2016年11月26日(土) 14.446km
累積標高(+)665.539m(-)-650.582m
今日は、二ヶ月程前から計画を練っていた「京都トレイル第二弾」を決行する。
実は昨日まで、行先を変更するかしないかを皆で思案していた。というのも、F君が最近京都を訪れた人たちから情報収集してくれた結果、今年の混雑ぶりが異常だという情報が数多く収集されたからだ。「人気の観光地の道は歩けない程の人出だ」「高台寺に入館するのに二時間並んだ」「途中で入館を諦めた」「大文字山の山頂も混雑している」等々、悩ましい情報が並んだ。やはりこの時期に京都は無謀かとも思ったが、最終的には「話のタネに混雑ぶりを見学するのもいいだろう」と開き直って決行を決定。第一弾では伏見稲荷から蹴上まで歩いた。今回は蹴上から先を歩く。蹴上までは、せっかくなので京都らしい情緒を味わえるルートを設定した。
9:00に京阪電車「祇園四条」の南座前に集合。階段を上って地上に出ると、素晴らしい快晴。この日の気温は最低4.8℃/最高16.1℃を記録。この時間は少し肌寒い位だが清々しくて気持ちいい。絶好の日和になった。集合場所に到着すると、S君が一番乗りしていた。そこにN君が阪急電車「河原町」から歩いて到着。程なくF君も合流し全員集合。
早速スタート、四条通を八坂神社方面に向かう。心配していた混雑は無く、まずは一安心だ。
「一力亭」の角を右折し、石畳の道の両側に老舗の料亭やお茶屋が立ち並ぶ花見小路通に入る。
京情緒たっぷりの通りを気持ち良く進むと「建仁寺」の裏門に突き当たる。ここも是非拝観したい寺院なのだが、残念ながら10:00開門という事なので通過。
東に緩やかな坂道を登り東大路通の交差点に出る。ここに我々と関連の深い会社の旧京都支店の建物が健在だったが、当然の事ながら今は別の会社が入居していた。
ここは直進し三叉路を左折してすぐの所に、うっかりしていると見落としてしまいそうな「石塀小路」への入口がある。
石畳と石垣の路地を挟んで、民家の中の所々に隠れ家の様な店舗が並ぶ。
ここは私も大好きな人気のスポットで、混雑がひどく迂回せざるを得ないかもと予測していたが、予測を裏切り貸切状態。絵になる場所が随所にあり、自然とシャッターを切る回数も増える。しかし、ふと気付くと「撮影禁止」の表示があちこちにある。最初は「ここで撮影禁止は酷だろう」と思ったが、住人からしてみれば、大勢の観光客が訪れて写真撮影するとシャッター音だけでも迷惑だろう。
考え直して静かに通り抜けると、「高台寺」の門前に出る。計画段階で今回どこか一軒位は寺院を拝観したいと考えていたが、冒頭に書いた様な混雑情報が入っていたので半ば諦めていた。しかし、候補の一つに上がっていた、ここ「高台寺」は大丈夫そうだ。拝観する事に決定、入口に向かう。
5分も並ばずに、拝観料¥600を支払って入場。
いきなり、風流な庵と、見事に紅葉したモミジが出迎えてくれる。
「書院」に入ると「秋の特別展」という催しが開催されており、色々と興味深い物が展示されていた。中でも同寺院所蔵で初公開という、松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」の軸が展示されていた。残念ながら直筆の物なのかどうかは説明が無く不明。
「方丈」から枯山水の「方丈前庭」を眺めた後、二つの池を中心とした小堀遠州作の庭園を歩き、「開山堂」から「霊屋」へ向かう。
道中見事な紅葉に目を奪われる事しきり。今回紅葉はピークを過ぎているだろと、余り期待していなかっただけに嬉しい誤算だ。
「霊屋」はねねの墓所にあたる建物で、秀吉とねねの木像が安置されていた。
この後、茶室「傘亭」「時雨亭」を見学して出口へ。
