年3月に惜しくも撤退しましたが、2008年2月に開店し好調な業績も上げて、瀋陽の人々に愛されたきた店舗でした。しかし、競争店の百貨店が相次いで参入した結果、経営が改善せす、開店からわずか5年で撤退してしまいました。(2012年の尖閣を廻る各地の反日暴動なども影響したのでしょうか??)
日本の経営陣と現地スタッフのコミュニケーションが十分でなかったことや中国民衆への戦略やマーケッティングが適切でなかったことなどが原因という見方が多くの評価でした。伊勢丹は上海、天津、成都などに進出し7店舗を構えましたが、上海華亭店、山東省済南店に続いて瀋陽の撤退は3店舗目でした。
1993年に中国初出店した伊勢丹の上海華亭店の繁栄期は、当時は、日本ブランドは出せば売れると言われた中国民衆がファッションの意識が開眼し始めた時期で、市場開放政策が成功した中国が毎年豊かになり、大型連休が導入され、公務員の給料が引き上がり、民衆の消費が喚起した時期で、上海の中心街では、ショッピングセンターが次々が次々とオープンし、市民が消費に目覚めていった時期でした。
しかし、伊勢丹の経営姿勢は「上海の富裕層に売りたい」と言う方針だけで、中国人の消費習慣の研究も足らず、民衆から離れたことも人気が下降した主な原因だとも言われました。また、2005年の小泉政権での靖国参拝を廻る反日暴動なども影響していったのでしょうか??「5年連続で売上が下降、来客数は毎年少なくなり、知名度ある入居テナントが撤退し、2007年には11年前の売上の70%まで減少」と報道されました。
一方、上海に残った、伊勢丹のもうひとつの梅龍鎮店は、2010年3月に1年にわたる改装工事を終えて、リルーアル・オープンしました。競争が激化する上海の流通業界で勝ち抜くために、顧客対象を中国で働く富裕層女性に絞り込み、中国初のライフスタイル提案型の店舗に改装して再出発して、勝負に出ています。先日8月8日に行われた「2014上海浴衣フェスタ」で、中国人の大学生や日本から中国に留学している学生達も参加して浴衣を着て打ち水のパフォーマンスをしたことが報道されているのは、この上海の伊勢丹の梅龍鎮店前です。
また、餃子の本場・中国に2005年に進出した「餃子の王将」の系列の王将餃子(大連)餐飲有限公司が進出後10年間で赤字を解消できず撤退すると言われます。
撤退といえば、日本企業は昨年2013年、シンガポールやタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムへ2兆3300億円も投資しましたが、一方で、今日、日本の最大の貿易パートナーである中国への投資はわずか8870億円に留まりました。かつての中国投資ブームも翳り、不動産バブル崩壊や理財商品破綻の影響をうける地方金融機関への懸念も背景にあると言われますが、政治リスクを恐れる日本は中国市場からも撤退の意向なのででしょうか? (撤退といっても一部の動きです。実際のところ、日本経済はすでに生産拠点を中国に多くを依存しており、今後は市場も依存していく様相です。貿易では圧倒的はシェアを占めており、かつては、「アメリカがくしゃみをすれば、日本は風邪をひく」と言われた時代がありましたが、貿易・経済依存に関しては、「中国がくしゃみをすれば、日本は肺炎になる」関係になっているのが現実です。)
2013年、日本の対東南アジア投資は倍増し、一方で対中国投資は18%も減少しました。最近の調査によると、今後投資拡大を計画している日本企業の割合は過去最低の55%にまで減少しているそうです。日本企業の対中国投資には経済や政治情勢など、確かに多くのリスクが存在しています。尖閣諸島問題や歴史問題などでの安倍政権の失政も続いており、日中関係は、まだまだ、政治の緊張状態が続くと言われています。政治との関係を無視したビジネスはどんな国でも成り立たないともいわれるのですが・・。
一方、民間レベルでは友好を求める声も強く、8月3日に中国雲南省で発生した地震による被災者の救援には、いち早く日本のマツダ自動車は、約3300万円を寄付すると発表、トヨタ自動車も、約1億3000万円の義援金の拠出を決定した等、各方面の支援が続々と発表されています。
