本書は、チャーチル歩兵戦車の開発とバリエーションを紹介。悲惨な敗北に終わったディエップ上陸作戦にはじまり、チュニジア戦での勝利、イタリアにおける「ゴシックライン」「ヒットラーライン」突破作戦、北西ヨーロッパの戦い、さらに第二次大戦終結後の朝鮮戦争まで、その戦歴を追う。また、クロコダイル火焔放射戦車や、装甲工兵戦闘車、特殊任務車両などの派生型についても解説する。
クロコダイル火炎放射戦車
チャーチル・クロコダイルはおそらく、世界で最も有名な火炎放射戦車だといえる。
火焔の放射手段として高圧窒素ガスを使用した。
放射燃料を搭載する二輪の装甲トレーラーが後部に連結された。
トレーラーからパイプは連結部を経由して、戦車の車体底部を通って操縦手コンパートメントへと導かれた。通常型では車体機関銃が収まる位置に火炎放射器が装着されており、パイプはこれに連結された。電気着火式で、最大射程は108mであった。
燃え上がる燃料は放射された先にへばりつき、高温ですべてを焼き尽くした。
クロコダイル火焔放射戦車は恐るべき攻撃力をもつ兵器であった。
多くの場合、クロコダイルが姿を見せただけで、火点にこもる敵は戦うより降伏を選んだ。
クロコダイルは敵から恐れられ、同時に忌み嫌われた。
放射燃料が空になった場合や被弾した場合には、トレーラーを車内からの操作で切り離し、戦車は主砲を用いて戦闘を継続することができた。