『お化けの森』というのは、『赤毛のアン』の中で、アンとダイアナが近所の森につけたネーミングです。
「『お化けの森』なんてすごくロマンチックなんですもの、マリラ。
あの森を選んだのはとてもうす暗いからなのよ。
ああ、それは悲惨なことを想像したの。
白い着物の女の人がいて、夜のちょうどいま時分になると、小川に沿って歩きながら、手をもみしぼって泣き叫ぶのよ。
その女の人の姿が見えるのは、家族のだれかが死ぬことなの。
それから殺された小さなこどもの幽霊が、森のすみのアイドルワイルドあたりにさまよっていて、人のうしろにそっと忍びよってきて、冷たい指でしがみつくのよ──こんなふうに。
ああ、マリラ。思っただけでもふるえあがるわ…」
アンとダイアナは、そんなふうに想像しては、愉快に遊んでいました。
もっとも、ある夕方、薄暗くなってから、アンはダイアナの家にお使いを頼まれます。
そして、どうしても近道である『お化けの森』を通らなければいけないとマリラに言われ、アンは心臓も凍りつくような、恐ろしい思いをしたのでした。
ところで『お化けの森』は、モンゴメリの想像の産物ではありません。
モンゴメリ自身、幼い頃から慣れ親しんだ散歩道なのです。
『お化けの森』は、モンゴメリの暮らした家とグリン・ゲイブルスの間に、いまでもそのまま残されています。
『お化けの森』はエゾ松の森。
ここに紹介した写真では、ずいぶん背の高い木々がうっそうと茂っています。
ところが、モンゴメリ自身が写した100年ほど前の『お化けの森』の写真を見ると、まだまだそれほどの高さはないみたい。
枝がはって葉っぱがこんもりと茂り、ほんとに薄暗そうです。
百年たったいまは、エゾ松の幹が伸び、一本一本の木はひょろひょろの感じ。
中を歩いてもそんなに薄暗い感じはしません。
ただ、枝が骸骨の腕のように見えるので、これはこれで、暗くなればかなり不気味かも。
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