グリン・ゲイブルスのわきから森に入る小途がありました。
『赤毛のアン』が「恋人の小途」となづけた、森の中の道です。
木々が涼やかに茂り、小川が流れ、ところどこは枝と枝がアーチをつくって、とても魅惑的なロードです。
きっとボーイフレンドと手をつないで歩けば、二人だけのスイートな時間が過ぎていくのでしょう。
しかし、恋人と歩かなくても、一人で逍遥しても、とても素敵な気分になれる小途です。
木々は風に揺れ、ざわざわと枝がこすれあって優しい音がする。小川はチュラチュラと心地よい音をはっきりとたてて流れ、小鳥が囀ります。
風が頬をなで、足元には土の感触が靴を通してじんわり伝わります。
そして、芳しい空気。何のにおいだろう…?
日本と決定的に違うのは、湿気がないことでしょう。
ちょっとひんやりとしていて、とても気持ちいい。
しばらく、じっと座ってみました。
森の中の一部になって、まるで精霊にでもなった気分。
プリンスエドワード頭は、「精霊の住む島」と言われるけど、森の何いると、そのことが実感できます。
木々や空気と一体化して、静かに呼吸していると、なんだか魂が浄化されていくような気かするのです。
ここにこうしているだけで、「思い切って来て、よかったー」と思ったのでした。
成田からトロントで飛行機を乗り継いで、ハリファックスまで17時間。ハリファックスからも、バスとフェリーで2時間ほどかけて、プリンスエドワード島にやってきたのです。
うーん。だけど、いま、ここにこうしていられるのは、なんという幸せ!!
そう思いました。
日本に戻ってからも、気持ちを集中して想像すれば、森の中に瞬間移動できる。
恋人の小途で感じたことを、心と体は記憶しています。
これが旅をするということ?
それとも、恋人の小途に、そんなふうに心や体に染みとおるパワーがあるのかもしれません。
きっと、究極のパワースポットに違いない。
小川の向こうに、今にもアンが現れそうです。
いつアンが出てきても不思議はありません。
写真の中で、小川の縁の茂みに咲いている黄色い花はバターカップ。
モンゴメリーは、生涯を通して、恋人の小途を懐かしがったけれど、それも無理はありません。
一回行っただけなのに、わたしもあの小途が懐かしい。
そんなふうに思われる、「恋人の小途でした。
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