「高台寺」は想像以上に見応えがあり、大勢の観光客が列を作るのも納得がいく。我々も少々時間を費やし過ぎた、先を急ごう。
マンドリン奏者のN君が学生時代に舞台に立ったと言う「円山公園音楽堂」の前を通り公園に入る。入るとすぐに、東山魁夷の絵で有名な枝垂れ桜がある。当然の事ながらこの時期は花の咲いていないただの枯木なのだが、それでも何故かS君は写真に収めていた。
この辺りで、すれ違う東洋系外国人観光客が、やたらとリンゴを丸かじりしながら歩いている事にN君が気付く。
公園を抜けると、右手に「知恩院」の荘厳な三門が現れる。何度見てもその威容には圧倒される。
この三門前に地方の果物を販売する屋台が出ており、青森産のリンゴが売られていた。先程N君が発見した光景の謎が解けた。しかし、何故京都で青森産のリンゴなのかは謎のままだ。
「青蓮院門跡」の楠の巨木を右手に見ながら、緩やかな坂を下ると、前方に「平安神宮」の巨大な赤い鳥居が見えてくる。三条通を右折して蹴上に到着。
そろそろ観光客の団体さんが目立つ様になってきた。そんな喧騒を尻目に、この後我々は静かな山道に向かう。いよいよここからが今日の本題「京都トレイル」歩きになる。
レンガ造りのトンネル「ねじりまんぽ」でインクラインの下をくぐる。
前回は直進して「南禅寺」に向かったが、今回は右折してインクラインを歩き「日向大神宮」に向かう。
到着すると、ここがまた素晴らしい紅葉で、予期していなかっただけに何だか凄く得した気分になる(調べてみると知る人ぞ知る紅葉スポットらしい)。
この様な素晴らしい紅葉なのに人出が多くないのは、有名社寺が居並ぶ、ここ東山にあってはやはり穴場的な存在なのだろう。
拝殿の前を通り過ぎて、山道に入る。少し歩くと「天の岩戸」と称される岩をくり抜いたトンネルがある。ここまで来て、紅葉に見惚れていて、お参りを忘れていた事に気付く。何とも罰当たりな話だが、今さら戻る気も起きない。仕方なしにトンネルの中に祀られた祠で道中の安全を祈願する。
木の根が張り出した緩やかな勾配を登る。都市部に近く気軽に歩けるトレイルだけにハイカーに出会う頻度も結構多い。しかし、それ以上にトレランのランナーが異常に多い。と思っていると、こんな山の中に近々開催予定のトレランの大会の案内がぶら下がっていた。おそらく皆さん練習で走っているのだろう。
しばらくすると目の前に五差路の別れ道が現れる。「七福思案処」だ。地名の通り、ここはスマホを取り出して「山と高原地図」を見ながら思案する。
最短ルートを選んで前進。500mほど歩いた地点で、どうも変だという事に気付き、再度地図を確認。結局、三人(正確にはF君とN君の二人)から矢の様な非難を浴びながら五差路まで引き返す事になる。N君などは「自分は正しい道を提案したのに取り合ってくれなかった」などと全く記憶にない事まで言ってくる始末だ。
気を取り直して、正しい道を進む。この辺りから少し勾配が急になってきた。気温は高くないのだが汗が流れる。ジャンパーを脱いで調節する。F君は既に三枚脱いでTシャツになっていた。何時もならこの辺りでN君の「ビール〜」の念仏が始まりそうな物だが、今日はそこまで暑くはない。それよりもF君の「鍋〜」の念仏が多い。この日もS君は時々隊列から離れるが、今日ばかりは一番重い荷物を背負って貰っているのだからやむを得ないだろう。
尾根筋に乗り上げた所で「山科」からの道に合流、しばらくは平坦な道を気持ち良く歩く。
再び登りが始まり程なく大文字山(465.44m)山頂に到着。
「鹿ケ谷三等三角点」をチェック。
京都の市街を一望できる絶景ポイントなのだが、山頂の面積は広くはない。即ち混雑するのは必定で、大勢のハイカーが昼食タイムだった。