一方、既に、貿易額でアメリカを抜き世界一の貿易大国ともなった中国は、もう日本に対しては、対等以上の自信を見せてきています。習近平政権は国内企業擁護で外資企業排除の方針とも言われます。上海で賞味期限切れ鶏肉使用の告発をうけたのも世界17ヵ国に肉類加工業を展開するアメリカのOSIグループの子会社でした。(偽装大国は中国だけではないようです。)
アメリカを抜き、世界一の経済大国となろうという中国ですが、世界銀行が今年1月に発表したデータによると、貿易額だけではありませんでした。経済成長率の伸びに陰りが生じたとも言われますが依然として7%台の驚異的成長を続けています。中国の経済規模はもう9兆400億ドル(約920兆円)でアメリカの経済規模にも迫ります。貿易黒字を背景に稼いだ中国の金は、国営企業にも周ります。IBMのパソコン部門を回収した中国国営企業のレノボは、昨年の世界のパソコン市場シェアで、遂にヒューレット・パッカード(HP)を抜き、世界1位の売り上げを占めました。 (個人的な、実感としても、中国レノボのパソコンの新品の流通価格はデルやHPの安売りを遥かに超えていると思います。先般、日本の秋葉原での購入(1万円代)で、一般の安売りの水準を遥かに下回っているものを発見しました。しかも、ThinkPadのIBM仕様ですから、その機能は、高価な日本制(東芝や富士通やNEC)と遜色ないのです。P) レノボは中国名を聯想集団と言い、1984年に、中国の正式な国家の研究機関である中国科学院関係者が設立した会社です。2004年に、IBM社のパソコン部門を買収しました。もう世界最大のパソコン会社になりましたが、オーストラリアや米国、英国、カナダ、ニュージーランドの5カ国の情報機関は、使用禁止しているとまで報じられています。英国情報機関によると、レノボ製パソコンに仕組まれたチップには、外部からの操作でパソコン内のデータにアクセスできるようになっていることを発見したと言っているようですが・・ウイルスチェックソフトで外部からのアクセスは防御できるはずですから、なんら問題はないとも思えるのですが・・・。
一方で日本は成長率は横ばいで経済規模は5兆9900億ドル(約611兆円)でした。そして、インドが大きく伸びて来て日本の経済規模を購買力平価換算のGDPでは抜きました。(あくまで、個人平均でなく、国のトータルの経済規模ではありますが)かつて、貿易大国として世界1位の外貨準備高を稼ぎ、世界2位のGDPの経済大国を誇った日本の貿易と経済の相対的な退潮は著しく、アメリカ・中国と日本の経済規模は、GDP規模でもさらに大きく開きました。
(2013年の購買力平価での国別GDP比較)(購買力平価でなく名目GDPでみれば、インドのGDPはまだ日本には遠く及びません。また、インドは中国にも負けない格差社会で、12億人の人口の内8億人が貧困層です。また、中国も億単位の農民籍の貧困層を抱えます。)
アベノミクスで株価が少し回復したかのように見えた日本の実体経済は依然として深刻です。円安で物価が上がる一方で、多くの労働者が働く中小企業の賃金は上がらず、正規雇用もまだ改善途上です。正規雇用数が最悪だった2010年から4年連続で改善し非正規雇用は微減しましたが、今年度の年度当初に消費税駆け込み需要の反動で冷え込んだ景気は回復したとも、まだ思えません。多くの企業は東北震災もあり海外に生産拠点を移し日本経済は空洞化しつつあります。そして円安の影響もありエネルギー費や原料費の輸入額が高騰する一方で、輸出は円安でも伸び悩んでいるようです。
過去の投資がもたらす金融収支で震災以降の貿易赤字をカバーし黒字化してきた日本の経常収支ですが、遂に2014年上半期(1~6月)に5075億円の赤字となってしまいました。これは、従来、経済優等生であった日本の近年の歴史上でも、1985年以降、上半期の業績としては、初めて経験する経常赤字です。