ちょっと前にお笑いコンビキャイ~ンの天野ひろゆきさんに、「私のこの一冊」というテーマで取材をさせてもらった。
そのときに天野さんが紹介してくれたのが、『モリー先生との火曜日』(ミッチ・アルボム著/NHK出版)。ずっと大事にしている本なのだそうだ。
1997年にアメリカで出版されて以来、ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー・リストで4年間1位を続けたというノンフィクション。
スポーツコラムニストとして活躍する著者は、大学の恩師モリー・シュワルツ教授がALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵され、余命いくばくもないことを知ると、卒業後16年ぶりに恩師の元を尋ねる。そして始まったのがモリー先生との毎週火曜日の個人授業。テーマは「人生の意味」。
モリー先生は重い病気にも関わらず、明快にユーモアを交えながら「生きることと死ぬこと」について教えてくれるのだ。
本を取り寄せて読んでみて、深く心に響いた。 たとえば、こんな言葉が書いてある。
「人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって外に出すか、どうやって中に受け入れるか、その方法を学ぶことだよ。レヴァインという賢人が言ってるよ、『愛は唯一、理性的な行為である』」
「いずれ死ぬことを認めて、いつ死んでもいいように準備すること」
「仏教徒みたいにやればいい。毎日小鳥を肩にとまらせ、こう質問させるんだ。『今日がその日か? 用意はいいか? するべきことをすべてやっているか? なりたいと思う人間になっているか?』」
「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる」
「家族っていうのはそういうものなんだ。単に愛だけじゃなくて、見守っている人がいますよ、とわからせてくれること。……『精神的な保護』とでも言うかな。そこに家族がいて見守ってくれているっていうことね。それを与えてくれるものはほかに何もないんだよ。かねもだめ、名声もだめ、仕事もだめ」
「子どもを持とうか持つまいかときかれたら、どうすべきだとは決して言わないことにしているんだ。ただ、『子どもを持つのと同じような経験はほかにないですよ』とだけ言う。ほかに代わりはないんだ。友だちも恋人も代わりにならない。ほかの人間に対して完全な責任を持つという経験をしたければ、そして、この上なく深い愛のきずなをいかに築くかを知りたければ、ぜひ子どもを持つべきだね」
「人を愛することにみずからを捧げよ。周囲の社会にみずからを捧げよ。目的と意味を与えてくれるものを創りだすことにみずからを捧げよ」
「いいかい、実は、小さな波の話で、その波は海の中でぷかぷか上がったり下がったり楽しい時を過ごしていた。気持ちのいい風、すがすがしい空気──ところがやがて、ほかの波たちが目の前で次々に岸に砕けるのに気づいた。
『わあ、たいへんだ。ぼくもああなるのか』
そこへもう一つの波がやってきた。最初の波が暗い顔をしているのを見て、『何がそんなに悲しいんだ?』とたずねる。
最初の波は答えた。『わかっちゃいないね。ぼくたち波はみんな砕けちゃうんだぜ! みんななんにもなくなる! ああ、おそろしい』
すると二番目の波がこう言った。『ばか、わかっちゃいないのはおまえだよ。おまえは波なんかじゃない。海の一部分なんだよ』」
一度は手にとって、読んでみたい本。自分の生き方をチェックできる。
ちなみに、『モリー先生との火曜日』は、アメリカのABC放送でスペシャルドラマ化されている。モリー先生役のジャック・レモンの、死を覚悟した男の芝居が素晴らしいそうだ。日本にもDVDが入ってきており、レンタルショップで借りられる。
「こちらもおすすめ」と天野さんが言っていた。