ミヨさん、91歳

「ほら、これ食べな。」
イカ飯や、煮物、鶏肉は、どれも柔らくおいしかった。
「コーラで煮ると、柔らかくて、お砂糖入れなくても甘くなるんだよ。」
「おうちで揚げればいいように、下ごしらえをしておいたからね。」
そう言って、ふっくらしたコロッケを作ってくれた。

ミヨさんは、北海道の炭坑から上京して、
日本共産党員として、生き抜いた人。
エレベーターのない団地の4階を、毎日上り下りしながら、
地域のために、がんばり続けた人。

１ヶ月会わないと「誰だ？どっちが顔の表か裏かわからなくなる」
と怒られた。
最初は、怒られて、
そんなこと言われたって・・・と思ったけれど、
ミヨさんは、会いたかったんだ。
顔を出すと、いつも喜んでくれた。

あんたにはお世話になったね、ありがとうね。
あんたたちががんばらないといけないよ。
ばばのこともじじのことも大事にするんだよ。

ずっと、現役。
倒れる前の日も同じようにご飯を作り、
同じように煙草をくゆらせていたそうです。

明け方倒れて、そのまま病院へ。
ICUでは、荒かった呼吸が、手を握り、声をかけると穏やかな呼吸になった。
ミヨさん、わかったの？私だよ。

そして、その翌々日、ミヨさんが息を引き取ったという知らせが来ました。

久しぶりに青い空が見えた今日、とうとうミヨさんとのお別れです。
結婚式はしていなかったミヨさんが、
納棺士の方に、綿で着せていただいたのは、白無垢でした。

きれいですよ、ミヨさん。
こんなにきれいにしてもらって、よかったね。
「体に気をつけて、がんばるんだよ。」
いつもそう言って送り出してくれたミヨさんの声が、いまも聞こえます。
がんばります。
そして、ありがとうございました。

ミヨさん、心からご冥福をお祈りいたします。