今日軍事大国といえば、アメリカでしょう。
大国ゆえの不幸は、多くの若いアメリカ兵は戦地で負傷するだけでなく、心の傷や病も多いのだそうです。(ベトナム帰還兵の自殺者は戦死者の3倍の15万人でしたが、イラク帰還兵の自殺も今から本格撤退するアフガン帰還兵の自殺も戦場での戦死者をもう上回ったそうです。)
どのような正義の軍隊も、戦地には憎しみの連鎖しか生まれないようです。今日、軍事大国の派兵が現地の民衆に歓迎されたのは日本ぐらいでしょうか。圧倒的な軍事力を持ってしても、朝鮮戦争でもベトナム戦争でも、実質的に敗北したアメリカでしたが、ソ連崩壊後は世界の唯一の「正義」で単独覇者になってしまいました。しかし、その後の湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争での膨大な軍事負担(その多くのを日本等の同盟国が支えはしましたが)が、アメリカ経済に深刻な不況と失業をもたらしています。
ストックホルム国際平和研究所の発表では、2011年度に支出された世界の軍事費約129兆円のうち55兆円がアメリカの支出した軍事費で、断然世界のトップです。今日の世界の軍事費の半分近くはアメリカの軍事費で占められてます。
国のGDP規模で世界第2位となった、2011年度の中国の軍事費は、アメリカの5分の1の約10兆円の規模で、軍事費が世界第6位の日本は、アメリカの10分の1以下の約4兆円に過ぎません。
自国のGDPとの比率で見ても、アメリカは自国のGDPの4.7%を軍事費に支出しており、GDP比1%を厳守する平和国家・日本の4.7倍で、中国のGDP比の2~3倍となります。そして、単年度でなく軍事費の支出累計でみれば、もう世界中の軍事費が、ほとんどアメリカの軍事費で占められるといっていいほど圧倒的です。
かつて、1980年代頃までは推定ですが、アメリカに次ぐ世界2位のGDPとも言われた旧ソ連は、米国との冷戦に対抗するため、毎年多額の国家予算を軍事費に注ぎこみ、ついに国力が破綻したとも言われました。また近年に、飢餓さえ発生した北朝鮮ですが、その軍事費は推定ですが、GDPの25%以上を費やして、かろうじて世界22位程度の軍事費を捻出しているとも言われます。軍事費を支出規模でなく自国のGDP比率でみると、旧ソ連や北朝鮮は大変な軍事大国であるとも言えます。
今日の中国は、国のGDPは世界第2位の経済大国になったとはえ、1人あたりのGDPはまだ世界の90位(2011年)の発展途上国であり、国内には約2億5千万人以上の貧困層を抱えています。しかし、ソ連なきあと、近年はアメリカの仮想敵国ともされ、アメリカに煽られた中国は今日、かつてのソ連と同様に、アメリカの冷戦戦略に乗せられ軍事費増強の罠に落ちいって、軍事大国を目指してしまったとも言われます。(しかし、日本でも中国の軍事費が膨張してきたとして脅威だなどと騒がれますが、小平の時代に大幅な軍縮を行い日本同様に軍事費を削って経済発展に回した中国では、今でも国土比や国民一人当たりの軍事費では、日本よりはるかに負担が少なく軍事費総額は中国の国内警察の費用負担よりも少ないのです。金額の規模でもアメリカの軍事費のまだ5分の1程で、アメリカのように海外の同盟国に基地を常駐もさせていません。また兵士は、軍事学校からの志願者で占められ一人っ子の子供を戦死させたい親も殆どいません。)
今日アメリカが軍事大国になったきっかけは、実は日本でした。日米開戦まで、第二次世界大戦戦に参加をためらっていた、当時のアメリカの軍事費は実は日本よりも低い水準でした(1941年開戦時点でも航空機保有数を別にすれば、当時日本は実勢軍事力でもアメリカを凌いでいました。また、ゼロ戦などの戦闘機や爆撃機、世界最大の戦艦さえ作った主力艦、航空機搭載の当時最高技術水準の潜水艦など、多くの技術面でもアメリカ製よりもすぐれたものがあったとも言われます。リトルボーイを誘導した電波アンテナは日本技術の八木アンテナが使用されていました。
しかし、正確なGDP統計は不明ですが、日米開戦時の日本経済はGDP規模でアメリカの5分の一程度、ドイツの2分の一程度の経済でしかなかったのでした。
しかも、当初は無敵を誇った、日本のゼロ戦(当時20ミリという大口径の機関砲を装備した戦闘機はゼロ戦だけで、しかも軽量のため旋回性能が極めて良く格闘戦では、世界で無敵と言われ、航続距離の長さも群を抜いていました。)の戦闘機が、当時の日本の軍事大国の実態を象徴していましたた。低空飛行が不安定で火を噴いて墜落し易く、軽量化のため本来必要不可欠な防弾設備を省き、しかも搭乗員は落下傘さえ付けていなかったのでした。そのため、多くの搭乗員が機体と共に散りました。搭乗員の日本人の人命を最初から全く考慮しておらず、物資もパイロットも次第に不足していく一方で、最後は特攻機となって爆弾を抱いて敵艦に突入する道しかなくなるのでした。