時間的に我々も相当空腹なのだが、諦めて当初の計画通り「大文字の火床」を目指す。
すぐ近くだと思っていた火床は、心配になる位に結構下る。やがて目の前がパッと開けて無事到着。山頂よりも更に絶景である事は予想していたが、想像以上である。
しかし、景色に感動していられたのは束の間で、ここでとんでもない事実が判明する。
なんと大きな立て看板があり、そこに明記されている「この山での火気使用厳禁」の文字。本日のメインイベント「大文字山で鴨鍋を食す」の企画が台無しになってしまう。下調べ不足と言われればそれ迄なのだが、「直火は駄目なのは分かるがバーナー位使わせてくれてもいいのに!」と逆ギレしたくなる。しかし今さら、そんな事を言っても致し方無い。かと言って中止するのは寂し過ぎる。山頂ではバーナーを使用している人も多くいたし、火床以外ならいいだろうとここは都合のいい解釈をして、人目に付かない森の中で場所を探す。
絶景を眺めながら鍋を食べる計画だったが、こうなっては贅沢は言っておれない。斜面の中でも比較的平坦な場所に陣取る。それでも多少の傾斜があるので、バーナーを水平に設置するのには苦労した。
(本日のメニュー)
【鴨鍋材料】共同購入
・鴨肉(解凍・整形)
・九条ねぎ
・セリ
・舞茸
・豆腐(木綿)
・蕎麦
・出汁(カツオ・昆布/S君作)
・七味(美々卯)
【酒】個人購入
・サッポロラガービール 500ml
・月桂冠 月 900mlパック
【おつまみ】F・N・S君購入
・オイルサーディン
・本まぐろホルモンのにんにくオリーブ油漬
・広島県産かき燻製油漬
・鳥唐揚げ
非常に豪華なラインナップになった。
鍋の準備が出来るまでの間に、持ち寄ってくれたおつまみを肴にビールで乾杯!
F君とN君はそれぞれ何やら国産のプレミアムなビールを用意していた。
S君が自宅で引いてくれた出汁(S君曰く、味付けには自信がないとの事で醤油は別に持参)を、これまたS君持参の雪平鍋に入れてバーナーで沸かす。醤油で味を整えて、まず豆腐・九条ねぎ・舞茸を投入、森の中に出汁と九条ねぎのいい香りが漂う。火が通った所に鴨肉、美味しそうな油が出汁に浮く。最後にセリを入れて完成。食べる時に入れる七味がまたいい仕事をしてくれる。
バーナーで熱燗をつける。陽の当たらない森の中でじっとしていると流石に肌寒い。冷えた体に鍋と熱燗が染み渡る。
ここで一句
「錦秋の 落葉踏みしめ 熱燗の 温もりうれし 送り火の山」
日本酒5合は多過ぎるかと思ったが、綺麗に飲み干した。シメの蕎麦も完食・全汁。安物の鴨肉だったので一抹の不安があったが、予想外に美味かった。腹も満たされたところで撤収。
再び火床に戻り下山に取り掛かる。
途中に「中尾の水」と呼ばれる湧水があるので、何時もの通り、自宅でのお湯割用に採取(500ml)。
禁断の日本酒を飲んだN君は、下山の道中、何だかおかしな事を喋っていたが、何とか全員無事下山。
「慈照寺」の前に差し掛かると、参道には行列が出来ている。久しぶりに「銀閣」も見て見たいと思っていたが見る気が失せた。
今出川通を西に向かう。「京都大学」の脇を通って「百万遍」へ。しかし、この辺りを歩いている若者は皆賢く見えるから不思議だ。
更に西に向かいゴール地点の京阪電車「出町柳」駅に到着。
初冬の日の入りは早く、辺りは薄暗くなっていた。
今回の計画は、全員怪我無くゴールできたのが何よりだが、心配していた混雑も無く、諦めていた紅葉も観れて、絶景を眺めながらとはいかなかったのは残念ではあったが、美味しい「鴨鍋」も食べる事が出来た。まずまず成功だったと言っていいと思う。
この後、残念ながらN君とは「四条」で別れ、F君・S君と三人で「京橋」まで戻る。何時もの「白玉温泉」で汗を流し、大川沿いの「徳田酒店・片町店」で反省会。