サラ☆の物語な毎日とハル文庫

三津田さんの物語25~「お父さま、ただいま」

地震に遭われた地域では、今日も雪が降っているようです。
避難所におられる方々は、大変でしようね。
何も元旦から…と思いますが、
できる限り早く、元の平穏な暮らしに戻られますように。
地震国というのは油断なりませんね。

それでも気を取り直して、元気に今日1日を過ごすのみです。
三津田さんは、50歳を過ぎてからOLとなり、
一人暮らしとなり、それでも人生を楽しむことをあきらめない!
こちらも元気がもらえて、頑張ろうと思えるところが素敵です。

 

フサコさんが仕事を始めて二年目に、娘の直子さんが結婚することになりました。

「あの子が結婚するまでは死ねない」と三津田氏が病床で言っていたことを思うと、

感慨深いものがあります。

「お父さま。直子が結婚することになりましたよ」と、

お仏壇に手を合わせて報告するフサコさんでした。

妹や弟が、フサコさんが一人になることを心配してくれましたが、

そんなことは最初から覚悟のうえです。

大事な一人娘が幸せになることが、自分の一番の幸せなのだと、

心から嬉しく思っていました。

 

娘の直子さんも、母親のフサコさんを一人残していくことを気にしましたが、

「平気ですよ。仕事もあるし、習い事もあるし、結構忙しいもの。

人のことより、自分のことよ。結婚式の準備とか、いろいろあるでしょ」

と笑顔で言うばかりでした。

 

フサコさんは、元来、人は孤独なものだと常々考えていましたから、

一人暮らしと決め込んでしまえば、どおってことないと構えていました。

さすがに結婚式の夜から二、三日、妹が泊まってくれたのは、

心が慰められ、本当に助かったと感謝しましたけれど。

 

娘がいなくなると、家の中に穴がぽっかり空いたような、

何とも言えない寂しさがありました。

フサコさんは「寂しくない」と決めることにしました。

 

淋しいかもしれないけれど、寂しくないわ。

所詮一人で生まれてきて、一人で死んでいくのが人間だもの。

すっと顔を上げて、前を向いてて楽しみを見つけながら、生きていきましょう。

娘にはいつだって会えるのですもの。大丈夫よ。

 

こうして、フサコさんの一人暮らしが始まりました。

本人が言っていたように、会社と習い事、それから新聞への投稿に打ち込んで、

忙しく暮らしていったのです。

習い事は、娘時代、お母さまがいくつも習い事をしていたのを見ていましたから、

その楽しさや生活の中にしめる大事さや役割も分かっています。

習い事とはその道を極めること。

その先に、先人たちの残した思いや文化が広がっています。

自分も若い頃に打ちこんだ習いごとの醍醐味をいま一度、

生活の主軸にすえて、社交ダンス、長唄、日舞と習い事に取り組みました。

そして、会社や習い事から家に帰り着くと、

ドアを開けながら「お父さま、ただいま」と言うのが、

いつしか習慣になっていました。

 

一人暮らしですが、いつでも近くに三津田氏がいるような感覚があります。

フサコさんのことを大好きで、大事に思ってくれていた三津田氏ですから、

きっと自分のそばにいてくれると勝手に想像し、温もりを得ていたのでした。

 

今日も新しい1日が始まっています。
力強く生きていきたいものです。
せっかくですから素敵な時間をぜひっ!!

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