当時、第ニ次世界大戦開始前の世界で、一番の軍事大国はドイツでした。
第一次世界大戦の敗退後いったんは軍備を失ったドイツは、ヒトラーナチスが政権を取るにいたり、急激に再軍備を図り、日本に刺激を受け日本に次いで1933年に国際連盟を離脱しました。そして、世界中を軍事支配して築く1000年王国のナチズムの野望の実現に走りました。当時、軍事費の側面では、世界最大の軍事大国となります。ソ連と日本がドイツに次いで軍事費面では、軍事大国でしたが、ナチスドイツの軍事費の増強の規模は圧倒的でした。
1933年以降1935年に再軍備を宣言するドイツの軍事費は急速に増加されました。1933年から1938年までのドイツ一国が支出した累算軍事費(約35億ポンド)の規模は、英・仏・米の軍事費の合計総額(34億ポンド)さえ凌駕したと言われます。第二次世界大戦開始前当時はドイツが世界最大の圧倒的な軍事大国でした。
ナチスドイツは軍事科学でも最新兵器を開発しました。世界ではじめて宇宙空間を利用したロケット(弾道ミサイル)を打ち上げたドイツは、実践的なV2ロケットを開発し戦争で爆撃に使用しました。戦後の米ソの宇宙開発のロケット技術の基礎もナチスドイツの開発した技術の継承でした。(武器としての火薬式ロケットは西暦1000年頃の中国の発明で、その後、モンゴル人の手に渡り各地で実戦に投入され世界に普及していました。日本の鎌倉時代に元が攻めて来た元寇も使用したそうです。)
(アメリカの核開発にいたる基礎科学もドイツが起源でした。1938年1月に、ドイツの科学者オットー・ハーンとフリッツ・シュトラスマンの論文で、ウラニウムの核分裂が発見され、ウラン235に衝撃を与えて分裂させることを既に成功させていました。しかし、ナチスのユダヤ人迫害から逃れてドイツから自由の地アメリカにユダヤ人の優秀な科学者達が大勢亡命しました。ナチスのユダヤ人迫害がアメリカを基礎科学の中心地に変えました。
ユダヤ人科学者のレオ・シラードが1939年8月にユダヤ人アインシュタインの署名も添えて、ルーズベルト大統領に核連鎖反応の実現への協力とヒトラーの核保有の危険性を訴える手紙を送り、1942年6月に原子爆弾開発プロジェクトのマンハッタン計画が、アメリカで開始されました。アメリカのロスアラモス国立研究所の所長としてマンハッタン計画を主導したオッペンハイマーもドイツからアメリカに移民したユダヤ人の2世でした。そして、マンハッタン計画は1945年7月16日にアメリカ・ニューメキシコ州で初の核実験を実行しました。)
(ナチスドイツが、ユダヤ人を迫害・虐殺した理由のひとつに、民族至上主義があり、朝鮮人や中国人を嫌う日本の大和民族至上主義者にも類似した意識があると言う人もいます。(1925年まではオーストリア国籍であったヒトラーの屈折した心がドイツ民族至上主義を生み出したように、江戸時代までは、中国や朝鮮半島起源の大和民族説が通説であった日本の屈折した心が大和民族至上主義を生み出し朝鮮半島や中国大陸に向かわせたとも言うのです。)ヒトラーは、ドイツ民族たるアーリア人種を唯一の文化創造者と称え、日本民族なども文化伝達者に過ぎないと軽視し、ユダヤ人にいたっては文化破壊者として迫害しました。
また、他民族への迫害に留まらず、ナチズムは、自国のドイツ民族に対しても、民族の裏切り者(非国民)や社会的弱者(障害者)等を人格や肉体の「変質」を起こした変質者(変態・変人)であるとみなして迫害しました。
これらの変質者(変態・変人)は「淘汰」することで、ドイツ民族の純潔の種としての共同体を変質者(変態・変人)の汚染の手から救うべきであると真剣に考えました。当時ナチズムは民族だけでなく、ドイツ民族にも、人間の個性についての多様性を認めなかったのです。(言ってみれば、個人が「みんなちがって」いることさえ許されず、他の個性の相違を「みんないい」と評価することも禁じられたわけです。人間の尊厳に優劣は無いことを主張し、人間の個性こそが素晴らしいと主張するような、ナチス批判者は皆、霧と闇に消えたのです。)敗戦を目前にしたした時期、ヒトラーは連合軍に利用されうるドイツ国内の生産施設を全て破壊するよう命ずるネロ指令さえ発しました。軍需大臣のシュペーアに反対され実現しませんでしたがヒトラーの論理は「戦争に負ければ国民もおしまいだ。・・いずれにしろ優秀な人間はすでに死んでしまったから、この戦争の後に生き残るのは劣った人間だけだろう。」と言うものでした。
このためナチス刑法においては死刑対象となる罪を46以上に増加させ、同性愛者、遺伝病者などには、実際「去勢・断種措置や堕胎」が強制されました。(1933年の遺伝病根絶法で断種は法制化)
