フランシス・ホジソン・バーネットの著作『小公女』『小公子』『秘密の花園』は、児童文学の名作として、世界中の人たちに愛されてきた3冊です。
ところで、去年の2月に、バーネットの知られざる第4の名作が、新たに岩波少年文庫から翻訳出版されました。
訳者は中村妙子さんです。
タイトルは“THE LOST PRINCE”→『消えた王子』!
何故今頃になって、バーネットの作品が世に出るのか、その変の裏事情を知りたいところです。
バーネットのファンで『消えた王子』のことを初めて知った人や、知っていたけれどまだ手にとっていないという人がいたら
「いいから、とにかく読んでみて」と強く薦めたい本。
見事な構成、少年たちの冒険譚、歴史の歯車がギーッと回転して、ガチャンと次の歯車と噛み合う…、そんなイメージの物語。
バーネットを読んだことのある人ならわかると思うけど、物語の運びのうまさに、読み始めたらもう本を置けないのです。
舞台はロンドンの下町からヨーロッパをかけめぐり、“祖国サマヴィア”へ。
ストーリーは後半に向けてぐんぐん盛り上がりを見せ、最高潮に達したときには、ハラハラと涙が頬を伝い落ちるのです…絶対!
いやいや、この物語が今まで日本で出版されなかったことが、不思議で仕方がありません。
じつは、その昔、昭和初期に『漂白(さすらい)の王子』というタイトルで抄訳の単行本が出ていたらしいです。
ですが、出版関係者の記憶の襞の中に埋もれてしまって、すっかり忘れられていました。
日本語に訳されなければ読めないというしがらみを背負った日本では、ずっと「幻の名作」だったのです。
でも、ハリー・ポッターが出て、上橋菜穂子さんが脚光を浴びるなら、『消えた王子』が欠けていてはいけないでしょう。
雲に覆われてずーっと見えなかった星が、雲が流れたために夜空にその姿を現し、強い光を放ち始めるように、『消えた王子』は出版されました。
誰が出版を進めたのか知らないけれど、出版を言い出した人と、決めた人に感謝!!
ほんとに面白い本です。ぜひ読んでみて!
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