芝居の最前列に座っていたみすぼらしいその男は、暗闇のなかで喉を掻ききられて死んでいた。男は上演中の舞台「真鍮のベッド」の脚本家だった。じつはこの芝居、前日にも上演中、しかも同じ最前列の席で同じ時刻に女性が死亡していたのだ。女性は心臓発作で自然死だったが、今日死んだ男は間違いなく殺されていた。これは偶然? それとも……。

 駆けつけたニューヨーク市警ソーホー署の刑事マロリーとライカーは早速捜査を開始する。だが、劇場の関係者は、主演俳優から劇場の“使い走り”、劇を批評する評論家に至るまで全員が、一筋縄ではいかない奇人変人ぞろい。おまけに、殺された脚本家とは別の、ゴーストライターなる謎の人物が、日々勝手に脚本を書き換えているという。

 姿を見せないゴーストライターの目的は? そして殺人事件との関わりは? 氷の天使マロリーが、舞台の深い闇に切り込む。好評シリーズ最新刊。