遺伝病や精神病者などの「民族の血を劣化させる」「劣等分子」を排除するべきであるというプロパガンダで社会的弱者への「断種」や「安楽死」さえ正当性されました。(ユダヤ人ではなくドイツ民族が障害者と言う理由で7万人以上がガス室送りにされ食事制限での死者も20万人以上が犠牲になったと言われます。)
ナチス政権では約40,000人に死刑宣告が行われたと言われています。(これは、大量のユダヤ人ホロコーストやヒトラー命令で夜と霧のように誰の目にも触れないように抹殺されたドイツ市民を含みません)処刑効率を上げるためにギロチンさえ使われました。戦前の反省から西ドイツ基本法制定時1949年には死刑制度そのものが廃止されました。)
一方、盧溝橋事件で日中戦争が拡大した1937年に日本の軍事費も激増しました。(正確な統計は不明ですが、1937年当時、アジアで一番の軍事大国の日本はGDP規模では中国の3分の2以下程度の経済規模しかありませんでした。)戦争開始以降、世界で孤立していった、日本の当時の経済は悲惨な状況になりました。日中戦争継続から、太平洋戦争の終戦までに日本の軍事費は国家予算の7割から9割近くまでにも達しました。もう日本経済のほとんどが軍事費で占められるようにもなり、戦争の継続は玉砕の道でしかありませんでした。
そのため、GDP比率の軍事費でみれば、戦時中は、今日の北朝鮮などの比でなく、日本が世界最大の軍事大国とも言えるかもしれません。日本の軍事費の財源は、租税の重課だけではまかないきれず、ほとんど軍事費が各種公債発行に求められるようになりました。その、日本公債は年を追って累積し、猛烈なインフレーションが日本国内で進行しました。日本軍は、アジアだけでなく間接的には自国の日本国民の生活も破壊しました。P
アメリカ国防総省のデータでは、アメリカ軍が駐留している世界の地域は、2011年9月30日では148カ国・地域で(イラク、アフガニスタンを除き)37カ国地域(イラク、アフガニスタンを除き)611カ所には、アメリカ国防総省所轄のアメリカ軍駐在施設があります。その基地・駐在施設数は、アメリカ本国の4127カ所を含めると4828カ所と言われます。
アメリカは世界最大の核兵器大国ですが、建物を破壊せず生命だけを殺傷する中性子爆弾、レーダーに感知されない無人巡航攻撃機トマホーク、サイバー兵器、宇宙兵器なども所有する、最先端の兵器技術大国です。歴史上最強の軍事大国とも言われます。
しかし、逆説的に見れば、50兆円もの規模のアメリカの軍需産業の存続にとっては、世界のどこかで、軍事緊張と戦争がなければならないのです。世界最大の武器輸出国もアメリカです。死の商人としてのアメリカの武器輸出規模は、圧倒的であり、世界の武装勢力が保有する約7割の軍事兵器はアメリカからの購入とも言われます。実は世界一のGDPをほこるアメリカの正体は、経済面では軍事産業に経済の多くを依存する軍事国家であり、アメリカ経済は、どこかで戦争がないと生きていけない軍事依存経済にもなっているのです。(常に支配階層の意識が国民の支配的な意識になるようです。アメリカの支配層は、その平和と繁栄を軍事力と海外戦争で確保する一方で、国民は自身を銃で保安しなければ生きていけないと考えます。)
韓国、日本、台湾もアメリカの武器ばかりで装備しています。日本の自衛隊は、アメリカの軍需産業にとってとても気前のよい、そしてとても都合のよい顧客です。建前では戦争を放棄したはずの日本ですが、実は、アメリカからの大量の兵器の輸入で、もう世界第4位の軍事費を計上する自衛隊を有する軍事大国となってます。
そして自衛隊だけではないのです。アメリカ軍の海外基地の内135程の基地が実は日本におかれています。2010年統計では、総数140万人(イラク8万、アフガニスタン10万を含む)を擁するアメリカ軍は海外に29万人のアメリカ軍兵士を置いていますが、イラク・アフガンを除くと、その兵士の内、5万3千人(2010年日本を母港とする第七艦隊艦船乗組員を含めた人数であり、陸上駐留では3万6千人ですが)は日本に駐留させていると言われます。
もう日本は、アジアにおいて最大というだけではなく(第七艦隊艦船を含め、イラク・アフガンを除くと)ドイツを抜いて世界最大のアメリカ軍兵士が常駐する国になってしまいました。(2010年)
その日本常駐のアメリカ軍の内、狭い沖縄県に半数程が集中しています。沖縄に常駐するアメリカ軍兵士の数は2万6千人(2010年)と言われます。これは、韓国全体に駐在するアメリカ軍兵士の数(2009年)に匹敵します。
また、アメリカ軍の駐留経費の日本政府の負担額は総額44億ドルでこれは韓国の負担する金額(8億ドル)の約5倍です(2002年)。従前から、金額面でみても、日本が圧倒的に世界第1位のアメリカ軍駐留経費の負担国です。P